他社比較
商船三井 企業概要
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社が判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、商船三井グループの企業理念、グループビジョン、価値観・行動規範(MOL CHARTS)を以下の通り設定しています。
脱炭素化を始めとする環境意識の高まりや、企業として社会のサステナビリティに貢献することへの期待が高まるなか、輸送にとどまらない事業領域への拡大やそれに伴う価値観の変化を反映し、更なる成長を実現するために、社会における当社グループの存在意義、目指す姿、および価値観を確認したものです。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題
当社は、2017年度よりローリング方式の経営計画を導入し、2027年のありたい姿に向けて、財務体質の改善と事業ポートフォリオの変革を進めてきました。昨年度の経営計画「Rolling Plan 2022」では、「グループ総合力を発揮し、グローバルな成長に挑む」をテーマに、3つの戦略に沿って様々な取組を進めました。ポートフォリオ戦略では、不動産事業やクルーズ事業をはじめとする非海運事業への投資を積極的に進めました。環境戦略では、「環境ビジョン2.1」に沿って環境投資を着実に積み上げました。地域戦略では、インドをはじめとした海外での営業活動強化とそれを支える体制整備を進めました。また、当社は2022年4月にサステナビリティ計画「MOL Sustainability Plan」を策定し、「Rolling Plan 2022」と「MOL Sustainability Plan」を企業活動の両輪として取り組むことで、持続可能な社会の実現及び当社グループの企業価値向上を目指してきました。
その結果、2022年度は前年度から続く好調な海運市況の恩恵を受け、2年連続で過去最高益を更新する業績を達成することができました。
今年度から開始する新たな経営計画「BLUE ACTION 2035」ではローリング方式を改め、2035年度をゴールとする中長期経営計画として策定しました。2021年度以降、コンテナ船事業を含む当社グループの各事業の業績が好調に推移した結果、当初2017年に掲げた2027年度の財務目標を2年連続で達成し、財務体質は急速に改善しています。グローバルな社会インフラ企業への飛躍に向け、次のステージをあらためて構想・設定し、長期的な戦略に基づき、ありたい姿へ向かう道筋を示しています。
「BLUE ACTION 2035」では、「Rolling Plan 2022」と「MOL Sustainability Plan」それぞれの要素を融合させ、サステナビリティ経営をより強く表現しています。当社グループのサステナビリティ経営は、長期的な戦略に基づき、社会課題や環境面からも受容できる、持続的な成長の実現をめざすものです。企業理念・MOL CHARTSの精神に沿って「BLUE ACTION 2035」に取り組むことで、サステナビリティ課題を解決し、さらには企業価値の向上、最終的にはグループビジョンの実現へと繋げていきます。
当社は、「BLUE ACTION 2035」の策定にあたり、長期的な外部環境の変化を独自に分析し、当社グループの強みを再確認した上で、2035年のありたい姿をグループビジョンと定義しました。それを実現するためのメインシナリオが事業ポートフォリオ変革です。その実行に向けて、「Rolling Plan 2022」から継承する“3つの主要戦略”に加えて、その基盤整備にもあたる“サステナビリティ課題への取組”のうち最重点5項目を「BLUE ACTION 2035」の中心に据えています。
“サステナビリティ課題への取組”の詳細については第2 事業の状況 2「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
「BLUE ACTION 2035」では、2035年度をグループビジョン実現の時期として設定していますが、ゴールまでの期間を3年+5年+5年の3フェーズに分け、バックキャスト思考で計画を策定しています。2023~2025年度のPhase1では、今回掲げる“2035年のありたい姿”と“目指す事業ポートフォリオ”を堅持します。2024年度以降は毎年、Core KPIをモニタリングしながらアクションプランを更新していきます。
<BLUE ACTION 2035で目指す事業ポートフォリオ>
BLUE ACTION 2035で目指す姿として以下2点を設定しました。
•海運不況時でも黒字を維持できるポートフォリオへの変革
•成長投資の積上げと株主の期待に応える利回り(ROE 9~10%)の両立
これを達成するための事業ポートフォリオとして「税引前利益 4,000億円/総資産 7.5兆円」と「市況享受型:安定収益型= 40:60 のアセット比率」の目標を設定し、以下のような具体的なリバランス計画を策定しました。
海運市況との相関性が高い市況享受型事業において海運好況時には高リターンを得る一方、安定収益型事業の比重をより高め、海運不況時でも黒字を確保することを目指します。安定収益型事業では、海運の長期契約のみならず、Rolling Planから標榜してきた非海運事業をさらに成長させます。
<BLUE ACTION 2035における主要なテーマ>
BLUE ACTION 2035では3つの主要戦略とサステナビリティ課題への取組の内最重点5項目を中心に据えていま
す。各戦略・項目の要点は以下の通りです。
(1)ポートフォリオ戦略
・事業別ROA目標を設定し、個別投資採算基準もそれに沿ったものに変更する。利益規模だけでなく資本効率の改善を図り、全体としてROA資本コストを上回るROAを達成すべく、高リターンを期待する市況享受型事業に継続投資する一方、低リターンながら安定収益型である事業への投資の傾斜を高める。
・IFRS(国際会計基準)の早期適用に取り組む。
・効率的なポートフォリオ変革のため、M&Aをスピード感を持って推進する。
(2)地域戦略
・事業ポートフォリオ変革を支えるグローバルな事業推進体制へ移行する。
(3)環境戦略(サステナビリティ課題「環境」への取組)
・2023年4月に更新した環境ビジョン2.2の下、環境への取組をリードする存在であり続ける。
・2020年代の外航ゼロ・エミッション船就航に向けた準備も進める。
・燃料需要家としての立場を活かして燃料調達・サプライチェーンに参画し海運業界におけるクリーン燃料サプ
ライチェーンの構築を後押しする。
(4)サステナビリティ課題への取組 「安全」
・海運のみならず非海運事業を包摂する当社グループ全体の安全指針「安全ビジョン」と、具体的な行動計画
「SAFETY ACTION 1.0」を2023年度中に策定する。
(5)サステナビリティ課題への取組 「人財」
・2023年4月に発表した「商船三井Human Capital(HC)ビジョン」の下、グループ・グローバル一元化での人財計画を推進する。
・2023~2025年度のPhase 1を「変革期」と位置づけ、行動計画「HC ACTION 1.0」に着手する。
(6)サステナビリティ課題への取組 「DX」(Digital Transformation)
・2023年2月に発表したDXビジョンの下、全体ロードマップに加えてPhase1の3か年における行動計画「DX
ACTION 1.0」も策定。ビジネスとカルチャーの両面から変革を推進する。
(7)サステナビリティ課題への取組 「ガバナンス」
・グループビジョンの実現を支えるガバナンス全般の高度化を推進する。
<BLUE ACTION 2035 Phase 1の具体的なアクションプラン>
各事業本部の目指す方向性とPhase 1のアクションプランは以下の通りです。
ドライバルク事業 | 2035年に向けた方向性: 貨物構成の変化に対応しつつ市況エクスポージャーを戦略的に取って、好況時には高リターンを獲得する。 |
Phase 1の具体的なアクションプラン: ・脱炭素・低炭素化社会の進展により創出される新規貨物・拡大が見込まれる既存貨物の輸送需要取り込み ・世界経済のサプライチェーン・トレードパターンの変化に対応するグローバルな営業ネットワーク整備 ・貨物需要・トレードパターン・船腹需給の変化に適切に対応するためのインテリジェンス機能の強化 ・GHG排出削減に寄与する環境対応船整備の強化 ・高いリターンを実現するための市況エクスポージャー許容度の引き上げ | |
エネルギー事業 | 2035年に向けた方向性: エネルギーシフトの大きな流れに積極的に対応し、Green Transformationをリードする存在であり続ける。 |
Phase 1の具体的なアクションプラン: ≪タンカー(含むケミカル船)≫ ・Methanex社との提携なども活かした、船舶燃料としてのクリーンメタノールの調達、事業機会の獲得 ・代替燃料船隊による脱炭素ソリューションの提供 ≪液化ガス船≫ ・今後の需要増を見据えLNG船の中短期契約向け船隊を整備、一定の範囲内で市況リスクテイクを進める ・LPG/アンモニア船隊の整備 ≪海洋事業・洋上風力発電≫ ・欧州中心に広がる見通しのCCUS事業(二酸化炭素回収・貯留)へ参画 ・台湾・日本での洋上風力発電への参画実績を積み上げ、かつ周辺事業の取り込みに繋げる | |
製品輸送事業 | 2035年に向けた方向性: コンテナ船・自動車船の競争優位を磨く一方、物流への積極投資で非海運分野での成長を遂げる。 |
Phase 1の具体的なアクションプラン: ≪コンテナ船≫ ・ONE発足を通じて獲得した規模のメリットの維持・拡大 ・環境・デジタル戦略を柱とする更なる優位性の構築 ≪自動車船≫ ・環境への対応をリードし顧客の評価を高め、パートナーとして選ばれる存在となる ・増加する中国・インド発ビジネスでの優位性構築 ≪物流≫ ・宇徳・商船三井ロジスティクスをコアと位置づけ、両社を中心に成長を図る ・主にアジアでのM&Aによる事業拡大 | |
ウェルビーイングライフ事業 | 2035年に向けた方向性: 不動産・フェリーに加えクルーズなどの多彩な事業群を形成し、非海運分野の柱に育てる。 |
Phase 1の具体的なアクションプラン: ≪不動産≫ ・国内:アセットタイプの拡充、再開発・街づくりに取り組む ・海外:ベトナム・豪州の事業拡大に加え、東南アジア他国・インドへ進出 ≪フェリー≫ ・現行2社の統合のメリット最大化 ・貨物・旅客それぞれのマーケティング強化 ≪クルーズ≫ ・「にっぽん丸」ブランドを革新すべく、新規投入船に向けた準備を進める ・国内顧客に加え、インバウンドを中心に海外顧客の基盤を拡大する |
<BLUE ACTION 2035の定量目標(利益計画・財務計画・投資計画・株主還元策)>
(1)利益計画
利益計画については、第2 事業の状況 4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」 (7)「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。
(2)財務計画・投資計画
財務計画・投資計画については、第2 事業の状況 4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」 (7)「経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。
(3)株主還元策
株主還元策については第4 提出会社の状況 3「配当政策」をご参照ください。
<コンプライアンス上の対処すべき課題>
当社グループは、2012年以降、完成自動車車両の海上輸送に関して各国競争法違反の疑いがあるとして、米国等海外の当局による調査の対象となっております。また、本件に関連して、当社グループに対し損害賠償及び対象行為の差止め等を求める集団訴訟が英国等において提起されています。このような事態を厳粛に受け止め、当社グループでは独禁法をはじめとするコンプライアンス強化と再発防止に引き続き取り組んでまいります。
なお、当社におけるコンプライアンスに関する取り組みについてはP106に記載のとおりです。
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