企業デジタルグリッド東証グロース:350A】「電気・ガス業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは、「エネルギーの民主化を実現する」というミッションのもと、「エネルギー制約のない世界を次世代につなぐ」というビジョンを掲げています。従来の電力取引に存在するアナログかつ閉鎖的な取引構造をデジタルの力で刷新することにより、「電力取引の簡素化」と「電力価格の抑制」を実現し、多くの会社が自社のリスク許容度と脱炭素ポリシーに合った電力取引の選択肢を検討できる社会を創造することを目指しております。これらの取り組みを通じ、企業価値の最大化を図ることを経営方針としています。

(2)経営環境

① 電力PF事業

 現在の国内電力市場は、再生可能エネルギーの普及や化石燃料調達環境の変化によりJEPXの価格のボラティリティが高まっています。再生可能エネルギーは変動性電源であるため、需給を安定させるための調整力が必須であり、主に液化天然ガス(LNG)火力発電がその役割を担っております。これまで、燃料であるLNGの多くは中長期相対契約で調達されてきました。

 2012年に導入されたFIT制度により太陽光発電をはじめとした変動電源が爆発的に増加した結果、出力が不安定な再生可能エネルギーの調整を行うためにも化石電源は重宝され、中長期的相対契約を締結している状況でした。しかし、化石電源の中でも特に調整力の高いLNGは、長期間の貯蔵ができないため取扱い難易度が高い特性があります。こうした状況の中、大手発電事業者は新型コロナウイルスの流行による一時的な電力需要の急減によりLNG関連損失を計上することとなり(※1)、これを契機にLNG中長期相対期契約量を縮小しました。

 LNG中長期契約量の減少に伴いLNGのスポット調達割合が増加し、火力発電コストはLNGスポット価格に大きな影響を受けるようになりました。JEPXにおける約定価格は売り主体である大手発電事業者の入札価格に大きな影響を受けますが、このようなLNG調達環境の変化を受け、大手発電事業者がJEPXへの入札価格を、LNGスポット価格を考慮した価格にて入札できるよう制度が見直されました(※2)。この見直しにより、JEPXにおける約定価格はLNGスポット価格の影響を強く受けるようになりボラティリティが増大しました。

LNGスポット価格(JKM)と長期契約価格(JLC)の比較(※3)

 東京のJEPXエリアプライス推移(2014/4/1~2024/9/30)(※4)

 2022年、ウクライナ紛争が勃発した影響等を受けLNGスポット価格が高騰し、JEPXにおける約定価格も高騰しました。JEPXにおける約定価格の高騰は、発電事業者との長期相対契約を持たない小売電気事業者の仕入価格に直結します。やがて、固定単価の販売価格を仕入価格が上回り、逆ザヤ状態が慢性化していくと同時に、資本力のない新電力を始めとする中小の小売電気事業者は倒産や撤退を余儀なくされていきました。倒産や撤退をした小売電気事業者と契約していた需要家の多くは、大手電力会社である旧一般電気事業者との契約を試みましたが、同様の状況であった旧一般電気事業者も既に通常の供給契約の新規受付を停止していたため、セーフティネットである最終保障供給(※5)契約を一般送配電事業者と締結せざるをえない需要家(電力難民)が続出しました。最終保障供給契約も当時固定単価であったため、一般送配電事業者は契約が増えれば増えるほど損失を被る逆ザヤ状態であったため、2022年9月より最終保障供給契約の料金が市場価格連動に変更され、最終保障供給契約の契約件数は、2022年10月には45,871件に達しましたが、これは前年同月比(445件)の約103倍の水準となりました。その後、LNGスポット価格の下落とともにJEPXにおける約定価格も落ち着きを見せ始め、新電力や旧一般電気事業者が市場連動プランなども一部導入しながら新規契約の受付を開始したこともあり、最終保障供給契約件数も低下しております。

 最終保障供給契約件数の推移(2021年8月28日~2024年8月1日)(※6)

 以上のように、国内電力市場は国際的なLNG価格に対するエクスポージャーが増大し、電力小売会社が価格変動リスクを取るという電力調達・供給モデルの維持が困難になっており、価格変動リスクは電気を使う需要家に転嫁されつつあります。このような市場環境の変化を受け、今後は需要家が自らのリスク許容度に合った電気を選ぶ時代に突入し、当社グループの電力PF事業を推進する上で好影響を与えました。当事業の特性上、需要家が調達する電気は多かれ少なかれJEPXからの調達を含みます。事前に化石電源の発電家から一定量を固定単価で調達することで価格変動を抑えることは可能ですが、事前に発電家と取り決めた量と実際に使用した量との間に乖離が発生します。こうした乖離については、当社グループのシステムが自動でJEPXから電気を調達または売却することで調整をしています。また、市況やリスク許容度によっては、あえて全量をJEPXからの調達とする需要家も見られます。小売電気事業者から固定単価で購入することが一般的であった時代には、市場からの直接調達やそれに伴う価格変動に対する需要家の理解が進みにくい状況にありました。しかし、環境変化に伴い電気代は市場に連動するという認識が進んだことで、需要家の理解を得やすくなったことは当事業を大きく推進させる要因となりました。当社グループのDGP取扱電力量は、JEPX高騰時に多くの電力難民への電力供給により大きく拡大しましたが、電力難民減少後も、電気代が市場に連動する調達方式が浸透していたため、コスト優位性により順調に拡大しております。以上のように、JEPXが高騰した状況においても、低位安定した状況においてもDGP取扱量は拡大(※7)しており、プラットフォームとして最適な電力取引の「場」を提供しているDGPは、市場価格の高騰時・高騰後を問わず顧客数を拡大しております。なお、DGP取扱電力量の月次平均解約率(※8)は約2.9%となっております。

GMV(取扱電力量)及び契約容量の四半期推移(2023年8月~2025年7月)(※7)

 外部環境変化を背景に、電気代が市場に連動する調達方式を受容する顧客セグメントは今後も法人需要(高圧・特別高圧)の中で拡大する見通しです。国内の電力総需要は人口減少や省エネ機器の普及・性能向上などにより減少する要因があるものの、製造業における生産プロセスの電化、データセンターの普及などにより、2040年に電力総需要は9,000~11,000億kWhに達することが見込まれています。2025年7月期の当社における年間取扱電力量は約24億kWhであり、ダイナミックプライシング市場(※12)の17%程度と推定しております。

 電力PF事業の市場規模(※9、10、11、12)

(※1) 例えば、株式会社JERA 2020年度第2四半期連結決算にてLNG売却関連損を計上

(※2) 東北電力株式会社と株式会社JERAが2021年度11月下旬以降にJEPXへの供出価格をスポット調達等を考慮した価格に変更すると発表

(※3) Bloombergデータより当社グループ作成。JLC:日本着LNG価格。長期契約価格に近い水準。JKM:LNGの北東アジア向けスポット価格指標

(※4) JEPX取引市場データより取得した東京エリアプライス(円/kWh)(2014年4月1日~2024年10月4日)

(※5) 小売電気事業者のいずれとも電気の需給契約についての交渉が成立しない高圧以上の需要家に対して、電気最終保障供給約款に基づき旧一般電気事業者が電気を供給する契約

(※6) 電力・ガス取引監視等委員会公表資料 最終保障供給契約件数(2021年8月28日~2024年8月1日)

(※7) 当社グループ実績データに基づき作成(2023年8月~2025年7月)

(※8) 契約容量の解約率=当月の解約契約容量÷(前月の契約容量+当月新規契約容量)、2024年8月~2025年7月までを対象期間とした月次解約率の平均値

(※9) TAM、SAM及びSOMは、「2040年度におけるエネルギー需給の見通し、電力調査統計 電力需要実績 2023年度(資源エネルギー庁)」をもとに、※10、※11及び※12に記載の方法により当社が算出した推計値。統計情報や第三者により作成されたデータの精度には限界があるほか、当社による一定の仮定、前提、試算に基づいて算出された推計値であるため、実際の市場規模とは異なる可能性がある

(※10) SAM(2040年予想):2040年の電力総需要のうち、特別高圧・高圧需要を法人需要として表記。2024年時点の電力総供給量のうち特別高圧・高圧電力が占める割合が64.5%であったことを踏まえ、2040年における電力総需要予測値に64.5%を乗じて算出

(※11) SOM(2040年予想):2024年時点の特別高圧・高圧電力供給量のうち新電力が占める割合が17.4%であったことを踏まえ、2040年の特別高圧・高圧電力需要予測値に17.4%を乗じて算出

(※12) SOM:特別高圧・高圧需要のうち、新電力が市場連動メニューを提供する市場をダイナミックプライシング市場と表記。ダイナミックプライシング市場は電力の需要と供給に応じて価格が変動する市場のことで、電力を使う側は電気料金の節約、電力を供給する側は電力設備や事業の効率的運用が可能になり電力需給バランスの最適化の有効策として期待されている。ダイナミックプライシング市場規模は、「電気とガスのかんたん比較 エネチェンジ(ENECHANGE株式会社)」に掲載されている市場連動メニューを提供している新電力の2023年度電力需給実績の特別高圧+高圧の数値を合計したもの

② 再エネPF事業

 2015年12月に開催された国連気候変動枠組み条約国会議(COP21)において採択された「パリ協定」を契機に、世界的に化石燃料依存からの脱却が加速し、再生可能エネルギーへの移行が推進されています。各国政府や企業においても、持続可能なエネルギー利用への意識が高まり、自社消費電力の再生可能エネルギー100%化(RE100)を目指す動きが急速に広がっています。日本国内においても、政府は第7次エネルギー基本計画において、2040年までに再生可能エネルギーの導入比率を40~50%に引き上げるという方針を掲げており(※1)、この目標達成に向けた各種政策が展開されています。これにより、脱炭素化は一時的なトレンドではなく、長期的かつ不可逆的なメガトレンドとして確立されつつあります。

2023年までの再生可能エネルギー拡大実績と2040年までの目標(※1)

 2010年には10%程度だった再生可能エネルギーの電源構成比率は、2012年に始まった固定価格買取制度(FIT制度)(※2)の導入により、2022年までに23%まで拡大しました。FIT制度は再生可能エネルギーの普及に大きく寄与し、特に太陽光発電の導入拡大を後押ししました。しかし、FIT制度による新規認定は2022年以降、順次終了することが決定されており、今後の再生可能エネルギー比率拡大には新たな枠組みの構築が不可欠となっております。政府は、2040年までに再生可能エネルギー比率をさらに17%~27%拡大するという目標を掲げていますが、その達成にはFIT制度に依存しない非FIT(※3)電源の普及が鍵を握ります。これにより、事業者が市場競争の中で再生可能エネルギーを活用し、経済合理性を持った形で普及を進めることが求められています。

 非FIT電源とは、固定価格買取制度に頼らず、事業者が自由市場において取引する再生可能エネルギー電源を指します。近年、企業の自主的な脱炭素化の動きが進む中、非FIT電源を活用したPPA(電力購入契約)の導入や、トラッキング付き非化石証書を活用したグリーン電力の調達など、多様な調達手法が拡充されています。

 これまで、太陽光発電の普及を大きく促進してきたFIT制度は、国民負担の増大を背景に順次終了し、FIP制度(※4)への移行が進んでいます。FIT制度下では、再生可能エネルギーの発電家は国が保証する固定価格で電力を売電する仕組みが整備されていましたが、FIP制度では市場価格にプレミアムを加算する形で売電が行われるため、再生可能エネルギーの発電家は自ら販路を開拓し、電力市場の変動を考慮した取引戦略を構築する必要に迫られています(※5)。

FITとFIPの違い(※5)

 このように、再生可能エネルギーは政府の補助に依存せず、市場において自立的に運用することが求められています。この市場環境の変化は、当社グループが展開する再エネPF事業にとって追い風となっております。当社グループは非化石証書の代理調達サービス「エコのはし」、再エネコーポレートPPAのマッチングプラットフォーム「RE Bridge」、及び契約締結後の再エネ発電設備の需給管理を提供する「DGP」を通じ、多様な再生可能エネルギーの取引サービスを展開しています。市場環境の変化に伴い、再生可能エネルギーの発電家による長期的かつ安定的な販路の確保、非FIT市場への移行に伴う再生可能エネルギーの需給管理、RE100対応が迫られている需要家の再生可能エネルギー調達、と言ったニーズを的確に捉えたサービスにより、当社グループの再生可能エネルギー取扱量は順調に増加(※6)しており、2025年7月時点で約281MWに到達しています。契約期間は20年間程度の長期契約が中心であり、今後もストックとして積み上がっていく見通しです。

 再生可能エネルギー取扱容量推移(MW)(※6)

 最後に、非FIT電源の契約形態として、再エネPPA市場が出現し、脱炭素の潮流を背景に2040年にかけて急拡大する見通しです。2025年7月期の再生可能エネルギーも取扱電力量は約2.5億kWhであり、市場の約16.7%を占有していると推定しております。

 再エネPF事業市場規模(※7、8、9、10、11)

(※1) 資源エネルギー庁 第7次エネルギー基本計画(2024年12月17日)

(※2) 再生可能エネルギーを政府が定めた一定の価格(調達価格)で、一定の期間にわたって固定買取価格で買い取ることを義務付けた制度。2012年7月に開始

(※3) FIT認定を受けていない電源、FIT認定期間が終了した電源、FIP認定電源を総称して非FIT電源としている

(※4) Feed-in Premiumの略称で、FIT制度のように固定価格で買い取るのではなく、再生可能エネルギーの発電家がJEPXなどで売電したとき、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せすることで再生可能エネルギー導入を促進する制度。2022年4月に開始

(※5) 日本総研「FIP導入1年半が経過して~FIP転換の現状と展望~①」、資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」(2024年1月4日)を参考に当社グループ作成

(※6) 当社グループ実績データに基づき作成

(※7) TAM、SAM及びSOMは、※8、※9、※10及び※11に記載の方法により当社が算出した推計値。統計情報や第三者により作成されたデータの精度には限界があるほか、当社による一定の仮定、前提、試算に基づいて算出された推計値であるため、実際の市場規模とは異なる可能性がある

(※8) TAM(2040年予想):2040年度の発電電力量1.1~1.2兆kWhのうち、再生可能エネルギーの電源構成比率4~5割程度を乗じた発電電力量をTAMと想定(資源エネルギー庁「第7次エネルギー基本計画」)

(※9) SAM(2040年予想):2024年時点の電力総供給量のうち、特別高圧・高圧電力が占める割合が64.5%であったことを踏まえ、2040年における再生可能エネルギーの総供給予測値に64.5%を乗じて算出(電力調査統計 電力需要実績 2023年度)

(※10) S0M(2040年予想):2021年のRE100加盟企業の自然エネルギー電力調達方法の内、コーポレートPPAが占める割合である35%であったことを踏まえ、2040年における法人需要家への再生可能エネルギーの供給量予想値に35%を乗じて算出(自然エネルギー財団「コーポレートPPA実践ガイドブック 2023年版」)

(※11) SOM:国内のオフサイトPPA事例の総計1,145MWを設備利用率15%でkWh換算(自然エネルギー財団「コーポレートPPA: 日本の最新動向 2024年版、2025年版」 )

③ その他

・調整力事業

 調整力とは、電力系統の安定性を保つために電力需要と電力供給のバランスを調整することを指します。再生可能エネルギーの導入が今後も増加することが見込まれておりますが、その課題として、再生可能エネルギーは天候等によって発電量が左右されるため、人為的に発電量をコントロールすることが難しい点が挙げられます。その結果、意図的に発電停止指示をする「出力制御」が2018年に九州で発生し始め、2023年には東京エリアを除く全国に拡大しました。そのため、再生可能エネルギー移行に伴う調整電源のニーズは拡大しております。

 過去10年の推移においても太陽光の発電する日中価格はJEPXにおける約定価格が下落(図1)しており、再生可能エネルギー導入拡大を背景として、需給調整力の一つである蓄電池へのニーズが増加していく見込み(図2)です。

(左:図1) JEPXにおける約定価格に関する単位時間(24時間を30分ごとに区切った48コマ)ごとの年間算術平均の比較より当社グループ作成

(右:図2) 経済産業省「GX実現に向けた投資促進策を具体化する分野別投資戦略 参考資料(蓄電池)」2023年12月22日より当社グループ作成

・脱炭素教育事業

 内閣府が2022年6月に実施した調査(※1)によると、脱炭素化に向けた取組みの課題として、約4割の企業が「必要なノウハウや人員が不足している」、約3割が「投資・運営コスト増への対応が困難である」と回答しています。当社グループはこうした課題を踏まえ、学習コンテンツ「GX navi」の作成に着手いたしました。試作段階において取引先企業へのヒアリングやアンケートを実施した結果、既存の学習媒体に対し「情報の網羅性、一覧性、鮮度」のいずれかに不満を感じている企業が多いことが明らかになりました。そこで、GX naviでは、理論から実践的な知識までを一元化し、実務担当者が必要とする情報を網羅的かつ最新の状態で学習できる仕組みを提供しております。なお脱炭素教育事業の事業規模を縮小させており、GX naviは2026年7月にサービスの終了を予定しております。

(※1) 内閣府「我が国企業の脱炭素化に向けた取組状況」(2022年6月)

(3)経営戦略

 当社グループは上述の経営環境を踏まえ、電力需要家が自ら電源調達ポートフォリオを選択することを可能にする「電力PF事業」、企業の再生可能エネルギー調達を支援し、非FIT制度下で発電者に求められる需給管理を提供する「再エネPF事業」、変動性電源増加に伴い求められる調整力を提供する調整力事業を含む「その他」の3つのセグメントで事業を展開しております。各セグメントにおける主要な戦略は以下の通りです。

① 電力PF事業

 電力PF事業として展開するDGPでは、需要家が主体的に電源調達ポートフォリオを選択できる環境を提供し、自由な電力取引ネットワークを形成しています。従来、需要家は限られた選択肢しかありませんでしたが、当プラットフォームは高いカスタマイズ性を実現しており、これが当事業の独自性と強みとなっています。また、新規顧客の獲得において、当社グループ人員による営業に加えて、代理店を活用した販路拡大も積極的に進めており、効率的に営業を展開しております。

 当社グループは、需要家に対して調達オプションを提示し営業活動を行っております。調達オプションには、JEPXから100%の電力を調達する手法、JEPXと価格固定電源からの調達を組み合わせる手法、JEPXと再生可能エネルギー電源からの調達を組み合わせる手法、及び市場、価格固定電源、再生可能エネルギー電源からの調達を組み合わせる手法があります。なお、それぞれの電源からの調達割合は自由に選択することが可能です。安価な市場価格を享受したい需要家は市場調達100%を選択し、市場価格高騰に備えたい需要家は価格固定電源からの調達を組み合わせることで調達価格を一部固定することを選択し、また、再生可能エネルギー導入が必要な需要家は再生可能エネルギー電源からの調達を組み合わせることを選択します。このように、個々の需要家によって最適な調達手法は異なるため、当社グループによるサービスを通じて、需要家に対して最適な電源調達オプションを提示し、DGPのシステムが様々な取引形態を可能としています。

 ポートフォリオ実績:取引形態別の契約容量(MW)

※取引形態別の契約容量は、請求月ベースの合算値

 DGPは、従来、電力会社が手作業で行っていた業務をAIを活用したシステムにより自動化し、オペレーションの効率化による価格競争力と、個々の需要家に合わせた電力取引が可能な柔軟性を実現しております。この基盤を活かし、当事業の成長戦略として、顧客基盤の拡大と市場調達+αの柔軟性のある取引形態を訴求し、売上の拡大に加え、顧客満足度のさらなる向上を目指してまいります。

 顧客基盤の拡大においては、当社グループとの直接契約に加え、代理店との連携については、商談機会の拡大及び契約件数の増加を図ってまいります。具体的には、代理店と共通の営業ツールの活用、オンボーディングの標準化及び教育・支援体制の強化による早期戦力化及び代理店のスコアリング制度導入による新陳代謝の促進等の打ち手により、代理店との連携を、積極的かつ効率的な運用とする方針です。

 市場調達+αについて、現状、当社グループの契約容量の7割以上を占める取引形態は、市場からの100%調達となります。しかし、電力市場のボラティリティが高まりつつある状況において、潜在的な価格ヘッジニーズは大きいと見ております。そのような中、当社グループは、プロダクトの深化を継続し、顧客満足度を向上させ継続率を高めてまいります。具体的には、マーケットレポートを活用したコスト削減効果の可視化による経済的メリットの訴求や、卸取引の自動約定等の実装によるユーザーエクスペリエンスの向上、卸の調達先多様化による選択肢の拡充により、DGP上におけるヘッジ取引を拡大させていく方針です。また、直販営業を強化し、需要家の電力調達と伴走者となることを目指します。直販営業体制は非再エネ、再エネといったプロダクト単位ではなく、顧客ごとに営業担当を配置する顧客専任性へ移行し、電力・再エネ調達方針策定から取引実行、アフターサービスまで、一気通貫したサービスを提供し、大口需要家の獲得、及び継続率の向上による顧客生涯価値の拡大を行ってまいります。

② 再エネPF事業

 再エネPF事業では、今後需要が高まると予測される分野への積極的な取り組みを推進して参ります。その一環として、再エネ証書の代理調達サービス「エコのはし」と「DGP」を利用した再生可能エネルギー取引の間をシームレスに接続する「RE Bridge」を新たにサービス開始しました。当社の各プロダクトの役割と位置付けとして、「エコのはし」はPPAに関心を持つ需要家のリード獲得を目的とし、まずは非化石証書を活用した環境価値取引を提供します。「RE Bridge」はPPA契約のマッチングを推進し、営業プロセスの効率化を図ります。また、「DGP」はPPA契約締結後の需給管理を提供し、多様な再生可能エネルギー取引の実行を図ります。これらのプロダクトを通じて、「エコのはし」→「RE Bridge」→「DGP」へと、需要家を段階的に誘導する仕組み(※1)を構築し、再生可能エネルギー取引をよりスムーズかつ効率的に進めることを目指しています。今後も、このようなカスタマージャーニーの支援、及びDGPの再生可能エネルギーのプロダクトの開発・改善を継続し、需要家が再生可能エネルギー導入をより容易に進められる環境を整備してまいります。

(※1)再エネ顧客のカスタマージャーニー

 また、非FIT/FIP電源の増加を見据え、旧一般電気事業者向けの再生可能エネルギー電力卸取引を拡大するため、競争力のある優良な発電事業者や発電設備の案件獲得を進め、顧客ニーズが高まると見込まれる環境価値の固定化や短期PPAに対応するため、これらの需要に応えられる発電家の発掘も進めてまいります。

 当社グループは、引き続き市場環境の変化に柔軟に対応し、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた再生可能エネルギー取引の拡大を推進してまいります。

③ その他

・調整力事業

 調整力事業では、市況に合わせて当社グループの競争優位の源泉であるアルゴリズムを改良し続けます。また、蓄電池運用に関する投資及びアグリゲーターとしての実績を積み上げるため、蓄電池メーカーとの取引を拡大し、各市場の効率的な運用を目指してまいります。さらに、供給力や調整力にかかわらず全ての電力を同時に約定させる仕組みの市場(同時市場)の創設が検討されている中で、こうした制度変更を迅速にサービス開発に反映させるよう努めます。

・脱炭素教育事業

 前述の通り事業規模を縮小させており、GX naviは2026年7月にサービスの終了を予定しております。

 以上のように、電力PF事業の拡大を維持しつつ、再エネPF事業の強化に伴うメニューの多様化、更にはプラットフォームの独自性を高める調整力事業などの新規事業の開始等により、追随を許さないメガプラットフォーマーを目指します。

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、持続的な事業拡大及び利益成長の観点から、財務関連指標としては成長率や利益率、取扱電力量などを重視しておりますが、重要な経営指標の目標達成状況を計るためのKPI(Key Performance Indicators)として以下を設定しております。

①売上高及び売上高成長率

②営業利益及び営業利益率

 ①について、売上高は、会社がどれだけ商品やサービスを売り上げたかを示す指標であり、売上高成長率(※1)は、その売上がどれだけ増加したかを示す重要な指標です。電力PF事業を中心とする売上高の拡大によって、更に会社が成長し、より多くのお客様への価値提供が可能と考えています。売上高は毎期成長を遂げており、前年比売上高成長率は2023年7月期は39%、2024年7月期は107%であります。

 ②について、営業利益の拡大が当社グループ事業の持続可能性をモニタリングする上で適していると考えています。また営業利益の絶対額だけでなく売上に対して不用意なコスト増とならないかを判断するため、営業利益率(※2)も注視しています。2022年7月期の黒字化後、2023年7月期に営業利益率は25%、2024年7月期には44%を達成しております。

 今後も引き続き電力PF事業を中心としたDGP関連の事業に取り組み、自由な電力取引ネットワークを拡大させていくことで、売上高、営業利益などの上昇を目指してまいります。

指標

2022年7月期

2023年7月期

2024年7月期

2025年7月期

売上高(百万円)

1,210

1,691

3,515

6,153

売上高成長率(%)(※1、3)

-

39

107

75

営業利益(百万円)

24

438

1,547

2,742

営業利益率(%)(※2)

2

25

44

44

(※1)「(当期売上高÷前期売上高-1)×100」により算定しております。

(※2)「営業利益÷売上高×100」により算出しております。

(※3)2022年7月期の売上高成長率は、2021年7月期の事業年度が決算期変更により2021年4月1日から2021年
 7月31日までの4ヶ月間となっているため、記載しておりません。

(※4)2025年7月期より連結決算に移行しておりますが、参考として、2024年7月期以前は単体業績を記載しております。また、2025年7月期の売上高成長率は、2024年7月期の単体売上高をもとに算出しております。

 なお、DGPの手数料売上高及び主要なKPIの四半期推移は下表の通りです。DGPによるシステム対応のため、契約容量・拠点数の急激な伸びにも対応が可能な体制を構築しております。今後も卸調達、中規模需要家(高圧500kW以上)の獲得、新規パートナーの開拓を継続する方針です。

・2023年7月期

(単位:百万円)

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

売上高

355

440

505

390

DGP手数料売上高(※1)

58

216

249

333

 DGP手数料売上高除く売上高

(※2)

296

223

255

56

営業利益

114

165

163

△4(※3)

・2024年7月期

(単位:百万円)

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

売上高

646

765

852

1,251

DGP手数料売上高(※1)

474

591

700

1,052

 DGP手数料売上高除く売上高

(※2)

172

173

152

198

営業利益

303

388

393

461

・2025年7月期

(単位:百万円)

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

売上高

1,687

1,620

1,482

1,362

DGP手数料売上高(※1)

1,224

1,199

1,165

1,203

 DGP手数料売上高除く売上高

(※2)

463

421

317

159

営業利益

973

736

663

368

(※1)売上高からDGP手数料売上高のみを抽出した数値

(※2)一般送配電事業者との精算額、Jクレジット販売、FIT非化石証書仲介手数料などが含まれる数値

(※3)営業損失は決算賞与支給による一過性のものや研究開発費、排出係数調整費が主な要因

(※4)2024年7月期以前は単体業績、2025年7月期は連結業績を記載

・2023年7月期

指標

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

GMV(取扱電力量:GWh)

51

127

153

204

需要家

50

123

148

200

再エネ発電家

1

4

5

4

契約容量(MW)(※1)

68

188

331

298

需要家

67

176

318

279

再エネ発電家

1

11

13

18

契約拠点数(数)(※2)

256

974

956

1,592

需要拠点数

247

946

923

1,515

再エネ発電拠点数

9

28

33

77

・2024年7月期

指標

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

GMV(取扱電力量:GWh)

271

319

364

542

需要家

264

309

338

502

再エネ発電家

7

10

27

40

契約容量(MW)(※1)

384

504

621

799

需要家

354

437

510

656

再エネ発電家

30

67

110

142

契約拠点数(数)(※2)

2,116

2,832

3,778

4,262

需要拠点数

1,946

2,508

3,222

3,578

再エネ発電拠点数

170

324

556

684

・2025年7月期

指標

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

GMV(取扱電力量:GWh)

640

628

656

753

需要家

600

585

584

655

再エネ発電家

40

43

72

98

契約容量(MW)(※1)

824

939

1,018

1,034

需要家

663

724

769

754

再エネ発電家

161

215

249

281

契約拠点数(数)(※2)

4,399

4,675

4,764

4,901

需要拠点数

3,515

3,570

3,430

3,456

再エネ発電拠点数

884

1,105

1,334

1,445

(※1)契約容量は託送月による合算値

(※2)当社グループと契約関係のない低圧の需要拠点を除く

(※3)2024年7月期以前は単体業績、2025年7月期は連結業績を記載

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 「(3)経営戦略」を実行していくうえで、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は次のとおりです。

① 長期安定的な顧客基盤の構築

 DGPの機能や価格の優位性を活かし、引き続き新規顧客獲得に邁進してまいります。現在、当社の売上高は特定の業界・企業に依存することなく分散しており、急激な売上変動が緩和される構成となっていると認識しております。

 月次売上高に占める手数料収入帯別の構成(社数、n=1,174)

 一方で電力PF事業における電力契約は単年契約が基本となっており、多くの契約企業が1年に一度の頻度で契約を見直しています。これは当社グループにとっての解約リスクであり、継続率を向上させることが事業の重要な課題となっています。この課題に対して、当社グループは化石電源との相対契約による固定価格調達や、再エネPF事業において推進しているコーポレートPPAなどの長期契約を増やし、プラットフォーム上での取引選択肢を豊かにすることで継続率の向上を図ります。これにより、ストック型のビジネスモデルへと移行し、安定した収益基盤を構築していく必要があると考えております。

② 発電・需要予測精度の向上

 DGPには、発電家と需要家の双方が存在し、電力系統を介して電力の供給及び調達が行われています。この取引の過程において、当社グループは電力系統の運用者に対して系統の想定使用容量である計画値を提出する必要があります。しかし、計画値と実際の使用量である実績値の差分であるインバランスは、当社グループと系統運用者との間でペナルティ性のある単価で精算されるため、インバランスリスクが主要な事業上のリスクとなっています。当社グループは、AIが実装されたシステムを活用し、発電拠点及び需要拠点ごとに発電量と需要量の予測を行っており、この予測に基づき計画値を提出しておりますが、インバランスリスクを低減するためには、需要予測及び発電予測の精度向上が課題です。当社グループはこれまでに年間通算でのインバランスの損失を回避し、顧客負担を軽減しておりますが、今後も予測技術の進化や新技術の積極的な活用、データ解析の精度向上を追求するとともに、極めて流動的な法制度・顧客ニーズに迅速に対応することで、さらなるリスク低減と業務効率化に努めてまいります。

③ 優秀な人材の確保・教育と社内管理体制の強化

 当社グループは、事業の特性上、優秀な人材の業務遂行能力が収益に大きく影響することを認識しております。電力業界特有の要件や規制に精通した人材、複雑なドメイン知識を持つインハウスエンジニア、金融のトップファーム出身者などの人材が在籍しており、一般送配電事業との電力精算額等の業務でAIを生かした需給予測や予測結果に対する金融スキルを生かした調整を実現できております。その他にも様々な業界に精通した専門家がバランスよく採用・定着できていることも強みであると当社グループは認識しております。

 そのため、競合他社との人材獲得競争の激化、コアメンバーの予期しない退職、採用と教育の遅れなどが、安定した業績の確保に障害となる可能性があると考えています。これに対応するため、当社グループはパフォーマンス評価に基づく賞与及びストックオプション等のインセンティブ制度を導入し、独自の教育研修体制を整備することにより、従業員の早期戦力化とスキルアップに努めております。また、人材の拡充と同時に企業規模に応じた社内管理体制の強化を行っていく方針です。業務マニュアル等の整備やコーポレート・ガバナンスの向上、予実管理の精緻化についても取り組みを加速していく必要があると考えております。

④ 財務健全性の最適化
 当社グループの電力PF事業の取引において、電力の一部をJEPXから調達しており、調達した電力の支払いは取引日の2営業日までに発生します。一方で需要家への債権の回収サイトは1か月以上であるため資金繰りに大きな影響を及ぼします。そのため、当社グループの財務上の重要な課題として、財務健全性の最適化が挙げられます。財務健全性とは流動資産科目(現金及び預金+売掛金+立替金+未収入金)―流動負債科目(買掛金+(短長)借入金+未払金)で算出しており、運転資本の効率性を評価する重要な指標です。
 財務健全性の最適化のため、当社グループが需給管理を行う再生可能エネルギーの発電所数を増やす取り組みやヘッジ取引の拡大など、JEPXにおける調達量を相対的に減らす施策を行ってまいります。

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