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【東証プライム:4577】「医薬品」
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企業概要
(1)会社の経営の基本方針
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、顧客及びステークホルダーから選ばれ続ける企業を目指し、社是、経営理念、行動指針のもと、法令を遵守し、地球環境への配慮も行いながら、高品質な医薬品の安定供給に努め、人々の健やかな生活に貢献することを願って事業活動を展開しております。今後においては、更なる品質の向上を図るとともに、医薬品の新たな分野、新たな技術への挑戦を行い、世界を舞台として優れた医薬品を提供する企業に成長することを目指しております。
(社是)
創造 闘志 誠実
一、アイデアをもち考える人間
一、実行力と根性のある人間
一、自分は企業を守る人間
(経営理念)
社員が「楽しい会社、楽しい仕事」を実感できる働きやすい職場を作り、健康な社会作りに貢献し、選ばれ続ける企業を目指します。
・「楽しい会社」とは
社員自らの成長と会社の成長が連動し、いきいきと楽しく仕事ができる会社
・「楽しい仕事」とは
病を治したい患者さんや健康を求めるお客様に役立つように、社会に対して製品を供給する喜びを味わえる仕事
(行動指針)
経営理念のもと、選ばれ続ける企業を目指します。
・誠実な姿勢 法令を遵守し、公正、公平に活動します
・みなさまからの信頼 更なる品質の向上とお客さまへの確実な供給を行います
・社会への貢献 日々の活動を通し、みなさまを支えます
・環境との調和 環境に配慮し、地球とともに歩みます
・更なる挑戦 新たな分野、新たな技術へ挑戦します
・世界への飛躍 世界を舞台として優れた医薬品を提供します
(2)中長期的な会社の経営戦略
医薬品業界・ジェネリック医薬品業界を取り巻く環境は、毎年行われる薬価改定やOTC類似薬の保険給付の見直しなどの薬剤費抑制策に加え、円安を主因とした原材料費の増加やエネルギー価格の高騰、人財確保の競争激化に伴う人件費の増加など、厳しい環境が続くものと想定されます。
こうした状況下、当社グループでは中期経営計画DTP2027(Daito Transformation Plan 2027)のもと、断固たる決意と覚悟を持って、業績の改善と企業価値の向上のため、引き続き「既存ビジネスの効率化」、「中国ビジネスの強化」、「新規ビジネスへの参入」、「PBR1倍割れ対策と資本配分の高度化」、「人的資本への投資」の5つの柱を積極果敢に推進して参ります。
2026年5月期の連結業績につきましては、売上高52,500百万円(前期比3.7%増)、営業利益3,000百万円(前期比14.5%増)、経常利益3,000百万円(前期比10.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては2,300百万円(前期比20.5%増)を予想しております。
(*2026年5月期の為替レートは150円/1㌦を想定)
(3)目標とする経営指標
当社グループは、持続的な成長を支えるための本源的な収益力の強化と安定的且つ積極的な株主還元を図る観点から、重要な経営指標として、売上高、EBITDA、一気通貫比率※1、CCC※2、ROIC※3、ROE、DOE※4を採用しております。
※1 : [ 開発中の自社製造または自社製販ジェネリック品目のうちグループ内原薬を使っている成分数 ] /
[ 開発中の自社製造または自社製販ジェネリック品目 成分数 ]
※2 : 債権流動化影響を除いた資金化日数
※3 : (税引後営業利益+持分法投資損益) / (期首期末平均有利子負債+期首期末平均株主資本)
※4 : 配当金総額 / 期末株主資本
(4)経営環境
医薬品業界におきましては、2024年9月の社会保障審議会医療保険部会において、「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」が策定され、「主目標:医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを2029年度末までに全ての都道府県で80%以上」(旧ロードマップから継続)、「副次目標:後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」が掲げられました。また、2024年10月からは、ジェネリック医薬品のある長期収載品を患者様が希望された場合は、患者様に追加で金銭的負担を求める「選定療養」が導入され、ジェネリック医薬品の数量シェアは更に高まっております。
一方で、後発医薬品を中心とする供給不安は長期化しており、過当競争状態の是正、過度な低価格競争からの脱却、規模の経済が生かせる企業規模へ再編していくための環境整備など、多くの課題を抱えております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
2025年5月期から2027年5月期を対象年度とする中期経営計画DTP2027(Daito Transformation Plan 2027(注1)) の1期目の終了に際し、当社は、当社グループを取り巻く最新の事業環境及び課題を下記の通りと認識しております。
<政策及び規制面>
・毎年薬価改定に加え、長期収載品の選定療養の導入やOTC類似薬の保険給付の見直しなどの医療費及び薬剤費抑制策の更なる進展
・薬機法等の一部改正に伴う品質及び安全性の確保と安定供給体制の強化(後発医薬品製造基盤整備基金の設置)
・薬価削除プロセスの簡素化と品目統合に係る薬事手続きの1.5ヵ月への短縮
<業界動向>
・長期収載品の選定療養によるジェネリック医薬品シェアの上昇と長期収載品の承継等の加速
・外資系企業のジェネリック医薬品ビジネス縮小(撤退)と政府の財政支援による業界再編機運の高まり
・先発薬メーカーが持つ特許の保護範囲を広く認める司法判断の出現と特許戦略の難易度の上昇
・ジェネリックビジネスのピークアウトと、新領域(オーファンドラッグ開発、海外、医療デバイス等)への参入の増加
<金融資本市場>
・東証による資本市場改革に伴うエクイティ・ガバナンスへのシフトの加速
・トランプ関税による米ドル安や中東情勢の緊迫化によるエネルギー価格の乱高下
・コストプッシュインフレへの対応のための日銀の利上げと資金調達コストの上昇
また、当社グループは、当社グループの相対的優位性は、大きく下記の要素にあると認識しております。
・原薬から製剤までの「一貫製造」
・一貫製造体制を日本・中国の両国に有することによる「日中連携」
・FDA(米国食品医薬品局)査察を継続的にクリアする業界トップクラスの「品質管理体制」
・上記品質管理体制に裏付けられた高い「安定供給力」
当社としては、既述のように刻々と変わりゆく経営環境の中でも、当社グループの相対的優位性に更なる磨きをかけながら、引き続き中期経営計画DTP2027で掲げた事業戦略の5つの柱(①既存ビジネスの効率化、②中国ビジネスの強化、③新規ビジネスへの参入、④PBR1倍割れ対策と資本配分の高度化、⑤人的資本への投資)を着実、且つ強力に推進していくことが、持続的な成長と企業価値の向上のためには不可欠であるとの判断の下、夫々の事業戦略において、今後も下記の取り組みを継続して参ります。
① 既存ビジネスの効率化
これまで当社グループは「全方位ビジネス」を掲げ、ジェネリック医薬品を中心に多種多様の医薬品・原薬を生産することにより、規模拡大を目指してまいりました。この「全方位ビジネス」は売上高の増加や、経営リスク分散の観点からは有効な施策ではありましたが、その反面、多くの製品とビジネスモデルによって利益構造の把握が複雑化し、また、各部署において応急的に増員が続く状況を招いているという課題があります。
本課題解決のために、2024年9月に社長直轄の「ポートフォリオマネジメント部」(以下「PM部」)を新設いたしました。このPM部が中心となって、既存製品に対する「選択と集中」を推進し、空いた生産キャパシティ、人的リソースにて高付加価値製品を生産することにより利益率の向上を目指します。また、「適切な需給バランスの維持」、「生産効率の最適化と廃棄の最小化」、「チーム間のコラボレーション」などを目的としたS&OP(Sales & Operations Planning)プロセスを導入いたしました。更には、2025年6月、Meiji Seika ファルマ株式会社との間で「新・コンソーシアム構想」に基づき、品目統合をはじめとした企業間連携に向けた協議を開始しました。本構想に参画する複数の後発医薬品企業による品目毎の生産拠点の集約等を推し進め、生産性と安定供給力を向上させると共に、相互に品質管理体制を点検・確認することで、後発医薬品業界全体における品質管理体制の底上げも図って参ります。
② 中国ビジネスの強化
当社グループは、下表のとおり、およそ15年に亘って中国企業への出資を通じて、中国における原薬・製剤の生産ビジネスを推進して参りました。そして、当社グループはこの日中連携の優位性を活かし、中国において「日本品質・中国コスト」の原薬・製剤を生産し、これを日本市場にて販売しております。
出資年 | 出資先企業名 | 業態 |
2010年 | 千輝薬業(安徽)有限責任公司 | 原薬メーカー |
2012年 | 安徽微納生命科学技術開発有限公司 | 製剤メーカー |
2019年 | 安徽鼎旺医薬有限公司 | 原薬メーカー |
従来、中国のジェネリック医薬品市場は、その薬事承認ルールの独自性及び曖昧さと、低価格メーカーの乱立ゆえに、日本企業の進出は困難とされておりました。しかし、近年になって承認ルールが明確化され、また、中国政府が導入した国営病院での集中購買制度において、品質基準、安定供給体制、環境規制対応が強く求められるようになった結果、当社グループが15年かけて培ってきた「日本品質・中国コスト」「潤沢な現地生産リソースに由来する安定供給体制」「環境規制対応」という強みがダイレクトに中国市場で活かせる状況に変化してきております。
この状況を踏まえ、当社の関連会社である千輝薬業及び鼎旺医薬との更なる連携を通じて、中国市場での原薬・製剤の販売を強化して参ります。
現在、子会社の大桐製薬(中国)有限責任公司では、2025年5月に初めて、自社ジェネリック製剤である疼痛治療剤「プレガバリンカプセル」を同国の市場向けに出荷し、順調に追加の注文を頂いております。更に1品目の自社ジェネリック製剤と複数品目の受託品を中国当局へ承認申請しております。2027年5月期までに約11成分の中国国内向けジェネリック医薬品の受託製造を検討中であり、グループ内での収益の柱の一つとなることが期待されております。
③ 新規ビジネスへの参入 (オーファン新薬アライアンス)
これまでの当社グループの成長を支えてきた国内ジェネリックビジネスは、政府目標である数量置換率80%に達し、将来の成長が鈍化することが予測される中、毎年薬価改定に伴う単価の下落による売上、利益率の低下や、生物学的同等性試験の難易度及び費用の上昇などにより、安定して利益を上げ続けることが困難になりつつあります。
そこで、当社グループでは「新規ビジネスの参入」の一形態として、オーファンドラッグの開発・受託の分野を開拓して参ります。
オーファンドラッグは国内外で大きな市場の伸びが期待され、ジェネリックに比較して薬価の下落が発生しづらいという特長があります。
当社グループの米国FDA対応のノウハウを生かし、パートナー企業より、日米欧の市場を視野に入れた製品の開発・受託を請け負います。パートナー企業の1社であるノーベルファーマ株式会社とは既に「パートナー関係構築に向けた協定」を締結しておりますが、2025年5月には第1号案件として、多系統萎縮症(MSA)を適応症とする、ユビキノール含有製剤「NPC-29」の開発基本契約を締結いたしました。本製剤を一刻も早く患者様にお届けできるよう尽力して参るとともに、第2号案件の協議も鋭意進めており、積極的に開発・推進して参ります。
④ PBR1倍割れ対策と資本配分の高度化
当社グループの株価はPBR1倍割れの状態が継続しており、資本市場からの信頼と評価は高いものとは言えない状況です。その原因の1つに、社内の資本コストに関する意識が高いとは言えない状況にあったことが挙げられます。
この状況を重く受け止め、当社グループでは、各種投資案件の属性やリスクに応じて資本コストも含めたハードルレート(収益性基準)を定め、投資評価委員会においてCEOやCFO、経営企画部長等も交えて経営会議への上程の是非を判断するなど、投資に関わるガバナンスの高度化を図って参ります。
また、DTP2027においては、価値の創造に繋がる数値目標である KGI (Key Goal Indicator)を設定、対外的に公表するとともに、社内各事業本部に、これらのKGIの達成のために必要な KPI (Key Performance Indicator)を設定し、社内目標として活動しております。
なお、KGIのうち、資本生産性指標としてはROICとROEを採用しております。
2025年5月期における株主還元の強化策としては、当社普通株式300,000株(株式分割前)を市場から取得し、2025年6月30日付で消却しております。また2026年5月期に向けて、既に1株当たり配当金の引き上げに加えて、株主優待制度の導入を発表しております。引続き安定的かつ積極的な株主の皆様への還元を通じ、企業価値の向上とPBR1倍割れ対策に努めて参ります。
⑤ 人的資本への投資
当社グループでは、DTP2027 の①~④の課題解決を支える基礎として、人的資本への投資を、最後の事業戦略の柱として設定しております。
当社グループの最大拠点である富山県では人口が減少し、採用競争が激化する傾向にあり「選ばれない企業」は将来的に事業の継続が困難になることが懸念されます。
こうした状況下、当社では2025年度において、富山県内主要企業でトップクラスの賃上げを実施しました。また、エンゲージメントサーベイおよび全部門でのオフサイトミーティングを開始し、新たなe-ラーニング「Daito Learning」を導入するなど、従業員の満足度および意識向上に努めて参りました。引き続き、職場環境の改善、従業員の定着率の向上に努めて参ります。
(注1)詳細は当社Webサイトに掲載の「2024年7月17日付 2024年5月期 決算説明会資料」をご覧ください。
https://www.daitonet.co.jp/ir/library.html
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