うかい
【東証スタンダード:7621】「小売業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は企業理念として、基本理念「利は人の喜びの陰にあり」、経営精神「当社にかかわるすべての人々を大切にし、そしてそのすべての人々により大切にされる企業でありたい」、店舗理念「100年続く店づくり」を掲げております。ステークホルダーの皆様を大切にし、そして大切にされる企業になることこそ100年続く企業への道筋であると考え、全従業員がこの理念を共通の指針として行動し、当社の事業活動を通して多くの方に喜び、感動、豊かさ、絆、和みなどをご提供することで社会に貢献することを第一義に、魅力ある企業をつくりあげてまいります。
(2) 経営環境
当事業年度(2024年4月1日~2025年3月31日)におけるわが国の経済は、雇用・所得環境が改善するなかで緩やかながら回復基調で推移いたしました。一方で、米国の貿易政策による景気後退懸念の増大、継続する物価上昇の個人消費に及ぼす影響、ウクライナ・中東地域をめぐる地政学的リスク、加えて金融市場の変動による資金調達の環境の変化等、留意すべき事象が多く存在しており、先行きの不透明感は継続、慎重な経営判断が求められる状況にあります。
当社が属する外食産業においては、新型コロナウイルス感染症の収束による社会経済活動の正常化や、訪日外国人観光客の増加によるインバウンド需要拡大等で人流の回復が一段と進み、緩やかな回復基調が続いている一方で、慢性的な人手不足による人件費の高騰が企業経営に負担をかけております。加えて、原材料価格の上昇が収益構造を圧迫、価格転嫁の難しさから利益率の低下を招く可能性もあります。物価高による消費マインドの低下が外食産業の回復に水を差す懸念もあり、市場に与える各種影響を慎重に見極める必要があります。
(3) 長期経営構想2035 / 中期経営計画2030
当社が属する外食産業を取り巻く環境は、かつてない速度で変化し続けています。国内市場においては少子高齢化による労働者数や消費者数の減少が進み、競争が激化するなかで外食市場の成熟化が進展しています。従来のビジネスモデルでは成長を維持することが難しくなりつつあり、革新的な戦略の策定が求められています。
新型コロナウイルス感染症の収束に伴う社会経済活動の正常化は、消費者ニーズに大きな変化をもたらしました。外食業界においては、利便性を重視したデジタルオーダーの普及や、新しいライフスタイルに適応したサービス提供が求められています。加えて、食の安全性や健康志向の高まりにより、提供するメニューや食材の選定にも新たな基準が必要となるなど、消費者の価値観の変容が顕著になっています。
さらに、気候変動と持続可能性を考慮した規制強化が進むなか、環境負荷の低減を目指した取り組みが企業の競争力を左右する要因となっています。食品ロス削減、持続可能な調達、エネルギー効率の向上など、環境対応への責任を果たすことが求められています。
また、テクノロジーの進化は外食産業にも大きな影響を与えており、フードテックやAIを活用した業務効率化が重要な経営課題であり、食材の選定・管理、顧客体験の向上、労働環境の改善など、多方面での技術活用が経営の持続性を左右する時代となっています。
このような変化のなかで、当社は未来を見据え、長期的な成長を実現するための長期経営構想2035(10年後の2035年にありたい姿)を策定しました。策定した長期経営構想は「多様な食の業態に携わり、永続企業・ブランドを築き、すべての人に笑顔や感動、幸せな時間をプロデュースする」、この構想を実現するための行動指針として「未来に向かって前に進む」を掲げます。この長期経営構想を実現するため、重点施策として定めた「収益力の向上」と「人材力の強化・現場環境の充実」を好循環させることで、ブランド価値の向上、人材育成、新たな収益源の確立など、企業としての成長戦略を推進し、持続可能なビジネスモデルの構築と中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。
<長期経営構想>
「多様な食の業態に携わり、永続企業・ブランドを築き、すべての人に笑顔や感動、幸せな時間をプロデュースする」
<長期経営構想2035で目指す姿>
■うかいブランドを核とし、時代の変化に順応できる構造を築く
「うかい鳥山」や「うかい亭」に代表される、これまでのハイブランド店舗に捉われず、複数の飲食事業を立ち上げ、展開することで、時代の変化に順応できる構造を築いてまいります。またブランドの持つ独自性や価値を維持しつつ、多様なターゲットに向けたビジネスを展開し、より広範囲な市場にアプローチできるようにします。たとえば、従来のお客様層から間口を広げた新業態の立上げやブランドプロデュース事業も視野に入れることで、リスク分散と成長機会の拡大を図ります。
■うかいブランドと新規事業の相互活用
新規事業への投資は単なる拡大戦略ではなく、うかいブランド自体の成長に貢献するものとして考えます。新規事業で得られたデータを既存事業にフィードバックすることで、既存店舗のサービス品質向上に役立て、ブランド全体の競争力を高めてまいります。
■事業間のシナジーを意識し、基盤を確立する
複数の事業を展開する場合、それぞれの事業が相互に影響し合い、価値を高め合うことが重要になります。そのため、既存事業、新規事業が価値を高め合い、成長スピードを加速し、企業全体としての強固な経営基盤を築いてまいります。
<行動指針>
「未来に向かって前に進む」
・2024年に創業60周年を迎え、創業第2章として、伝統と革新を内に秘め、未来に向かって、前に進む。
・既存の手段や仕組みに囚われず、自由に発想し新しいことに挑戦する。
・攻めの姿勢を心がけ、失敗を恐れずに挑戦し続ける。
・社内外に志を共にできる同士を作り、共創を心掛ける。
<重点施策>
■収益力の向上
・東京芝とうふ屋うかいの閉店を見据え、収益力の向上に今一度、集中する。
・既存のレストラン、物販、文化事業に加え、子会社を中心とした新たなビジネスモデルの開発を進め、新たな収益の源泉を確立する。
・新たな収益の源泉を確立することで、もう一つの重点施策(人材力の強化と現場環境の充実)へ投資することが可能となる。
■人材力の強化と現場環境の充実
・国内外で高い価値・信頼がある「うかいブランド」は、品質とサービスの高さに裏打ちされ、当社で働く従業員によって支えられている。そのため、ブランドの維持・強化には人材育成と働きやすい現場環境の整備が不可欠になる。
・当社を選択し、働いてもらう環境整備(人材育成、社内制度等)を継続し、加えて、時代に合わせた現場環境の充実を図ることで、従業員の満足度を向上させ、優秀な人材を確保する。例として、2025年度に開講した社内教育制度「UKAI Academy(うかいアカデミー)」を通じて、料理・サービスのプロフェッショナル人材の育成を推進する。
・働きやすさが向上することで、従業員が集まり、定着率が上がり、店舗運営の質を向上させ、より良いサービスを提供することができる。
・結果として収益力が向上し、企業のさらなる成長や新規事業への投資が可能になり、また従業員をはじめ株主様やお客様等のステークホルダーの皆様に還元することができる。
<中期経営計画2030>
長期経営構想2035の実現に向けて、2030年のあるべき姿をバックキャスティングし、2025~2030年までの5ヶ年を中期経営計画2030と設定しました。中期経営計画では2025年4月3日に設立した子会社(株式会社UKAIzm corporation)による新規事業の創出と物販事業を成長の柱と位置づけ、積極的に強化・拡大してまいります。
■UKAIzm
UKAIzmは新たな企業価値の創造を目指し、新規事業の創出を目指します。「うかい」の既成概念にとらわれず、自由な発想で新しい事業を立ち上げ、展開していくことで、さらなる事業拡大を図ります。この新規事業の創出は、当社の持続的な成長を支える重要な要素となります。既に一部、実績を上げており、うかいブランドにまで波及する効果を期待できると考えております。
展開を予定している事業は主にブランドプロデュースと新業態開発になります。これまでの海外展開での経験、改良点を活かし、国内・海外で新たなブランドプロデュース戦略を実施します。今後は業務提携だけではなく、コンサルティング業の展開も検討しております。新業態開発はこれまでのハイブランド店舗から、お客様層を広げて日常的に利用できるようなセカンドブランド店舗を多店舗展開し、マルチブランド戦略を実施いたします。そのほか既存レストラン事業では使用しない周辺食材をフル活用し、スケールメリットも効く業態や、既存レストラン事業をリブランディングした業態の創出も実施いたします。これまでのうかいの本質である料理やサービスの品質は変えず、特定料理・テーマに特化した専門店の展開や、少人数、少額投資で運営可能な業態の開発も目指します。
■レストラン事業
レストラン事業は、当社の基盤となる屋台骨であり、UKAIzmの新規事業展開を支える事業です。レストラン事業が生み出すブランド価値と顧客体験が、UKAIzmの新たなビジネスの可能性を広げる役割を果たします。これまで品質向上の追求・海外事業への挑戦などを実施してまいりましたが、引き続きブランド価値の維持と段階的な拡大を推進し、加えて、UKAIzmの事業活動による好循環で両事業のシナジーを最大化し、収益の向上を実現してまいります。
■物販事業
物販事業は、EC販売や関西圏への出店など、多様な施策を展開してまいりました。2024年9月には日本の玄関口である東京駅構内商業施設のグランスタ東京にオープンし、当事業年度の売上高増加に寄与しました。しかし、さまざまな出店要請や需要の高まりに対して十分に応えきれなかった側面もあり、今後は製造キャパシティの拡大が重要となります。そのため、新たな工房の設立による生産能力の向上と、新規出店を通じた市場拡大に取り組み、持続的な成長を図ります。新工房は単なる工房ではなく「体験型工房・併設カフェ」を構想、2026年初夏稼働を目指します。製造キャパシティの増加により、商品供給量が改善・売上高増加に寄与、見学体験スペースを含むカフェ店舗エリアは地域貢献とブランド発信の役割を担っていく予定です。
■文化事業
文化事業は、他事業とのシナジーが限定的であるため、その展開について慎重な検討が必要と考えております。今後の市場動向や企業ビジョンに照らし合わせながら、最適な形での運営方針を策定してまいります。
(4) 長期経営構想2035、中期経営計画2030とサステナビリティ
当社は、社会課題に対する当社の事業価値を明確にするため、ESG経営を推進し、持続可能な社会の実現にステークホルダーの皆様と共に取り組んでおります。また基本理念である「利は人の喜びの陰にあり」を礎に、経営精神「当社にかかわるすべての人々を大切にし、そしてそのすべての人々により大切にされる企業でありたい」と考えており、この基本理念、経営精神と共に、サステナビリティへの取り組みを更に進化させ、パーパス(おもてなしで人を豊かに)の実現を目指すことを目的に、当社が取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を以下のように特定しました。
・食の安全・安心
・コンプライアンスの遵守・コーポレートガバナンスの強化
・顧客プライバシーの保護
・仕事への誇りや働き甲斐が持てる労働環境づくり
・人材育成・イノベーションの創出
・ダイバーシティ&インクルージョンの推進
・地域社会への貢献を通した食文化発展への寄与
・循環型経済への貢献・廃棄物、食品ロスの削減
・低炭素社会への貢献・省エネ活動の推進
・持続可能な水資源の利用
・生物多様性の保護
当社は、長期経営構想2035、中期経営計画2030に加え、以上の基本理念、経営精神、サステナビリティにかかるマテリアリティ等に取り組み、ステークホルダーの皆様に価値をご提供し、長期経営構想を実現してまいります。
(5) 経営上の目標と達成状況を判断するための経営指標
長期経営構想2035、中期経営計画2030で重視している経営指標として、売上高、営業利益、営業利益率、自己資本利益率(ROE)、新規事業創出件数の5つを設定しました。
売上高と営業利益の向上は、事業の安定成長を示すものであり、企業の競争力を高めるために欠かせません。営業利益率の改善は、経営の効率性を向上させることを目的としており、持続的な収益性の確保に直結します。また、自己資本利益率(ROE)は、株主価値の最大化を目指す指標として位置づけ、資本の有効活用を重視しています。さらに新規事業の創出は、変化する市場環境に対応しながら、新たな収益源を確保するための鍵となります。
中期経営計画にあたる2030年度は売上高14,000百万円、営業利益850百万円、営業利益率6.1%、自己資本利益率(ROE)5.0%、新規事業創出件数5件を目標として定めました。2035年度には売上高16,000百万円、営業利益1,200万円、営業利益率7.5%、自己資本利益率(ROE)8.0%、新規事業創出件数は10件(2030年から純増5件)を目指します。
本経営指標の実現に向けて、重点施策を実行し、売上高の拡大や営業利益の向上を推進してまいります。加えて、積極的な新規事業の開発を進めることで、既存事業の枠を超えた成長機会を創出し、全体の競争力を強化します。今後も市場動向を的確に捉えながら、革新的な取り組みを加速し、企業価値のさらなる向上を目指してまいります。
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