企業インフロニア・ホールディングス東証プライム:5076】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当連結会計年度は、建築事業、土木事業、舗装事業、機械事業及びインフラ運営事業を中心に研究開発を行い、その総額は4,917百万円です。

(建築事業、土木事業及びインフラ運営事業)

当社グループは、「総合インフラサービス」の実現に向けて、また、多様化・高度化する社会ニーズに対応するため、生産性や品質の向上など社会的価値と事業価値の向上を同時に実現する研究開発を推進しています。特に最新のICTや自動化技術、AIを駆使した革新的な生産性向上技術、環境・エネルギー関連技術、脱炭素社会に向けた木材資源活用技術、都市インフラ施設の維持管理に関する高度化技術、ICT社会への対応技術などを注力して取り組むべき重要な技術分野として設定しています。

また、技術開発の推進にあたっては、社会環境の激しい変化に対応できる多様性と迅速性が求められる中で、大学や公的研究機関・異業種企業との技術協力や共同開発などのオープンイノベーションを積極的に推進しています。

当連結会計年度における研究開発費は3,309百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。

   ①自然言語処理AIを活用した「危険予知システム」をSOLIZEと共同開発

    ~建設現場の安全管理業務における危険予知の高度化及び業務改善を実現~

前田建設工業(株)はSOLIZE(株)と、同社の自然言語処理AI(アスペクトエンジン)を活用し、安全管理業務における危険予知の高度化及び業務改善を目的とした「危険予知システム(SpectA KY-Tool)」を新たに共同開発しました。

建設現場の安全管理業務は熟練者の過去の経験や知識に偏ることで、安全指示事項がマンネリ化してしまうことがあります。さらに、生産性向上が急務となっており、作業の手戻りの回避や工事関係者の円滑な意思疎通も課題になっています。そこで、当社施工現場において運用・検証を行い、「危険予知の高度化」及び「業務改善」を目的とした新たなシステムをSOLIZE(株)と共同開発しました。今回開発したシステムは、作業内容や現場環境に適した災害事例の選出が可能です。過去の災害データから適切な危険有害要因と対策の選定をAIが行うことで、危険予知の予測精度を向上させ、類似労働災害の再発防止に貢献します。

   ②水中のPFOS・PFOA吸着処理システムを開発

   ~車両搭載可能な装置を汚染サイトに持ち込んでピンポイントの浄化を実現~

前田建設工業(株)はメタウォーター(株)と共同で、イオン交換樹脂を用いた水中のPFOS・PFOA吸着処理システム「De-POP’s ION™」を開発しました。

本システムは、池や湖沼等の水に含まれる微細な砂やゴミなどの懸濁物を取り除く「除濁装置ユニット」と、PFOS・PFOA処理専用のイオン交換樹脂が充填された「イオン交換樹脂塔ユニット」から構成され、PFOS・PFOAを効率的に除去することが可能です。また、システムごと車両に積載が可能なため、PFOS・PFOAを含む池や湖沼の近くで使用できます。さらには、処理した水を外部に放流・破棄せずに水資源として循環利用することで、環境負荷の低減を実現しています。今後、日本各地で顕在化が予測される土壌や地下水浄化のニーズに対しても、前田建設工業(株)がこれまでに開発してきた地盤改良や揚水技術、土壌洗浄工法とともに提案、採用いただくことで、社会課題の解決に貢献してまいります。

   ③鉄筋/配筋BIMシステム「アトアレ」を構築 ~仮想空間での自動配筋・自動配筋検査を実現~

前田建設工業(株)は、建築分野の鉄筋工事を対象とした生産現場において、仮想空間上での配筋及び配筋検査の自動化システム(鉄筋/配筋BIMシステム「アトアレ」)を構築し、設計・施工一貫方式のプロジェクトを中心に適用しています。本技術により、図面作成や鉄筋加工、配筋・組立の生産プロセスにおいて使用する生産情報の不具合排除、元請会社と鉄筋専門工事会社間で正確な生産情報の連携が可能になります。その結果、生産現場における不具合の発生低減、作業効率の向上のみならず配筋検査における指摘事項の減少が期待されます。

将来的には、さらなるBIMデータの構築手法やデータ連携のワークフローを改善することで、構造設計者における配筋検討作業の効率化や鉄筋専門工事会社における業務のデジタル化を推進し、デジタルデータを活用した働き方改革の実現に向けた開発・社会実装に取り組みます。

    ※アトアレ:ATELIER FOR ASSEMBLING REBAR IN A VIRTUAL SPACE(仮想空間で鉄筋を組み立てるアトリエ)

     の略称。商標登録済(登録第6675424号)

   ④道路運営の経営管理モデル「Digital Twin Road Management」構想を策定し、実証実験を開始

   ~将来の道路状況を予測し、道路運営・経営における意思決定の高度化をめざす~

データにより道路インフラの管理を最適化し、地方創生の取り組みにも寄与する新しい道路運営の経営管理モデル「Digital Twin Road Management」構想を、(株) NTT ドコモ及びエヌ・ティ・ティ・コムウェア(株)とともに策定しました。また、その実現に向け「更新費用の最適化」に関する技術検証の実証実験を開始しました。

日本の多くの道路は高度経済成長期に整備されており、これから老朽化が本格化します。しかし、道路の運営・維持管理を行う技術者や財源は不足しています。そのため、道路の管理者である多くの自治体にとって、現在から将来にわたる道路資産の状況や劣化を正確に把握し、最適な中長期の修繕計画に基づき運営コストを低減することは共通の経営課題です。そこで、現場からの様々なデータを取得・可視化し、そのデータを分析・予測することで道路インフラの合理的な管理を支援すると同時に、渋滞緩和による利便性向上やにぎわいの創出などの地域活性化の取り組みをデジタルツイン上で融合させることで、課題解決を実現します。

   ⑤多成分の混和材を積極的に利用した低炭素型のコンクリートの社会実装

前田建設工業(株)は、2011年度から2015年度まで、コンクリートの二酸化炭素排出量の削減を目的に国立研究開発法人土木研究所などと低炭素型のコンクリートの共同研究を実施してきました。その成果として、「スーパーグリーンコンクリート(SGコンクリート)」を開発し、前田建設工業(株)ではその後も継続的に長期耐久性データの取得や施工物件での活用を進めています。2020年10月に菅内閣総理大臣(当時)が所信表明演説にて、2050年までにカーボンニュートラル(CN)を目指すことを宣言して以降、各業界でカーボンニュートラルに向けた取り組みが加速しており、既に開発した技術の更なる社会実装が期待されています。低炭素型のコンクリートの社会実装に向けた課題として、セメントや混和材を混合した独自結合材の供給、特殊なコンクリートの製造などのサプライチェーン構築が挙げられており、スーパーグリーンコンクリートでもこれらを解決し社会に提供していくことを目指し活動しています。

   ⑥第10回 日本ロボット大賞 国土交通大臣賞を受賞 山岳トンネル切羽作業の機械化技術「鋼製支保工建込みロ 

    ボット」

前田建設工業(株)が、古河ロックドリル(株)及びマック(株)と共同開発した「鋼製支保工建込みロボット」が、第10回日本ロボット大賞 国土交通大臣賞を受賞いたしました(2022年10月12日)。

本技術は、切羽への立ち入りを伴う作業をロボットにより自動化することで生産性向上を実現するとともに、山岳トンネル特有の切羽肌落ちによる労働災害の発生を物理的に排除できます。これらがロボットの先進的な研究開発として高い評価を頂きました。本受賞を機として、「鋼製支保工建込みロボット」の販売を開始します。

    ※「日本ロボット大賞」:わが国のロボット技術の発展や社会実装を促進することを目的として、ロボットの 

     先進的な活用や研究開発、人材育成といった様々な分野において、優れた取り組みを実施した企業等を表彰する制度

   ⑦第20回建設ロボットシンポジウム優秀論文賞を受賞 自走式散乱型RIロボット(次世代αシステム)

前田建設工業(株)が、(株)大林組と共同開発した自走式散乱型RIロボットが、2022年8月に開催された第20回建設ロボットシンポジウムにおいて優秀論文賞を受賞しました。全投稿論文の中から1件のみ厳選される賞であり、建設分野における自動化・ロボット化の推進に大きく貢献する技術として評価されました。次世代αシステム(仮称)は、この自走式RIロボットに加え、振動ローラの加速度応答から地盤剛性を自動取得するαシステム、転圧面の点群データを計測する3Dレーザスキャナなど複数のIoT機器により現場品質情報を取得、クラウドシステムに一元的に集約・格納する事で、現場土工品質管理の高度化と生産性向上、DX化を実現します。本システムは、2020年度から2022年度における3回に渡る国土交通省PRISM実証工事や、2022年度国土交通省「舗装工事の品質管理の高度化に資する技術」公募に連続して採択されるなど、社会実装に向けて鋭意開発を進めています。

   ⑧ICI総合センターに移築した「旧渡辺甚吉邸」が登録有形文化財に登録

  ~匠の技と最新技術で未来へ受け継ぐ~

前田建設工業(株)は、ICI総合センター(茨城県取手市)において、2022年4月21日に「旧渡辺甚吉邸」を施設内に移築し、建築史家の藤森照信氏を名誉館長としてオープンしましたが、その後2月27日に、国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。旧渡辺甚吉邸は、建築当時(昭和初期)の日本における住宅建築の最高水準の経験・知見が凝縮された歴史的建造物です。港区白金台での解体の際には、3Dスキャンや360度カメラにより記録し、欠損や腐朽した部材は職人の伝統技法やロボットアーム型木材加工機により復原しました。

オープン後、藤森名誉館長による講演会や英国AAスクールとのワークショップ、世界中から集まった異なる背景を持つ新時代のアーティストたちとのアートプロジェクト「Shutsugenプロジェクト」などを実施し、新たな価値創造に向け、さまざまな文化芸術関係者や地域の方々などとの多様なコミュニケーションの場として活用しています。

    ◆旧渡辺甚吉邸とは

旧渡辺甚吉邸は1934年(昭和9年)、港区白金台に岐阜の名家・渡辺家の14代当主、甚吉の私邸として建てられた洋館です。日本の住宅の発展に大きく寄与した住宅専門会社の技師として活躍した遠藤健三と山本拙郎、そして二人の恩師である今和次郎の3人の共作によって、建築当時の日本における住宅建築の最高水準の経験・知見が凝縮された歴史的建造物です。

(舗装事業)

連結子会社である前田道路(株)においては、二酸化炭素等の温室効果ガスの放出による地球環境問題や沿道環境への対応、道路インフラの効率的な保全、ICTの活用等、社会及び国民の幅広いニーズに応えるべく、「人と環境に配慮した技術」、「維持修繕の効率化に貢献する技術」、「生産性の向上に寄与する技術」及び「持続可能な社会をつくる技術」を重点テーマにあげて研究開発に取り組んでいます。

 当連結会計年度における研究開発費は1,195百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。

   ①「人と環境に配慮した技術」に関する研究開発

前田道路(株)では、2030年度に2013年度比でCO2排出量を50%減、2050年度にはカーボンニュートラルの達成を目指しています。その一環として2022年9月に、運営子会社である日本バイオフューエル(株)を設立し、バイオ重油製造施設の建設を開始しました。この施設では、動植物由来の油滓等を原料に、バイオ重油製造技術を活用した環境負荷低減エネルギーを自社精製・製造することにより自社のエネルギー由来のCO2排出量削減に取り組むことを目指します。2023年完成予定の当該プラントでのバイオ重油製造によって工場が本格稼働する3年目以降には約3万5千トン/年のCO2削減が見込まれます。また、副産物として精製される脱窒剤・付着防止剤・剥離剤の販売も検討しています。

   ②「維持修繕の効率化に貢献する技術」に関する研究開発

道路橋の鋼床版上の防水層には、一般的にグースアスファルト舗装が用いられています。この混合物は、高温時の流動性を利用した流し込みによる施工のため転圧の必要がなく、ボルトなどの凹凸部等の隅々まで充填することができます。しかし、施工時には混合物を240℃程度に加熱するため、特殊な加熱撹拌装置付運搬車が必要となり、さらに安定した加熱撹拌をするためには3t以上の混合物が必要となるため、小規模施工時には使い残りが生じて多くが廃棄されるなど、材料資源のロスを考慮すると不向きな点がありました。前田道路(株)で開発した「マイルドグース」は、単粒度砕石の間隙に特殊バインダを非加熱で流し込み、防水層をつくるものであり、加熱撹拌装置付運搬車が不要であり、少量からの製造及び施工が可能なため、小規模施工の際には廃棄合材の大幅な削減が期待できます。また、非加熱で使用できるため、アスファルト混合物を高温に加熱する際に発生するCO2排出量の削減にも寄与します。この製品は、これまで実用化に向けた実証実験を行い、2023年3月に販売を開始しました。

   ③「生産性の向上に寄与する技術」に関する研究開発

舗装工事における省人化は生産性向上のみならず安全性向上にも寄与する重要課題と捉え、作業の機械化など様々な技術開発を進めており実用化に向けた現場テストを重ねています。

   Ⅰ.建設機械搭載型レーザスキャナを用いた出来形管理技術がインフラDX大賞優秀賞受賞

 学校法人法政大学及び三菱電機エンジニアリング(株)と共同研究で開発を進めてきた「建設機械搭載型レーザスキャナを用いた出来形管理技術」は、国土交通省のi-Constructionを推進すべく舗装工事における3次元計測の効率化を図る技術であり、舗装工事で使用するタイヤローラに搭載したレーザスキャナで施工面の3次元形状を取得して施工管理で活用するものです。国土交通省東北地方整備局発注の河辺地区道路改良舗装工事で舗装各層への適用や取得データのBIM/CIMへの活用について検証した結果、国土交通省のインフラDX大賞優秀賞を受賞することができました。現在、この技術の汎用化に向けて取り組んでいます。

   Ⅱ.ダンプトラック誘導システムが内閣府の「官民研究開発投資拡大プログラム」(PRISM)のプロジェクトに採択

(株)日立ソリューションズ・テクノロジーと進めている「ダンプトラック誘導システム」は、多人数で施工する舗装工事のうち誘導作業の省力化を図る技術であり、舗装材料を敷きならすアスファルトフィニッシャに設置した単眼カメラの画像をAIによるソフトでリアルタイムに解析し、ダンプトラックと作業員との接触やダンプトラックの車線逸脱を警告しながら、後進するダンプトラックを誘導するシステムです。国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に選定され、西日本高速道路(株)発注の高速道路修繕工事で現場への適用性について検証しました。現在、更なる検出精度向上に向けて取り組んでいます。

   ④「持続可能な社会をつくる技術」に関する研究開発

アスファルト舗装はほぼ100%リサイクル可能であり、その再生技術は持続可能な社会をつくるといえます。しかしながら、再生アスファルト混合物は1980年代より製造・施工が開始され、その間再生、再々生と繰り返し再生されている状況です。今現在の再生混合物の品質は一定の水準を確保していますが、今後さらに再生回数が増えると再生混合物の品質低下が予想されます。そのため前田道路(株)では様々な側面から再生混合物の品質向上への取り組みを行っており、その中の1つにWフォームド技術(フォームドアスファルトの性能向上、再生用添加剤へのフォームド技術の適用)があります。本技術は既に実用化に至っており、これにより再生混合物の品質向上が図れています。現在、フォームド発生装置の設置を全国の合材工場に順次進めています。

(機械事業)

 連結子会社である(株)前田製作所においては、自社製品のカーボンニュートラル化に向けた電動仕様の開発及び、米国向け製品の開発を推進しています。また、要素技術開発として今後の労働力不足に対応するべく自動化・遠隔制御技術等の開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は412百万円であり、主な研究開発結果は次のとおりです。

①バッテリー仕様かにクレーンMC285CB-3用増設バッテリーユニットの開発

2020年度に発売したバッテリー仕様かにクレーンMC285CB-3用のオプション品として、使用現場からの稼働時間を「もう少し長くしたい」との声に応えるため、増設バッテリーユニットを開発し発売しました。

②米国向け8t吊りかにクレーンMC815Cの開発

米国向け機種のラインナップ拡充のため、現地法規制に適合した8t吊りかにクレーンMC815C米国仕様を開発し、発売しました。当該機種においては、欧州仕様同様フライジブ及びサーチャーフックをオプション設定しており本体と同時発売しています。

③米国向け2.8t吊りかにクレーンMC285C-3USの開発

米国排ガス規制適合エンジンを搭載した、2.8t吊りかにクレーンMC285C-3USを開発、発売しました。当該機種においては、アウトリガーマルチアングルのディスプレイ表示をよりユーザーフレンドリーなものに変更し特許出願も行っています。

④合金微粉末事業の推進

脱炭素社会実現に向け必要とされる省電力機器で使用される接合材は、高温度耐用が要求されることから、高価な金、銀が使用されており、これらに代わる合金粉末の接合材が求められています。

(株)前田製作所では、合金微粉末の製造特許取得業者と連携し、均一組成、低酸化の品質を確保した上で大量生産可能な装置を導入し、合金微粉末製造事業を推進しています。

⑤自動化・遠隔制御技術の開発

(株)前田製作所のコア技術であるクレーン制御技術とオープンイノベーションにより習得したIoT技術を応用展開し、建設ニーズや大型機械に対応した自動運搬システムの研究・開発を進めています。今後は様々な装置への展開、データ解析による新たな付加価値創出を進めてまいります。

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