サンクゼール
【東証グロース:2937】「食品業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「愛と喜びのある食卓をいつまでも」をコーポレート・スローガンに掲げ、当社グループの商品を通じて、全世界に愛と喜びに満ちた食卓を増やすことを目指し、事業に取り組んでおります。
当社グループはグローバルな視野に立ち、以下を経営理念として定めております。
・企業目的
私たちは、正しい経営活動により、顧客・株主・取引先・パートナー・及び地域社会に信頼される誠実な企業を目指します。
私たちは、互いの違いを認め合う、豊かな成熟した大人の文化を創造し、居心地のよい楽しい社会の実現に貢献します。
私たちは、世界中の人々に、おいしく健康で高品質な食をバリューを持って提案し、豊かな食卓と暮らしを楽しむ時間と、人と人が集いつながることのできる場を提供します。
・企業としてのあり方
私たちは、企業目的を果たすために、健全な企業活動を行い、長期に社会貢献できるGood Companyを目指します。
あらゆる人々に開かれたオープンな会社であり、経営理念を共有するパートナーたちによって運営される健全な会社を目指します。
パートナー、カスタマー、カンパニーの三方共に満足のいく関係を構築することに注力します。
私たちは、次世代に食文化を継承し、豊かな地球環境を手渡す努力を惜しみません。
当社グループは上記の経営理念の下、食のSPA企業(製造・小売企業)として、当社グループを取り巻くステークホルダーの皆さまのライフスタイルをより豊かなものにすることを目指して事業活動に取り組んでおり、これらの活動が居心地のよい楽しい社会の実現と、当社グループの企業価値向上につながると考えております。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、当社グループの製商品及びサービスに対するお客様の支持の大きさが、将来の企業価値向上につながると考えております。お客様のご支持をいただけているかどうかについては、当社グループの製商品及びサービスの提供に必要な営業費用を上回って獲得することができる利益の額によって判断しております。そのため、当社グループでは、営業利益及び売上高営業利益率を重要指標としております。
(3) 経営戦略等
当社グループは、「愛と喜びのある食卓をいつまでも」をコーポレート・スローガンに掲げております。その実現のために、当社が中長期で目指す姿は以下のとおりです。
① 国内事業
■お客様のロイヤルティが高まり、ロイヤル顧客の数・売上構成比が向上している。
■国内の協力工場や商品生産者とデジタルサプライチェーンシステムで連携されており、生産状況の可視化と効率的な供給体制が実現されている。
■M&Aにより、食のSPAモデルが更に強化されている。
上記の中長期で目指す姿を実現するために、2026年3月期の国内事業において注力する成長戦略は以下のとおりです。
ア. 顧客ロイヤルティの向上
(ア)商品付加価値の向上
当社グループは複数のブランドを有しており、お客様に多種多様な食品をお届けしております。全ての食品に共通することは、商品経営に基づいた「絶対的な美味しさ」を追求し続けることです。そのために当社グループは、社内に設置した商品開発ラボを最大限に活用しながら、お客様からのお声やご要望に沿った高付加価値商品の開発・製造に全力で取り組んでまいります。
(イ)お客様満足度の向上
当社グループの商品はその一つひとつに、作り手やバイヤーの想い、こだわりが詰まっております。その想いをお客様にも体感していただき、感動体験につなげていただくために、店舗ではホスピタリティの向上や試飲試食の強化を推進してまいります。
(ウ)マーケティング分析の強化
当社グループでは、約2,200名のプログラム会員からなるFan-Based Community Program(FBCプログラム)を通じて、当社グループの商品やサービスに対するご意見や潜在的ニーズを把握し、改善につなげる取組みを実施しております。この他にも、N1分析(注)1やショッパー分析(注)2、また外部の分析ツール等を活用してより多くの皆さまからご意見を収集し、商品開発や販促活動、売り場改善等につなげてまいります。
(注)1. N1分析:特定の1人(N=1)の顧客やユーザーを徹底的に深掘りして、その行動や心理から本
質的なニーズやインサイトを導き出すマーケティング手法
2. ショッパー分析:買い物客(ショッパー)の行動や心理を科学的に分析し、購買行動の瞬間を理
解・活用するマーケティング手法
イ.生産・供給能力の拡大
当社は現在、長野県飯綱町の自社工場と15社の協力工場で、自社製品を製造しております。今後は既存工場への設備投資による生産能力の向上に加え、新たに食品工場を買収し、グループ全体の製造能力の拡大を図ってまいります。また、15社の協力工場に関しては、当社が開発した生産管理プラットフォームシステムを通じた情報連携により、各協力工場の生産性向上に取り組んでまいります。
ウ.M&Aによる「食のSPA」強化
当社は「食のSPA」を強化するため、「開発」「製造」「販売」の各領域で親和性の高い企業のM&Aを推進し、より強固な競争優位性を構築してまいります。「販売」に関しては、次の柱となり得る食品ブランドの買収を視野に、積極的な探索及び投資を検討してまいります。
② グローバル事業
■米国において、プレミアム日本食ブランドとして独自のポジションを確立し、十分に認知されている。
■その他地域(台湾、韓国、オーストラリア、中国、その他)において、プレミアム日本食ブランドとして独自のポジションを確立し、十分に認知されている。
■M&Aにより複数のブランドを傘下に持ち、ブランドポートフォリオが構築されている。
上記の中長期で目指す姿を実現するために、2026年3月期のグローバル事業において注力する成長戦略は以下のとおりです。
ア. 米国事業の成長
(ア)M&A実行によるブランドポートフォリオ強化
当社グループは米国の加工食品ブランド企業を買収し、米国におけるブランドポートフォリオの構築を進めております。各地域で認知されているブランドを買収することにより、買収先企業の販路獲得に加えて、当社グループ販路とのクロスセリングが可能となり、販売網の拡大が加速します。さらに、製造ボリュームの拡大により製造効率が改善されることで、コストダウンが可能となります。これらのシナジーによる事業規模の拡大に向け、今後もM&Aをより強く推進してまいります。
(イ)ディストリビューター(問屋)・販売ブローカー(注)のネットワークを利用した販売拡大
当社グループは、販売先に自ら足を運び、商品にかける想いや情熱を直接伝える営業スタイルを大切にしております。これに加えて、米国食品流通において重要なディストリビューターや販売ブローカーのネットワークを活用し、米国内での更なる販路開拓に取り組んでまいります。
(注)販売ブローカー:米国独自の商習慣で、サプライヤーの立場で販路(小売店やフードサービス)に営業
活動を行う外部セールス業者をいいます。
(ウ)商品開発
米国事業では、既存ブランドの「KUZE FUKU & SONS」をはじめ、「Portlandia Foods」、「Bonnie’s Jams」の3ブランドを展開しております。販路の拡大に伴い、当該ブランドの販売店が増加する中、大手小売店独自の商品需要も増えており、新商品の開発が重要となっております。今後も各ブランドそれぞれの強みを生かしたオリジナル商品の開発に注力してまいります。
(エ) 業務用市場への参入
米国のレストラン・カフェ市場は、巨大且つ継続的な成長が見込まれる市場です。当該市場において、当社グループの高品質で高付加価値な商品を業務用として展開するために、様々な商品を開発・販売しております。今後も複数ブランドの業務用商品を開発・製造し、業務用市場での販路を拡大してまいります。
イ. アジア、その他エリアの成長
米国以外にも、台湾、韓国を含むアジア地域での販売が足元で大きく伸びているほか、現在はカナダやオーストラリア等へも販路が拡大しております。当社グループは、これらアジア、北米、オセアニア地域のほか、今後は欧州エリアにも販売網を拡大し、世界各地での成長を実現できるよう取り組んでまいります。また、より高い事業成長が期待できるアジア地域では、販売及び製造拠点の確立に向けて準備を進めてまいります。
③ ESGポリシー
■当社グループのビジョンに基づき、事業戦略の中にサステナビリティ戦略が自然に組み込まれ、「社会の持続可能性」と「企業の持続的な成長」を同じ目線で追求されている。
上記の中長期で目指す姿を実現するために、当社グループは7つの重要課題(マテリアリティ)を特定し、それぞれの課題に対して取組みを実施しております。2026年3月期においては、特に以下の分野に注力いたします。
ア. 気候変動対策
当社グループは、事業活動に係る温暖化ガスの排出量の削減に取り組んでおります。Scope1+2に関しては、2030年までに2021年度排出量の50%削減を目標とし、さらにScope3に関しては、高い精度で測定可能な体制の構築と可視化に向けた取組みを推進し、ホットスポットの特定と排出量削減に向けたアクションプランの設定に取り組んでまいります。
イ. 人的資本
人材は企業を構成する資産の中で最も重要であり、当社グループは経営戦略と連動した人的資本への投資を拡充いたします。平均年収の向上や教育研修の充実のほか、7割強を占める女性従業員が活躍できる環境の整備と、2030年までに管理職に占める女性管理職の比率を30%にする目標を掲げております。
ウ. 森林保護
メインオフィスを置く信濃町センターは、約110,000㎡もの広大な森林(通称「サンクゼールの森」)に囲まれた自然豊かな場所です。毎年、信州大学教育学部森林生態学研究所の協力を得て、植生の調査及び森林の整備を実施しており、森には多様な動植物が生息していることが分かっています。森林保全に関する取組みが評価され、2024年3月には「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」として、環境省より令和5年度後期の「自然共生サイト」に認定されました。今後も「サンクゼールの森」の保全と、そこに生息する動植物を保護する活動を通じて、豊かな自然との共生を実現できるよう取り組んでまいります。
エ. 食品ロス対策
当社グループは食品関連事業者として、2030年までに2021年比で食品ロス50%の削減を目標に掲げ、事業活動から発生する食料品関連の廃棄ロス削減に取り組んでおります。また、本来は廃棄されてしまうワイン用ブドウを絞った後の残渣(ざんさ)を、化粧品の原料や家畜の飼料として再利用したり、原材料が特定できる食品廃棄物を牧場用の肥料として活用する等の取組みも実施しており、今後も食品ロスに向けた様々な施策を推進してまいります。
オ. 格差のない平等な社会の実現
当社グループは、格差のない平等な社会の実現に向けて、事業活動で得られた資金の一部を、NPO法人「ムワンガザ・ファンデーション」を経由して、タンザニアのNGO・SWACCO(ソンゲア女性と子どもの支援団体)へ寄付する活動を実施しております。病気で両親を失った孤児やシングルマザーの母子らが生活するSWACCOの運営施設に必要な資金を確保し、タンザニアの子どもたちが未来に向かって歩みを続けられるよう、今後も支援活動に取り組んでまいります。
国内では、食を通じた支援活動として、子ども食堂等を運営する長野県内の団体等に当社商品を寄贈する活動を実施しており、こちらも積極的な支援を継続してまいります。
また、創業者である久世良三氏及びまゆみ氏と当社グループが共同で設立した「一般財団法人 サンクゼール財団」では、食の担い手として歩み成長してきた企業として、コーポレート・スローガン「愛と喜びのある食卓をいつまでも」を実現するため、今後も様々な支援活動に参画してまいります。
(4) 経営環境
食品製造及び食品小売業界においては、資源価格や原料価格の高騰及び急激な円安等の影響により、食品メーカーである企業の費用負担が増しており、当該影響を緩和するため食料品の小売価格は値上がりを続け、その傾向は留まる気配がありません。当社グループの主力市場である日本及び米国においても食料品価格の高騰は続いており、このような状況下で、お客様はそれぞれの商品に対する価値を厳しく評価されております。当社グループは、個々のお客様が持つニーズを正確に把握し、それぞれのニーズを満たす価値のある商品を適切な価格で提供していくことが、これまで以上に重要になってくると考えております。
また、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、お客様の購買行動やニーズは大きく変化し、リアル店舗からECへの移行が急速に進みました。EC化が遅れていた食品に関しても移行が進み、食品のEC化率は今後もさらに上昇していくと考えられます。一方で、新型コロナウイルス感染症の5類移行後は経済活動の正常化に伴い、ECからリアル店舗に戻るお客様も一定数いらっしゃいます。今後は、リアル店舗とECの各チャネルが持つ強みを活かしながら、相乗効果によりお客様への価値提供をより一層高めていくことが重要になると考えております。
コロナ禍においては、親戚や友人と対面する機会が大幅に制限されたことで、ギフトを贈る習慣も広く浸透しました。加えて食に対するお客様のニーズは、よりおいしく、より高品質で、より付加価値の高いものへと深化し続けており、自分が食べて「おいしい」と感じたものを大切な人にも共有したいという潮流は、今後も継続して高まっていくと考えております。
このように食品に関するトレンドは時代の流れとともに大きく変化しておりますが、当社グループはこの変化を機会と捉え、今後も事業の特徴である食のSPAをより一層高度化し、お客様のニーズに適した商品をスピーディーに開発、提供していくことに努めてまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが優先的に対処すべき主な課題は以下のとおりです。
① ブランド力の向上
当社グループの更なる事業拡大と中長期的な成長を実現するためには、ブランド力を向上し続けることが必要不可欠と考えております。当社グループは商品及び店舗ブランドの「サンクゼール」、「久世福商店」、海外展開ブランドの「KUZE FUKU & SONS」や「Portlandia Foods」、また2024年10月に事業譲受した「Bonnie’s Enterprises,LLC(以下、「Bonnie’s Jams」という。) 」、そしてECプラットフォームサービスの「旅する久世福e商店」等、複数のブランドを有しており、各ブランドの強みを活かしながらお客様に最大限の価値を提供できるよう、今後もさらなるブランド力の向上に努めてまいります。
② 成長を支える人材の確保
当社グループは、商品開発、製造、調達、販売の全ての機能を一気通貫で手掛ける食のSPAモデルを展開しております。この食のSPAモデルを支えるためには、多様な人材が密に連携し合う組織体制を構築する必要があります。外部環境が変化するスピードが速く、将来の不確実性が高い現代において、当社グループは環境変化に適応しながら成長を支える多様な人材を確保し、それぞれの人材が働きがいを感じて能力を最大限発揮できるよう、人材採用や教育の強化、オフィス環境の整備や人事制度の改定等、健康経営の促進に積極的に取り組んでまいります。
③ マーケティングの強化
当社グループには多様なブランドが複数ありますが、各ブランドのお客様はそれぞれ異なる特徴を有しており、そのニーズも多岐にわたることから、ブランドごとに最適なマーケティング施策を実行していくことが必要です。そのために当社グループはブランドごとにビジネスユニットを作り、それぞれにマーケティング機能を持つ組織体制を採用しております。各ブランドのお客様に対する提供価値を最大化させるため、全てのビジネスユニットにおいて継続的なマーケティングを強化してまいります。
④ 商品開発力の向上
ブランドや商品価値の陳腐化を防ぎ、常にお客様にご支持いただける独自性の高い商品を開発し続けるためには、商品開発力の更なる向上が必要であると考えております。そのために当社グループは、商品開発部門の体制強化や人材育成、新商品の研究開発や改良を目的とした新たな商品開発ラボの活用を進めるとともに、引き続き地方の食品メーカーとの友好な関係を構築してまいります。
⑤ 新規出店のための優良物件の確保
当社グループの事業拡大のためには、毎年一定数を新規出店することが必要であると考えております。新規出店する店舗の収益性を高められるよう、競争力の高い優良物件を確保していくことに努めてまいります。
⑥ 新規事業開発やM&Aに関わる人材やノウハウの充実化
継続的な成長を実現させていくためには、既存事業の成長に加えて新規事業開発やM&Aが重要な戦略であると考えております。新規事業及びM&A案件の探索と、その後の各フェーズの実行を支える人材やノウハウの充実化に取り組んでまいります。
⑦ 生産性の向上とDX(注)
お客様に提供する価値を最大化しながら、従業員一人ひとりの事務処理負担を軽減するためには、グループ全体で継続的に生産性を向上させていく必要があります。また、DXを推進するためのテクノロジーは日々進化しており、とりわけ食のSPAに関するテクノロジーについては、適時適切に取り入れていくことが重要です。当社グループは、食のSPAを支えるITインフラを整備してきた知見を活かし、DXを含む業務の見直しと生産性の向上に継続して取り組んでまいります。
(注) DXはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称であり、企業がビジネス環境の激しい変化に対応して、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することであります。
⑧ グローバルサプライチェーンの進展
昨今の資源価格の上昇や物流コストの上昇は、当社グループの成長を阻害する要因であり、対処すべき課題であると考えております。当社グループは日米に有する各工場の生産力を最大限活用すると同時に、原料の国際調達等による製造コストの低減に努めております。また、米国を始めグローバルに商品を流通させていくために、調達と販売の両面において、グローバルサプライチェーンの更なる進展を図ってまいります。
⑨ 気候変動対策を含むサステナビリティに関する取り組みの推進
当社グループがコーポレート・スローガンに掲げている「愛と喜びのある食卓」を多くの家庭で長期持続的に実現するためには、当社グループの事業戦略の中にサステナビリティ戦略がしっかりと組み込まれ、「社会の持続可能性」と「企業の持続的な成長」が同じ目線で追求されている状態をつくり、強力に推進していくことが必要となります。中でも食品業界における気候変動の影響は、主に原材料の調達等に深刻な影響を及ぼす可能性があることから、当社グループは気候変動の原因となる温室効果ガス(GHG)の排出量を抑制するために、サプライチェーン全体のカーボンニュートラルの実現に取り組んでまいります。また、食品ロスやプラスチックごみ等の環境問題にも適切に対処していくことが必要不可欠であると考えており、当社グループにおきましても、これらの環境問題の解決に向けた具体的な取り組みを計画し、実行してまいります。
⑩ 内部管理体制の強化
当社グループの成長のためには、それを阻害するリスク要因を漏れなく把握し、各リスクへ適切に対処することが必要不可欠となります。当社グループは、個人情報管理や法規制への対応等のコンプライアンス体制の強化を含め、内部管理体制の強化に継続的に取り組んでまいります。
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