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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、著作物を公正利用のもと、出来るだけ広く頒布し著作者に収益を還元するという「著作物の健全なる創造サイクルの実現」をミッションに、「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ」をビジョンに掲げ、日本における文化の発展、及び豊かな社会づくりに貢献するため、積極的な業容拡大と企業価値の向上に取り組んでおります。また、日本国著作権法第一章 総則の第一条に謳われる『著作物は文化の発展に寄与』、『著作物の利用と保護の調和』を第一義に、デジタル化されて数多くの著作物をより多くの人に届け、その利用における適正な対価を著作者に還元し、また新たな著作物が創造されるよう“著作物の健全なる創造サイクル”の構築を目指して事業を行っております。

(2)中長期の経営戦略と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、2022年4月に、当連結会計年度を初年度とする5カ年(2023年2月期~2027年2月期)の新中期経営計画を策定し、“Publishing Platformer”としてコンテンツ業界のDXを支えるべく事業を推進してまいります。

 当社グループが持つ最大の「強み」は、電子書籍流通における圧倒的なポジションだと考えております。具体的には、当社グループの取引先は、出版社2,200社以上、電子書店150店以上を数え、流通総額は1,900億円(2023年2月期時点)、電子書籍における流通シェアは約36%(いずれも当社試算)と、流通の中核機能を担っていること、加えて大手出版社(株式会社講談社、株式会社集英社、株式会社小学館等)や紙書籍取次大手の株式会社トーハンが当社株主として参画しており、業界からの支援を得られることなどがあります。当社グループの強みであり最大の資産でもある圧倒的なポジションを生かしながら、正規版を取り扱うことができる取引先との信頼関係とともに、電子書籍流通事業に次ぐ第二の収益軸の構築に向け戦略投資事業として4つの事業を展開しております。

 [経営戦略]

 ① 紙書籍も含めた出版業界における地位固めと新規事業の収益化による第二の事業軸の確立

 当連結会計年度からの新事業セグメントである、電子書籍流通事業及び戦略投資事業を、更に5つの戦略上セグメントに分類し、新中期経営計画において、以下に取り組んでまいります。

 イ.電子書籍流通事業

 a)電子書籍流通事業

 アライアンスパートナーとの電子書店の運営と、更なる流通カロリー抑制と機能追加により、業界のイ

 ンフラとしての役割の強化を目指すべく、以下の施策を実施。

・流通カロリーの抑制による電子書籍市場拡大

・データマーケティングなど新たな機能追加

・新規商材の確立と文字もの電子書籍市場拡大

・アライアンス電子書店の運営

 ロ.戦略投資事業

 b)インプリント事業

 グループ連携によるコンテンツ制作と出版プラットフォーム機能の強化・拡大を目指すべく、以下の

 施策を実施。

・出版社である日本文芸社や小説投稿サイトのエブリスタを中心として、コンテンツを生み出す強固な

 仕組みを確立

・出版プラットフォーム機能の強化

・アライアンスによるインプリント事業拡大

 c)IP・ソリューション事業

 業界連携による新たな事業機会模索と縦スクロールコミックのエコシステム構築を目指すべく、以下の

 施策を実施。

・トーハンとの連携による電子図書館の推進や、紙書籍も含めた出版DXの推進

・POD事業合弁会社設立など新たなアライアンス推進

・縦スクロールコミック専用レーベル「YUZU comics」を中心に、当社オリジナル作品の創出・流通と、

 投資先である海外有力制作スタジオからの海外作品の輸入

 d)国際事業

Publishing Service Platformとして、世界におけるメディアドゥグループの存在感の向上を目指すべ

 く、以下の施策を実施。

・出版インフラ機能としてのグローバルでの地位確立

・新規サービスの世界展開/日本へのDX事例導入

・Media Do Internationalの機能・体制拡充

 e)FanTop事業

IPホルダーやファンとのつながりの深化と日本発の正規版NFTコンテンツ流通の実現を目指すべく、以下

 の施策を実施。

・出版社との協業により、NFTデジタル特典付き出版物の流通を促進

・投機目的ではなく、著者やクリエイターへの印税分配を可能にする差別化されたNFTエコシステムの実

 現

・コンテンツホルダーとファンのダイレクトコミュニケーション

 ② 経営基盤の強化

 イ.連結経営の強化

 ロ.優秀な人材の確保

 ハ.ミッション・ビジョンを軸にしたESG重点テーマへの対応

「環境」

・当社グループが事業活動において利用する資源・エネルギーの効率化

・電子書籍の利用拡大による紙使用量削減と物流に係るエネルギー消費量の抑制

「社会」

・企業理念に基づく事業活動の遂行(著作物の公正利用と頒布)

・著作者、出版社、ユーザー(読者)が安心・信頼して利用できるシステム基盤の構築と強化

・地方創生と地域社会活性化

「ガバナンス」

・サステナビリティ推進委員会(2022年6月設置)による統合型リスク管理の推進と社会課題を踏まえた事業機会の最大化とリスクの極小化

・様々なステークホルダーとの対話を通じたコーポレート・ガバナンスの強化

・コンプライアンス及びリスクマネジメント強化

 [財務戦略・資源配分計画]

 当社グループは、高い資本効率と財務健全性のバランスを重視し、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としております。また、中期的には事業の収益創出力の強化と規律あるキャッシュ・フローマネジメントにより、持続的な成長サイクルの実現を目指しております。

 引き続き、有利子負債の返済や利益積み上げを通じた自己資本比率の改善により財務健全性を向上させていくほか、適切な情報開示・IR活動を通じて株主資本コストの低減を図ってまいります。また、財務レバレッジを考慮しつつ負債の規律ある活用も進めることにより、資本効率を向上させながら企業価値の創出に努めてまいります。

 設備投資に関しては、企業価値の向上に資する成長のための投資、特にシステム開発を積極的に推進してまいります。なお、各年度の設備投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則とし、強固な財務体質を維持し、十分な水準の手元流動性を確保してまいります。

 ① 経営資源の配分に関する考え方

 当社グループは、当連結会計年度においては連結売上高の92.8%を電子書籍流通事業にて計上しております。電子書籍市場は将来にわたって拡大が見込まれることから、経営資源(人材、投資)は今後も一定程度、電子書籍流通事業に投下する方針であります。

 一方で、グループ全体における電子書籍流通事業への偏重がリスクにもなり得るとの認識から、戦略投資事業への経営資源の配分が、グループ全体の企業価値向上にも資するものと考え、回収可能性や、手元現預金及び今後創出するフリーキャッシュ・フローを十分に考慮したうえで、投資を実行してまいります。

 更に当社は、株主の皆様に対する利益還元を重要な経営課題と認識するとともに、将来の持続的な成長に必要な設備投資等や経営基盤の強化も重要な経営目標と考えております。そのため、内部留保を確保しつつ、財政状態及び業績動向等、経営状態を総合的に判断して利益配当を行っていくことを基本方針としております。

 この方針に基づき、株主の皆様への利益還元については、配当及び自社株式の取得による総還元性向(注)30%以上を念頭に置き、配当と自己株式の取得の配分は、株価水準等に応じて判断いたします。

(注)総還元性向=(配当支払総額+自己株式取得総額)/親会社株主に帰属する当期純利益

 ② 資金需要の主な内容

 当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、事業運営にかかる人件費や業務委託費、広告宣伝費などがあります。また、投資活動に係る資金支出は、競争力の維持・強化に向けたシステム開発などがあります。

 ③ 資金調達

 当社グループにおける設備投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則としております。そのため、事業活動の維持拡大において外部資金が必要となる可能性は低いものと認識しております。

 一方、今後において、更なる企業価値向上に資するM&A等のための追加的な資金需要が生じる可能性もあります。その際には、内部資金及び外部資金を有効に活用することとしますが、外部資金が必要となる場合には、高い資本効率と財務健全性とのバランスを考慮のうえ、最適な資金調達手段を選択いたします。

 [経営目標]

連結

2023年2月期

実績

2024年2月期

計画

2025年2月期

計画

2027年2月期

計画

売上高

1,016億円

1,000億円

1,200億円

1,500億円

営業利益

23.9億円

20.0億円

40億円

85億円

EBITDA

38.6億円

36.0億円

55億円

100億円

親会社株主に帰属する当期純利益

10.5億円

11.0億円

28億円

60億円

RОE

6.3%

6.4%

15.0%

23.0%

 [対処すべき課題]

 当社グループが属する著作物のデジタルコンテンツ流通市場は、高速通信網の整備、スマートフォンをはじめとした各種デバイスの普及、新型コロナウイルスの感染拡大を契機とするデジタル化の加速などを背景に、市場が急拡大するとともにサービス内容が多様化しております。

 こうした環境のもと、当社グループは長らく電子書籍流通事業で培ってきた出版業界における信頼と、出版社と電子書店の間に存在する唯一無二の業界ポジションを生かして、電子書籍の流通拡大による貢献だけでなく、新たなテクノロジーを用いてコンテンツの制作や流通・利用を促進し、出版業界にとどまらずコンテンツ業界の発展に寄与する存在となることで、更なる業績の拡大及び業界におけるプレゼンス向上を図ってまいります。

 そのためには、当社グループとして業界における圧倒的ポジションと、デジタル・テクノロジー分野における開発能力といった競争優位の一層の強化・高度化が不可欠となります。これらを実現していくために下記事項を対処すべき課題として認識し、積極的に取り組んでおります。

 ① 基盤システム・情報セキュリティの強化

 当社グループの主力事業である電子書籍流通事業において、出版社や電子書店の業務負担を軽減し、コンテンツの創作や販売により注力できる環境を整え、電子書籍市場、ひいては出版市場全体のDXを推進していく存在として、当社の電子書籍取次システムへの期待要件や重要度はますます高まっております。当社の電子書籍取次システムは、処理能力の向上に加え、冗長化やセキュリティ強化を目的としてオンプレミスからクラウドへと移行しております。今後も出版業界のDX推進をけん引し、一層の業界発展を支えるべく、取次基幹システムの刷新プロジェクト「DB4」を本格化し、現行のeBook管理システムを基に最新の言語や構築技術を利用してアプリケーションの再構築に着手しております。また、戦略投資事業においては、多様化するクライアントニーズやインターネットのWeb3への移行を踏まえて、ブロックチェーン技術を活用したNFTテクノロジーなど先進技術を活用し新たな流通プラットフォーム・サービスの構築・提供も進めております。

 他方、当社グループが今後も安定した事業運営を行うためには、情報及びデータセキュリティ強化が重要であると認識しております。その取り組みとして、異常値やインシデントに対しては一定の基準を設け、担当部門がデータやシステムに対するアクセスを常に監視し、実際に異常が見られた場合には、情報セキュリティ管理統括責任者と密に連携を取りながら、問題への迅速な対処並びに再発防止に努める等の対策を進めてまいりました。これらに加えて、今後も引き続き変化の多い市場環境や技術動向の変化に対応すべく、情報セキュリティ規程の整備と施行、情報セキュリティリスクアセスメントの実施、EDR(Endpoint Detection and Response)やCASB(Cloud Access Security Broker)の導入などを遂行し、今後もより安全で最適なサービスの運営・開発・運用体制の整備に取り組んでまいります。

 ② 事業の基盤強化

 当社グループが市場での競争優位性を確立し企業として成長を持続するためには、経営資源の確保と高度化に努め、既存事業の強化を図りながら、更に、新規事業に対する積極的な取り組みが必須であります。そのための課題点と対応の方向性は、以下のとおりであります。

ⅰ)電子書籍流通事業における付加価値提供並びに効率的な運用

 当社グループの主力事業である電子書籍流通事業において、当社は国内最大の電子書籍取次事業者となっております。今後も出版社、電子書店、読者のニーズに応えながら電子書籍市場を拡大させていくためには、技術革新やノウハウ共有等によって組織の効率化と強化を進め、オペレーショナル・エクセレンスを確立する必要があります。

 具体的には、電子書籍取次システムの機能拡充や、各書店で随時、かつ無数に展開されるキャンペーンや販促施策等の情報連携・管理などをよりスピーディかつ正確に実施すること、電子のみならず紙出版も含めた売上・印税管理システムの開発提供など、出版バリューチェーンの上流・下流を問わず効率化・高度化の実現に注力します。加えて、当社内の業務プロセス見直しや社内DX、管理コスト抑制策を推進し、利益率の改善を図ってまいります。

ⅱ)M&A・資本提携への取り組み

 当社グループが事業を展開する電子書籍業界においては、縦スクロールコミックといった新たなスタイルの電子書籍の勃興やボーダレス化の加速、競合企業の台頭など、市場環境や顧客ニーズ、競合の状況は常に変化しております。また電子書籍に限らず、当社が提唱するNFTテクノロジーを活用したデジタルコンテンツの新たな在り方も含めると、今後も変化の激しい事業環境になることが想定されます。このような事業環境において、電子書籍取次に次ぐ新たな収益軸の構築や非連続な成長を実現するためには、M&Aや他社との協業、資本提携も重要な課題であると考えております。

 当連結会計年度においては、事業の新陳代謝を図り、経営資源を新たな収益軸の構築に向けた成長分野へ集中させるべく、事業ポートフォリオの見直しと入れ替えを実施しました。

 成長分野への積極投資としては、オリジナル作品の制作や海外作品の輸入等を目的として、韓国の縦スクロールコミックスタジオ2社(StorySoop.Inc/Contents Lab. Blue Co., Ltd.)に投資を実施しました。これらのスタジオと年間単位での制作本数の契約を結んでおり、オリジナル作品については3本リリース、海外輸入作品の契約は48本に至りました。今後も制作スタジオとの連携を図りつつ、電子書籍市場の中でも、世界的に急成長を遂げている縦スクロールコミック市場で不足している原作の創出に注力してまいります。

 事業ポートフォリオの見直しとしては、ROIC 7%を基準の一つとして設定しております。この基準に基づき、当連結会計年度においては子会社であった株式会社Nagisaを売却、株式会社マンガ新聞については清算を実行し、あわせて成長戦略にならって経営資源の最適化を図るべく、戦略投資事業の中の一つで旧ファンマーケティング事業内のサービス「GREET」を終了いたしました。

(※)現在は事業名が「FanTop事業」に変更となっております。

ⅲ)将来に向けた研究開発・新規事業への取り組み

 スマートフォンの普及や、5Gの高速通信環境整備、更に新型コロナウイルスの感染拡大により社会の在り方は大きく変わり、リモートワークの浸透など、人々の生活様式のデジタル化はより一層進行しました。他方、新型コロナウイルスの感染拡大前の生活を取り戻しつつある近頃においては、「デジタル」だけでは補えない「リアル」の大切さが再認識されております。

 このような環境下において、国内出版市場についても電子書籍市場は順調に推移する一方で、特に紙書籍出版と、それらを取り扱うリアル書店の衰退・減少は続いており、これらは出版業界の深刻な課題の一つとなっております。当社は、これまで電子書籍流通事業で培ってきた信頼と出版業界におけるポジションを活用し、第二の収益軸となる新規事業の創出、ひいては出版業界の活性化と新たなビジネス機会創出を目指し事業に取り組んでまいります。

 具体的には、戦略投資事業のうち、一つはFanTop事業として、デジタルコンテンツの新たな在り方と流通に最適なNFTコンテンツプラットフォームを目指すべく、紙本にNFTテクノロジーを活用したデジタルコンテンツを付帯するサービス(NFTデジタル特典)を推進しております。FanTop事業を発表して1年半以上が経過しましたが、NFTデジタル特典によって紙書籍の販売単価と実売率がどちらも平均30%以上上昇し、出版業界の活性化の手段になり得ることが証明されました。

 もう一つは、IP・ソリューション事業の中でも縦スクロールコミックの事業確立です。当社は昨年9月に新レーベル「YUZU comics」を設立しました。また、縦スクロールコミック先進国である韓国の制作スタジオ2社への投資をはじめとして、各スタジオ会社との連携を深化させております。現在の縦スクロールコミック市場は、限られた有力書店によるマーケット寡占状態が続いており、その他の国内電子書店は海外の縦スクロールコミック作品の輸入並びに配信がしづらい状況が続いております。当社は、制作スタジオとの連携・契約により海外作品の輸入並びにオリジナル作品の制作ラインの確保が可能であり、輸入もしくは制作した作品を国内の電子書店に流通させ、国内における縦スクロールコミック市場の拡大に寄与することを目指しております。

iv)海外事業展開の推進

 当社グループの主力事業である電子書籍流通事業は主に国内で事業を展開しており、依然として連結売上高のほとんどが国内市場からもたらされていることから、収益構造の事業的・地理的な分散を図る必要があると認識しております。

 一方で、新たな中期経営計画下では、子会社であるMedia Do International, Inc.を通じたM&Aによりグループ化した企業群を軸に海外事業の一層の拡大を図る方針を掲げております。具体的には、2021年1月に買収した米Quality Solutions, Inc.(Firebrand Technologies)及び米NetGalley, LLC、2022年2月に買収した英Supadü Limitedを中心として欧米出版社とのネットワーク構築、日本及びアジアの出版業界への出版IT技術導入といった出版バリューチェーンを支えるSaaS型ソリューションビジネスの拡大を図り、Global Publishing Platformの確立を目指します。

 加えて、当社は2018年よりインターネット技術の世界的標準化推進団体である「W3C (World WideWeb Consortium) 」に加盟、更にMedia Do International, Inc.にてPresident & CEOを務める塩濵大平は2019年2月よりW3C内のPublishing Business Groupの共同議長を、2021年1月からは日本人初となるW3Cのエヴァンジェリストを務めております。こうした海外ネットワークを活用し、当社グループは電子書籍の国際標準規格策定への提言活動をより強化することで、日本の出版文化の維持・保護に努めてまいります。また、アジアの代表として出版業界全体のデジタル化を推進することで存在感を発揮し、海外事業の成長に繋げてまいります。

 ③ 優秀な人材の確保

 当社グループは、イノベーターとして電子書籍市場の成長促進、既存事業にとらわれない新規事業創出、グループ会社管理体制強化に貢献する人材を確保し育成することが、更なる業容拡大や業界におけるポジションの差別化及び強化にとって重要であると考えております。

 また、サステナブルな事業体の実現に向けては、財務的な観点のみならず、人的資本や技術開発投資をはじめとした非財務的な観点を含めた経営資源の適正な配分が不可欠と認識しております。特に人的資本については、出版業界全体のDXを進めていくにあたって不可欠となるエンジニアの確保・育成・定着を重点領域として、評価・報酬制度設計や職場環境向上に向けた投資を実施しております。今後も、「本」文化を育て、出版市場の拡大に寄与することができる点や、テクノロジーの進化の最前線に立ち、社会課題の解決や業界変革に挑戦できる点について説くことで、会社の魅力訴求に取り組んでまいります。また、「人材基本方針」を踏まえ、働き方改革への対応、社内教育制度の整備を図っていくことで採用及び定着の強化につなげてまいります。

 ④ コーポレート・ガバナンスの強化

 当社グループは、これまでに、執行役員制度及び取締役の任期1年制の導入による責任体制の明確化、社外取締役2名を含む、独立役員の要件を充足する社外役員の招聘による監督・監査機能の強化、取締役会付議基準の見直しによる意思決定の迅速化及び取締役会全体の機能向上などコーポレート・ガバナンスの実践に努めてまいりました。加えて、経営の透明性・公正性・迅速性の維持・向上及びガバナンスの中核を担う取締役会全体の更なる機能及び実効性の向上に向けて、当社グループにおける「コーポレート・ガバナンス基本方針」及び「コンプライアンス基本方針」の策定や取締役・監査役の資質の明示(スキルマトリックス)、ダイバーシティを意識した取締役構成、2021年6月より任意の指名報酬諮問委員会を設置いたしました。また、2022年6月からは、環境問題や社会課題を、事業活動及び企業価値創造にインパクトを与え得るファクターとして、より経営戦略に取り込むべく、リスク管理委員会を改組しサステナビリティ推進委員会を設置する等、不断の改善に取り組んでおります。

 今後も持続的な成長を遂げ、ひいては中長期的な企業価値の向上を図るためには、更なるコーポレート・ガバナンスの実践・強化が重要な課題のひとつであると認識しており、財務情報をより正確に、かつ分かりやすく提供することはもとより、経営戦略、ガバナンスや社会・環境問題に関する事項などいわゆる非財務情報を具体的かつ積極的に提供するなどの情報開示の充実、株主との建設的な対話を促進することを含むIR活動の更なる強化に努めてまいります。

 ⑤ サステナビリティ推進

 当社グループにとってのサステナビリティとは、自らの事業・提供サービスが健全な経済社会の形成と著作物がもたらす文化の発展に貢献するという責任と自負をもって、役職員が一丸となって積極的に企業活動に取り組むことだと考えております。こうした考えのもと、SDGs(持続可能な開発目標)に代表される環境問題・社会課題に対してもミッション・ビジョンを軸にした経営・戦略を推進し、ESG(環境・社会・ガバナンス)の切り口で事業機会とリスクを整理しながら、社会課題の解決と持続的な成長を両立させ、企業価値の向上を果たしていくことをサステナビリティ方針として掲げております。

 当社では取締役 CSO兼CFOが委員長を務めるサステナビリティ推進委員会が主体となって社会情勢やステークホルダーからの要請を把握し、自社の中長期的なミッション・ビジョンとの整合を図りながら、経営企画部等のコーポレート部門とも連携し経営計画を立案しております。この経営計画並びにESGにおける重点テーマに基づき、各部門やグループ会社が取り組むべき具体的なサステナビリティ戦略や目標を設定し、推進主体が定期的にモニタリングすることで推進を図っております。

ⅰ)本業を通じた環境負荷低減への取り組み

 当社グループは「電子書籍市場の拡大」を推し進め、電子書籍の認知・利用拡大を図ることが自社の企業価値向上に直結するだけでなく、紙資源や流通にかかる物流エネルギー、返品・廃棄等による環境負荷の低減にも寄与すると考えております。当社が強みとするテクノロジーを最大限活用し、電子書籍の利便性を一層高めるとともに、紙出版のDXを推し進めることで持続可能な出版インフラの構築と提供に取り組んでまいります。

ii)社会的価値の創出

 当社グループは、2つの観点で社会との調和・相互発展を図ってまいります。

 一つ目は著作者、出版社、書店、ユーザー(読者)が安心・信頼して利用できる仕組みの構築を目指して、電子書籍規格の国際標準化活動への寄与、海賊版サイトへの対応、出版のアクセシビリティ研究等、当社を取り巻くステークホルダーが電子書籍を安心・信頼して利用できる環境の整備に取り組むことで、著作物の健全なる創造サイクルの実現を目指しております。また、2021年3月に実施した紙書籍取次大手の株式会社トーハンとの資本業務提携は、紙・電子、フィジカル・デジタルの垣根を越えたDXを推進することで業界変革に寄与していくことを目指しております。2021年10月より開始したNFTデジタル特典付き出版物は、着実にタイトル数の増加や媒体の多様化を進展させているだけでなく、NFTデジタル特典付き出版物(特装版)の販売価格・実売率は、通常版に比較して共に30%を超える上昇となる等の実績を蓄積しております。この取り組みの一層の推進によって当社NFTプラットフォーム“FanTop”の会員増加に寄与させていくだけでなく、様々な業界プレイヤーを巻き込みながら出版業界の発展を図ってまいります。

 二つ目は日本が直面する労働人口減少や超高齢社会という大きな社会的課題に対し、将来にわたって成長力を確保し、「活力ある日本社会」を次世代へと受け継いでいくために、積極的な地方創生活動に取り組んでおります。2020年1月に起業家を支援する「一般社団法人徳島イノベーションベース(TIB)」を地元メディア・金融機関と共同で設立以来、その活動は広がりをみせており、2023年2月末現在、18の地域で同様の組織が設立されるに至っております。引き続き、起業家が起業家を生み育てる環境を整備することで、地域創生への貢献を果たすとともに、アントレプレナーシップを有する人材の育成・確保を進めてまいります。

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