企業NTTデータグループ東証プライム:9613】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当連結会計年度の経済及び情報サービス産業における経営環境は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 国内及び海外の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和され、感染拡大の抑制と経済活動の両立が進む中で基調としては持ち直してきています。

 景気の先行きについては、景気が持ち直していくことが期待されますが、世界的な金融引締め等を背景として海外景気の下振れが懸念され、この下振れが国内の景気を下押しするリスクとなっています。また、資源価格・物価の上昇、供給面での制約や金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。

 国内の情報サービス産業においては、新型コロナウイルス感染症の抑制による社会活動の正常化が進む中で、お客様企業におけるデジタルトランスフォーメーションの取り組みは引き続き加速しており、物価上昇等IT投資抑制の要因となり得る要素はあるものの、需要環境については堅調に推移していくものとみられています。

 海外の情報サービス産業においても、世界的な金融引締めの影響によるIT投資抑制は懸念されるものの、お客様企業におけるデジタルトランスフォーメーションの需要は増加しており、需要環境については堅調に推移していくものと認識しております。

[経営施策の取り組み状況]

 当社グループは、2022年5月に新たな中期経営計画を発表し、2025年のGlobal 3rd Stage達成に向けて、「Realizing a Sustainable Future」をスローガンに掲げ、未来に向けた価値をつくり、様々な人々をテクノロジーでつなぐことでお客様とともにサステナブルな社会を実現することをめざします。

 その実現に向け、中期経営計画で策定した5つの戦略とサステナビリティ経営の推進を図るとともに、2023年7月に予定している持株会社体制への移行に向けた取り組みを着実に実行しています。

戦略1. ITとConnectivityの融合による新たなサービスの創出

NTTグループとの更なる連携強化により、Edge to Cloud (注1)のサービス提供力の強化に取り組んでいます。また、幅広い業界にシステムを提供する強みと組み合わせ、様々な顧客接点やデータをセキュアにつなぎ合わせることで、企業・業界の枠を超えた業際連携を実現し、新たな社会プラットフォームや革新的なサービスの創出を進めています。 

2022年度においては、Connectivityのケイパビリティを活用した輸送中貨物の位置・輸送状態の監視ソリューションの創出やスマートシティ(注2)案件を獲得しました。また、公共、金融領域の知見を活用し、「KOKO PASS」(注3)に代表されるような官民連携ソリューションを創出する等、当社の強みを活かした業際案件の拡大につながりました。

 また、グローバルに拡大しているデジタルトランスフォーメーション市場等において、Hyper Scaler(注4)等からの旺盛な需要への対応や、企業に対する高品質なサービスの提供をめざすべく、データセンタ事業を中長期的な事業基盤の重要な柱の一つと位置付け、積極的な投資を行う方針としています。

戦略2.フォーサイト起点のコンサルティング力強化

 戦略2、戦略3における取り組みを全社横串で連携させ変革を加速していくために、社長直轄の本社組織として「コンサルティング&アセットビジネス変革本部」を2022年7月に新設いたしました。

 お客様や業界の未来(フォーサイト)を構想する方法論として、Foresight Design Methodを整備し、社内ポータルサイトにおいてMethodの活用方法や事例を紹介するなど、各分野組織における実践的活用を促す施策を推進しております。

2022年度においては、これまで保険業界とヘルスケア業界で当社が培ってきた知見を掛け合わせ、保険業界のあるべき姿を描くことで、新たな提供価値を生み出し、既存の事業領域を超えた案件の獲得につながりました。

戦略3.アセットベースのビジネスモデルへの進化

 業界・業務のForesight、ベストプラクティス、ソフトウェア、自社ツール等、お客様に提供できる価値を再利用可能な状態で集約化し、それらを活用したコンサルティングから、デリバリー・マネージドサービス(注5)を提供できる環境構築をグローバル全体で推進しています。

2022年度においては7月にテクノロジーコンサルティング&ソリューション分野を新設し、業界横断でリピータブルに活用できるアセットを集約し、案件への適用とノウハウの蓄積を進めています。2022年度において、当社のクラウド基盤である「Open Canvas」をアセットとして活用し、政府向けコミュニティクラウドサービス「Open Canvas for Government」の創出につなげています。また、同7月に新設したグローバルイノベーション本部を中心に、グローバルでの競争力獲得につながるグローバルアセットの創出スキームを整備し、グローバルでのアセット創出と活用を始めています。

 アセットベースのビジネスモデルへの進化により、これまでの受託SIを主体としたビジネスモデルから自ら提案・発信するビジネスモデルへと変革し、デジタル時代にふさわしいビジネスアジリティを備え、お客様への提供価値の最大化を進めてまいります。

戦略4.先進技術活用力とシステム開発技術力の強化

Emerging、Growth、Mainstreamの技術の成熟度に応じた3つの領域における活動を推進し、未来の競争力獲得に向けた先進技術活用力の強化と生産性の向上に向けたシステム開発技術力の強化を両輪で進めています。

Mainstream領域においては、高い市場成長率を見せている領域を注力領域として定め、高い市場成長率を事業に取り込むことで、事業成長の加速を図っています。2022年度においては、注力領域の一つであるEAS(ServiceNow)を活用した顧客の情報管理システムのスピーディーな提供につながりました。また、こちらも注力領域であるCyber Securityについて、グローバルに事業を展開されるお客様に対して国内拠点と海外拠点で連携しサービス提供スキームを構築することで、グローバルレベルでの案件を獲得しております。

 また、Emerging領域においては、未来の競争力獲得に向け、2022年8月に先進技術に対する感度が高い世界6カ国にInnovation Centerを立ち上げました。当該センタを中核にイノベータ顧客との共創R&Dを実施する中で、グローバルスケールでの先進的な技術やノウハウの獲得を推進しております。

戦略5.人財・組織力の最大化

 多様な人財一人ひとりが自分自身を表現し、活躍できる組織機能・カルチャーを持った、働く人にとって魅力的な企業への変革をめざし、グローバルで最先端技術が学べる育成システムや、高い専門性に応じた処遇の実現等、社員の自律的な成長を促す制度を整備するとともに、業務の特性等に応じて働く時間と場所を柔軟に設定できる環境を実現することで、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(注6)を推進しています。

 人財育成については、2022年4月に新たな人財育成基盤Olive Oneを導入し社員の多様な専門性・志向に応じた学習を推進しているほか、当社独自の人財育成プログラムである「プロフェッショナルCDP」について、テクノロジーやビジネスの変化への対応と、プログラムの拡充を図っています。

 また、Flexible Grade制度(注7)など、従来のメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ対応した人事制度の活用促進や、2022年7月にテレワークと出社のハイブリッドワークを前提としたテレワーク制度を策定するなど、多様な働き方を支援するための環境整備にも積極的に取り組んでいます。女性活躍、LGBTQ等性的マイノリティに関する取り組み、障がい者雇用の促進施策を通じたダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進も進めております。また、多様な人財の獲得に向け経験者採用の強化も進めております。

 その結果として、コンサルティングやアプリケーション開発に留まらず、Connectivity領域までを含むデジタルトランスフォーメーションに必要なケイパビリティをグローバルで有する企業グループとなり、複雑化・多様化するお客様のニーズにグローバルレベルで対応可能な体制を構築しました。

 今後は、統合のシナジーを発揮すると同時に、中期経営計画で掲げた5つの戦略を更に加速することで、グローバルのお客様とともにサステナブルな社会の実現をめざしていきます。

サステナビリティ経営の推進

 中期経営計画で掲げる「Realizing a Sustainable Future」というスローガンのもと、サステナビリティ経営の推進に向けて2022年7月に非財務指標を中心とした事業戦略を統括するサステナビリティ経営推進部を設置、「Clients’ Growth」、「Regenerating Ecosystems」、「Inclusive Society」の3つの軸に加え、サステナビリティ経営を推進するために取り組むべき重要な課題として、計9つのマテリアリティを策定し、活動を促進しております。詳細については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

海外事業統合と持株会社体制への移行・グローバル連携機能の強化

 お客様事業の成長を支え、お客様とともにサステナブルな社会を実現していくために、これまで培ってきた顧客理解と高度な技術力でシステムをつくる力と、様々な企業システムや業界インフラを支え、人と企業・社会をつなぐ力を更に高めていくことが必要だと考えており、そのための手段の一つとして、2022年10月にNTTグループ傘下のNTT株式会社に当社海外事業を承継した上で当社子会社とする吸収分割を実施し、株式会社NTT DATA, Inc.を設立、海外事業を統合しました。

 海外事業の統合を踏まえ、グローバル経営体制の強化と国内・海外事業の機動性を確保すべく2023年7月に持株会社体制への移行を予定しています。2022年11月には持株会社と同時に設立予定の国内事業会社の準備会社として、株式会社NTTデータ国内事業準備会社を設立し、体制移行を着実に進めています。

 また、グローバル経営体制におけるコーポレート機能の強化を図る目的で、2022年7月にグローバルマーケティング本部を再編するとともに、グローバルガバナンス本部、グローバルイノベーション本部を新設いたしました。

NTT DATA, Inc.の設立以降、海外事業統合によるクロスセルでの顧客アプローチや、当社が従来から有するアプリケーション開発力と、新たに獲得したネットワーク、インフラ基盤といったConnectivity領域の強みを掛け合わせた提案等、海外事業におけるシナジー創出に資する取り組みを進め、大手家電メーカーの案件受注につながりました。

[対処すべき課題]

 従前から取り組んでいる海外事業の収益性改善については、一定の成果が出ているものの、国内事業に比べると未だ収益性が低く、海外事業の更なる成長に向けて、引き続き収益性改善とデジタルシフトの推進に取り組んでいく必要があり、コンサルティングをはじめとする上流の強化、自動化やアセット活用、ショアリングによる生産性向上・品質強化などを推進してまいります。

 また、更なる事業成長に向け、M&Aやデータセンタ等への積極投資を進める上で、投資収益性や財務健全性への影響を考慮した、適切な投資管理の必要性を認識しております。

 加えて、世界的に人材獲得競争が激化していることを踏まえ、多様な人財が長期に活躍できる環境・文化へ変革していくとともに、真のグローバル企業へと成長していくことが必要であると考えております。

[課題への対処]

海外事業の質を伴った成長

 海外事業の収益性改善に向け、海外事業統合前より事業構造改革を進めてまいりました。その成果として海外EBITA率は2019年度の2.5%から2022年度に8.0%まで改善し、質を伴った成長を着実に実現してきております。

2023年度は海外事業再編を本格的に推進し、①地域単位で一元的にオファリング提供できる統合体制への移行、②グローバルレベルでのサービス提供力の強化、③複数会社に存在するコーポレート機能の全体最適化等、海外事業構造の転換によるシナジー創出を加速し、中期経営計画の経営目標である海外EBITA率10%達成をめざします。
M&A・構造改革等の一時的なコストを除く

中期経営計画の徹底した実行

 上記課題への対応に向け、中期経営計画の5つの戦略を徹底して実行し、デジタル関連ケイパビリティの獲得等、競争優位性強化を進めてまいります。

事業成長に向けた投資

 中期経営計画の5つの戦略を支える仕組みとして、2023年度において320億円規模の戦略投資を実施し、投資と成長の好循環の確立と、Global 3rd Stageに向けた事業成長を実現していきます。

 中期経営計画の目標達成に向けたデジタル領域を中心とした注力技術・Industryの強化、中長期的な成長に向けたIOWN等の先進技術活用やサステナビリティビジネスの推進等、次世代ビジネスの創出に取り組んでまいります。

 北米等主要マーケットにおけるシェア拡大やデジタル関連ケイパビリティ獲得に向けたM&Aについて2022年度は約800億円の投資を実施しており、2023年度においても同規模以上の投資を実施予定です。

 積極的なM&Aによりデジタルビジネス提供力の強化、コンサルティング力の強化、重点インダストリーにおける顧客基盤の拡充を進めてまいります。また、データセンタ事業を将来の利益獲得源として重要な事業領域と認識しており、積極投資を進めHyper Scalerとのパートナーシップ強化と、エンタープライズ向けサービスの事業展開をめざします。

 これらの積極投資により中期経営計画の経営目標の達成に加え、中長期的な競争優位性の維持・強化に努めてまいります。

 一方で、M&Aやデータセンタ投資等でレバレッジを効かせた戦略投資を実施することにより投資収益性や財務健全性への影響が発生しますが、回収期間の短期化等の財務戦略、及び、収益性の向上等、多面的な対応を図ってまいります。

人財獲得への取り組み

 人財の獲得については、国内では新卒採用の拡充に加えて経験者採用の強化に向け、採用体制の強化を進めており、2022年度においても成果が出ております。海外においては採用の強化に加え、前述のM&A等による人財確保を進めております。

 また、獲得した人財の多様な力を新たな競争力につなげていくことが必要であると考えており、人財の活躍に向けた制度の充実と、グローバル共通のトレーニングメニューの確立や人材交流などを中長期視点で進めてまいります。

 当社グループの企業理念「情報技術で、新しい『しくみ』や『価値』を創造し、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献する」は、大きな変化を迎える時代においても、当社の存在意義そのものです。今後もこの企業理念のもと、当社は未来に向けた価値をつくり、様々な人々をテクノロジーでつなぐことでお客様とともにサステナブルな社会を実現していきます。
 

(注1) Edge to Cloud
端末やスマートデバイス、その近くに設置されたサーバでデータ処理・分析を行うエッジコンピューティングと、データを集中管理・処理するクラウドコンピューティングを組み合わせたアーキテクチャーのことです。

(注2) スマートシティ

IT技術をインフラ等の運用に活用する次世代型の都市のことです。

(注3) KOKO PASS

 行政機関への手数料等の国庫金納付について、キャッシュレスで決済できるサービスです。

(注4) Hyper Scaler

 巨大なサーバリソースを保有し、クラウドサービスやデータセンタサービスを提供する企業のことです。

(注5) デリバリー・マネージドサービス

ITサービスに付随するハードウェア、ソフトウェア等の導入などの環境構築から管理運用までを一体型で提供するサービスのことです。

(注6) ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン

 持続可能な社会の実現のために取り組むべき多様性、公平性、包摂性のことです。

(注7) Flexible Grade制度

 マネジメントスキルを含む多様な事業貢献を適正に配置処遇する人事制度のことです。

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