他社比較
JSR 企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティ
当社グループはサステナビリティを「企業活動を通じて価値創造することで社会に貢献する」と定義し、企業理念に立脚して様々なステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を築き、信頼され、世の中に必要とされるグローバル企業となることを目指しております。企業理念を礎に、先行きが不確実で激変する経営環境の中で、組織の持続性(サステナビリティ)と強靭化(レジリエンス)を中期経営方針の中核として事業活動を推進し、中長期的な企業価値の向上に努めています。これらを実現するために、重要課題(マテリアリティ)を定め、マテリアリティの各項目に指標と目標を設定、取締役会の監督・モニタリングのもと、企業価値向上に向けて取り組みを継続しています。なお、当社グループは社会が直面する気候変動問題を当社グループの最重要課題の一つと捉え、社内外の温室効果ガス排出量削減に向けて積極的に取り組んでいます。また、2020年10月にTCFD提言への支持を表明し、枠組みに沿った情報開示をしています。
①ガバナンス
当社は、取締役会による監督・モニタリング体制の下、経営上のリスクになりうる課題や機会となる事項に対して、適切な対応を検討し、実行しています。取締役会に対し、サステナビリティに関するリスクおよび機会の監督・モニタリングを強化する目的で、サステナビリティ推進担当執行役員より定期的にサステナビリティ推進会議の上程事項やマテリアリティに関して設定したKPIの進捗を報告し、サステナビリティに関する課題を共有、審議しています。また、サステナビリティ推進を担当する執行役員が取締役を兼任し、取締役会がサステナビリティマネジメントを徹底できる体制を構築しています。
※取締役会におけるサステナビリティの審議事項(2022年度)
・各委員会活動報告、ESG評価機関評価結果(7月)
・マテリアリティKPI進捗状況(10月)
・JSRグループのサステナビリティ経営推進活動について(2月)
上記のサステナビリティ推進会議は、当社が社長兼COOを議長としてサステナビリティ活動の実務を推進する部門横断の会議体として設けたものです。サステナビリティ推進会議の傘下には、「サステナビリティ委員会」、「環境安全品質委員会」、「リスク管理委員会」、「企業倫理委員会」の4つの委員会があります。サステナビリティ推進会議はこれら4つの委員会の活動を統括・指導し、原則年4回の定例会議と臨時会議を通じてマネジメント強化と推進に努め、取締役会に活動報告を実施しています。
加えて、CEO、社長の年次賞与の一部(10%、2023年6月16日以降はCEO兼社長)を、全社的なサステナビリティ経営に関する取り組みの進捗に基づいて決定しています。
サステナビリティ経営推進体制
(2023年6月16日以降、議長はCEO兼社長)
②戦略
当社グループは、サステナビリティ上の重要課題を整理し、マテリアリティとして特定しています。「JSRグループにとっての重要度(内部要因)」と「ステークホルダーにとっての重要度(外部要因)」を踏まえ、社内外の意見を取り入れて、事業活動と経営基盤におけるマテリアリティを決定しました。経営基盤のマテリアリティは、i)環境保全・負荷低減、ii)従業員・ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)・働き方、iii)安全・健康、iv)人権尊重、v)サプライチェーンです。各マテリアリティについて指標と目標を定め、取り組みを進めています。これらマテリアリティへの取り組みは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも寄与するものです。
特に気候変動に関しては、2050年にGHG排出量(Scope1、2)の「実質ネットゼロ」を目指すことを表明しています。そのマイルストーンとして、2030年の中間目標30%削減と年度ごとのGHG排出量削減計画を策定しています。エネルギーの効率的な使用や再生可能エネルギーへの転換、革新的なエネルギー技術導入を視野に入れて排出量削減を進めます。あわせて、環境対応型の製品を拡販し、低炭素・循環型社会の形成に貢献していきます。
また、2020年度~2021年度のTCFD定性分析に引き続き、2022年度は定量分析に着手しました。
③リスク管理
当社グループは、重大な危機の発生を未然に防ぐこと、および万一重大な危機が発生した場合に事業活動への影響を最小限に留めることを経営の重要課題と位置づけ、この課題へ対応するため、「リスク管理規程」を定め、「リスク管理委員会」を中心にリスクマネジメントを行っています。定期的に当社グループ全体でリスク抽出を行い、事業継続に重大な影響をおよぼす可能性があるリスクを「JSRグループ重要リスク」と位置づけて優先度に基づいた対応を実施、未然防止と危機発生に備えた体制の構築と維持を図っています。これらのリスクの中にサステナビリティに関連するリスク(気候変動やサプライチェーン関連等)も含まれています。
④指標及び目標
経営基盤のマテリアリティそれぞれに指標と目標を設定し、継続的に進捗管理を実施しています。
i)環境保全・負荷低減
当社グループは、化学物質を取り扱う企業として、持続可能な地球環境や社会の実現に貢献することが私たちの務めと認識しています。気候変動や資源枯渇といった社会課題解決に貢献するため、GHG排出量2050年ネットゼロ、廃棄物埋立量絶対量低減(国内0.1%以下)を目指していきます。
ii)従業員、DE&I、働き方
柔軟で多様な働き方を推進し、従業員が個々に持つ能力や考え方を互いに活かし合ってエンゲージメント高く働くことが、組織の競争力向上、ひいては企業価値を高めることにつながると当社は考えています。中でも、組織運営の中核を担う管理職層においてDE&Iを推進することは、当社グループ全体のレジリエンス向上につながると考えており、特に日本特有の社会課題も踏まえてJSR単体での女性管理職比率をKPIとして設定しました。これは、従業員それぞれの挑戦・活躍・成長の「機会の公平性」を確保した結果として着目すべき指標の一つと捉えており、このKPIをドライバーとしてDE&I風土づくりを加速させていきます。
iii)安全・健康
安全については、安全活動の結果としての事故発生件数と、そのプロセスの進捗を測る安全文化アンケートの結果をKPIとし、評価の基準をグローバルに統一しています。健康については、アフターコロナの社会において、従業員の健康と生産性の両立を重要な経営課題と見なし、真摯に向き合っていきます。
iv)人権尊重
企業が負っている人権尊重を実践する責任を果たすために、人権方針を制定しています。加えて、従業員に対して人権に関するe-ラーニングを実施し、当社グループの社員一人ひとりの人権に対する理解を深めていきます。e-ラーニングの受講率をKPIとしています。
v)サプライチェーン
社会からの要請や当社グループの考え方をサプライヤーとも共有するため、当社グループのCSR調達方針と人権方針を配布し、賛同書を回収しています。サプライヤーに趣旨を理解いただくことで、リスクの未然防止につなげます。また児童労働などの人権侵害懸念が大きい紛争鉱物とコバルトについては、サプライヤーがJSRへ提供している原料における使用状況と、サプライヤーの人権侵害防止への対応状況について責任ある鉱物イニシアチブ(RMI)の紛争鉱物報告テンプレートを用いて確認しています。これらの賛同書及びテンプレートの回収率を目標として掲げています。
(2)人的資本
①方針、戦略
当社グループの人財戦略として、「グローバルな視点を保持し、活力ある多様な人財・組織能力を国・地域や事業の特色に合わせて強化することで、企業活動の効率化・事業競争力の向上・イノベーション創出に結びつけ、顧客・市場に対する価値(提供)を最大化する」を掲げ、以下を会社・組織のありたい風土として策定し、各種の施策を推進しています。
会社・組織のありたい風土
・DE&Iを尊重し、従業員の自律的なキャリア形成がなされていくことで、全ての従業員がその能力を最大限発揮している。
・従業員と会社が信頼し合い、共に成長することで従業員のエンゲージメントが向上し続け、持続的にイノベーションが創出されている。
このようなありたい風土の中で、従業員の成長は会社の基盤であり、会社の企業理念および中長期経営目標との整合性のとれた人財を育成し、キャリア自律を促すことで従業員一人ひとりの価値を高め、 それを最大限に活かすために、キャリア自律についての当社としての定義を「キャリア自律=主体的なキャリアビジョン×その実現に向けた持続的な行動: 自分の人生がより良いものとなるように、ワーク&ライフのキャリアビジョンを自ら描き、 実現に向けた持続的な行動とそれによって得られるあらゆる経験を通して、 成長し、自分の価値を高めること」と定め、 ①上司・部下・周囲が共に成長する機会となる『仕事』を通じて、従業員一人ひとりがキャリアビジョンを自律的に描き、実現するための支援を行うこと、②従業員一人ひとりのキャリアビジョンに合わせ、仕事を通じた成長を補完できる体系的・継続的な教育、学習の機会を提供することを人財育成方針としています。
社内環境整備方針として、人財マネジメント方針や健康経営の取り組み(JSR Health Promotion)、DE&Iの考えなどを通して、多様な人財が健康で活気のある、職場づくりを進めています。
人財マネジメントの基本的な方針は、社員一人ひとりは公平な基準に基づき評価されること、社員には常に挑戦する場を提供し続けること、社員にはお互いの人格と多様性を認めあい、共に活躍する場を提供し続けることです。
JSR Health Promotionについては、「全社員が自ら健康について考え、行動できる組織」となることを最終的なありたい姿目標として掲げており、従業員個人ひとりひとりのための、自分に合った、自分でできる健康維持・向上策を会社が提供・サポートすることを目指し活動しています。例えば、睡眠セミナーや睡眠の質改善プログラム、運動習慣定着化やマインドフルネス等の施策を実施しています。
また、多様な人財が互いを信頼し、存在や考え方を受容し合うとともに、個々の能力やスキルを最大限に発揮し、組織の力として発展できるインクルーシブな風土づくりに積極的に取り組んでいます。このDE&Iをベースとして、従業員の主体的な挑戦やキャリア形成、成長・活躍の機会づくりなどにより、従業員エンゲージメントの向上を図っています。また、人財の多様性の確保のみならず、柔軟で多様な働き方を実践し、一人ひとりが能力を発揮し、組織としての成果、競争力強化につなげられるよう「ワークライフマネジメント」を推進しています。
②指標と実績
i)人財の多様性の確保
組織運営の中核を担う管理職層においてDE&Iを推進することは、当社グループ全体のレジリエンス向上につながると考えており、特に日本特有の社会課題も踏まえてJSR単体での2030年度に女性管理職比率10%達成を目標としています。女性活躍推進は2010年代から注力して取り組んできたものの、結果として表れるには時間を要しており、同比率3~4%程度で推移する水準でした。近年少しずつ成果が表れ始め2023年4月時点の女性管理職比率は6.5%となりましたが、2030年度の目標を設定することで取り組みを加速させています。
また、従業員が個々の状況に応じて柔軟で多様な働き方ができるよう、育児や介護などと仕事との両立支援制度を整備しています。次世代法の第9期行動計画(JSR単体)では、2023年度から2025年度末までの期間で男性従業員の育児休業取得率80%、平均取得日数20日以上を達成することを目標の一つに設定しています。またコロナ後の社内調査により、JSR本社ではワークライフマネジメントを実践し個人としてもチームとしても成果を挙げられていることが確認できたため、在宅勤務とオフィス勤務のハイブリッドワークを積極的に推進する方針を示しました。今後、各職場の特徴に合わせて、より柔軟で多様な働き方ができるよう各種施策に取り組み、さらなるインクルーシブな風土づくりを進めてまいります。
ii)健康経営の取り組み
エンゲージメント向上や労働生産性向上を目的に実施している、組織活動の基本となる従業員の健康づくり促進活動「JSR Health Promotion」の取り組みが評価され、当社グループから7法人が「健康経営優良法人2023」に認定されました。今後さらに目標として掲げているホワイト500の取得に向けて取り組みを続けていきます。
健康優良法人2023認定法人
大規模法人部門
JSR株式会社
中小規模保人部門
株式会社イーテック
JSRマイクロ九州株式会社
JSR健康保険組合
JSRロジスティクス&カスタマーセンター株式会社
日本カラリング株式会社
株式会社医学生物学研究所
JSR Health Promotionで実施した健康づくりの主な実績(JSR単体)
項目 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
健康診断受診率 | 99.8% | 98.7% | 98.9% | 98.9% |
健康診断有所見者率 | - | 26.4% | 24.3% | 24.1% |
適正体重維持者率 ※BMI:18.5~25未満 | 67.1% | 65.9% | 66.3% | 68.8% |
質の良い睡眠率 ※「睡眠により十分な休養が取れている」者の割合 | 65.6% | 68.6% | 69.2% | 63.2% |
喫煙率 | 22.4% | 17.9% | 16.2% | 10.7% |
ストレスチェック受検率 | 92.1% | 92.2% | 91.4% | 84.8% |
ストレスチェックによる高ストレス者率 | 8.3% | 8.2% | 8.9% | 7.5% |
いきいき組織指数 ※2019年を100とする | 100 | 126 | 101 | 146 |
トレーニング施設利用者数 ※総利用者数 | 8,009名 | 1,472名 | 1,794名 | 1,601名 |
iii)人財育成のための教育研修
会社と個人が共に成長する仕組みと企業風土を確立し、企業理念Materials Innovationを実現する人財を育成することを目的として教育研修を実施しています。
従業員の研修時間と教育研修費実績(JSR単体)
項目 | 単位 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
総研修時間 | 時間 | 49,671 | 64,334 | 43,624 | 34,591 | 17,828 |
1人あたり研修時間 | 時間/人 | 14.7 | 18.7 | 12.4 | 10.1 | 8.3 |
教育研修費総額 | 千円 | 108,189 | 148,711 | 115,513 | 120,628 | 102,612 |
1人当たり教育研修費総額 | 円/人 | 32,037 | 43,130 | 32,900 | 35,148 | 47,616 |
注:本研修時間、研修費は人事部門主催で実施した技術・技能研修、階層別教育等を集計しているため、人事部門以外が実施した教育ならびに各部門独自の教育、社外教育等の時間、費用は含まれていません。
また、e-ラーニングによる教育時間、費用も含まれていません。
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