企業ソラコム東証:147A】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

今後もIoTの導入は加速し、インターネットに接続されるデバイス数は飛躍的に増加すると予想されます。それに伴いIoTのテクノロジーはあらゆる会社にとって重要性が高まることが推察されます。そのような環境の中、当社グループはIoTの導入におけるハードルを下げ、多様な顧客が利用可能な汎用性の高いプラットフォームを提供することで、ミッションとして掲げる「テクノロジーの民主化」に向けて取組んでまいります。当社グループは、「世界中のヒトとモノをつなげ共鳴する社会へ」のビジョンを実現するために、プロダクトポートフォリオの拡充によってMVNO(仮想移動体通信事業者)としてグローバルでNo.1のIoT プラットフォームを目指します。

(2)経営戦略等

当社グループは、上記の経営方針の下、さらなる成長の実現に向けて、顧客のフィードバックに基づきIoTプラットフォームに継続的機能強化を行い、リカーリング収益の持続的な成長を実現します。さらに、グローバル展開に向けた販売体制の強化、大規模案件の安定的な獲得、戦略的アライアンスの推進を基本的な戦略としております。

(a)リカーリング収益の持続的な成長

 当社グループは、IoTサービスを始める顧客企業に向けて包括的なサービスを提供しております。具体的には、IoTデバイスやIoT SIM、IoTに必要な通信回線、IoTサービスに求められるデータ保存や可視化アプリケーション、ネットワークサービス等をプラットフォームサービスとして提供しております。当社プラットフォームでは、Web上で提供するIoTストアから、IoT SIMやデバイスを1個単位で購入し、すぐにサービス利用を開始することができるため、顧客企業が自らサービス利用を開始することができるセルフサービスモデル型で事業を展開しております。Web広告やイベントを通じて当社プラットフォームの認知度を上げるとともに、IoTの導入ハードルを下げることで、幅広いセルフサービスアカウント(注1)の獲得を目指しており、セルフサービスアカウント数の増加がひとつの成長ドライバーとなります。

 上記のセルフサービスアカウント数の増加に加えて、メジャーアカウント(注2)への転換も当社グループの成長ドライバーになると考えております。当社グループにおいては、顧客によるIoTの導入規模や成長スピード等のポテンシャルを考慮の上でサービス導入や将来の取引拡大にかかるサポートを要すると判断した場合には、IoTに精通したアカウントマネージャーが対応することとしており、さらに、顧客ニーズに応じてスムーズなサービス導入及び立ち上げを促進するプロフェッショナルサービスを提供しております。当社プラットフォームを利用するセルフサービスアカウントが成長することで、契約回線数並びにデータ通信量が拡大するケースが多く、当社プラットフォームの利用料が増加し、メジャーアカウントへ成長する事例も増えております。結果として、2024年3月期におけるリカーリング収益のNRR(注3)は123%の伸びとなっております。

 また、これらのメジャーアカウントの成長による成功事例が、当社プラットフォームのサービスの評価や認知向上に繋がり拡散されることによるネットワーク効果から、更なるセルフサービスアカウントの獲得に結び付くという好循環を生み出しているものと認識しております。さらに、当該ネットワーク効果は、IoTに精通しているアカウントマネージャーが比較的大規模にIoT事業を始める顧客に直接アプローチすることで、新規のメジャーアカウントの獲得にも寄与しており、2024年3月末で課金アカウントは8,000個以上と継続的に増加しております。

なお、IoT領域における特性に加え上記のアカウントマネージャーのフォローにより、2024年3月末の主要顧客の年間解約率は0.3%(注4)に留まっております。

 当社プラットフォームは、5G/6G、衛星通信、生成AI、などのテクノロジーの進化、異なる業種での顧客利用にあわせ、今後も継続して新規機能を追加していく予定であり、リカーリング収益の持続的な成長が見込まれます。

(注1)セルフサービスアカウントとは、当社のアカウントマネージャーが担当していない比較的小規模なアカウントをいいます。

(注2)メジャーアカウントとは、規模や将来性等を踏まえ当社のアカウントマネージャーが担当しているアカウントをいいます。

(注3)Net Retention Rate の略称。既存顧客のリカーリング収益の継続率を表し、以下の式で算出しております。NRR=(前期以前に獲得した顧客の当期リカーリング収益)÷(当該顧客の前期リカーリング収益)。

(注4)2024年3月31日時点。年間解約率 = (12か月間リカーリング収益の発生していないアカウント数) ÷ (年間1,000千円以上のリカーリング収益が発生しており、かつ、12か月間以上リカーリング収益の発生していない期間が存在しないアカウント数)

(b) グローバル展開に向けた販売体制の強化

当社プラットフォームは、グローバルに提供できるBtoBプロダクトであり、日米欧の世界三拠点で販売カバレッジに対応した体制を構築しております。実際、世界標準の通信規格とメガクラウドに準拠する当社グループのサービスは、米国や欧州を含め海外で既にプロダクトマーケットフィットを確認しております。海外拠点においては、営業人員拡充による販売体制強化を継続しており、顧客獲得においては米国拠点、欧州拠点ごとにその地域の顧客や市場に最適化したアプローチをとっております。例えば、米国拠点においてはより中堅・中小企業やスタートアップ企業などを対象としてセルフサービスアカウントの獲得に注力するとともに、メジャーアカウントへ成長するサポートに注力しております。一方で、欧州拠点においては新規のメジャーアカウントとなりうる有望な見込み顧客への直接アプローチにより顧客開拓に注力しております。今後も、米国拠点と欧州拠点のそれぞれの販売体制構築に向けたリソース拡充に努めてまいります。

(c) 大規模案件の安定的な獲得

当社プラットフォームは、主力サービスであるIoT通信の「SORACOM Air」をはじめとした多くのサービスを提供しております。様々な業種の顧客においてIoTの導入が進むにつれて、多様なニーズ、事業機会が生まれると想定されます。今後のさらなる成長に向けて、顧客のフィードバックに基づくサービス開発を通じてIoTプラットフォームサービスを継続的に拡充させるほか、各産業で必要とされるサービスを顧客の業務の流れやビジネス展開に沿った形で提供する取組みにより、また、クラウドカメラやIoTストア等のデバイス販売分野においても一時的な売上だけではなく、同様に顧客のニーズやビジネス展開に沿った提案をすることで、通信サービスの継続利用につなげ、事業の方向性を拡大し、収益機会を最大化してまいります。

このように、当社グループは、IoTの導入を進める多くの業界へ水平に展開してきましたが、いくつかの業界においては、その業界に特化したIoTデバイスやIoT関連サービスの開発を共に行うことで、深い業界知識と様々なニーズに対応できる技術を蓄積しております。今後は、その業界特有のIoTに関する課題を解決するサービスを開発・提供するといった垂直的な展開を進めていくことによって、大規模案件の安定的な獲得につなげ、さらなる収益の向上に向けて取り組んでまいります。

(d) 戦略的アライアンスの強化

 当社グループは主要株主であるKDDI株式会社と戦略的アライアンスを組み、コネクテッドカー分野に取り組んでおります。グローバルなコネクテッドカーは、海外の地域キャリアと連携する必要があり、当社プラットフォームの海外通信キャリア連携の強みの活きる分野と考えております。また、2024年2月にスズキ株式会社ともモビリティサービス分野のIoT先端技術の活用に向けた合意書を締結しております。一方で、通信キャリアとの連携において、KDDI株式会社へのIoT通信管理プラットフォームの開発・導入支援等も既に開始しております。今後、当社グループのテクノロジーを海外の他通信会社へ提供し、売上成長、及びグローバルスタンダードの確立も期待できるものと考えております。このような戦略的アライアンスを推進していくことによって、さらなる成長の実現を目指します。

(3)経営環境

  ①市場環境

 当社グループが展開するIoTプラットフォーム事業は、IoTプラットフォーム市場やIoT関連のサービス市場のうち、コネクティビティ、サービス、ソフトウェア及びハードウェアを対象市場として想定しております。このIoT市場は、技術革新の波に乗り、今後も年間二桁成長率を維持することが予想されており、進化する生成AIや5Gなどのテクノロジーは、コネクテッドカーやスマートシティといった多岐にわたる業界においてIoTの展開を促進することが期待されています。また、IoTデータの蓄積が進むにつれて、その価値はさらに増大すると予測されており、2026年時点で全世界でそれぞれコネクティビティ市場は約787億ドル(2022年時点では約589億ドル)、サービス市場は約4,275億ドル、ソフトウェア市場は約2,168億ドル及びハードウェア市場は約3,714億ドルと、合計で約1兆946億ドルの市場規模を見込んでおります(注)。当社グループが注力するコネクティビティ市場はもちろんのこと、ソフトウェアやサービスを含む広範な領域で成長機会があります。

(注)IoTプラットフォーム市場やIoT関連のサービス市場規模は、IoT市場のうち、IoT Platform、Cellular及びServicesの市場規模の合計(米国ドル)により推定しております。(出典:IDC“IDC’s Worldwide Internet of Things Spending Guide”(2023年5月))

   ② 競争優位性について

 当社グループは、IoTに必要な通信回線やデバイスを提供するとともに、インターフェースやアプリケーション、ネットワークサービス等、IoTを導入・運用する際に必要となる多種多様な機能をワンストップで利用可能なプラットフォームを提供しております。国内外の移動通信体事業者(MNO)より通信回線(携帯電話網)を調達し、サービスを提供するとともに、必要に応じて経営資源とノウハウを補完し合えるエコシステムパートナーとの協業を図り、常に変化する市場環境と多様化する顧客ニーズにスピード感をもって的確に対処することで、競合サービスとは異なる優位性を構築しております。

   ③ 事業・サービスの概要について

 当社の主要なサービスの内容につきましては、「第1 企業の概況 3 事業の内容(2)事業・サービスの概要」に記載しております。

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社プラットフォームは従量課金モデルで提供しており、リカーリング収益の拡大を経営上の目標としております。その達成状況を判断する上で、契約回線数や課金アカウント数を重要な指標としております。リカーリング収益は経常的に得られる利用料の合計額であり、経営上の目標の達成状況を把握するものです。リカーリング収益を拡大させるためには特に課金アカウント数(注1)とリカーリング収益のARPA(注2)の拡大が重要と考えております。

(注1)課金アカウント数は、1ヶ月の間にリカーリング収益が発生した口座数をいいます。同一の顧客企業等が部署や業務別に複数の口座を有する場合が含まれております。

(注2)Average Revenue Per Accountの略称。1アカウントあたりの平均売上金額を示す指標を意味します。

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題

IoTプラットフォーム市場やIoT関連のサービス市場は、事業環境の変化が早く、顧客企業のニーズが絶えず変化しております。当社グループは直面する課題に対処するだけではなく、今後さらなる成長を実現するために、以下の取組みを行ってまいります。

① 優秀な人材の採用と育成

当社グループの持続的な成長のためには、多岐にわたる経歴を持つ優秀な人材を採用し、営業体制や開発体制、管理体制等を整備していくことが重要であると捉えております。特に、イノベーションによりIoTの力で顧客の課題解決並びに事業成長を支援できるIoTプラットフォームを開発・提供していくことが重要と考えており、顧客ニーズを適切に把握できる営業や開発の人員の強化が求められております。当社グループのミッションや事業内容に共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用するために、積極的な採用活動を推進するとともに、高い意欲を持って働ける環境や仕組みの構築に取組んでまいります。

② 技術力の強化と追加サービスの展開

IoTプラットフォームに係る独創的な技術力は当社グループの競争力の源泉であり、事業の成長を支える基盤でもあることから、継続的な改善、強化が重要であると考えております。優秀な技術者の採用や先端技術の把握及び当社サービスへの反映を通じて、技術力の向上に取組んでまいります。

 またIoTプラットフォームとしての価値向上のために、自社サービスの追加開発や、当社プラットフォームにおいて他社のアプリケーションの連携を容易にする仕組みを継続的に開発し続けてまいります。

さらに、成功事例として蓄積されたノウハウを横展開し、新規顧客の獲得を進めてまいります。

③ 海外市場における事業成長

 当社グループは、2016年11月の北米におけるサービス開始、2017年2月の欧州におけるサービス開始を起点に、海外市場への展開を開始いたしました。世界的なIoT導入の加速、インターネットに接続されるデバイス数の飛躍的な増加を背景に、1回線から手軽にIoTを始めることを可能にする当社のビジネスモデルは海外市場においても事業機会を形成することができるものと考えており、当社グループは、投資規律を維持しつつ、今後も戦略的に海外市場での事業成長を図ってまいります。
 一方で、当社グループの海外事業は人材の採用・育成やマーケティング活動に対する投資段階にあり、中期的には売上高拡大を重視した海外事業のさらなる拡大に向けて、以下2点の取組みを重点的に行ってまいります。
 a. 営業体制の強化
 当社グループの海外事業の成長を加速させる上で、海外拠点における営業体制の拡充は必要不可欠であると考えております。当社グループは、継続的な採用の強化に向けて、ミッションや事業内容に共感し、高い意欲を持った優秀な人材の確保や、教育研修制度の拡充を行うことで、より強固な営業体制の構築に努めてまいります。

なお、米国及び欧州における従業員数の推移は以下のとおりであり、ここ数年で増加傾向にあります。

2020年3月末

2021年3月末

2022年3月末

2023年3月末

2024年3月末

16名

18名

42名

51名

49名


  b. 顧客獲得・マーケティング強化にかかる対応

 サービス導入企業数が拡大しており、2022年1月にはガートナー社の「2022 Magic Quadrant for Managed IoT Connectivity Services」においてニッチ・プレイヤーとして選出され、2023年1月には同社の「2023 Magic Quadrant for Managed IoT Connectivity Services, Worldwide」においてビジョナリーの1社に位置付けられたことが発表されるなど、海外拠点においても当社グループの知名度は一定程度高まりつつあると考えているものの、海外顧客基盤の拡大のためには、さらなる知名度の向上が不可欠と考えております。当社グループは、今後もオンライン、オフライン双方でのイベント開催等を中心とした情報発信を通じて、知名度向上に努めてまいります。

④ 戦略的アライアンスパートナーとの事業連携

 当社は、2021年6月にセコム株式会社、ソースネクスト株式会社、ソニーグループ株式会社、日本瓦斯株式会社(ニチガス)、株式会社日立製作所及びWorld Innovation Lab(WiL)の6社と資本提携を含むパートナーシップを締結しております。6社とのグローバルビジネス協業を通じて、当社プラットフォームの国内外における利用実績を拡大し、顧客フィードバックに基づいてサービスを拡充していくことを目的としております。

 また、今後は事業ポートフォリオの拡大及び既存事業とのシナジー創出等による事業成長を目的とし、IoTに関連するデバイスやアプリケーション領域にて事業展開する企業に対する当社グループからの出資を行う方針であります。その一環として、2022年5月には、ビジネス分野でのカメラ活用を推進するためIoTスマートホーム製品を開発・製造販売するアトムテック株式会社と資本業務提携を開始しております。また、2024年2月にスズキ株式会社とモビリティサービス分野におけるIoT先進技術の活用に向けた合意書を締結しております。

 当社グループは、必要に応じて経営資源とノウハウを補完し合えるアライアンスパートナーとの協業を図り、常に変化する市場環境と多様化する顧客ニーズにスピード感をもって的確に対処しながら、企業価値のさらなる向上に向けて事業展開を進めてまいります。

通信ネットワークの増強

多様な顧客が手軽に利用できるIoTプラットフォームを構築するためには、通信ネットワークの運用効率化の推進が必要となります。当社グループは、特に海外における複数地域キャリア等からの回線調達の拡充を重点的に行うことで、今後も通信ネットワークの増強に努めてまいります。

自社デバイス製品の開発強化

当社グループは、IoT領域における技術革新に迅速に対応し、事業競争力の向上を図るため、今後新たな人員確保、研究開発の拡充を通じて、セルラー対応のAIカメラ、IoTセンサーといった自社デバイス製品の開発を強化していく方針であります。

出資による資本提携の実施

 当社グループは、IoTに関連するデバイスやアプリケーション領域にて事業展開する企業等への出資による資本提携を通じて、ポートフォリオの拡大及び既存事業とのシナジー創出等による事業成長を検討してまいります。

⑧ 財務上の課題

 当社グループの当連結会計年度末におけるリース債務を含む有利子負債の残高は25,173千円、現金及び預金の残高は7,697,244千円となっており、当社グループの事業を推進していくうえで十分な流動性を確保しており、現時点において優先的に対処すべき財務上の課題はございません。しかしながら、今後事業拡大のための優秀な人材の採用や広告宣伝・販売促進等のマーケティング投資、IoTプラットフォーム「SORACOM」の拡充のための開発投資を進めていった際に、意図した投資成果が得られない場合には、流動性が低下する可能性があります。

 当社グループは、事業規模の拡大状況から投資タイミングを見極め、投資成果を最大限に得られるようなリスク対策や施策を行いながら、投資を進めてまいります。

より抜粋
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