企業兼大株主エア・ウォーター東証プライム:4088】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当連結会計年度の研究開発活動につきましては、各事業グループの開発センターは、主要グループ会社と連携し技術や商品の開発を推進いたしました。また、グループテクノロジーセンターを廃止し、グループ全体の新事業創出に資する技術開発、製品開発を加速するために、技術戦略部門として、社長直下に技術戦略部、知財戦略部、ガス技術開発センターを設置いたしました。

 加えて、オープンイノベーションの取り組みをさらに進めるために、2024年12月に、北海道札幌市に「エア・ウォーターの森」を、また、2025年1月に、神奈川県平塚市に半導体・電池・機能材料開発の中核拠点となる新研究棟「湘南イノベーションラボ」をそれぞれオープンいたしました。

 「エア・ウォーターの森」では、北海道の豊富な資源を活用し、大学、研究機関、自治体、企業などと連携し、新たなアイデアや事業を創出することで、地域課題解決に貢献することを目指しております。「湘南イノベーションラボ」では、半導体・電池材料に関わる知見・技術のシナジーを最大化し、新製品開発を加速してまいります。

 エア・ウォーターグループの全事業の基盤であるガス関連技術と事業グループのコア技術を磨きながら、これまで以上に事業部門との密接な関係を構築し、様々な分野での社会課題の解決のため、応用展開を図ってまいります。また、オープンイノベーションによる積極的な技術開発により、事業の継続的な成長と社会に貢献できる新事業成果の結実に取り組んでまいります。

 事業グループごとの研究開発活動につきましては、次のとおりであります。

(デジタル&インダストリー)

 デジタル化の急速な進展に伴い、データセンターの処理能力やデータ通信速度の更なる高速化に対応できる材料のニーズが高まっております。また、脱炭素社会の実現に向け、電気自動車の航続距離の伸長や急速充電に対応できる材料が求められております。これらに対応するため、半導体や二次電池などのエレクトロニクス分野における幅広い領域を中心として、エア・ウォーターグループ内外の技術シナジー発現による差別化商品創出に注力しつつ、新たな材料開発を推進しております。

エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル㈱においては、高機能を有する電子材料や食品機能材料の開発に注力しております。また、かねてより湘南工場の敷地内に建設を進めていた「湘南イノベーションラボ」が2025年1月に開所し、開発拠点の集約ならびに技術の集中・高度化による開発速度の向上を図ってまいります。

・脱炭素社会でますます重要となる蓄電デバイスについては、リチウムイオン電池高性能化のための電解液添加剤の開発の他、リチウムイオン電池及びナトリウムイオン電池でも寿命・容量を向上させる負極用真球状ハードカーボンの材料開発を推進しており、大学との共同研究も継続して実施しております。

・脱炭素社会の実現に向け、低濃度CO2回収・利活用に関する技術を推進しております。エア・ウォーターグループは、CO2の回収・精製・液化・輸送・利用一連の技術の深耕と同時に大学との共同研究により、新規の低濃度CO2回収技術の研究開発を行っております。様々な需要に対応した適切な回収・利活用技術を提供するために、今後も継続的に技術開発を行ってまいります。

・㈱FILWELでは、ハードディスクドライブ、シリコンウエハなどの精密研磨に使用されるパッド材の技術を有しております。SiCバルク基板用の研磨パッドを上市し、顧客各社より高評価を受けており、更なる性能向上に向け技術開発を進めております。また、次なるターゲットとなるデバイスCMP向け研磨パッドの技術開発も進めております。

・陸上養殖事業では、「地球の恵みファーム・松本」にて、完全閉鎖型プラント開発に必要な要素技術である脱炭酸装置について、酸素供給機能と脱炭酸機能を一体化したモジュール式システムの開発を進めております。モジュール構造を採用することで、現場条件に応じた柔軟な構成変更や機能拡張が可能となり、運用の効率化と設備の汎用性向上の両立を目指しております。また、「杜のサーモンプラント」にて、中小規模の陸上養殖プラントの事業性向上のため、天然でしか漁獲できないサクラマスの発眼卵からの陸上養殖による量産化にむけた飼育技術の開発を進めております。

(エネルギーソリューション)

2030年までに2013年と比べてCO2を46%削減するという政府方針の実現に向けて、カーボンニュートラルエネルギー関連技術について、産・官・学との連携を通じて、技術の蓄積、洗練、高度化を推進しております。

・2022年に発表した小型CO2回収装置「ReCO2 STATION」の商用機を開発し、販売を開始いたしました。「ReCO2 STATION」の技術を応用し、「グリーンイノベーション基金(以下、GI基金)事業/廃棄物・資源循環分野におけるカーボンニュートラル実現」にて、カナデビア株式会社が受託した「CO2高濃度化廃棄物燃焼技術の開発」の再委託を受け、焼却炉排ガスからCO2を分離回収するシステムを開発しております。また、CO2回収に係るエネルギーの省力化を目的とし、「GI基金事業/CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」において、「Na-Fe系酸化物による革新的CO2分離回収技術の開発」を推進しており、大阪・関西万博において実証展示を行っております。

・家畜糞尿などに由来するバイオガスを活用した新たなバイオエネルギーサプライチェーンの構築に取り組んでおります。バイオガスを用いて液化バイオメタン(LBM)に加工することでLNGの代替燃料として活用する実証を完了し、2024年5月よりバイオメタンの商用販売を開始しております。さらに、バイオメタンの原料となるバイオガスを製造するためのバイオガスプラントについても、中小規模の酪農家をターゲットとしたユニット型バイオガスプラントの開発に着手し、2025年度中の上市を目指しております。ユニット型バイオガスプラントは、現地工事を最小化することで従来よりもイニシャルコストを低減させるとともに、ユニット型とすることで、発酵槽の増設、移設が可能なサスティナブルプラントをコンセプトとしております。今後も自治体や企業とのさらなる連携を通じて、環境負荷の少ない地産地消エネルギー社会の実現に貢献してまいります。

・NEDO脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業として、「バイオエネルギーローカルサプライチェーンを実現するための未利用資源からのバイオメタン製造システム実証研究(インド)」を進めております。インドに適したユニット型バイオガスプラントを開発し、インドでのバイオメタン事業化に向けて、取組みを推進してまいります。

(ヘルス&セーフティー)

 医療事業において、医科向けや歯科向けの病院内機器製品やサービスの開発ならびにOEM事業を推進してまいります。今後はウェルネス分野へと拡大してまいりますが、医療事業は軸であり中心と考えております。

・医療事業では、慶應義塾大学発GI型POF(屈折率分布型プラスチック光ファイバー)技術を応用し極細内視鏡の開発を推進しております。また、慶應義塾大学、東京医療センター、北陸先端科学技術大学院大学のそれぞれと共同研究を同時並行で進めており、製品化としては2026年に上市を計画しております。極細硬性内視鏡の使用により、患者の負担が大きく軽減され、また医療プロセスを大きく変える可能性があり国内の課題である医療費についても適正にすることが可能になります。

・アエラスバイオ㈱(現エア・ウォーター・アエラスバイオ㈱)では、祖業であるガス技術を歯髄幹細胞の培養・保管技術に応用することで、臨床向けの細胞の提供を行っております。同社が提携するRD歯科クリニックではその細胞を用いて世界で初めて歯髄再生治療を実用化いたしました。2025年2月には、RD歯科クリニックが、他人の歯髄幹細胞を用いた歯髄再生治療(他家臨床研究)に着手しており、同治療の普及が期待されます。今後は歯髄幹細胞の用途拡大のため、神経変性疾患治療への適用に向けた細胞培養技術の研究開発に取り組み、不要歯から歯髄幹細胞を取り出し、将来の疾患に備える「アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク」を実現してまいります。

・エア・ウォーター・リアライズ㈱では、エアゾール事業、化粧品事業、注射針事業を展開しております。高付加価値製品の開発、産学連携による新技術と新素材の開発、顧客・消費者のニーズを先取りする提案型開発研究に

 て事業の拡大を目指しております。化粧品の開発においては、付加価値研究の成果として国際化粧品技術者(IFSCC)カンヌ大会(2025年9月開催)での発表が決定し、特許出願と併せ、高い技術力発信による企業価値の向上に努めております。

(アグリ&フーズ)

 農作物の栽培・加工・保存技術や食品・飲料の品質向上、分析・機能性及び新技術・商品開発の推進により、食料問題対策とともに健康社会の実現に向けた取り組みを進めております。

・農業従事者の減少や異常気象など、食糧問題への対策をするべくスマート農業の研究開発を東京大学生産技術研究所と推進しており、収穫から加工まで合理的に自社管理できる仕組み構築を進め、食品ロスの低減を目指しております。さらに、ドローンセンシング技術を活用して畑のモニタリングをするだけでなく、畑から生じている食品ロスの定量化・可視化することで、ロス低減に向けた様々なアプローチを検討し、日本の食糧生産力向上に貢献してまいります。また、室蘭工業大学とは鮮度保持と連携した分析技術を活用し、地域ブロックチェーンへの導入の試みを引き続き行っております。

・農作物における食品ロスのもうひとつの大きな課題である、鮮度保持技術への取り組みを、北海道大学、東京大学、その他協業する他社などと共同で推進しております。老化ホルモンであるエチレンガスに着目し、この制御によって流通・販売・加工における農作物の品質・鮮度の維持を目指しております。実証試験と基礎試験の実行により、プラチナ触媒のエチレンガス制御効果と実用性を確認いたしました。同時に、カビの抑制に関する基礎試験を実施し、独自手法による低減試験に成功いたしました。品質及び歩留向上実現に向け、エチレンガス制御とカビ抑制技術を応用し独自に組合せた開発中の試験機を開発中であります。

・農産自社資源の活用・分析による機能性研究において、食と健康の付加価値向上に取り組んでおります。小林再生研究所及び北里大学との協働により、みかんの皮を利用した老犬の挙動改善に関する論文をMetabolitesに掲載し当社技術の有用性を発表いたしました。今後は、廃棄されるみかんの皮及び摘果品を活用するスキーム検討段階に入り事業貢献を目指しております。

(その他の事業)

・㈱日本海水では、「海水資源の活用」をキーワードに、産学官との技術連携を積極的に進めることで、新たなビジネスを創出するとともに、SDGs実現に向けた研究開発を行っております。NEDOの研究開発助成事業に採択された「海水を用いたCO2鉱物化法の開発」については、発電所や工場などから排出されるCO2の固定化、資源化を検討し、CO2削減のための社会実装に向けた研究開発段階へと進んでおります。また、2050年にむけたカーボンニュートラル宣言、脱炭素化の流れの中、現在は、主に排煙脱硫剤として使用されている水酸化マグネシウム製品の需要減に対応するため、水酸化マグネシウム製品を原料とした新たな事業へと展開を図るべく、産学官協働でマグネシウム関連製品の開発を進めております。

 なお、当連結会計年度の研究開発費用の総額は4,991百万円であり、デジタル&インダストリーが2,141百万円、エネルギーソリューションが269百万円、ヘルス&セーフティーが1,375百万円、アグリ&フーズが716百万円、その他の事業が489百万円であります。

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