企業兼大株主アダストリア東証プライム:2685】「小売業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、「なくてはならぬ人となれ なくてはならぬ企業であれ」を企業理念に掲げ、「Play fashion!」のミッションの下、私たちが提案するファッションを通じて、人々の心を豊かに、幸せにすることを使命としています。いつの時代も変わらぬこのミッションの下で、持続可能な成長を目指し、お客様一人ひとりの毎日を今よりもっと楽しくする選択肢をご提供することで、事業を通じた社会・業界の課題解決への貢献を果たしてまいります。


(2) 中期的な会社の経営戦略(経営環境、対処すべき課題と経営戦略)

 日本経済は、賃金上昇による個人消費の緩やかな改善傾向やインバウンド需要の増加、企業収益の改善を背景に堅調に推移をしています。一方で、原材料及びエネルギー価格などの物価や金利の上昇、人件費の上昇や労働力不足、為替の変動、地政学リスクの増大など事業環境への懸念は続いています。国内アパレル事業における市場環境として、総務省統計局の実施している家計調査によれば、2024年1月から12月における家計の被服費支出は未だパンデミック以前の9割未満に留まっており、一定の回復余地があるものと期待されます。また、タイトな労働需給を背景として名目賃金の増加が続いており、当社の主力顧客である若年層の個人消費の追い風も見込まれます。一方で、ライフスタイルや顧客の嗜好の変化は不可逆的であり、従前と同様の消費行動は戻らないとの前提に立つ必要があり、生活雑貨類の需要増加、ビジネスシーンにおける服装のカジュアル化、エコノミー市場とEC市場の拡大など、変化に柔軟に対応し、新たに生まれた需要を確実に取り込むための対応を進めています。また中長期的には、国内アパレル市場は少子高齢化により緩やかな縮小が構造的に続く一方、海外アパレル市場は人口の増加や新興国の所得水準向上を背景に、拡大を続ける見通しです。

 このような経営環境の下、当社は2022年4月に策定した2026年2月期を最終年度とする中期経営計画に基づき、成長と収益性向上の実現を目指してきました。しかし、円安の進行、人件費の上昇、国内外の物価や資源・エネルギー価格の高騰といった経営環境の大きな変化により、2026年2月期における利益目標の達成が困難な見通しとなりました。

 この変化する環境へ迅速に対応し、事業構造を変革するため、当社は2030年2月期を最終年度とする「中期経営計画2030」を策定し、2025年4月に発表しました。「中期経営計画2030」では、当社の強みであるマルチブランドで培ったリアル店舗とスタッフが築くお客様との濃いつながりを活用し、プラットフォーム事業、グローバル事業、ブランドリテール事業の3つの事業が互いにシナジーを創出しながら、自社ECである「and ST」を「Play fashion!プラットフォーマー」へと進化させることを目指しています。また、これに合わせて2025年9月1日より、アンドエスティホールディングス株式会社へと改称し、ホールディングス体制に移行することを予定しています。

 中期経営計画の概要は下の図の通りです。


対処すべき課題、具体的な成長戦略の内容は以下の通りです。

プラットフォーム事業(グループ価値革新のエンジン)

ファッションの重要性は、近年アパレルだけでなく住まいや食、旅やスポーツなど、生活の様々な場面に広がり、ライフスタイルという一つの大きな市場になりつつあります。当社では既存の業界や業態の壁を越えた新たな成長領域の育成を進めています。また、デジタル技術が生活に浸透したことにより、EC市場が大きく伸長しただけでなく、新たな顧客体験やサービスの機会が生まれています。リアル店舗とWEB双方でシームレスなサービス・体験を提供するとともに、店舗運営や商品企画、PR、物流など、あらゆる面で価値創造を進めていくことが必要です。当社は1,900万人以上の「and ST」顧客会員を有しており、この会員基盤のつながりを最大限に生かし、自社EC「and ST」をモール&メディアに育てます。そして、外部企業による出店を加速し、取扱いカテゴリーの拡充や、スタッフとお客様の関係性強化などプラットフォーマーとしての成長戦略を推進し、ID(顧客基盤)とLTV(顧客生涯価値)の双方を拡大することで、流通総額1,000億円をめざします。

 同時に、外部企業へのブランド提供などBtoB向けプロデュース事業や、ECサイト上でお客様にスタイリングを提案するSTAFF BOARDの外販によるソリューション事業、外部とのポイント連携によるユーザーサービスの拡充などにより、ファッションの可能性を広げながら、収益率の向上を目指します。

グローバル事業(グループ価値拡大のアクセル)

将来の国内アパレル市場は少子高齢化により構造的な縮小が進むことを前提とすると、長期に渡る成長の継続のため、市場が拡大するアジアへの展開が不可欠であると考えられます。当社では、2019年12月にオープンしたニコアンド上海旗艦店を皮切りに、地域ごとに異なる嗜好や生活文化を持つお客様を理解し、商品開発、MD構成、店頭表現などあらゆる面で現地のお客様のより豊かで楽しい生活に貢献する戦略を展開しております。2024年は、中国大陸でのEC拡大や、台湾や香港でのマルチブランド出店、東南アジア市場の開拓としてタイ・フィリピンへの出店を進めてきました。米国事業は消費の低迷で厳しい状況が続くなか、小売事業への切り替えやコスト削減施策を講じてきましたが、大幅な減益となりました。米国事業の早期の業績回復は困難と考え、グローバル事業のリソースを人口と経済の高成長が見込まれる東南アジアに集中するため、米国事業からの戦略撤退を決定しました。

今後は東南アジアを次の柱として投資を加速させ、リアル店舗の出店と並行して日本で培ったECプラットフォームによるOMO戦略を展開し、将来的に東南アジア地域の高い経済成長を取り込める体制を整えます。グレーターチャイナ(中国大陸・香港・台湾)では、マルチブランド戦略を強化し安定成長を図ります。

ブランドリテール事業(グループ価値創造の基盤)

長期的には、国内では少子高齢化や可処分所得の減少により、アパレル市場の緩やかな縮小が構造的に続くと予想されております。一方で、アクティブシニア、ウェルネス志向、生活雑貨のニーズ拡大など、ライフスタイルの多様化がもたらす新たな需要もあり、これらを素早く確実にとらえることが求められます。

 このような市場の変化に対応するため、当社は多数の独自ブランドを擁し、マルチブランドポートフォリオ経営を進めてきました。今後はグループ各社がそれぞれのミッションに応じた戦略策定・事業運営を行うマルチカンパニー体制へ移行し、ポートフォリオ経営を強化します。グループの中核である株式会社アダストリアでは、グローバルワーク、ラコレ、ジョージズといった注力ブランドへの集中投資、都市部への出店強化や店舗の大型化など出店戦略のアップデートにより、持続的な成長と収益向上の両立を図ります。その他の主要なグループ会社では、株式会社エレメントルールは高価格帯セレクトマーケットにおけるハイエンド顧客層の獲得、株式会社バズウィットはZ世代を中心に細分化するニーズを捉えた迅速な新ブランドの創出、株式会社ゼットンは人が集う場づくりとしての飲食事業をそれぞれ役割とし、グループシナジーを活用した成長を目指します。

 また、これらの戦略を支えるデジタル、ロジスティクス、生産機能についてはバリューチェーンの共通化などで高度化や効率化を進め、お客様に豊かな選択肢を提供します。

④ サステナブル経営の推進

アパレル産業では、商品の大量生産・廃棄や、原料栽培や生産過程での土壌・水質汚染、生産地域における労働者の人権尊重や従業員の働き方など産業全体で対応すべき課題を有しています。当社では、「ファッションのワクワクを、未来まで。」をサステナビリティポリシーに掲げ、「環境を守る」「人を輝かせる」「地域と成長する」の3つの重点テーマを定めています。環境負荷低減に向けては、衣料品在庫の焼却処分ゼロを継続、生産過程での環境負荷低減、サステナブルな原料・加工への切り替えの他、ショッピングバッグの使用量削減や衣料品回収プロジェクトの拡大などに取り組んでいます。環境負荷の可視化も進め、当社グループのCO2排出量を把握するとともに、TCFD提言に沿った情報開示を行いました。また、人権尊重や労働環境の整備、環境配慮などを明記した調達方針と調達ガイドラインを定め、取引先工場へ遵守を求めています。従業員が生き生きと長く働き続けることができる職場環境づくりのために、女性活躍をはじめとするダイバーシティの推進や、働き方の変革にも取り組んでいます。地域社会との共生においては、生産地域の持続的な発展に向けて、工場モニタリングの実施や、ビジネス全体の透明性向上を目的とした特定サプライヤーリストの公開を行い、共に成長しあえる関係を構築しています。当社はこれらの取り組みを促進することにより、ステークホルダーの皆様との関係を良好な状態で維持し、当社のミッションである「Play fashion!」と継続的な価値の創出を実現します。

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