企業カウリス東証:153A】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

(1)経営方針

 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)が制定されるなど国家戦略を背景に急激なデジタル化が進み、またインターネットサービスの利活用やデータ活用がコロナ禍でそのスピードが加速され国民生活におけるデジタル化や企業活動におけるデジタル・トランスフォーメーション、公的分野におけるデジタル化と更にその領域は拡大しております。一方サイバー攻撃の増加等を背景に、特殊詐欺やクレジットカードの不正利用被害は増加傾向にあり社会経済活動に多大な影響を及ぼしています。当社は、「情報インフラを共創し、世界をより良くする」というミッションのもと誰もが安心・安全なデジタル社会での利益を享受できる情報インフラ構築を目指すことで企業価値の最大化を図ります。

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための指標

 当社は、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、当社の主力製品である「Fraud Alert」の月次経常収益(MRR)(注1)、契約社数(注2)、1社あたり平均単価(ARPU)(注3)を、業績の透明性を表すために契約残高(注4)を重要指標としております。詳細につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。

(注1)MRR:Monthly Recurring Revenueの略称。MRRは対象月末時点における継続課金となる契約に基づく当月分の料金の合計額。

(注2)継続課金となる契約を締結している社数(概念実証契約は含まない)。

(注3)ARPU:Average Revenue per Userの略称。ARPUは課金している顧客(1社)あたりの平均売上金額。

(注4)契約残高は、前期獲得した全契約金額のうち翌期に売上高を繰り越した金額に当期獲得した全契約金額を加算し、当期に売上高として計上したものを控除した残額。

(3)経営環境及び中長期的な経営戦略

 当社が提供するFraud Alertは、大別して情報セキュリティの観点、マネー・ローンダリング対策の観点で導入促進が見込まれるものと考えております。情報セキュリティの観点では、インターネットサービスの利活用の普及及びこれに伴う技術革新が当社の業績に大きく影響します。インターネットサービス利活用のひとつであるキャッシュレス決済比率の推移(注5)は図1のとおりであり、クレジットカードを中心に電子マネーやコード決済など多種多様な決済方法が増え、キャッシュレス決済を通じた決済比率の伸びは顕著であり、キャッシュレス決済の拡大に伴う不正被害が増加傾向にあります(注6,図2)。

 マネー・ローンダリング対策に関する事業は、日本市場では2022年に約2兆円(注7)、世界市場においては2020年~2027年の予測期間において年間平均成長率15.6%以上の健全な成長率で成長する市場と見込まれています(注8)。

(注5)出典:経済産業省 2023年のキャッシュレス決済比率(2024年3月29日公表)

https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240329006/20240329006.html

 図1 キャッシュレス決済比率の推移

(注6)出典:国立研究開発法人情報通信研究機構 サイバーセキュリティ研究所「NICTER観測レポート2020」

(2021年2月16日公表)より当社作成

 図2 サイバー攻撃関連通信推移

(注7)出典: LexisNexis「『金融犯罪コンプライアンスの真のコスト』調査レポート」から引用

https://risk.lexisnexis.co.jp/insights-resources/research/true-cost-of-financial-crime-compliance-study-apac

(注8)出典: Report Ocean 「Global Anti Money Laundering Market Size study」(2022年1月22日公表)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004911.000067400.html

 当社の提供価値は、インターネットサービスの不正利用抑止と金融機関向けにマネー・ローンダリング口座の抽出及びサーバー空間の防護の3点があります。3者それぞれに外的要因があり、これにより獲得可能な市場規模が拡大することで高い成長率を継続できるように努めてまいります。

①インターネットサービスの不正利用抑止

2023年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、24.8兆円に拡大しています(注9)。また、クレジットカードの不正利用額が約541億円(注10)となり、その約0.2%の購入は不正購入となっています。

 政府は2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度とすることを目指すこととし、キャッシュレス決済を推進していますが、一方、サイバー攻撃等のセキュリティリスクは年々高まり、実際に不正利用被害額も増加しています。このような中、クレジットカード・セキュリティガイドライン[5.0版]が改訂され(注11)、規制が強化されました。従来、Eコマース事業者、クレジットカード事業者において抑制されていたセキュリティ対策投資額が、規制強化により事業継続に必要な予算となることで、市場規模は拡大し当社のサービスにより安心・安全を提供することで高い成長率を継続できると予想しております。

②金融機関向けにマネー・ローンダリング口座の抽出

2019年にFATF(金融活動作業部会)の対日監査が金融機関に入りましたが、結果的に我が国は重点フォローアップ国に選別され、金融機関等へはマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画が示されております(注12)。このうち「金融機関等による継続的顧客管理の完全実施」における「取引モニタリングの強化」は、当社のFraud Alertのサービスを通じて個人及び法人のマネー・ローンダリング口座を抽出し、日本のマネー・ローンダリング資金供与対策を一層向上させることにより実現することを目指します。また、2028年にFATF(金融活動作業部会)第5次審査が実施されることから中長期に市場規模が拡大していくことを予想しております。

③サイバー空間の防護について

 ロシアとウクライナ紛争の影響により経済安全保障推進が大きく打ち出され、国防費用を倍増する方針と、インフラ産業である12業種(金融、クレジットカードなどを含む)に対して、経済安全保障推進法が施行予定(注13)であります。その中では、サイバー攻撃があった場合でも、継続したサービス提供ができる体制作りや攻撃を検知するような体制作り等が含まれており、当社が立脚するサイバーセキュリティへの投資が国策として推奨されることも市場規模の拡大要因たり得ると予想しています。

(注9)出典:経済産業省 令和5年度電子商取引に関する市場調査の結果報告書(2024年9月25日公表)

https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240925001/20240925001.html

(注10)出典:経済産業省「クレジットカード不正利用や債務から身を守るために」

https://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/consumer/2404credit.pdf

(注11)出典:クレジット取引セキュリティ対策協議会(事務局 一般社団法人日本クレジット協会)「クレジットカード・セキュリティガイドライン[5.0版]<公表版>」

https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240315002/20240315002.html

(注12)出典:金融庁 第1回金融審議会資金決済ワーキング・グループ 配付資料3(事務局説明資料)(2021年10月13日開催)

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/shikinkessai_wg/shiryou/20211013/siryou3.pdf

(注13)出典:内閣官房 経済安全保障 https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/index.html

 このような最近の業界動向及び事業環境の変化を踏まえ、当社では、本書「事業の内容」について営業体制の構築を進めてまいりました。また、このような背景から弊社が商談を始めてから実際に弊社サービスを導入いただくまでの期間は短縮傾向にあり、2018年から2022年の5年間でFraud Alertの導入期間は約16ヶ月短縮いたしました。この結果、重要な経営管理指標であるMRRを12倍とした年間経常収益(ARR)(注14)は、下図にあるように堅調に推移していることから2024年12月期は約12.6億円となりました。

(注14)ARR:Annual Recurring Revenueの略称。該当月のMRRを12倍して算出。

 当社は、引き続き研究開発、Fraud Alertに関する開発とサービス開発を含めた営業体制の強化・構築を重点課題と位置づけ、持続的な成長を維持できるよう推進してまいります。

 今後の具体的な取り組み

 主力サービスであるFraud Alertを中核とした更なる成長

 急激なデジタル化によるインターネットサービスの拡大におけるセキュリティ市場の継続的成長及びキャッシュレス決済における不正利用被害の増加並びに法規制等の不正対策に対する社会的要請の高まり、加えてマネー・ローンダリングに関する市場は国際的な規制の要請から成長拡大する事業環境と捉えております。このような中、主力サービスであるFraud Alertを中核としたサービスを開発し、差別化要因を意識した同業他社に対して競争優位なポジションを形成することで事業推進してまいります。

 当社の優位性、差別化の特徴は3点あります。

①顧客基盤

 セキュリティ投資額が大きい業界である金融機関を顧客セグメントとしている点が特徴であります。すでに、メガバンク、ネット系銀行、地方銀行の24行と、大手証券会社をはじめ証券会社10社、また、クレジットカード事業者数社との取引があり、ARPUは2024年12月時点で2,246千円となっております。メガバンク等の金融機関リーディングカンパニーが外部クラウドサービスの利用を開始し始める黎明期に当社が参入できたことが奏功いたしました。今後は中堅以下の地方銀行及び証券会社への導入にも注力する予定です。金融機関は社内オペレーション上、サービス導入を容易にリプレイスすることは極めて難しく、後発参入社が当社既存顧客をリプレイスするには相当の時間を要することになります。その間に、さらに顧客にとって、簡易な業務オペレーションとなるようサービス開発を進めることによって、スイッチングコストを高められると考えております。また、他のセキュリティベンダーと異なる点に代理店を介さず、直接顧客と取引している点も差別化要因と捉えております。顧客と直接コミュニケーションを取ることにより、市場ニーズをダイレクトにサービス改善に繋げていることも、スイッチングコストを高める要因となっております。また、スイッチングコストが高まることが解約率の低さにつながっております。

②ネットワークの外部性

 当社サービスの差別化要因としては、当社の顧客が提供するサービスの利用者(以下、エンドユーザーという。)に関するアクセス情報の取得及び不正エンドユーザーに関する顧客間の情報共有を前提としたビジネスモデルとなっていることであります。

 当社が取得するエンドユーザーのアクセス情報は、原則として顧客において予め暗号化されており、当社は特定の個人を識別することはできないため当社の個人情報には該当しないものの、顧客においては個人情報に該当するため、顧客側で個人データの第三者提供に関し個人情報保護法が適用されます。

 個人情報保護法上の当社ビジネスの建付けは、顧客が犯罪収益移転防止法の特定事業者に該当する場合は、犯罪収益移転防止法第4条に定める取引時確認等への対応に該当、また第8条「疑わしい取引の届出等」にも該当すると警察庁に確認済であり、個人情報保護法第27条第1項第1号「法令に基づく場合」が適用され、顧客がエンドユーザーの同意を得ずに個人データを第三者に提供することが可能となっております。また、特定事業者に該当しない顧客については、顧客に対し個人データの第三者提供に関する本人同意の取得等の確認を行っております。

 以上の整理により、当社は顧客企業から受領したデータを顧客企業間で相互に共有するビジネスモデルを確立してまいりました。

 従来のAI(Artificial Intelligenceの略称。人工知能。)のように、委託で情報を預かる場合、個社ごとの部分最適になりますが、当社は同じデータベースを各顧客間で共有するという第三者提供型のビジネスモデルであるため、顧客が増えれば増えるほど、不正利用者の情報が集まり他社の情報が共有されることで不正利用者の検知率が上がり、既存顧客に対する不正利用が減少する構造になっております。その結果、職種特化型のSaaS企業のように広告宣伝費を投下することなく、顧客が顧客のグループ内、もしくは懇意にしている同業者に対し、当社サービスの紹介や営業支援を行っていただくことにより、更なる顧客基盤の構築につながっております。それにより変動費率が低い収益構造となっております。

③ガバメントリレーションシップを通じたサービス開発

 当社は2018年にJ Startupに選考されて以降、金融庁、経済産業省、警察庁、個人情報保護委員会などとのリレーションを構築し、サービス開発をしている点が他のセキュリティ企業と大きく異なります。これまでに2019年に新技術等実証制度(通称規制のサンドボックス制度)、また2024年4月にグレーゾーン解消制度により当社サービスが適法であると認められたことにより、電力契約情報を活用したサービスのリリースを実現しています。これは従来の個人情報保護法や電力事業者法で禁止されている電力会社の情報アセットの活用を認可いただいたもの(注15)(注16)であり、政府とのリレーションがあってこそ、実現しているサービスであります。また第二弾として、キャッシュレス推進協議会における、QRコード決済事業者間での不正利用者情報共有プラットフォームCLUEは当社が手掛けており、継続的に政府との協議により、国益である国民の資産の毀損を抑止するサービスを展開する予定であります。

(注15)出典:内閣官房 規制のサンドボックス制度認定プロジェクト(なりすましによる不正な口座開設の防止に関する実証  株式会社カウリス、関西電力株式会社 認定日2019年3月6日)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/s-portal/regulatorysandbox.html

(注16)出典:経済産業省「グレーゾーン解消制度への申請案件」「不正口座開設防止サービス及び継続的顧客管

 理サービスについて」(2024年4月)

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社で認識している優先的に対処すべき事業上の課題は以下のとおりです。なお、当社の収益構造の特徴として、フロー型収益とストック型の収益の両方を得ております。現状大部分がFraud Alert利用料等のストック型の収益であり、安定的な経営に寄与しております。また、フロー型収益は、Fraud Alertの初期導入にかかる売上や実証実験契約によるもの等であります。

 また、当社は金融機関と1億円の当座貸越契約を締結しており、急な資金需要にも耐えられる体制を構築しているため、当社としては現状財務体質に重要な課題は無いと考えており、財務上の課題は記載しておりません。

①製品の強化について

 当社が属するマネー・ローンダリング対策の分野は、日々発生する新たな脅威や技術革新等による環境変化に伴い、ニーズが変化しやすい特徴があり、新たな脅威に対する対策が求められます。当社では、顧客満足度を継続的に高めていくために、今後もマネー・ローンダリング対策に関する新たな技術開発に取り組み、顧客の声を広く収集しその要望と仕様を入念に吟味しながら各機能及びユーザビリティの向上した実効性のある製品をリリースしてまいります。

②組織体制の整備

 社内体制の構築への課題としては、主に管理層の人員不足及び開発体制の更なる充実という二点が挙げられます。当社が問題を解決するにあたり、各部門長に横断的な協力を仰ぎ、組織体制を整備しながら、適宜採用による人員獲得及び権限の委譲などを通じ、健全な組織作りに注力してまいります。

③人材の採用・育成について

 当社の属するマネー・ローンダリング対策業界では、専門知識を有する人材の不足が共通課題とされております。今後、当社の業容が拡大する一方で、十分な人材を確保できない場合には、サービス提供の遅れや生産性の低下等により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、社内人材については、中途採用を中心に即戦力として活用できる技術経験者を採用し、採用後は、当社の教育講座を無償で受講する等により専門知識の向上を図るとともに、職場環境の整備やモチベーション向上等に注力することで、人材流出を防ぎ、ノウ

 ハウや経験の社内蓄積に努めております。

④新規事業の立ち上げについて

 急速な進化、拡大を続けているFintech業界において、当社が企業価値を向上させ、高い成長を継続させていくためには、事業規模の拡大と収益源の多様化を図っていくことが必要と認識しております。そのためには、積極的な新規事業の立ち上げが課題と認識しております。このような環境下において、当社はマネー・ローンダリング対策におけるノウハウを活かした事業の創出に積極的に取り組んでまいります。

⑤情報管理の徹底

 当社は事業運営上、多数の個人情報を有しているため、それらの情報の管理が事業の持続可能性を担保するために最も重要な要素であると認識しております。現在、当社は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及びプライバシーマークの認証を取得しております。機密情報や個人情報について、以前より社内規程の厳格な運用、定期的な社内教育の実施、セキュリティシステムの整備を行っておりますが、今後も引き続き情報管理の徹底及び体制の強化を図ってまいります。

より抜粋
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