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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は1997年の創業以来、「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」という企業理念のもと、インターネット求人情報サイトの提供を通じ、顧客企業の人材採用とその活用を支援するとともに、求職者一人ひとりが生き生きと働くことができる環境の構築に貢献すべく事業に取り組んでおります。
2020年2月期より、「Labor force solution company」というビジョンのもと、人材サービスとDXサービスの提供を通じて、労働市場における諸課題を解決し、誰もが働く喜びと幸せを感じられる社会の実現を目指しています。
また、当社は、顕在化している社会課題のみならず、新たな社会課題に対しても積極的に取り組み、社会に貢献することを目指しております。新型コロナウイルス感染症拡大という危機下においては、ユーザー・顧客・パートナー・従業員に対して何ができるのかを常に考え、予測不能な事態にも迅速に対応できるよう、社内体制の構築に努め、持続可能な取り組みを行いました。
2021年7月、運営サイト上で「新型コロナワクチン接種の支援がある企業特集」を掲載するなど、「ワクチンインセンティブプロジェクト」を開始いたしました。特別休暇の付与、ワクチン接種者のシフト優先や時給アップなどワクチンインセンティブを積極的に付与する企業情報をユーザーに提供することで、ユーザー・顧客企業双方にとって安心・安全な職場づくりの実現に取り組みました。
また、2021年12月からは「ディップ・インセンティブ・プロジェクト」を開始しております。当社営業人員が顧客企業に、給与・時給の引き上げや採用お祝い金の支給等、従業員定着や採用力強化の施策を提案し、採用力を強化することで人手不足の解消を支援するとともに、好待遇の企業情報をユーザーにわかりやすく提供し、「働く人の待遇向上」の実現を図っております。
当社は、引き続き事業活動を通じて、持続的な成長と企業価値向上に努めるとともに、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社は、中長期的な事業成長に加え、利益の持続的な成長による株主価値の向上を図るため、売上高、営業利益、営業利益率、1株当たり当期純利益(EPS)に加え、自己資本利益率(ROE)を重視しております。
また、当社は株主の皆様への利益還元を経営の重要な課題のひとつとして位置づけております。配当につきましては、将来における企業成長のための投資及び経営環境の変化に対応するために必要な内部留保を行いつつ、中間・期末の年2回に分けて実施しております。なお、配当額の検討にあたっては、前期配当額を下限とし、配当性向50%を目安としております。
(3)経営環境
人材サービス事業は、アルバイト・パート・派遣求人メディア市場がコロナ禍前の水準まで回復していない中、当期の売上高はコロナ禍前の水準を超えて伸長いたしました。
また、DX事業は、営業推進体制の強化が奏功し、応募者との面接スケジュールの自動調整等を行う「面接コボット」や派遣会社の営業先リスト自動作成等の営業支援を行う「HRコボット」のほか、職場紹介動画をはじめとするバイトルの独自機能を活かして企業の採用ページを作成する「採用ページコボット」を中心としたストック商品の売上が伸長いたしました。
(4)中長期的な会社の経営戦略
当社は、2019年に掲げたビジョン「Labor force solution company」の実現に向け、2020年に中期経営戦略「dip2025」を策定しました。なお、今般のコロナ禍の収束が見通せるようになったことから、「dip2025」をアップデートし、新たな中期経営戦略「dip30th」の策定を開始しております。
(5)優先的に対処すべき課題
当社の中長期的な成長及び企業価値・株主価値の最大化に向けて優先的に対処すべき課題は以下のとおりであります。
① 運営事業の強化
人材サービス事業の強化には、営業人員の増強及び生産性向上、顧客企業の採用満足度の向上が重要であると認識しております。当社の営業人員は新卒入社の若手社員を中心に構成されており、当社営業人員による売上高の割合(直販比率)は約87%にのぼります。当社は、社員が最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、新入社員研修や階層別・管理職研修を精力的に実施しているほか、情熱を持って主体的に仕事に取り組める組織風土づくりに努めております。また、オンライン商談の実施や顧客の採用ニーズを適時にとらえる自社開発の営業ツールの活用、社内DXの推進等を通じ、営業人員の生産性向上を図っております。こうした取り組みを通じて成長した社員がフィロソフィーを体現し、当社の躍進をけん引していけるよう、引き続き人財基盤の強化に取り組んでまいります。
また、顧客企業の採用満足度を高めるためには、営業人員を通じた顧客に対する提案力の向上だけでなく、運営サイトのユーザー数拡大と応募数増加、求職者と顧客企業とのマッチングの精度向上が不可欠です。当社は求職者による当社サイト利用促進に効果的な広告宣伝活動を行うとともに、求職者の利便性向上に資する運営サイトの機能拡充・改善、掲載情報の質の向上と量の拡大に努めてまいります。
DX事業においては、2019年9月から、中堅・中小企業に特化した商品設計で、商材の機能を絞りパッケージ化したDXサービス「コボット」の提供を通じ、中堅・中小企業のDX化を支援しております。
引き続き、顧客基盤の拡大を推進するとともに、開発体制を強化し提供商品の品質向上に取り組んでまいります。また、商品導入後のカスタマーサクセス体制を一層強化し、継続的なサポートを実施することで、解約率の低下及びアップセルとクロスセルの拡大に努めてまいります。
② 新規事業の実現
当社は、インターネットが一般に普及し始めた頃から、他社に先駆けてインターネット媒体に特化した求人広告サービスを提供するとともに、インターネット媒体ならではの独自機能を次々に導入するなど、時代をリードするだけでなく「ユーザーファースト」を徹底的に追求したサービスの開発・提供を行ってまいりました。加えて、2020年2月期より「Labor force solution company」というビジョンのもと、事業を展開しております。
当社が「Labor force solution company」として、労働市場の諸課題の解決に貢献していくためには、既存の人材サービス事業、DX事業に留まらず、新規事業の立ち上げも検討し、実行していく必要があると認識しております。新規事業の創出によって事業ポートフォリオを拡充することで、より強固で安定した事業基盤の構築につながると考えております。引き続き、積極的に新規事業への取り組みを進めてまいります。
③ システムの強化
当社は、インターネットを通じてサービス提供を行っております。安定した事業運営のためには、サーバ等のハードウェアの増強、ウェブサイトに係るシステムのセキュリティや開発・保守管理体制の強化が極めて重要であると認識しております。今後も、適切な設備投資を行うことによってシステムの安定性を確保し、市場環境の変化に対応して継続的に運用体制を整備してまいります。
④ 個人情報保護と情報セキュリティの強化
当社は、個人情報を含むすべての情報を事業運営上最も大切な資産のひとつとして認識しております。その保護体制構築に向け、社内規程の厳格な運用、定期的な社内教育の実施、情報セキュリティマネジメントシステムの構築・維持向上に努めております。今後も引き続き、情報管理体制の強化を図ってまいります。
⑤ 組織体制の強化
当社は「人が全て、人が財産」という信念のもと、社員一人ひとりが社会を改善する存在となるため、継続して社員の育成及びマネジメント体制の強化に取り組んでおります。今後も、適切な管理体制の構築と意思決定のスピード向上のために、業務フローや意思決定プロセスの改善を図るとともに、内部統制システムの整備・充実についても継続的に取り組み、組織体制の強化を推進してまいります。
また、社員の健康管理は仕事の生産性や社員幸福度に直結する重要なテーマであると考えております。それは「病気にならないこと」だけでなく、「今よりもっと活力高く、幸せになること」を目指しており、その思いを込め“心と体を整える”コンセプトとして健康経営を推進しています。代表取締役社長 兼 CEOを健康経営責任者、代表取締役COOを健康経営推進責任者とし、直下に健康経営推進委員会(運営責任者 執行役員CHO)を設置しました。なお、同委員会での議論内容については、定期的に取締役会・経営会議に報告を行っております。また、従業員からの意見を反映した健康経営の取り組みとなることを目的に、各拠点から同委員会一員として「健康経営推進リーダー」を任命しております。
⑥ サステナブルな社会の実現への貢献
当社は、創業以来「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」という企業理念のもと、事業活動を通じて社会課題を解決することで、社会に貢献してまいりました。有期・無期を問わず雇用全般に関する社会課題や労働生産性向上への取り組みに加え、人材育成、女性活躍推進、人権保護、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)、そして気候変動等への対応を通じて、持続的な成長とさらなる企業価値の向上を目指します。これにより、社会課題の解決と持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
また、当社は、2019年から環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する活動内容について積極的な情報開示を行ってまいりました。その結果、ESGのグローバル基準を満たす日本企業を対象にした株価指数「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に3年連続で選定されました。
2022年3月には、FTSE Russellにより環境負荷の大きさ、脱炭素経済への移行促進や気候変動への取組みを評価する目的で新たに作成された「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に選定されました。2022年6月には、ESG投資の主要指数である「MSCIジャパン ESGセレクト・リーダーズ指数」、及び「MSCI日本株 女性活躍指数(WIN)」に初めて選定されました。これにより、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が投資の運用に採用している5つの指数全てに選定されました。なお、MSCIのESGレーティングにおいては、上位2番目の「AA」評価を獲得しました。
(6)サステナビリティに関する考え方及び取組
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであり、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。
(ⅰ)ガバナンス
当社では、代表取締役COOを議長とし、全執行役員から構成される「サステナビリティ推進会議」を設置し、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを行っています。サステナビリティ推進会議では、取締役会で決定されたサステナビリティ方針に基づき、戦略及び施策を策定して、四半期に一度、進捗を評価しています。また、同会議の議論内容及び施策の進捗状況については、取締役会が定期的に同推進会議より報告を受け、必要に応じて指示を行っています。なお、サステナビリティに関する施策の策定にあたっては、同推進会議からの提案のみならず、社員たちからの発案も審議しています。
■ サステナビリティ活動の推進体制
(ⅱ)戦略
当社は、ビジョン「Labor force solution company」をフィロソフィーに掲げ、人材サービスとDXサービスの提供を通して、労働市場の諸問題を解決し、誰もが働く喜びと幸せを感じられる社会を目指します。
ビジョン実現に向け、4項目の事業におけるマテリアリティと2項目の経営基盤におけるマテリアリティを特定しました。フィロソフィーのもと全社員が一丸となって、マテリアリティを軸に社会課題の解決に貢献することで、社会価値と経済価値を創出することを追求し、当社の持続的な企業価値向上を実現します。
マテリアリティ(詳細) | ||
事業における マテリアリティ | 多様な就業機会の創出 雇用ミスマッチの解消 | 多様な人材の就業と様々な働き方を創出し、人材の流動性を高めつつ、採用時のミスマッチを解消することで、個々人の力が最大限に発揮され、より良く処遇されることで、働く喜びと幸せを感じる就業者を増やします。 |
人材力・経済生産性の向上 働きがいのある職場づくり | 採用した人材のエンゲージメントとスキルを高め生産性とイノベーションの力を上げることで、企業の収益力を向上し、働く人の処遇の改善と働きがいに溢れた職場づくりを支援します。 | |
DEIの推進 人権の尊重 | 様々な個性を持つ人々が、互いを認め合い協働する職場、環境づくりを進め、ユーザー、顧客企業をはじめとした、ビジネスに関わる全ての人々の人権が尊重される事業活動を行います。 | |
気候危機への対応 | 気候危機を抑制するために、サプライチェーン全体でのCO₂排出量削減に取り組みます。気候危機による災害や事故にあった方々の就業支援に取り組みます。 | |
経営基盤における マテリアリティ | フィロソフィーで 結びつく人的資本の強化 | フィロソフィーに共感する人材を採用・育成し、そのエンゲージメントとロイヤリティ、幸福度を高めることで、一人ひとりの力が遺憾なく発揮されるように努めます。 |
ガバナンスの強化 | 社会価値と経済価値を創出し、持続的かつ高い成長を続けるために、経営の透明性と健全性を確保しつつ、さらなる意思決定及び業務執行の迅速化を図ります。 |
また、当社は、多様な個性を持つ社員一人ひとりの力を磨き、最大限に発揮できる環境をつくり、その幸福度を高めることをめざし、社員の育成・社内環境の整備を行っています。その取り組みをさらに強化していくため、以下の人材育成方針と社内環境整備方針を定めています。
(ⅲ)リスク管理
「サステナビリティ推進会議」で、サステナビリティに関するリスク・機会の再検討、並びに評価・分析を行っています。この内容は年一回実施されるリスクマップの見直し内容に反映され、全社的なリスクマネジメントへの統合を図っています。また、「サステナビリティ推進会議」は、特定されたリスクについて、対応策を検討し、取締役会への報告を実施しています。
(ⅳ)指標及び目標
「サステナビリティ推進会議」において、マテリアリティの各テーマに対する目標と取り組みの進捗を測るためのKPI策定の議論を進めています。現在、以下の非財務KPIの目標を設定し、目標達成に向けた取り組みを推進しています。
マテリアリティ | 指標 | 実績 (2023年2月期) | 目標 (2025年2月期) |
多様な就業機会の創出 雇用ミスマッチの解消 | 多様な人材、様々な働き方のニーズに応える 質の高い(※)求人案件数 (※)動画やしごと体験機能、dipさんからのメッセージを掲載。今後さらに質を高める施策を実施 | 133万件*1 (業界No.1) | 業界No.1を継続 |
社会インフラを支える医療・介護・保育の 求人案件数 | 51万件*1 (業界No.1) | 業界No.1を継続 | |
人材力・経済生産性の向上 働きがいのある職場づくり | 時給アップ等(※)の処遇改善を実現した 求人案件数 (※)時給アップ、継続勤務ボーナス・入社祝い金等 | 99万件*1 (業界No.1) | 100万件*1 |
DEIの推進 人権の尊重 | 「障がい者雇用支援キャンペーン」の充実 | 単発で実施 | 通年で実施 |
シニア(60歳以上)歓迎の求人案件数の拡大 | 31万件*1 | 40万件*1 | |
優良募集情報等提供事業者認定 | 取得 | 取得を継続 | |
労働法規に違反する案件数 | 0件 | 0件を継続 | |
人権侵害と思われる案件の掲載禁止 | 実施済 | 実施を継続 | |
気候危機への対応 | 全オフィスとデータセンターのGHG排出量 | 6月に開示予定 | 実質ゼロ |
フィロソフィーで 結びつく人的資本の強化 | エンゲージメントスコア(※) (※)当社ES(Employee Satisfaction)サーベイに おけるスコア | 3.84 (最高5) | 4.0 (最高5) |
新卒社員の管理職昇格者における女性比率 | 43.5% | 50% | |
管理職における女性比率 | 34.4% | 40% | |
女性の育児休業取得率 | 98.3% | 100% | |
復帰率 | 100% | 100% | |
男性の育児休業取得率 | 92.5%*2 | 100% | |
障がい者の雇用率 | 2.82% | 法定雇用率*2以上 | |
有給休暇取得率 | 59.4% | 80% | |
平均所定外労働時間 | 23.0時間/月 | 20時間以下/月 | |
離職率 | 12.6% | 10.0% | |
研修時間 新卒研修 新任管理職研修 次世代リーダー育成研修 | 326時間 52時間 143時間 | 継続的に拡充 | |
ガバナンスの強化 | 取締役会における独立役員の比率 | 2/3*3 | 2/3以上を継続 |
取締役会における女性の比率 | 55.6%*4 | 50% | |
重要な法令違反件数 | 0件 | 0件を継続 | |
コンプライアンス研修・テスト受講率 | 100% | 100%を継続 | |
投資家面談数 | 6月に開示予定 | 500件/年 |
*1:2月末
*2:育児・介護休業法に基づき、育児・介護休業法施行規則第71条の4第2号における育児休業等および育児目的休暇の取得割合を算出しております。
*3:民間企業の法定雇用率2.3%(2021年3月改訂)
*4:提出日(2023年5月25日)時点
(注)全オフィスとデータセンターのGHG排出量及び投資家面談数の2023年2月期実績は算定中であり、2023年6月にコーポレートサイトにて開示予定です。
2022年2月期の実績は以下のとおりであります。
・全オフィスとデータセンターのGHG排出量:567.7t-C2e/年
(Scope1+2(全オフィスの都市ガスと電気が対象))
・投資家面談数:245件/年
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