企業アイダエンジニアリング東証プライム:6118】「機械 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針 

 当社グループは、成形システムビルダとして発展し、人と社会に貢献することを企業理念として掲げております。

 この企業理念を基本姿勢として、金属その他各種素材に対応する独創的な成形システムの開発・製造・販売・サービスを通じて、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会などのステークホルダーと長期的な信頼関係を構築して、企業理念に掲げる人と社会への貢献を実現していく所存です。

(2) 目標とする経営指標

 当社グループでは2023年度より新たな中期経営計画(2023年度~2025年度)をスタートさせました。

 中期経営計画の最終事業年度となる2025年度における売上高は780億円、営業利益は58億円を目指します。

(3) 中長期的な会社の経営戦略

2023年度よりスタートした中期経営計画では、自動車の「電動化」や「軽量化」といった次世代自動車のモノづくりや、顧客の生産設備の自動化やデジタル化による生産性向上、顧客の生産現場における省エネ・脱炭素といった環境負荷低減等、顧客や社会の課題に対し、アイダの技術や製品により解決策を提供することで企業価値を高め、ステークホルダーとともに成長していくという経営方針を掲げ、①事業ポートフォリオの変革、②新たな付加価値の創出、③経営基盤の強化、④環境対策・社会貢献、⑤資本政策という5つの「基本施策」を展開しております。


 中期経営計画の2年目となる2024年度においては、中・大型の個別プレス機やサービス売上が堅調であったことや円安効果で通期売上実績は前年対比4.5%増加の760億円となり、中期経営計画で掲げた目標750億円を前倒しで達成しました。利益面では、前年度の低採算の個別プレス機案件が剥落したことや、原材料費や人件費増加を価格転嫁やコスト削減で吸収したことにより、プレス事業の粗利率が改善しました。また、粗利率の高いサービス売上の増加が粗利増に貢献し、営業利益は前年対比53.0%増加の55億円となりました。

EVモーター向けの高速プレス機の生産については、200億円以上を安定的に生産できる体制となりましたが、全世界でEV向け投資が低迷し、受注が大幅に減少しています。さらに、年度後半から米国の通商政策の影響で世界的に設備投資が落ち込み、受注が減速しました。今後も各地域で経済ブロック化の動きが強まり、ビジネス環境は厳しさを増していくと思われます。

(4) 当面の対処すべき課題の内容等

 中期経営計画最終年度となる次年度においては、2024年度に認識された課題も踏まえつつ以下のような施策を展開してまいります。

[基本施策]

① 事業ポートフォリオの変革

<プレス事業>  

EV化による自動車部品構成の変化を受け、競争力が低下しつつある成熟製品からEV関連、環境関連等の成長製品へのシフトを進めています。昨今、EV需要の減速で高速プレス機の受注が落ち込んでいますが、長期的にHV車や燃料電池車等を含め自動車の電動化の流れは不変であるとともに、エアコン等の自動車以外の需要も見込まれることから、工場レイアウト見直しや新規導入設備の稼働率向上等、生産合理化への取組みを継続しつつ、高速プレス機の機能面での更なる製品差別化を進めてまいります。

 当社は従来からプレス機械の生産については、世界5極で生産工場を備え地産地消を進めてきております。米国においても非日系顧客向けプレス機械については基本的には現地生産で対応しておりますが、今後も部品の現地調達比率を高め米国内での競争力を高めてまいります。

<自動機・FA事業> 

 製造業の生産現場における省力化とデジタル化が進んでおり、自動機・FA事業は今後の拡大が見込める成長分野と位置づけております。前年度はEV駆動用モーター向け高速プレス機の周辺自動機を自社開発のうえ自社生産を開始いたしましたが、プレス機械とのパッケージ販売だけでなく、自動機単体での受注も獲得しました。また、タンデムラインの高速プレス間搬送装置として自社開発したD-MATについても、当搬送装置単体での受注を獲得する等、自動機単体での競争力は向上しております。今後も自動機における更なる製品差別化を進め、自動機分野でのアイダブランド浸透に注力してまいります。

 自動機・FA製品の海外ユーザーは、輸送コスト、サービスサポート、製品仕様の観点で、自国での現地調達志向が強いことから、現地パートナー業者の確保を重点課題と位置づけていましたが、今般2025年4月に米国において高い技術力とサービス力を有する自動機メーカー HMS Products Co.を買収することができました。同社をアイダグループに取り込むことで、北米で自動機も含めたプレスシステムのパッケージ販売を拡大いたしますが、特に米国関税問題の影響が広がるなか、パッケージで米国産製品を供給できる強みを活かし、米国での事業拡大を図ります。今後も引き続き、海外市場での自動機供給能力を向上させるべく、現地業者の買収や業務提携等を積極的に活用してまいります。

<サービス事業> 

 世界中で多くのアイダ製既設プレス機が部品交換や近代化の時期を迎えつつあるなか、サービス事業は成長分野の大きな柱となります。特に昨今は、景気の不透明感からユーザーが新規設備投資に慎重になるなか、近代化を含めたサービスビジネスへの期待が高まっている状況でもあり、サービス業務における高度な専門知識を持つ人財確保のため、処遇見直しや社内公募等による他部門からの配置転換を促進しています。また、DX・AIを活用した予防保全やプレス診断機能の充実化により、近代化やパーツ販売等の潜在需要の掘り起こしに繋げてまいります。
 ② 新たな付加価値の創出

<EV向けソリューション>

 前年度のEV駆動用モーター向け高速プレスラインの商品化に続き、2024年度はEV駆動用モーターコアの生産性向上に向け、業界最大エリアを誇る大型高速プレス機の販売を開始し、新規受注も獲得しています。高精度を維持したエリア拡大は難易度が高く、「競合他社の追随を許さない」大きな差別化商品としてグローバルでの普及拡大を図ります。また、EVバッテリーケース分野については、環境に優しい新たな成形機の開発が完了し、2025年6月より販売を開始いたします。

<エネルギー・環境向けソリューション>

EV以外の代替エネルギー関連分野では、2024年度に水素発電装置におけるバイポーラプレート用金属セパレーター成形の専用機として従来の精密プレス機をさらに改良した大型精密プレス(BEX)を商品化しました。現在、欧州の研究機構Fraunhoferと協働で金型トライを実施中ですが、ここで得られた情報を基に更なる改良を進めてまいります。水素発電は脱炭素の切り札として自動車以外にも大型施設や家庭での活用が期待されています。引き続き機能改善と需要の掘り起こしに注力してまいります。

<DX・AIによるソリューション>

 プレス機械の稼働状況を可視化するシステム「Ai CARE」をプレス機械とセットで販売しておりますが、2024年度はこの「見える化」機能に、AI等による分析・診断機能を付加した「AIDAデータアナリティクスシステムAi CARE」の販売を開始いたしました。AIによるデータ分析で金型寿命診断や故障予兆診断等を提供します。また、ChatGPTで当社の工法ノウハウ等を提供するQ&A機能も付加され、生産現場の意思決定を強力にサポートします。引き続きユーザーからのフィードバックを参考に改良を重ねるとともに、サブスクリプションビジネスの拡大を図ってまいります。

 今後もAIの技術進歩は加速していきます。当社はプレス機械単体だけではなく金型から材料搬送も含めパッケージで生産システムを提供するノウハウと知見を有しており、AI技術やロボット制御技術等の活用により、顧客の生産現場の更なる自動化や高度化等のソリューション提供を進めてまいります。 
 

③ 経営基盤の強化

<人的投資>

 当社は人財こそが最も重要な財産と位置づけ、従業員が最大限に能力を発揮できるよう「働きがい」向上のための環境整備を継続しております。給与面では2023年度、2024年度に続き次年度も積極的な賃上げを実施する予定です。また、成熟分野から高速プレス機やサービス等の成長分野へのリソースシフトの支援やDX人財育成のための社内リスキリング研修等、リスキリングのための実務研修等を積極的に実施しております。また、中途採用者、女性、外国人、シニア人財といった多様な人財を積極的に活用・登用するとともに、多様な人財の能力を最大限に引き出すべく「働き方の多様化」を引き続き進めてまいります。なお、当社の従業員の「こころ」と「からだ」の健康増進に向けての取組みが評価され、当社は2024年度から健康経営優良法人(大規模法人部門)に認定されております。今後も従業員の「働きがい」向上に向けた健康経営を継続推進してまいります。

④ 環境対策・社会貢献

<脱炭素への取組>

 当社は2050年のカーボンニュートラル達成に向けた環境対策を展開しています。

2024年度はScope3を含めたグローバルベースでのCO₂排出量の開示を開始いたしました。本邦におけるScope1、Scope2の削減については、本社工場電力の一部自家発電化に加え、発電用ガスにカーボンニュートラルLNGを導入、さらに次年度は再生可能エネルギー由来となる非化石証書付きの電力を採用することにより、CO₂排出量のネットゼロを達成できる予定です。今後はサプライチェーン企業との協働等を通じ、Scope3削減に向けての追加施策の検討を進めていく予定です。

<環境に優しい製品の提供>

 当社はこれまでも顧客の生産現場における省エネ、省資源に資するプレス製品を数多く提供してきております。前述の「②新たな付加価値の創出」におけるEV向けソリューションや代替エネルギー関連の開発等により顧客の温室効果ガス削減及び環境負荷軽減に貢献してまいります。

<地域貢献・地域活性化>

 本社が所在する神奈川県相模原市ではリニア中央新幹線の神奈川県駅の建設が進んでおり、当社も地元の発展・活性化に向け、さまざまな取組みを行っています。当社敷地内に設置したEV充電施設の一般開放や、地元サッカーチームSC相模原のスポンサーとしてスポーツを通じた地域活性化活動等に取組んでおります。次年度は気候変動対策に向け、パートナーと協働での「森をつなぐアクション」と題して、森林保護・育成に向けた取組みを展開していく予定です。

⑤ 資本政策、資本コストや株価を意識した経営 

 現行の中期経営計画では「事業ポートフォリオの変革」や「新たな付加価値の創出」等の重点施策を展開することでPBR1.0倍超を達成するという方針を掲げておりますが、今般、この方針を踏襲しつつも、資本政策をより具体化することで、この道筋をより明確に示すことといたしました。①まず、ネット現預金については、月商の3ヶ月分を適正水準とし、超過分を投資と株主還元に優先充当してまいります。②次に、ROEについては、現行の資本コスト水準(6.5%~7.0%)を上回る8%以上を目指してまいります。③また、バランスシートマネジメントとして、自己資本についてはROE8%以上を前提とした適正水準を目指すとともに、現預金や棚卸資産の水準についても適正水準を定めて是正してまいります。④そして、2027年度までのキャピタルアロケーションにおいて、投資や株主還元のバランス確保や①~③を実現する資金の使い道を明確化しました。⑤最後に、株主還元について、DOE3%以上、総還元性向100%以上という方針を掲げ、利益変動の影響を受けにくい安定配当の実施と自己資本の蓄積抑制に取組みます。

⑥ 今後の成長戦略と次期中期経営計画について

2025年度は中期経営計画の最終年度となりますが、EV投資の落込みや米国の通商政策等、当社を取り巻く環境は中期経営計画のスタート時から大きく変化しております。また、モノづくりについても、自動車の構造変化やAI等の技術革新に伴い変革のうねりが起きています。当社は108年にわたり業界のパイオニアとしてプレス機械の進化をリードしてまいりましたが、もはや従来のビジネスの延長に成長戦略は描けないと考えています。昨今の環境変化によるマイナス影響は避けられませんが、中長期的には、自動車電動化や代替エネルギー需要の拡大、地産地消による競争力確保、AI活用による製品差別化等、当社にとって今後のビジネスチャンスは広がっていると認識しています。当社はこうした環境変化を踏まえた新たな成長戦略を次期中期経営計画でお示ししたいと考えております。

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