企業兼大株主アズビル東証プライム:6845】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

  • 早わかり
  • 主な指標
  • 決算書
  • 株価
  • 企業概要
  • 企業配信情報
  • ニュース
  • ブログ
  • 大株主
  • 役員
  • EDINET
  • 順位
  • 就職・採用情報

企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、azbilグループが判断したものであります。

(1)経営方針

 azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、事業を通して持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実践することで、自らの中長期的な発展を確実なものとし、企業価値の持続的な向上を実現することで、ステークホルダーの皆様のご期待にお応えしていきたいと考えております。

 このため、“技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ”、“地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」”、“体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す”の3つを基本方針に、事業収益力の強化及びグローバルな事業基盤の整備を進めつつ、これらを基にした事業成長施策を展開しております。具体的には、ビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)の3事業において、計測と制御の技術を核に、「人を中心としたオートメーション」の発想に基づく製品・サービスを提供し、お客様のニーズや社会課題の解決に貢献することで、お客様・社会とともに自らの持続的成長を目指しております。

(2)経営戦略等

 当社は、人を中心に据え、人と技術が協創するオートメーション世界の実現に注力し、お客様の安全・安心や企業価値の向上、地球環境問題の改善等に貢献する世界トップクラスの企業集団になることを長期目標と設定、段階的に中期経営計画を立案し、この目標達成に向けた取り組みを行ってまいりました。

 これまでは、オートメーションに焦点をあてつつ単一市場への過度な集中を避け、3つの事業分野から成る複合的な事業ポートフォリオの構築を進め、顧客開拓やシナジー等による事業領域の拡大に取り組んでまいりました。これらの事業領域には、既存の製品・サービスの提供では持続的な成長の実現が厳しくなってきている成熟領域もあれば、IoTやAIといった新たな技術革新に伴い、急激に変化している領域もあります。基盤を確たるものとし、企業としての存続を確かなものとする取組みを継続するとともに、更なる成長を実現するため、国内外の事業機会の変化を的確に捉え、事業創造の視点から「商品と顧客現場の連携」によるソリューション提案力の向上に取り組み、azbilグループならではの価値の提供を実現してまいります。

 このように2030年度に向けた長期目標を掲げる当社グループは、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献とサステナビリティの観点から、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)を経営の重要な道標と位置付け、事業として取り組む領域として「環境・エネルギー」、「新オートメーション」の2つを、また企業活動全体で取り組む領域では「サプライチェーン、社会的責任」、「健幸経営※1、学習する企業体」の2つを「azbilグループSDGs目標」と定め、様々な取組みを進めております。

 2022年度は、新型コロナウイルス感染症や地政学的リスクに端を発したグローバルサプライチェーンの混乱に加え、エネルギー価格の高騰やインフレ等が世界経済に大きな影響を与えた年となりました。このような厳しい状況下において当社グループとしましては、顧客の生産性改善ニーズ等による受注を着実に捉え、調達・生産プロセス改善により売上を拡大するとともに、インフレ等によるコスト上昇に対しサプライチェーンを意識した適正な価格転嫁を含む収益力強化と、業務効率化の展開により過去最高業績を更新しました。

 2023年度においても事業環境の構造的変化が一定範囲で継続することを前提に、顧客・社会の変化を支援できることがオートメーション事業の価値との考えに基づき、アズビルならではの技術・製品・サービスを活かすことのできる「新オートメーション事業」、「環境・エネルギー事業」、「ライフサイクル型事業」という3つの成長事業領域に注力し、新たな課題の解決策を提供することにより、BA、AA、LAの3事業での成長を実現してまいります。

 2023年度以降はこれまでの取組みを起点に、持続可能な社会へ“直列”に繋がる貢献に向け、“安全を継続”しながら、更なる成長を目指し“変革”を加速してまいります。具体的には、商品力強化に向けた、製品開発・生産面での積極的な投資に加え、外部パートナーとの共創に向けた投資も進めます。成長領域としての海外事業では、カバレッジの拡大と商品拡大を強化します。こうした取組みを通じて、方針に掲げたサステナビリティ経営の推進に向け、ガバナンス体制の強化と企業成長の原動力でもある人的資本への投資に積極的に取り組むことで中期経営計画の着実な達成に繋げてまいります。

 2022年度における具体的な活動といたしましては、藤沢テクノセンター内に先進的なシステムソリューション、MEMS※2技術を活用した高機能・高性能デバイスの開発力強化に向け新実験棟が竣工し、技術開発環境の整備が進みました。また、生産面においても、中国大連生産子会社の新工場棟の竣工に続き、タイ生産子会社にも2024年春の竣工を目指し新工場棟の建設を計画するなど、グローバルでの生産基盤の強化が進みました。さらに、成長領域における事業拡大に向け、出資を含む他社協業を実施し、GX(グリーントランスフォーメーション)※3の推進を通じ脱炭素社会の実現に貢献してまいりました。

▲第103建物            ▲第104建物

    藤沢テクノセンター内に建設された新実験棟

 収益力という観点では、これまで取り組んできた受注時の採算性改善、海外生産・調達の拡大、価格転嫁といった収益力強化施策に加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を通じた業務効率化をグローバルに展開することにより、一層の収益力強化を行いました。また、資本コストを意識した経営の観点からは、投下資本利益率(ROIC)を導入したことにより、投下資本からの収益性に基づく経営資源活用の最大効率化、並びに事業ポートフォリオ管理の強化を実践することで、当社グループ全体の企業価値向上(ROEの向上)に繋げてまいりました。

 それに加え、持続的な企業価値向上の基盤として、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題とし、取締役会の監督・監査機能強化、経営の透明性や健全性の強化、執行の責任体制の明確化等に取り組んでまいりました。その取組みの一つとして、2022年6月23日開催の第100期定時株主総会にて「指名委員会等設置会社」へ移行し、各委員会の委員長は社外取締役といたしました。また、これを機に報酬委員会にて、移行後の体制に向けて役員報酬の決定方針を策定、株式報酬制度導入を含む役員報酬制度の改定を行ったことに伴い、新たな報酬ポリシーを開示いたしました。これにより、取締役・執行役等の企業価値向上への意識及び株主価値の最大化への意欲を一層高め、株主の皆様との価値共有に繋げてまいりました。

 今後も不安定な事業環境は一定の範囲で継続することを前提に、持続可能な社会に向けた取組みの強化が一層重要になると認識しております。アズビルの基幹事業であるオートメーション事業は、建物、工場、ライフラインといった領域の“空間の質”を向上させながら、資源・エネルギー使用量を適正に抑制することが可能であり、我々の事業を拡大することが地球環境負荷の低減に繋がります。持続可能な社会の実現のためには、資源・エネルギー使用量を適正に抑制する仕組みを構築する必要があり、当社グループは事業を通じて、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実現してまいります。

※1 健幸経営:健康で幸せ、活き活きとした“働きの場と人”を創るためのアズビル独自の取組み。

※2 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基板の上に微細加工技術によって集積した機器。

※3 GX(グリーントランスフォーメーション):カーボンニュートラルの実現に向けた経済社会システムの変革。

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、収益性と資本効率の向上を通して、2030年度をゴールとする長期目標※4として、売上高4,000億円規模、営業利益600億円規模、営業利益率15%程度、ROE13.5%程度を目指しております。また、この長期目標達成に向け、2024年度を最終年度とする4ヵ年の中期経営計画※4においては、最終年度に売上高3,000億円、営業利益360億円、営業利益率12%、ROE12%程度を達成することを目標としております。

※4 2021年5月14日、当社グループは長期目標、中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。

(4)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を事業活動の中心に据えて企業活動を進めています。2023年度においても当社グループは着実に安定した収益基盤構築のための財務基盤の確保と更なる事業成長に向けた外部リソースの活用も含めた積極的な投資を継続します。中期経営計画におきましても、経営資源を有効かつ戦略的に配分し、様々な取組みの加速・定着を図ってまいります。その具体的な内容は次のとおりです。

① 国内事業

3事業とも国内では成熟産業に位置しておりますが、それぞれが置かれている環境は事業毎に大きく異なります。

 ビルディングオートメーション(BA)事業は、引き続き高水準で推移する首都圏での需要を着実に捉えるため、お客様・社員の安全に十分配慮し、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体としたDX推進により、ジョブ遂行能力の強化と効率化を進めてまいります。またIoT、クラウド等の新しい技術活用も含めた商品力強化を推進することによりビジネスモデルの再構築を引き続き進めるとともに、拡大する省エネルギー・CO削減等に関するソリューションへの関心に対しても対応してまいります。

 具体的には、お客様のカーボンニュートラル※5への取組みに貢献するため、省エネルギーと再生可能エネルギーのソリューションをワンストップで提供するESP※6事業の展開を開始いたしました。また、働き方改革や感染症対策等による居住空間の価値や要件の大きな変化に対応し、空間の質向上による付加価値の提供を目指してまいります。新しい働き方やオフィス利用の多様化に対応する新空調システム等を導入し、お客様にご提案、ご体感いただけるイノベーションプラザを国内にもオープンいたしました。これらの取組みにより、お客様の事業展開にあわせて継続的な価値を提案・提供してまいります。

▲ESP事業

 アドバンスオートメーション(AA)事業では、部品調達難等による製造業設備投資への影響は予断を許さないところではありますが、中長期的にはグローバルな経済成長の継続や更なる生産性の改善要求、生産現場での人手不足、設備老朽化、脱炭素化等を背景に生産設備の自動化への投資は引き続き拡大基調にあり、製造業全般では設備投資が高い水準を継続している市場環境にあります。技術の潮流変化を捉え、今後の成長と付加価値の提供が見込める製造業の領域を選択・創出・集中することにより成長を図るとともに、グローバルな共通事業モデルに経営資源を集中することにより競争力を強化いたします。これら成長戦略と価格転嫁を含む収益力強化策をCP事業、IAP事業、SS事業の3つの事業単位でのオペレーションにより着実に実行してまいります。

 具体的には新しいオートメーションの創造に資する製品開発の加速に取り組んでおり、CP事業において2023年1月にMEMS加工技術で
デポ※7対策を強化したサファイア隔膜真空計の発売を開始し、また、SS事業においてはAIを活用したプロセス・設備の異常予兆検知システム「BiG EYESTM」がワクチン製造大手に納入開始されるなど、お客様へ継続的な価値の提案・提供を3つの事業体それぞれで実行しております。

                                        ▲BiG EYES

 ライフオートメーション(LA)事業では、ライフライン分野にて水道・各種ガスメータのIoT対応を引き続き進めております。スマートメータで計測・計量し、様々なデータをクラウドで収集、それらを掛け合わせることで、脱炭素を含めた企業の環境経営及び生活品質の向上への新たな価値提供の検討等、SMaaS(Smart Metering as a Service)時代を見据えた新たなオートメーション領域への事業展開を進めており、この度、既設直読式水道メータに取付け可能な漏水検知機能付きOCR※8アタッチメントの開発にも着手いたしました。また、戸建て住宅向け全館空調分野においても、全館空調システム事業にて培った、こだわりの空気環境をより多くのお客様にお届けするために研究・開発した製品として、全館空気清浄換気システム「e-kikubari™」を発売し、住環境の快適さを追求したソリューションを強化することで、生活関連分野の収益改善を継続してまいります。

 以上のような3つの事業軸への取組みに加えて、持続可能な社会への貢献に「直列」に繋がる「新オートメーション事業」、「環境・エネルギー事業」の成長領域の目標達成のため、出資を含む他社協業を実施します。具体的には2022年度は、環境省が設立準備を進めてきた官民ファンド「株式会社脱炭素化支援機構※9」に出資し、脱炭素に資する新たな事業機会や、脱炭素に取り組む事業者とのパートナーシップ等の創出を目指します。また、株式会社クリーンエナジーコネクト(CEC)との資本業務提携では、アズビルがエネマネ事業者※10として長年得意としてきた省エネルギーソリューションに、CECのグリーン電力ソリューションを組み合わせてワンストップで提供できるようになることで、GXの推進を通じ脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

※5 カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること。

※6 ESP(Energy service provider):エネルギー関連設備の導入、運転管理・保守メンテナンスなどのサービスまで一括で提供するビジネス。従来の省エネソリューションに再生可能エネルギーの調達サポートや運用段階での最適なマネジメントを加え、お客様の目標達成に向けてのニーズに応える事業をカスタマイズで立案し、包括的なエネルギーソリューションとして価値を提供していくサービス。

※7 デポ:デポジション(Deposition)の略語で「堆積」の意味。ここでは半導体製造の成膜工程で薄膜を生成する際にセンサ表面に付着する生成物を指す。

※8 OCR(Optical Character Recognition):光学文字認識。手書きや印刷された文字をイメージスキャナやデジタルカメラによって読み取り、コンピュータが利用できるデジタルの文字コードに変換する技術。

※9 株式会社脱炭素化支援機構:国の財政投融資(産業投資)と当社を含む民間82社からの出資を資本金としてファンド事業を行う株式会社。2050年カーボンニュートラルの実現に向け、脱炭素に資する多様な事業への呼び水となる投融資(リスクマネー供給)を行い、脱炭素に必要な資金の流れを太く速くし、経済社会の発展や地方創生、知見の集積や人材育成など新たな価値の創造に貢献。

※10 エネマネ事業者:一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)に登録されたエネルギー管理支援サービス事業者。EMS(Energy Management System)の導入や補助金申請サポート等を行う。

② 海外事業

 海外市場におきましては、事業成長と収益拡大を支えるための更なる事業基盤強化策の一つとして、各国や各地域の市場環境に対応し、付加価値の高い特長ある新製品・ソリューションの提案を継続的に強化し、グローバルでの事業拡大を目指します。東南アジア地域においては、シンガポールを拠点とする「東南アジア戦略企画推進室」により、同地域での横断的な事業推進・戦略企画・経営管理を加速させております。それに加えて2022年度からは日本-米州-アジアの3つの地域を繋ぎ、技術開発連携のグローバル体制づくりのステップとして、同室内に開発組織を設立いたしました。

 BA事業では、海外市場でのシェア拡大に向け、次世代ビルディングオートメーションシステムを軸に、国内事業モデルでの強み(省エネルギーのアプリケーション、エンジニアリング・サービス力)を展開し、各国の事業環境・事業基盤に応じた施策を実施するとともに、ライフサイクル型ビジネスモデルの段階的な強化に努めております。このような活動は、スマートビルディングソリューションの分野において高く評価され、その結果、「2022年東南アジア スマートビルディングソリューション カンパニー オブ ザ イヤー アワード」をFrost & Sullivan (フロスト・アンド・サリバン)※11から受賞し、同社からの表彰は3年連続となりました。

▲Frost & Sullivanアワード

 また、海外向け統合型ビルディングマネジメントシステム(IBMS)※12の導入に向けた新たなデジタルツイン製品の開発をシンガポール経済開発庁の支援を受けてシンガポールで開始いたしました。

 AA事業では、海外での工場向けオートメーション市場の拡大が引き続き見込まれるなか、戦略地域の営業体制強化や営業活動の質の改善を継続することで、顧客のカバレッジ拡大を通じた事業成長を継続しております。加えて、価格転嫁を含む収益力強化施策も継続し、高い利益率を引き続き確保しております。海外においても脱炭素社会に向けた対応等の新しいオートメーションが求められるなか、先進的なオートメーションの展開を通じた更なる海外での事業成長を進めてまいります。

 LA事業では、ライフサイエンスエンジニアリング領域で事業展開する欧州のアズビルテルスター有限会社において、欧州における急速なインフレ進行による費用増加への影響が懸念されるなか、適切なコスト管理、販売価格適正化等に継続して取り組んでまいります。

 以上に加えて、azbilグループの海外子会社における経営管理面におきましても、リモートでの管理体制の強化に加えて、現地法人の評価体制を拡充するなど、引き続きグループ・ガバナンスを強化し、各社の堅確な体制構築を進めてまいります。

※11 Frost & Sullivan (フロスト・アンド・サリバン):国際的な成長戦略コンサルティング・リサーチ会社。

※12 IBMS(Intelligent Building Management System):大規模複合施設の各種設備管理システムを一括管理し、効率的で高品質な設備管理やエネルギー管理、テナント情報の管理等を実現するシステム。

③ 生産・開発

 azbilグループの事業拡大に向けて、グループ生産体制を再編し、商品力強化に向けて開発リソースの集約・強化を進めてまいりました。国内では、生産機能の湘南工場への一拠点化を完了し、藤沢テクノセンターにおける技術開発機能との連携を強化したグループ内のマザー工場として機能整備を推進中です。また、藤沢テクノセンターにつきましてはクラウドやAIを活用した先進的なシステムソリューションやMEMS技術を活用した高機能・高性能デバイスの開発力を一層強化するための中核研究開発拠点として、センター内に新棟を建設、2022年9月に竣工し、技術開発環境の整備が進みました。海外では、タイに当社グループ最大規模の調節弁整備機能を持ち、さらに異常予兆検知や調節弁の診断サービス等、IoT・AI技術を活用した次世代インテリジェントサービス提供を目的にSolution and Technology Centerが稼働中です。また、グローバルでの需要拡大に対応した生産能力拡大、生産工程の高度化と更なる自動化の推進を目的に、中国大連生産子会社の新工場棟竣工に続き、タイ生産子会社にも2024年春の竣工を目指し新工場棟の建設を計画するなど、日本、タイ、中国を3極とした生産体制を強化しました。また、海外事業の更なる拡大を目指し、工業市場向け調節弁の技術開発及びグローバルスタンダードに対応した製品特性試験のため、アズビル京都株式会社に流量試験設備を新設しました。

▲アズビルプロダクションタイランド新工場棟(2024年春竣工予定)

 なお、2023年度もグローバルサプライチェーンの混乱、エネルギー価格の高騰やインフレ等は一定の範囲で継続すると想定しております。今後も生産のオペレーションを改善しながらBCPに備え在庫している部品の一部使用、市場流通品の確保、代替部品への切り替えや設計変更等の対応を行い、サプライチェーン各社と連携して、生産の継続及び製品の納期への影響軽減のための取組みを継続してまいります。

④ 経営管理

 創業時の精神である「人間の苦役からの解放」の考え方を、人間の幸福のために社会に貢献する価値観として受け継ぎ、グループ理念である「人を中心としたオートメーション」の実践を通じて、あらゆるステークホルダーと信頼関係を構築することにより継続的な企業価値の向上を図り、人々の「安心、快適、達成感」を実現するとともに、地球環境に貢献し、持続可能な社会に「直列」に貢献することをサステナビリティ方針としております。

 2022年8月には、脱炭素やコロナ禍等、顧客ニーズ、社会が大きく変化するなか、事業環境の変化(機会とリスク)を勘案、ステークホルダーの皆様のご意見を伺い、azbilグループが「長期にわたり取り組む重点課題」を特定しました。今後は、特定した重点課題の更なる評価・優先度検証とそれぞれの目指す姿に向けて、当社グループのサステナビリティ推進体制を通じて、目標設定も含めた取組みを強化してまいります。あわせて重要なリスクの選定プロセスを大きく見直し、そのリスクの責任者を明確にすることで、効率的かつ実効的にリスク低減を実行してまいります。

 経営管理面では、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用も視野に入れた会計水準の向上と、それに伴う内部統制の強化を進めてまいります。また、経営の公正性、中立性及び透明性を高めるべく、コーポレートガバナンス・コードへの対応を継続しながら、全てのステークホルダーの皆様との間で建設的な対話を進めるための体制整備を積極的に進めております。

 なお、azbilグループとして、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも積極的な活動・取組みを進めております。E(環境)に関しては、TCFDの国際的な枠組みに賛同表明し、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標について有価証券報告書等で開示するほか、自らの事業活動に伴う温室効果ガス排出量(スコープ1+2)に加えてサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(スコープ3)削減目標を設定し、その実現に取り組んでおります。また、地球環境に配慮した商品・サービスの創出・提供に向け、2030年度の目標として「全ての新製品をazbilグループ独自のサステナブルな設計※13とする」という環境・エネルギーにおけるSDGs目標の新たな指標を決定いたしました。

 S(社会)については、「人権」、「労働」、「環境」、「腐敗防止」に係わる「国連グローバル・コンパクト」に署名し、中期経営計画において人的資本・知的財産への戦略的検討を行っております。また、社員が健康で活き活きと仕事に取り組んでいけるようにするための総合的な取組みを「健幸経営」と定義し、様々な制度・施策の整備・展開を実施してまいりました。その取組みの一つでもある育児と仕事の両立支援制度の拡充について、この度、厚生労働大臣に評価頂き「子育てサポート企業」として「プラチナくるみん認定」※14を受けました。

 G(ガバナンス)については2022年に「指名委員会等設置会社」へ移行し、コーポレート・ガバナンスの更なる改革を進め、監督機能と執行機能の明確な分離を図ることで意思決定の迅速性を高め、経営監督機能の更なる強化を進めております。

 これらの取組みの結果、環境省が主催する第4回ESGファイナンス・アワード・ジャパン※15環境サステナブル企業部門において、開示充実度が一定基準を満たしている企業として「環境サステナブル企業」に選定されました。また国際環境非営利団体であるCDP※16により、「気候変動」に対する取組みとその情報開示に関して世界的に優秀な企業として評価され、Aリスト(最高評価)に2年連続で選定されました。

                                 ▲ESGファイナンス・アワード・ジャパン

 2023年度においても、持続可能な社会の実現に「直列」に繋がり、企業価値の向上を目指してESGにおける各課題を整理し、今後更なる改善への取組みを継続してまいります。

※13 地球規模の環境課題(脱炭素化、資源循環、生物多様性保全)解決に貢献する製品の創出・提供を目指した設計。

※14 プラチナくるみん認定:次世代育成支援対策推進法に基づき、行動計画を策定し、計画に定めた目標を達成した企業として「くるみん認定」を受けた企業のうち、より高い水準の取組みを行った企業が受けることができる特例認定。

※15 ESGファイナンス・アワード・ジャパン:ESG金融又は環境・社会事業に積極的に取り組み、インパクトを与えた機関投資家、金融機関、仲介業者、企業等について、その先進的取組みなどを広く社会で共有し、ESG金融の普及・拡大に繋げることを目的として環境大臣が表彰するもの。環境サステナブル企業部門では、重要な環境課題に関する「リスク・事業機会・戦略」「KPI」「ガバナンス」の開示充実度が一定の基準を満たしている企業を「環境サステナブル企業」として評価・選定する。

※16 CDP:企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体。2000年に英国に設立され、130兆米ドルを超える資産を保有する680以上の投資家と協働し、資本市場と企業の調達活動を介して、企業に環境情報開示、温室効果ガス排出削減、水資源保護、森林保護を働きかけている。

PR
検索