ジャノメ
【東証プライム:6445】「機械」
へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、常に高品質で価値ある商品とサービスの提供を通じて社会・文化の向上に貢献するべく、法令等遵守のもと、各ステークホルダーの皆様と健全で良好な関係を維持しつつ、適正で効率的な経営に努めております。
また、当社グループは外部環境の変化に対応した強固な収益体質の構築を目指し、効率的な経営、生産効率の向上、研究・開発体制及び販売・サービス体制の強化等を行ってまいります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは「企業価値の向上」を経営方針の一つに掲げており、株主・従業員を含む全てのステークホルダーとのより一層良好な関係を構築し、企業価値を高める為、収益構造の改善と企業体質の強化に努めてまいります。
なお、2025年5月9日に公表した2026年3月期から2028年3月期までの中期経営計画「Move! 2027」において売上高435億円、営業利益率9.2%、ROE8.1%を中期目標としております。
(注)上記業績予想につきましては、現時点で入手可能な情報に基づき作成しており、実際の業績は今
後様々な要因によって予想数値と異なる場合があります。
<中期経営計画「Move! 2027」の基本方針と長期ビジョン>
(3)当社グループの中長期的な経営戦略及び対処すべき課題ならびに経営環境
当社グループは、持続的に成長する企業集団を目指しております。短期的に会社の規模や売上高の増大を求めるのではなく、商品とサービスのご提供を通じて社会・文化の向上への貢献に堅実に取り組みながら、そこで得られた利益が次の成長に繋がるような持続的成長企業となることが目指すべき目標であり、また課題であると考えております。企業が成長するための要素は様々ですが、当社の強みは創業以来培ってきた「信用」であり、またこれを支えているのは当社製品の「品質」への評価であると考えています。引き続き、これに満足することなく、品質の維持・向上に努めてまいります。
①サステナビリティ・ガバナンス経営の推進
「持続的(=サステナブル)」は、当社の事業経営・ビジネスモデルが持続可能とすることを指すのは勿論ですが、同時に当社が存在し活動する基盤となる社会・環境・経済が持続可能であることは、その前提であると考えており、その中で当社グループは、持続的企業価値の向上を目指しております。
当社グループはこれまでも、ESGの重要性を鑑み持続可能な社会の実現に貢献することが、企業の社会的責任であるとの認識の下、ESGのそれぞれの視点に立った事業活動を通じ、SDGsの各目標のうち持続的成長に向けた重要課題(マテリアリティ)を選定し、その達成に取り組んでまいりました。引き続きこの姿勢は堅持しつつ、社会や環境に対し負荷を与えないような事業活動を目指すことに止まらず、広く持続可能な社会や環境に貢献するためにできることは何か、という課題に使命感を持って向き合い、自社の持続的企業価値の向上と一体的に取り組んでまいります。
②中期経営計画
当社は、2025年度から2027年度までの3カ年を対象とした新しい中期経営計画「Move! 2027」を策定しました。前中期経営計画「Reborn 2024」では、基本方針「持続可能な成長に向けてサステナブル経営を推進する」に基づき、「サステナブルな製品供給の推進」、「サプライチェーンの強化」、「重要市場への積極的な進出」の3点を掲げて事業を推進しました。事業戦略の多くは着実に遂行してまいりましたが、一部には課題の残る結果となり、かつ長期化するウクライナ情勢、緊迫する中東情勢や中国の需要回復の遅れといった外部環境の大きな変化もあり、目標とした売上、利益水準、ROE共に未達となりました。
新中期経営計画では、「Reborn 2024」での課題認識を踏まえた取り組みを継続し、さらにこれを進化させる形での利益成長を目指していく考えです。具体的には、
1)家庭用機器事業における、成熟市場でのブランドアイデンティティの確立・強化を通じた付加価値の提供、及び成長市場での製品の投入によるシェアの拡大
2)産業機器事業における重要市場であるインド及び中国への注力と高付加価値製品の販売強化
3)IT関連事業におけるサービスの拡充とこれに伴う他事業とのシナジー創出
4)上記を支える組織体制の強化に向け、働きがいの向上と事業推進力の強化の好循環を構築
また、利益成長のみならず、株主還元の充実及び資本効率の向上によりROE8%を達成することを目標にし、資本コストや株価を意識した経営の実現を図ってまいります。
③家庭用機器事業
近年の家庭用ミシン市場におきましては、ミシンキルトなどの趣味を楽しむユーザー層を中心に、高機能、高付加価値モデルが広く受け入れられている一方で、インターネット通販の拡大に伴い、低価格帯モデルの定着も進行しております。
ミシンに関する多様なニーズや楽しみ方を的確に把握するため、当社では展示会や各種イベントを開催し、お客様との交流の機会を積極的に設けております。これにより、長年ハンドメイドに親しんでおられる熟練のご愛用者様から、ミシンを始められたばかりの初心者の方々に至るまで、幅広いお客様との貴重なコミュニケーションの場を実現しております。さらに、こうした取り組みは、モノづくりの楽しさを改めて実感していただく契機ともなっており、ハンドメイド文化の裾野は着実に広がりを見せているものと確信しております。あわせて、ウェブサイトやSNSを活用した情報発信も継続的に推進し、お客様との多様なコミュニケーションの構築に一層注力してまいります。これにより、国内外におけるソーイング文化の一層の浸透と深化に、さらには潜在的な需要の掘り起こしにも寄与できるものと考えております。
海外市場におきましては、北米および欧州市場を重要な戦略地域と位置付け、当社の強みである高付加価値製品を中心に、売上の拡大を図っております。その他の地域におきましても、市場ごとの特性やニーズを的確に把握し、サービス・サポート体制の強化とブランド浸透を通じて、着実な普及を推進しております。一方、国内市場におきましては、各販売店との関係強化をはじめ、SNSを活用した情報発信や展示会・講習会の開催を通じて、お客様の多様なご要望にお応えしております。今後も、業界のリーディングカンパニーとしての責任を果たしながら、「手づくりの楽しさ」と「ミシンの魅力」の発信に注力し、継続的かつ長期的な取り組みを推進してまいります。
他方、ウクライナ情勢の長期化や中東地域における緊張の高まりといった地政学的リスクに加え、米国の通商政策がもたらす世界経済への下押し圧力などにより、足元の経営環境には依然として不透明感が漂っております。当社グループは、北米、欧州、大洋州をはじめ、中南米、アジア、中東など、世界各国において幅広く販売活動を展開しておりますが、こうした外部環境の影響を十分に見据えつつ、未開拓市場および成長が見込まれる有望市場への進出を積極的に推進しております。なかでもインド市場においては、耐久性に優れた当社製の軽合金ミシンの販売拡大に注力し、市場基盤の強化を図ることで、地政学的リスクの分散とさらなる事業成長の実現を目指してまいります。
ミシンは、家庭における唯一の生産財とも称され、手づくりによるリメイクやリユースといった取り組みを通じて、エシカル消費にも寄与する存在であり、製品そのものがサステナブルかつ環境負荷の低減に貢献し得るものと認識しております。このように、環境への配慮が消費行動に直結する時代においては、ミシンが持つサステナビリティの価値を積極的に発信していくことにより、とりわけこれまでミシンに親しむ機会の少なかった若年層を中心に、裾野のさらなる拡大が期待されます。モノづくりを通じて人々の暮らしに豊かさをもたらすとともに、ミシンという製品の価値そのものを改めて見直していただける契機となるものと考えております。
④産業機器事業
産業機器事業は、直交型ロボット(卓上ロボットを含む)、サーボプレス、ダイカスト製品を主力とし、ミシン事業に次ぐ第二の柱として位置付けております。
直交型ロボットは、ねじ締め、塗布、はんだ付けなど多様な作業に対応し、工場内の様々な工程で活用されています。サーボプレスは、位置制御、荷重管理、トレーサビリティ機能に加え、電動化による環境優位性を有し、生産現場で広く使用されています。ダイカスト製品は、精密な加工が求められる産業用・協働ロボット、精密機器、自動車関連などで採用されています。
脱炭素社会の実現、省力化・電動化の進展により市場拡大が見込まれる一方、特定市場への依存や長納期部品の調達難、在庫最適化、生産体制の強化といった課題にも直面しております。
こうした中、当社は技術力・開発力の向上と並行し、有望・未開拓市場での販売・サービス拠点の拡充を図るとともに、パートナー企業との連携強化や新たな用途提案による提案型営業を進めてまいります。
中国市場ではローカル自動車メーカーからの引き合いが増加しており、当期に販社を設立したインドでも本格稼働に移行しています。
主力市場である自動車産業の変化に柔軟に対応し、既存顧客にとらわれず新規開拓を進めることで、産業機器事業の早期黒字化を目指してまいります。
⑤IT関連事業
情報サービス産業におきましては、IoT、AIなどの「デジタルトランスフォーメーション(DX)」による「第4次産業革命」が徐々に社会に浸透してきております。これにより、企業などの生産者側からは、これまでの財やサービスの生産・提供の在り方が大きく変化し、生産の効率性が飛躍的に向上する可能性が指摘されており、かつその対象領域も広がりを見せることが期待されています。企業における競争力強化や生産性の向上のためのIT投資は引き続き堅調に推移している一方で、人材不足が顕在化しており、技術者の増強と育成が重要な社会的課題となっております。
その中で当社は、社内のコンピュータシステム導入による電算処理のノウハウを活かし外部に提供できるよう、1970年にグループ会社である㈱蛇の目電算センター(現㈱ジャノメクレディア)を設立いたしました。それから50年以上、目まぐるしく変化し続けるIT業界において自らも進化しながら時代に対応し、お客様に確かな技術とサポートをお届けしてまいりました。その結果、当社の主要事業セグメントとなる程の成長を遂げました。現在のジャノメクレディアの強みは自社運用型サーバを基幹とするシステム構築・管理です。一方で企業ではクラウド型サーバの導入が進む中、DX化の急激な波が押し寄せるなど、IT企業に求められるスキルも変化及び多様化してきております。IT企業として更なる成長を目指すためには、時代に必要とされる技術を先読みし、これらの分野の経験を積む必要があります。現状を好機と捉え、まずは当社グループ内でDX化のためのシステム構築経験を蓄え、そのノウハウを強みとして外部へ向けて提供し、更なる収益増、及び事業拡大を図ります。
⑥研究開発・生産体制
当社は、国産初のミシンメーカーとして創業して以来、技術の改良を重ね、革新的機能の開発には常に先進的役割を果たしてまいりました。また、産業機器分野には、ミシンメーカーとして培った技術を応用・発展するなどして、高機能・高性能の商品開発を実現し、市場に送り出してまいりました。
「品質のジャノメ」として、世界のお客様に高い評価をいただいておりますが、今後もより高品質で耐久性に優れた商品を開発・生産し、信頼あるものづくりを行ってまいります。新たな価値創造の実現のため、先進デジタル技術の導入や、改善活動をキーワードに開発効率・スピードの向上に努めている他、新規要素の開発、各子会社との連携に取り組んでおります。また、市場のニーズを的確に捉えた魅力ある商品をスピーディーにご提供してまいります。さらには、適地適産化や部品の社内加工化を念頭に、原価低減・生産性向上を推し進め、機動的な生産体制を構築するとともに、社会的要請が高まる環境に配慮した製品の開発や製造工程における環境負荷低減にも一層取り組んでまいります。
⑦人的資本
当社では、働く全ての社員が社業の発展に向けて主体的・意欲的に取り組むことで、企業競争力や労働生産性を向上させ、それと同時に私生活も充実して過ごせるようにすることが目指すべき働き方であると考えております。当社は、業務への取り組み方や勤務態勢の見直し、時間外労働の縮小、年次有給休暇の積極的取得を一層進め、これらにより労働生産性を向上させ、ワーク・ライフ・バランスの充実を図ってまいります。
多様性の観点では、女性・外国人・中途採用者・障害者などの多様なバックグラウンドを持つ人財の積極的な登用を進めてまいります。そしてそれらの人財が働きがいを持って能力を発揮し、自らのアイデンティティが組織の成果達成に効果的に機能しているという実感を伴うよう、一体感を醸成してまいります。従来にない文化や価値観、考え方、新しい発想を尊重し、時に健全なコンフリクトも厭わずに取り入れていくことで、革新的なイノベーションの創出に繋げてまいります。
- 検索
- 業種別業績ランキング