テイ・エス テック
【東証プライム:7313】「輸送用機器」
へ投稿
企業概要
本項には将来に関する事項が含まれていますが、当連結会計年度末現在において、当グループが判断したものです。
(1) 経営基本方針
当グループは「人材重視」「喜ばれる企業」を経営理念としています。
「人材重視」とは、「人こそ企業の決め手」と考え、働く者全てが「夢」と「情熱」をもって活き活きと働くことができる企業でありたいという私たちの想いを表しています。また、経営理念には、安全性のみならず、快適さや感動を与えられる製品を車室内空間(キャビン)全体で提供し、社会とともに持続的な成長を続けていくことで、全てのステークホルダーから「喜ばれる企業」であり続けるという強い意思が込められています。
経営理念はTSフィロソフィーとしてグループ全体に共有され、社員一人ひとりが実践していくことで、企業価値の向上に努めています。
(2) 中長期経営計画
当グループはこれまで蓄積してきたシート・内装品に関する多岐にわたる技術を礎に、変化する事業環境の中でさらなる事業成長を遂げるため、安心・安全・快適なキャビンを提供できる企業へと変革すべく、2030年ビジョンに「Innovative quality company - 新たな価値を創造し続ける -」を掲げています。
このビジョンの実現に向け新たに始まった第15次中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期、以下「第15次中期」)は、「ESG経営の実現」を経営方針とし、「成長戦略」「地域戦略」「機能戦略」からなる重点戦略をもって、一層の事業成長と資本効率の向上に取り組んでいます。
第15次中期の中間である2025年3月期は、中国市場での日系自動車メーカーの販売不振による生産台数の減少や世界的な原材料価格の高騰、労務費の上昇など、大変厳しい事業環境が続きました。加えて、米国の通商政策による先行きの不透明感など、新たな課題が次々と浮上しており、日々変化する事業環境への対応が急務となっています。
しかしながら、第15次中期の策定時に定めた重点戦略は、事業環境が激変する現在においても方向性は妥当であり、各戦略の諸施策を着実に推進していくことが、当グループの持続的成長につながっていきます。引き続き、未来の車室内空間を見据えた次世代技術開発をはじめ、主要客先からのさらなる商権獲得、新事業の拡大に向けた生産体制整備、ビジネスパートナーとのアライアンス活用など、成長に不可欠な領域へ経営資源を投入していきます。
なお、第15次中期開始時点で開示した2030年ビジョンに向けての中長期目標(KPI)については、当グループを取り巻く事業環境の変化に伴い、目標の前提となる生産台数予測が計画策定時点から大きく変動していることを受け、現在見直しを行っています。
(3) 対処すべき課題(重点取り組み)
① 成長戦略
1) キャビンコーディネート機能の獲得
長期視点では、EV化や自動運転車両の実現が着実に近づく中、キャビン全体をコーディネートし、お客さまやユーザーに新たな価値を提案できる企業への変革を加速させるべく、次世代車を見据えた商品開発に取り組んでいます。継続して取り組んでいる独自イベント「次世代車室内空間発表会」では、当グループの考えるこれまでにない車室内空間と、そこで過ごす新たな移動時間の提案を実際の車両の中に具現化し、さまざまな完成車メーカーの皆さまにご体験いただいています。そこから拾い上げたお客さまの声をタイムリーに研究開発に活かすことで、より魅力的な商品提案へとつなげていきます。
2) 新事業のさらなる拡大
当グループは本田技研工業グループ(以下、ホンダ)を主要客先として、着実な成長を遂げてきました。しかしながら、外部環境変化による収益減少リスクを減らすとともに、さらなる事業成長を遂げるためには、新たなお客さまの獲得とその商権拡大が急務です。全世界のお客さまをターゲットとし、各機種のモデルチェンジタイミングを見据えた戦略的な営業活動を展開していきます。
特に、今後も自動車需要の拡大が見込まれるインド市場においては、マルチ・スズキ・インディア社向けに四輪車用シートをはじめとした自動車部品を製造しているクリシュナグループと、シート開発および自動車部品製造の合弁会社の設立を決定しました。両社が培ってきた技術と豊富な経験を共有し、インド国内の自動車メーカーなどの新規顧客、新商権獲得に向け、強力に受注活動を推進していきます。
3) 主要客先シェア向上
新規顧客・新商権の獲得を図る一方、当グループにとってホンダビジネスは最も重要な事業基盤であることに変わりはなく、第15次中期もホンダビジネスのさらなる拡大を目指し、ホンダ向け四輪車用シートシェア向上を図っていきます。
シェア向上には、既存商権の確実な受注と新商権による拡販が不可欠です。激変する自動車業界の環境下においても、開発初期段階からお客さまとの魅力商品の共創に取り組み、確実な商権獲得につなげ一層のシェア向上を目指します。
② 地域戦略
1) 北米収益体質のV字回復
米州地域では、その市場の大きさからグループ最大の売上収益を計上する一方、変則生産から生じる労務費や生産ロスの増加、原材料価格の高騰など、さまざまな要因から収益性に課題を残しています。収益のV字回復に向けては、生産工程の自動化や生産変動に柔軟に対応できる自動立体倉庫システムなどの設備投資、調達構造の再編などに取り組んでおり、着実な体質改善が図られています。引き続き、さらなる収益体質への変革を目指し、徹底した原価低減に取り組んでいきます。
2) 中国事業戦略の再構築
中国地域では、新興EVメーカーの勢力拡大により、日系自動車メーカーは苦戦を強いられ、非常に厳しい事業環境が続いています。そのような中でも、当グループの収益性を支えるべく、生産要員の最適化や調達体制の見直しにより、収益維持を図ります。また、新たなビジネスパートナーとの連携を活かし、長安汽車グループなど新たなお客さまからの商権を獲得しました。これらを皮切りに、さらなる事業拡大につなげ、激化する中国市場での勝ち残りを目指します。
3) 欧州新事業の戦略的拡大
「新事業のさらなる拡大」に向け、本格稼働を開始したポーランド四輪車用シート生産会社は、その立地を活かし、周囲に点在する欧州自動車メーカーへ向け価格競争力のある製品供給を可能とします。日本の各機能本部とドイツ営業・開発拠点が連携を図り、これらの利点を活かした欧州自動車メーカーへの積極的な営業活動により、新規顧客・新商権を着実に獲得していくことで、より一層の拡販を目指します。
③ 機能戦略
1) サプライチェーンの再構築
EV化に伴う利益構造の変化や新興メーカーの台頭など、自動車業界を取り巻く環境は大きく変化しており、新規商権獲得に向けては、コスト競争力ある部品を安定的に供給できるサプライチェーンの確立が急務です。そのため、部品生産アロケーションの見直しや現地ローカルメーカーの採用拡大などによる原価低減、取引先と連携したCO₂排出量削減など、収益性を兼ね備えたサステナブルなサプライチェーンの構築を目指します。
2) 環境技術開発の推進強化
これからの事業成長には環境負荷を回避・低減する“環境技術”が重要となります。従来から推進する軽量化技術はもとより、サステナブルマテリアル※1への置き換え技術の構築を図ります。また、リサイクル材やスクラップ鉄を使った電炉鋼材加工技術の確立、製品自体のリサイクル促進を目指し、モノマテリアル※2化や製品の易解体構造の実現など、環境技術をいち早く製品として世に送り出すことで、一層の事業成長と持続可能な社会への貢献に努めます。
※1継続的に利用可能な資源から得られ、ライフサイクル全体で環境への影響が小さい原材料
※2「単一素材」の意味。製品や部品が単一の素材でできていることでリサイクル性が向上する
3) 高効率生産体制の構築
他社を凌駕する高効率な生産体制の構築により労働生産性を高めていくため、徹底した生産の自動化やAI技術を活用した生産ラインの進化などを推進していきます。また、サステナビリティへの取り組みとして、省エネ技術活用による電力使用量削減や環境負荷を低減する生産技術の導入を図り、持続可能な“モノづくり”へと進化させていきます。
④ 資本効率の向上
当グループは、盤石な財務基盤を持つ一方、積み上げた資本をいかに効率的に活用していくかが重要な課題であると捉えています。財務安全性は維持しつつ、資本構成を改善し、キャッシュをより有益な資産へアロケーションしていくべく、重点戦略に基づく積極的な成長投資を行っていきます。
また、第15次中期は、株主還元方針として「業績に左右されない、継続的かつ安定的な還元の実施」を基本方針と定め、配当と自己株式に関する具体的な指標をもって一層の株主還元を行います。なお、2025年3月期には約150億円規模の自己株式取得を実施し、加えて、2025年5月14日に市場買付けによる約50億円規模の自己株式の取得および自己株式12,000,000株の消却を公表しています。
今後も、成長投資による持続的成長と株主還元の拡充により、資本効率の向上へとつなげていきます。
⑤ サステナビリティ取り組みの強化
当グループが持続的な成長を遂げるためには、企業としての社会的責任を積極的に果たし、事業活動を通じて社会課題に取り組んでいくことが不可欠です。
持続可能な社会の実現に向けて「当グループ」と「ステークホルダー」にとっての重要性の両軸から、優先的に取り組んでいくべきマテリアリティ(重要課題)を特定し、中長期的な視点で目標設定しています。社会領域では、未来の車室内空間を想定した研究開発や環境対応技術の開発成果を、独自イベント「次世代車室内空間発表会2024」において、多くの完成車メーカーに提案いたしました。
環境領域においては、省エネルギー施策の水平展開や、再生可能エネルギーの導入拡大に取り組みました。加えて、さらなるサステナビリティ意識の醸成を目的に、自然保護団体への寄付制度「テイ・エス テック基金」を創設し、社員と会社が一体となり、自然を守る活動の支援を推進しています。
企業基盤領域では、多様な人材の確保や育成はもちろん、社員のエンゲージメント向上に向けた取り組みを強化しています。毎年実施しているエンゲージメント調査を活用し、各機能本部の責任者が認識する課題や解決に向けた施策を経営陣に共有することで、現場任せで終わらせることなく、効果的な施策につなげています。
引き続き、第15次中期はマテリアリティへの取り組みをさらに加速し、企業価値向上と持続的な成長を実現していきます。特定したマテリアリティおよびKPIについては、「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組(2)戦略並びに指標及び目標」に記載のとおりです。
- 検索
- 業種別業績ランキング