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企業概要

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1)経営方針

 当社は「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」を企業ミッションとしております。日本発のエンターテインメント・カルチャーを作り出し世界中のユーザーに広めていくことにより、日本のユニークな強みであるアニメ、ゲームといった文化に関わるクリエイターの活動の場を増やしていくことを目指しております。

(2)中長期的な経営戦略等

 当社はこれまで「VTuberビジネスの確立」「IPビジネスへの進化」「クリエイター経済圏の拡大」の三段階からなる事業戦略を基盤とし、ライブ配信を中心としたコンテンツ供給、VTuber IPの多面的なコマース展開、さらにはゲームやメタバース領域への進出を通じて、事業規模とブランド価値の拡大を実現してまいりました。今後は、2030年3月期において売上高1,000億円、営業利益250億円以上を達成することを中期経営目標とし、さらなる事業拡大とグローバルな成長を支える経営基盤の強化に取り組んでまいります。

 この中期目標に向けて、当社は、①共創によるコンテンツ供給の強化、②グローバル収益基盤の確立、③新規事業領域の収益拡大、④人的資本の高度活用、という4つの成長ドライバーを軸に、段階的かつ戦略的な投資を進めております。

①共創によるコンテンツ供給の強化

 ライブ配信、音楽、ゲーム、アートなどの多様な表現領域でトップタレントを輩出し、コミュニティの拡大と当社のブランド価値の継続的な向上を目指します。制作体制の高度化と効率化を進めるとともに、他社の大型メディアコンテンツとの協業を通じて、ブランドの認知をさらに拡大してまいります。こうした取り組みは、表現技術への研究開発投資や、アニメなどの長期制作コンテンツに対する共同制作の仕組み構築によって支えられています。

②グローバル収益基盤の確立

 北米やアジアをはじめとする大消費市場において、現地でのグッズ生産・流通体制の構築に加え、各地域のニーズに即したライセンス商品の展開を推進してまいります。これらを実現するため、海外イベントの拡充によるマーケティング活動の強化、現地拠点の運営体制の整備、地域別のサプライチェーン・マネジメントの強化を進めるとともに、必要に応じて資本業務提携やM&Aの活用も視野に入れ、グローバル展開を支える強固なインフラの構築を検討してまいります。

③新規事業領域の収益拡大

 既に事業拡大が進展しているトレーディング・カードゲーム(TCG)に加え、ゲーム/ホロアースといったデジタルコンテンツ・サービスの事業規模を拡大し、収益の多角化を推進してまいります。TCGでは、年間を通じた大会運営や海外言語版のグローバル展開を通じて、ゲームプレイヤー数の拡大を推進し、安定的な収益基盤の確立を図ってまいります。ゲーム分野では外部開発パートナーとの連携を強化しつつ、自社で開発を進めるホロアースにおいても、ユーザー体験価値の拡張と長期的な経済圏の形成を目指しております。

④人的資本の高度活用

 人材の最適配置と育成により、組織全体のパフォーマンスを最大化し、持続的な成長を支える経営基盤を強化してまいります。これには、管理部門の体制整備による全社オペレーションの高度化も含まれており、成長を下支えする組織的対応力の向上を進める想定です。

 これらの成長戦略の実現に向けて、2030年3月期までの5年間で累計500億円程度を上限とする成長投資およびM&Aの実施枠を想定しています。これらは、海外展開の加速、制作機能の強化、生産・物流の最適化、事業ポートフォリオの拡張、そして経営基盤の強化といった、中長期的な企業価値の向上を意図したものです。M&Aについても、戦略性と実効性を重視し、投資効果を慎重に見極めながら機動的に実施してまいります。

 今後も、VTuberという新たな文化の担い手として、タレント、クリエイター、ファン、企業をつなぐプラットフォームとしての価値を高め、継続的な成長と企業価値向上を目指してまいります。

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社はこれまで、VTuberのファン規模を示す代表的な指標として「YouTubeチャンネル登録数」を重視してまいりましたが、近年ではタレントの活動領域がYouTube以外の配信プラットフォームやリアルイベント・音楽・ゲームなどへ多様化していることから、同指標を経営目標としては用いない方針といたしました。

 今後は、中期経営目標に掲げる「売上高」および「営業利益」の水準を、企業価値向上に向けた主要な客観的指標として位置付けております。売上高は多様な事業活動の成果を示す指標であり、営業利益は成長投資の回収や経営効率の改善状況を示すものと捉えています。

 また、補足的な指標として「サービス別売上高」も引き続き参照し、事業ポートフォリオの構造や成長領域の変化を多面的に把握してまいります。

(4)経営環境

 当社が展開するVTuber事業は、VTuberを起点として、ライブ配信、ライブコンサート、イベント、商品展開、企業タイアップなど多岐にわたる分野に広がっております。近年では、VTuber市場自体がアニメ市場と類似した構造を持ちながらも、圧倒的なコンテンツ供給量とファンとの双方向性を武器に、これまでにないスピードでファンベースを拡大しており、文化としての浸透も急速に進んでいます。当社では、2025年3月期通年において27,000本超の動画コンテンツを供給するなど、日々の継続的な発信が大規模なファンコミュニティの形成とエンゲージメント向上に寄与しています。

 より広義には、国内のアニメコンテンツ市場は2023年度時点で1.6兆円、海外展開を含むグローバル市場では約3.3兆円規模となっており(注1)、当社が取り組む領域もこの拡大市場の一角を担う存在として成長余地を有していると考えております。さらに、映像、音楽、ゲーム、商品などを含む広義のグローバルコンテンツ市場全体では、2023年時点で約123兆円規模にのぼる(注2)とされ、当社としてはこれらの成長分野と接続しながら、多面的な展開を進めてまいります。

 実際に、国内VTuber市場は2024年度時点で約1,050億円規模に達すると推定されており(注3)、2021年度から2024年度までの年平均成長率(CAGR)は約50%と、引き続き高い成長を示しております。VTuber市場は商品展開や企業タイアップ、イベントなどの周辺分野における収益拡大が引き続き見込まれていることに加え、VTuberという表現形式がグッズや音楽、アニメ、ゲームなど他のエンターテインメント分野と親和性高く連動していることも今後この成長を後押ししていくと考えられます。

 当社としても、こうした市場環境を踏まえ、トレーディング・カードゲームや音楽配信、アニメーション作品への参画、自社および協業によるゲーム開発など、周辺領域とのシナジーを活かした事業展開を強化しており、これらは今後の成長を牽引する中核的要素と位置付けています。

 また、日本政府が推進する「新たなクール・ジャパン戦略」では、日本発コンテンツの海外市場規模を2033年までに20兆円へ拡大することが掲げられており、コンテンツ産業全体が輸出産業としてより重視される中、VTuber産業も国策的な支援の恩恵を受ける可能性があります。

 一方で、インディーズVTuberの増加や海外VTuberの活躍など、グローバルにおけるVTuber文化の裾野も広がりを見せておりますが、当社が長年培ってきた制作能力と、クリエイター・ファンによる大規模な共創コミュニティは、引き続き当社の持続的な成長を支える競争優位性として機能していると認識しております。

 今後は、国内外における商品・サービスの提供体制をより一層強化していくとともに、各国の税制、物価、為替動向などグローバル展開に伴う不確実性についても注視しながら、継続的な成長に向けた戦略を推進してまいります。

(注)1.出所:一般社団法人日本動画協会「アニメ産業レポート 2024」2023年のアニメ関連市場規模

2.出所:内閣官房『第23回新しい資本主義実現会議の基礎資料』にて記載の2019年のコンテンツ産業の世界市場規模

3.出所:矢野経済研究所「2024年 VTuber市場の徹底研究 ~市場調査編~」

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①魅力的なVTuberタレント及びブランドの開発

VTuberの人気はアニメルック・アバターや関連するグループ又はユニットの魅力の影響を大きく受けるため、魅力あるVTuberを継続的に開発することは当社の経営課題であります。当社は、コンテンツを共創するクリエイターにとっても意義深い活動の機会を継続的に提供するために、当社ブランドの認知及び一層の価値向上に努めております。

②コンテンツ・クリエイターの発掘及び育成

VTuberの活動はアニメルック・アバターを用いて活動するコンテンツ・クリエイターの創作活動に依存しているため、能力のあるコンテンツ・クリエイターの発掘、及びその能力を一層開花させるための育成は当社の課題であります。

 当社では定期的なオーディションの実施により新しいコンテンツ・クリエイターの発掘ができるよう努めている他、採用後も社内外のクリエイター・企画チームを活用し、継続的なグッズ企画・衣装企画・ライブ企画等の多様な活動支援によってコンテンツ・クリエイターの個性をより発揮できるような環境を構築しております。

③事業拡大と収益性向上を両立した事業運営

 当社は魅力あるVTuberの継続的な開発と育成を主軸に、動画配信プラットフォーム上でのサービス展開のみに留まらない、多面的な事業展開を推進しております。そのため、より大きな市場を捉えるために複数の先行投資を実施しております。具体的には、より付加価値の高いコンテンツ開発と集客力の向上に向けた、3Dモデリング、3Dアニメーションに関する人材投資、大型モーション・キャプチャー・スタジオの取得、統合IDサービスの開発及びユーザーの体験価値の向上に向けたゲーム・メタバースサービスの開発等を行っております。

 また、マーチャンダイジングやライセンス/タイアップといった収益性の高いコマース領域では更なる事業拡大を計画しており、トレーディングカードゲーム等のシリーズ商品の企画や海外地域でのライセンシー拡充による現地商流への商品・サービスの配荷拡大等を推進しております。

④組織体制の整備

 当社の成長には多様な専門性を持った優秀な人材を採用し、組織体制を整備していくことが重要であると考えております。積極的な採用活動を行っていくとともに、従業員が中長期的に働きやすい職場環境や人事制度を整備してまいります。

⑤技術力の強化

 当社はコンテンツ・クリエイターの活動について、モーション・キャプチャー技術を駆使した自社開発のアプリケーション等で支えており、今後の継続的な技術改善が視聴者に新しいエンターテインメント体験を届けるために重要であると考えております。

 高度なスタジオ配信を可能にするアプリケーションのアップデートや豊かな表現を可能にする3Dモデリング技術の向上等、継続的な改善を進めてまいります。

⑥コミュニティの健全性維持

 当社は多数のVTuberを擁しており、それぞれのコンテンツ・クリエイターの裁量で日常的に膨大な数の視聴者との双方向コミュニケーションがライブ配信を通して行われております。

 継続的な創作活動や視聴者とのコミュニケーションが維持されるよう、誹謗中傷対策などのコミュニティ健全化の施策は重要であると考えております。

 外部専門家と連携しての誹謗中傷対策等、コンテンツ・クリエイター保護のための施策を継続的に実施してまいります。

⑦その他財務上の課題

 当社は、これまで金融機関からの借入に大きく依存せず、資金需要は自己資金及び営業活動によるキャッシュ・フローを源泉とした財務基盤を維持していることから、先述の「事業拡大と収益性向上を両立した事業運営」の他には、優先的に対処すべき財務上の課題はありませんが、上記事業上の課題に対する対処及び継続的な成長に資する設備投資を実行できるよう、内部留保の確保と株主還元の適切なバランスを検討し、既存事業の営業キャッシュ・フローの改善等に対処するなど、財務体質のさらなる強化に努めてまいります。

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