サノヤスホールディングス
【東証スタンダード:7022】「機械」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
経営環境及び課題への取組み
1.経営方針
(1)グループ理念
当社グループは1911年に造船業を祖業として創業しましたが、創業以来、技術力に立脚したものづくりの会社として歴史を歩んできました。当社グループでは祖業である造船事業を「コアビジネス」、非造船事業を「第二のコアビジネス」として位置付け、事業の多角化に取り組んできました。2021年2月28日付で祖業である造船事業を㈱新来島どっくに譲渡しましたが、事業譲渡後も「確かな技術にまごころこめて ~人と技術を磨き、新たな顧客価値を創出する~」というグループ理念については、グループの従業員が最も大切にする基本的な考え方として不変のものとしています。このグループ理念を従業員一人ひとりが実践することで、事業を通じて社会課題を解決し「サステナブルな社会の実現」に貢献するとともに持続的な企業価値向上を目指します。
(2)グループビジョン
当社グループは2024年3月29日に「中期経営計画<'24-'26>」を対外公表しましたが、当該計画を策定するにあたり造船事業譲渡後の新生サノヤス10周年に当たる2030年度に当社グループが目指す姿を明確化し、グループビジョンとして策定しました。
(3)行動原則
グループビジョンを実現するために組織で大切にするべき価値観や行動を5つの行動原則として定め、グループの従業員全員で共有し、日々の事業活動の指針としています。
2.サノヤスグループの思い
当社グループは持株会社であるサノヤスホールディングス㈱の傘下に、事業活動を行う10社の事業会社と技術集団であるサノヤステクノサポート㈱で構成されており、多様な事業を営んでいます。当社グループが目指すところは、事業を通して社会課題を解決し、人々のくらしを支え、全ての人々の”喜び”と”満足”を実現する企業でありたいということです。サノヤスホールディングス㈱とサノヤステクノサポート㈱はグループ共通のプラットフォームとして事業会社をサポートし、各事業会社はそれぞれの事業に専念できる体制を構築しています。当社グループの柱である各事業会社では次の5つを基本方針としてソリューションの強化とイノベーションに挑戦し、お取引先やパートナー企業と協働し、社会に役立つ商品とサービスを生み出していきます。
① 本業のものづくりとサービスに専念し、お客様に信頼される会社を目指す
② ユニークな製品を適正価格で提供し、収益力の強化に努める
③ DXにより仕事を効率化し、常に生産性を向上させる
④ R&Dを通じて、新製品・新規事業を次々と創出する
⑤ 人財教育と互いの切磋琢磨により、強い人財を育成する
3.新生サノヤス10周年(2030年度)に向けて
(1)基本方針
サノヤスグループは多様な事業を展開しており、それぞれの事業によって解決できる又は解決したい社会課題も多種多様なものがあり、以下に図示するような社会課題を中心に解決を図っていきたいと考えています。社会インフラの老朽化に対してはサノヤス・エンテック㈱で空調や給排水等の配管の老朽化への対応としてリニューアル部隊を新設し、取り組みを進めてまいります。水資源の確保に対しては、みづほ工業㈱が手掛ける水処理事業を強化し、用水から排水までを一気通貫でエンジニアリングを行い、貴重な水資源の有効活用に貢献します。少子高齢化による労働力不足に対してはみづほ工業㈱やサノヤス・エンジニアリング㈱で生産工程の自動化や省人化を実現する新製品の開発を行い、製造現場に提供してまいります。また、データ流通基盤の強化に対しては、昨今急増し、重要な社会インフラとなっているデータセンター向けに松栄電機㈱の配電盤や分電盤を供給してまいります。
このように当社グループの各事業会社はBtoB企業としてお客様にソリューションを提供することで、お客様と共に社会やくらしに役立ち、支えとなることで全ての人々の“喜び”と“満足”を実現したいと考えています。
それを実現するための重点施策は、①ソリューションの強化、②イノベーションへの挑戦、③ESG経営の進化・深化の3つです。加えてこれらの重点施策を滞りなく実行できるよう事業基盤の強化を進めてまいります。
(2)重点施策
①ソリューションの強化
・当社グループ内に既に事業基盤があり、かつ将来にわたってマーケットが拡大していくことが予想される分野として産業インフラ関連分野と環境分野を注力分野に選定し、積極投資を行い基幹事業へ育成します。
・国内では新しい市場領域への進出や東南アジアを中心とする海外マーケットの拡大を図ります。
・既存事業とシナジーが見込まれる企業のみならず、当社グループの経営リソースでマネジメント可能な新しい事業領域のM&Aについても検討してまいります。
②イノベーションへの挑戦
・技術集団であるサノヤステクノサポート㈱をハブとして産学連携や他の企業とのコラボレーションを積極的に行い、新たなビジネス創出を図ります。
・顧客ニーズや社会的要請を起点とし、事業会社とサノヤステクノサポート㈱が協働し、問題解決に資する新製品や新サービスを創出します。
・ITや先進技術を積極的に活用することにより、生産性の向上や新しいビジネスモデルの構築を図ります。
③ESG経営の進化・深化
・引き続き、地球温暖化対策への取り組みと人的資本経営の充実を柱としています。
④事業基盤の強化
・収益力の向上を図るため、当社グループで最も大切なものづくり力強化に向けて、設計能力のレベルアップや原価低減推進等を進めます。
・R&D機能を強化するため、各事業会社がそれぞれ行っている新製品や新サービスの開発に加え、サノヤステクノサポート㈱が一体となって開発の方向性を定め、要素技術の開発、コラボレーション先の探索などを行います。また、2024年4月1日付けで全社横断的な活動として、イノベーション推進委員会を設置し、イノベーション推進活動の加速を図っていきます。
・企業体質の強化では、DX活用による能動的営業活動の実行やマネジメント研修の充実によるマネジメントスキルの向上等、企業体力の底上げを地道に行っていきます。
4.中期経営計画<'24-'26>
(1)位置づけ・骨子
2024年3月29日に公表した「中期経営計画<'24-'26>」は、新生サノヤス10周年(2030年度)に向けての前半の3年間と位置づけ、さらなる技術進化とポートフォリオ経営深化でグループ各社の基盤強化と連携強化の期間としています。前半の3年間で構築した高収益基盤をもとに後半の4年間で成長トレンドを実現する計画としています。
また、新生サノヤス10周年に向けた3つの重点施策に対して、5つの取り組みと合わせ事業基盤の強化を進めることとしています。5つの取り組みでは、(1)注力分野と位置付けた産業インフラ関連・環境分野への資金投入、M&A投資、人的投資を積極化、(2)既存事業では新商品開発や差別化戦略の推進、メンテ・サービス事業の強化、(3)新マーケットの開発や海外展開等、新規事業分野への進出、(4)カーボンニュートラル実現に向けた取組みの推進、(5)人財確保に向けた体制強化や働き甲斐の向上に向けた人事制度改革等、人的資本経営の推進を行ってまいります。
(2)進捗状況
(2)-1.注力分野の成長ドライブ
産業インフラ分野では、国内で活況を呈しているデータセンターの新築案件に対応するべく、松栄電機グループの人員増強を図り生産能力を増強するとともに、新たにISO9001の認証を取得、これらの体制強化の下、大型案件の受注を獲得することが出来ました。加えて、ハピネスデンキ㈱とのグループ内コラボレーションを進めることで、当社グループ全体で対応能力を賄うとともに、さらなる生産能力の拡大に向けたリソースの投入を進めてまいります。
環境関連ソリューション分野においては、みづほ工業㈱において人員増強を図るとともに営業活動を強化することで、計画を上回る売上高を達成しました。中国に拠点を設ける美之賀機械(無錫)有限公司では、2025年1月25日に本社工場を移転し、業容拡大に向けた取組みを進めてまいります。
(2)-2.既存事業の強化
みづほ工業㈱では真空乳化撹拌装置事業の拡大に向けて開発リソースの投下を図り、試験用新モデル2機種「PVQ-N(ネクスト)」、「LR-P2」を開発し、販売を開始しました。これらの装置では従来の装置に比べ省スペースを実現するとともに、操作性を改善することでユーザーニーズに応えた機能を実現しています。
また、サノヤス・ライド㈱では、開発人員の増強を図るとともに、パートナー企業との連携を深め、工程管理にもリソースを投下することで、よみうりランド様の新観覧車「Sky-Go-LAND」を予定通り完工し、2024年10月24日にオープニングセレモニーが実施され、運用を開始することが出来ました。加えて、城島高原パーク様にシューティングシアター XDダークライド、グリーンランド様にウェーブスインガーを施工し、それぞれ2025年3月1日にオープンを迎えることが出来ました。引き続き遊戯機械の開発・製造・施工及び海外遊戯機械の導入を図ってまいります。
メンテ・サービス領域については、サノヤス・エンジニアリング㈱の機械式駐車場事業において、工程管理の強化、補修部品のメンテナンスサイクルの見直し等を進めることで、計画を上回る売上高を達成しました。加えて差別化を図るための新製品開発に取り組んでいます。
※(左)よみうりランド様新観覧車「Sky-Go-LAND」
※(右)みづほ工業新製品 クイックホモミキサー「LR-P2」
(2)-3.新規事業分野への進出
2024年4月1日付で社内にイノベーション推進委員会を設置し、当社グループ傘下の各事業会社からメンバーを選定の上、新規事業創出の検討を開始しました。出てきたアイデアについては具現化に向けた取組み・試作品の開発のフェーズに進んでおり、引き続き検討を進めてまいります。加えて、当社グループにて技術開発・技術人財育成を担っているサノヤステクノサポート㈱では、全社の技術・開発力を強化し、新製品開発の加速を図るために従来設置されていた「ものづくりラボ」を移転し、面積を約1.7倍に拡張いたしました。これにより各事業会社と連携した実験・検証に加えて、新規製品開発に必要な要素技術開発にも着手してまいります。
新たなマーケットの開拓に向けては、サノヤス・エンジニアリング㈱のショットブラスト事業において海外市場の開拓に着手しています。既に取引のある機械商社や新たな商社との連携により海外市場への展開を図ってまいります。具体的に商社連携による海外顧客からの受注も獲得いたしました。サノヤス精密工業㈱においては、積極的な営業活動を推進し、新たな顧客の開拓を進めています。難切削材の切削加工や顧客の新製品用の部品製作に柔軟に対応することにより顧客の間口拡大と事業成長につなげてまいります。サノヤス・エンテック㈱においては、営業人員の増強を図り、リニューアル案件の積極的な獲得を進めています。今後も活動を継続し、リニューアル部隊の設置に向けて活動量を増加させてまいります。
また、新たな事業領域の獲得ということでは、2025年4月30日に公表のとおり、2025年6月2日付で㈱小寺電子製作所をM&Aにより子会社化いたしました。㈱小寺電子製作所は1973年(昭和48年)の創業以来、全自動電線切断皮剝装置・全自動圧着機等のワイヤーハーネス加工機のメーカーとして、国内で高いシェアを誇っております。主力商品である全自動電線切断皮剥装置の「キャスティング」は国内でトップシェアを誇っており、ものづくり企業として技術に立脚した事業を行っており、当社グループの理念とも合致する企業であると評価しています。サノヤステクノサポート㈱との新製品の共同開発や海外展開強化に向けてグループ間での販路の共有化等、当社グループとのシナジー効果も見込まれることから今後の当社グループの事業成長につなげてまいります。
(2)-4.カーボンニュートラル実現に向けた取組み推進
詳細は、2 「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(2)-5.人的資本経営の充実
詳細は、2 「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(2)-6.収益力アップに向けた事業基盤の強化
営業力の強化については、みづほ工業㈱において自社技術セミナーを実施いたしました。従来展示会等での技術説明は行っていましたが、当社拠点へ顧客を招待し技術内容・製品説明・意見交換を行う場を設定し、拡販につなげる活動を進めています。また、全社でDXの推進を進めました。顧客情報の管理、企業情報データベースの活用など営業向けのITツールの導入を図り、営業活動の効率化が進みました。さらに、各事業会社の事業形態に応じたシステム導入の検討を進めており、事業活動の効率化を図っていきます。
収益力アップに結び付く活動としては、サノヤステクノサポート㈱が中心となり、事業会社各社と原価低減活動を進めました。部品の共通化、設計の標準化、製造現場における改善活動等、事業会社各社の業態にあった取組みを進めており、着実に収益力の向上が進んでいます。
5.経営指標の進捗
「中期経営計画<’24-‘26>」では、新生サノヤス10周年の2030年度の目標を、売上高500億円、営業利益25億円、営業利益率5.0%、ROE10%以上とし、中期経営計画の最終年度に当たる2026年度計画は売上高300億円、営業利益10億円、営業利益率3.3%、ROE6%以上としております。
これに対し、中期経営計画1年目の2024年度は、建設需要が引き続き堅調に推移していることや、コロナ禍における部品納期の長納期化の影響が緩和したこと等に加え、前述した各種取り組みが奏功した結果、概ね全ての事業会社において売上高、営業利益が計画を上回り、売上高250億円、営業利益10.6億円、営業利益率4.3%、ROE11.7%(当連結会計年度末の自己資本を基に算出)と大幅な過達での着地となりました。計画策定当初は将来への人的資本投資の一環として従業員の賃上げ5%を盛り込み、前年対比で減益計画としておりましたが、労務費のアップ分を通常の事業収益にて吸収するだけでなく、前年対比も上回る営業利益を達成することが出来ました。経営指標の詳細については、4 「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。
6.企業価値向上への取り組みの進捗
当社グループは資本コストや株価を意識した経営の実現にも積極的に取り組んでおります。中期経営計画の期間中にPBRを1倍以上にすることを目標とし、資本収益性向上に取組んでおりますが、中期経営計画1年目の結果は、2025年3月31日時点の当社株価180.0円、PBRは0.60倍、2025年3月期の決算を公表した2025年5月12日の翌日時点では当社株価262.0円、PBRは0.86倍となっており、着実に進展をしております。
また、2025年4月1日に公表いたしました通り、当社及び当社の子会社の管理職層従業員が当社株式を所有することにより経営参画意識を高めるとともに、株主の皆様と一層の価値共有を進めることを目的に、従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブ制度の導入を決定いたしました。引き続き中期経営計画の諸施策を着実に実行し、ステークホルダーの皆さまに成長性をお示ししていくことでPBR1倍以上を実現したいと考えています。
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