企業artience東証プライム:4634】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当企業グループは、創業200周年を見据え、10年後のありたい姿を新たな長期構想として掲げ、持続的な成長を実現する企業活動のコンセプト「Scientific Innovation Chain 2027(SIC27)」を設定し、第二ステップである中期経営計画「SIC-Ⅱ」を2021年度より展開してきました。すべての生活者・生命・地球環境がいきいきと共生する世界に貢献する企業グループを目指し、研究開発においては、サイエンス領域を広げて新技術を獲得し、新たな価値を創造し、お客様とともに成長、発展すべく積極的に活動を進めてまいりました。

「SIC-Ⅱ」ではサステナビリティ・サイエンス、コミュニケーション・サイエンス、ライフ・サイエンスを重点開発領域として設定し、変わりつつある新たな社会ニーズに対して真に必要とされる価値を提供し続けてきました。「SIC-Ⅱ」の最終年度となる2023年度は、それら重点開発領域の拡大と創出に注力し、それぞれの領域で戦略的に技術開発し、イノベーションの連鎖を起こすべく、日々取り組んでまいりました。

 当企業グループにおける研究開発は、各開発テーマの初期段階から生産プロセスを意識した体制を構築するため、「生産技術研究所」を「生産・物流本部」から「R&D本部」に移管いたしました。本体制のもと、中核事業会社研究所(先端材料研究所、ポリマー材料研究所、機能材開発研究所)及び当社R&D本部(技術開発研究所、フロンティア研究所、生産技術研究所)の連携を強化し、新製品・新事業創出の加速につながる研究開発活動及び開発製品の迅速な工業化を推進してまいります。更に東京工業大学との協働研究拠点をはじめとした国内外オープンイノベーションの推進により新技術の導入を図り、持続可能でクリーンな社会の実現に向けた新素材やシステムの提供、5G・IoT社会への貢献、人々の生活を豊か・健やかにする製品やソリューション創出など、それぞれの社会ニーズに対して真に必要とされる価値を提供し、新たな事業の創出・拡大を目指すべく研究開発活動を推進しております。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、9,616百万円であり、各セグメント別の研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は、次のとおりです。

(1) 色材・機能材関連事業

 当事業では、コア技術である有機合成技術と分散/加工技術を進化及び融合させ、社会/市場/お客様の課題解決に貢献する独自の色材・分散加工製品・着色剤・インクジェットインキの製品開発を続けております。

 顔料及び顔料分散体事業関連では、これまで培ってきた顔料合成技術を進化させ、印刷インキ市場に向けて広色域化が可能な顔料の開発を進めております。また分散加工技術を応用した製品開発では自動車塗料を中心とした低VOC化、水性化等の社会ニーズへの適合に加え、これまでの技術では表現が困難な色や質感を実現する色材の開発を進めております。

 メディア事業関連では、従来法より生産工程での使用エネルギーを削減可能な革新製法への転換を進めており、各拠点への展開を開始しました。また液晶ディスプレイの生産工程におけるCO2削減に貢献するべく、生産工程の低温プロセス化に対応した低温硬化レジストインキの開発を進めております。新規用途向けに市場拡大が続いているVR・ARディスプレイ用のマイクロディスプレイ用レジストインキは、前連結会計年度に続き伸長しました。

 着色事業関連では、CO2削減によるカーボンニュートラルの達成・廃プラスチック問題解決という社会課題に対し、電気自動車用機能性コンパウンド、リサイクル材料を使用した機能性マスターバッチ、再生可能な資源を材料とした天然材機能性コンパウンド、生分解性コンパウンド等の環境調和型製品群の開発に注力しております。高機能プラスチック製品による脱炭素社会への貢献を果たすことで、提供価値の転換と事業成長を図っていきます。

 機能材料事業関連では、カーボンナノチューブを用いた車載用リチウムイオン電池材料の商業生産を、米国拠点に続き、欧州ハンガリー拠点でも開始し軌道化しました。益々拡大するリチウムイオン電池市場の要求品質と需要に応えるため、グローバルでの開発体制及び供給体制を強化していきます。また将来を見据えた全固体電池用材料の開発も進めております。

 インクジェットインキは、印刷市場のデジタル化を主軸とした開発を進めました。UV硬化型インクジェットインキは、近年加速する欧米の化学物質関連法規制への対応と、市場の要求品質の両立を達成し、主に海外市場でのビジネスが拡大しております。水性インクジェットインキは、商業印刷用途及びフィルム包装用途にて開発を継続し、印刷基材拡大への対応、各国法令対応を進め、堅調に事業拡大が進んでおります。

 当事業に係わる研究開発費は、4,024百万円です。

(2) ポリマー・塗加工関連事業

 当事業では、重点市場を①包装・工業材市場、②エレクトロニクス市場、③メディカル・ヘルスケア市場と位置づけ、その事業の礎となるポリマー・サイエンス・テクノロジープラットフォームの拡充に取り組み、高付加価値製品や環境調和型製品の開発を続けております。
 包装・工業材市場向けについては、粘着剤では、環境調和型製品として、バイオマスマーク取得製品がラベル用途に初採用となりました。また、接着性と再剥離性を両立した高機能水性粘着剤を開発し、国内及び中国で採用となりました。接着剤では、環境価値提供を目的としたバイオマスタイプや無溶剤タイプのラミネート用製品の採用が拡大しております。また、高耐久高柔軟の工業用接着剤を開発し、自動車部材などでの評価が進んでおります。ホットメルト(熱溶融型接着剤)では、生活インフラ用のホットメルト接着シートなど工業用製品の開発が進みました。缶用塗料では、国際的な使用制限が進む有機フッ素化合物(PFAS)を含まない外面塗料を開発し、海外の顧客で採用となりました。また、成型加飾フィルム用のハードコート剤を開発し、自動車内装向けに採用となりました。

 エレクトロニクス市場向けについては、半導体パッケージ基板を一括封止する絶縁保護シート、電磁波シールドシート「LIOTELAN®」の開発、及び半導体部材の絶縁材料に低誘電性と応力緩和性を付与できる新規のポリマー開発が進展し、現在顧客での評価が進んでおります。また、有機ELディスプレイの伸長に伴って、ディスプレイ製造工程で用いられる保護シート用のウレタン粘着剤の採用が拡大しました。
 メディカル・ヘルスケア市場については、貼付型医薬品、検査薬用のシート製品、粘着剤製品の開発を引き続き進めております。

 当事業に係わる研究開発費は、2,717百万円です。

(3) パッケージ関連事業

 当事業では、環境調和型の軟包装用グラビア、フレキソインキ、建装材用グラビアインキ、機能性インキの開発を始め、マテリアルリサイクルシステムの構築など、持続可能な社会の実現及び新たな価値の提供に向けた開発に取り組んでおります。

 軟包装分野では、有機溶剤削減及び作業環境改善に貢献する水性インキのラインナップ拡充を図り、国内外で実績化が進んでおります。また、パッケージの紙化推進に必要な耐水性、撥水性、水蒸気バリア性を付与するコート剤や、パッケージのモノマテリアル化、単層化推進に必要な酸素及び水蒸気バリア性、耐熱性を付与するコート剤など各種機能性コーティング剤の市場評価が国内外で進んでおります。

 マテリアルリサイクルでは、各種パッケージからのプラスチック再生技術の構築に向け、実証検証が可能なパイロット設備を導入し、パートナー企業の皆様と共同研究開発を進めております。

 建装材分野では、内装向けインキ・トップコートの耐久性を大幅に向上させた屋外用途向け製品群の開発やVOCフリー、省エネルギー化に繋がる塗装代替技術の開発に取り組んでおります。

 今後も、環境調和型インキ、次世代環境調和型パッケージ及び建装材の普及に貢献する機能性製品、リサイクル技術の開発を通じて、お客様とともに持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する製品とサービスを提供し、社会に貢献してまいります。

 当事業に係わる研究開発費は、1,643百万円です。

(4) 印刷・情報関連事業

 当事業では、パッケージやラベルなどの身の回りの商品で幅広く使用されているUV硬化型インキのほか、バイオマス度が高いことを特徴とする油性オフセットインキの製品開発を通して、カーボンニュートラルをはじめとする様々な社会課題の解決に資する価値を提供しています。

UVインキには瞬間硬化、VOCの非含有、紙からプラスチックまで基材対応できる幅広さという利点があることから、今後も海外市場で高い伸長が予想されます。UV印刷における世界的な大きなトレンドとして、従来のUVランプ方式と比較して消費電力が小さくランプ寿命が長いなどの特徴を有するLED-UV硬化システムが普及しつつあり、当社はLEDに対応した製品群を多数ラインナップしております。

 また、UVインキは被膜の堅牢性が高く傷に強い反面、基材から分離しにくい傾向があります。当社は硬質プラスチックに印刷されたUVインキを分離できる業界初となる脱墨コーティング剤を開発しました。本製品は自動販売機の商品見本シート等の、これまでリサイクルが出来なかったプラスチック製品のリサイクル化への貢献が期待されております。

 また、軟包装用グラビア印刷の小ロット対応のひとつとして普及が期待される電子線(EB)硬化型インキの製品開発も鋭意進めております。

 当事業に係わる研究開発費は、1,224百万円です。

 なお、上記の4つの事業に含まれない研究開発費は、6百万円です。

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