企業笑美面東証グロース:9237】「サービス業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1)経営方針、経営戦略等

当社は、ビジョンとして「高齢者が笑顔で居る未来を堅守する」を掲げ、家族が心の介護に向き合い、高齢者が笑顔で居る社会の実現を目指しております。

 介護家族に向けた「シニアライフサポート事業」と、シニアホームに向けた「ケアプライム事業」を行っており、経営戦略は以下のとおりであります。

(a) シニアライフサポート事業

 介護家族が高齢者の心の介護に寄り添える状態を増やすことを目的に、家族会議実施数(※13)を増やしてまいります。そのために、チーム制を活かしたMSW等からの紹介獲得のためにSales EnablementのPDCAサイクル(※14)を回すことでオペレーショナル・エクセレンスの浸透を図り、新人コーディネーターの早期立ち上がりを実現し、サービスの均質化を図ってまいります。

 そのうえで、当社では主力の大阪・東京におけるMSWが在籍する病院のカバー率は大阪で80%(276病院/348病院)、東京で76%(283病院/374病院)と高い状況であると認識しておりますが、大阪・東京における紹介事業者利用率(※15)はそれぞれ約46%と推測され、また、病院からの想定シェア率(※16)は大阪で16%(634人/4024人)、東京で16%(584人/3,650人)と、すべての紹介パートナーにアクセスできていない病院も多く、更なるシェア拡大の余地は大きいと考えるため、まずは既存エリアの深耕を優先的に実施してまいります。

 その後、その他展開地域において、MSWが在籍する病院のカバー率は27%(264病院/966病院)であり、紹介事業者利用率は約25%と推測され、病院からの想定シェア率は7%(496人/7,314人)であることから、都市圏で確たる地位を築いた後に展開する予定であります。

(b) ケアプライム事業

 ケアプライムコミュニティサイトの登録を通じて全国のシニアホームのサービス向上に向けた情報提供を一斉に行うことを目的として、オンライン連携を推進してまいります。全国における当社の紹介対象となりうる主なシニアホーム数は38,788ホーム(有料老人ホーム16,724ホーム、サービス付き高齢者向け住宅で7,979ホーム、グループホーム14,085ホーム。2021年各調査(※17)より)となっております。

 また、現在ケアプライムコミュニティサイトを通じて、全国のシニア運営事業者へサービスの質向上に向けた入居検討者及び介護家族の声を効率的に配信しております。今後は入居検討者及び介護家族の満足度向上に繋がるシニアホームを増やすことを目的に、ケアプライムコミュニティサイトを通じてシニアホーム新規開設情報やサービス向上に繋がると思われる情報を広告媒体として配信する等、シニアホームのサービス向上を通じて高齢者の笑顔を増やしてまいります。

※13 家族会議実施数とは、当社のコーディネーターが本人や介護者と対面や電話、オンラインのいずれかでシニアホーム選定のための条件や要望確認、優先順位の整理等の話し合いを実施した案件数をいう。

※14 PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメントの品質を高めようという概念をいう。当社では、新人コーディネーターの早期立ち上げを実現するためのPDCAサイクルとして、Plan:立ち上がりの道筋をつけるため成長ステップ及び成長スピードを設定、Do:時間と場所を選ばないラーニングツールとして成功事例をマニュアル化し、営業学習コンテンツでのラーニングと実践、Check&Action:基礎知識を応用力にするため、マネジャーとの1on1を通じたモニタリング及び改善活動を行うことをいう。

※15 紹介事業者利用率:PwCコンサルティング「高齢者向け住まい等の紹介の在り方に関する調査研究報告書(2021年3月)」をもとに記載。

・大阪:近畿圏の介護付有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設)の加重平均値

・東京:首都圏の介護付有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設)の加重平均値

※16 病院からの想定シェア率:「当社病院からのスマイル数÷紹介事業者を利用した病院からの新規入居者想定数(①有料老人ホーム②サービス付き高齢者向け住宅③グループホーム)」にて算出。新規入居者想定数は以下のとおり算出。

①有料老人ホーム=(在所数の増加人数+想定入れ替わり数)×紹介事業者利用率×医療機関からの入居率

 ・在所数の増加人数:社会福祉施設等調査における在所数の2020年から2021年の増加人数

 ・想定入れ替わり数:社会福祉施設等調査の2020年在所数に入れ替わり率を乗じ算出

・入れ替わり率:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査結果の概況(2016年)」の平均在所日数(1,284日≒3.5年)から試算した回転率(1÷3.5年)を使用

②サービス付き高齢者向け住宅=(戸数の増加数+想定入れ替わり数)×紹介事業者利用率×医療機関からの入居率

・戸数の増加数:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム「都道府県別登録状況」における戸数の2020年から2021年の増加数

・想定入れ替わり数:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム「都道府県別登録状況」の2020年戸数に入れ替わり率(上記有料老人ホーム参照)を乗じ算出

③グループホーム=想定新規入居者数×紹介事業者利用率×医療機関からの入居率

・想定新規入居者数:令和3年度全国グループホーム実態調査における各地区ごとの新規入居者数×各都道府県の割合÷調査サンプル率(19%=27,527人÷144,570人)

 ・各都道府県の割合:介護サービス施設・事業所調査における都道府県別総数÷各地区の総数

・なお、グループホームは他2施設と異なり、新規入居者数を直接求めていることから入れ替わり数の計算は行っていない。

 参照 医療機関からの入居率は令和3年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究報告書より

※17 有料老人ホーム:社会福祉施設等調査より(2021年)

   サービス付き高齢者向け住宅:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムより(2021年)

   グループホーム:介護サービス施設事業所調査の概況 より(2021年)

当社が中長期的に目指す社会像は以下のとおりです。



KPI1:MSWからの紹介数

KPI2:家族会議実施数

KPI3:スマイル数

KPI4:プラットフォームサイト登録数

 当社は、2023年4月13日開催の取締役会にて、「ビジョン(社会インパクト)」を実現するための基本方針を決議しております。当社が、事業成長を伴いながら、ポジティブで測定可能な社会的・環境的インパクトの創出を意図する企業として「インパクトIPO(※18)」を目指す上で、ビジョン(社会インパクト)を設定し、継続的に以下3点に取組むための方針を定めました。

(1)「インパクト測定及びマネジメント(インパクト・メジャメント&マネジメント(※19))」

 を行う

(2)インパクトに関する情報を開示・発信する

(3)ステークホルダーとのエンゲージメント活動を積極的に行う

 上記の基本方針を基に、当社は、事業を通じて、介護家族が高齢者に対する「心の介護」に専念できるよう、「介護家族にとって、ホーム介護の利用が『ポジティブ/当たり前』になっている状態」を目指し、「家族が心の介護に向き合い、高齢者が笑顔で居る社会」の創出に貢献してまいります。

 また、このような社会の創出を目指して、中長期的に

・「マッチするシニアホームとの出会いにより、負担が軽減している介護家族が47都道府県で増加」

・「自らの強みを伸ばしてサービスの質を上げ、介護家族に安心を提供しているシニアホームの増加」

 という2つの社会変化(インパクト)を目指して以下のとおり、事業展開をしてまいります。

(a) 「マッチするシニアホームとの出会いにより、負担が軽減している介護家族が47都道府県で増加」の社会変化の実現のために、以下の2つの指針に基づき、シニアライフサポート事業を展開してまいります。

(イ)介護家族が、シニアホームの情報と接点を持ち、家族会議を実施していること

 当社は、入居検討者がシニアホームへの入居を検討するに当たり家族との話し合いの場(家族会議)を持つことで、家族内でシニアホームへの納得感が醸成され、家族をシニアホームに入居させることに対する介護家族の心理的負担が大きく削減されると考えており、シニアホームへの入居を検討している家族に対して家族会議の場を持つことを推奨し、それを経営指標としてモニタリングしております。その結果、家族会議を経てシニアホーム入居を決めた入居検討者は、その後実際にシニアホームへの入居に至ることが多くなっております。

(ロ)当社への相談の結果、マッチするシニアホームとの出会いにより、介護家族の負担が軽減していること

 当社は、介護家族が抱える課題の多くはシニアホーム介護の適切な利用によって解決することができると考え、シニアホーム介護の利用を促進することで、介護を担う家族の介護の負担が軽減され、高齢者に対する「心の介護」に専念できる状態を作り出します。それを計測する経営指標として、マッチするシニアホームと出会い入居に至った入居対象者(成約数)の数をモニタリングしております。

(b)「自らの強みを伸ばしてサービスの質を上げ、介護家族に安心を提供しているシニアホームの増加」の社会変化の実現のために、以下の指針に基づきケアプライム事業を展開してまいります。

(イ)シニアホームが自らの強みを認識し、シニアホームに対するニーズを把握する機会が増加していること

 当社のケアプライム事業は、プラットフォーム「ケアプライムコミュニティサイト」に参加するシニアホーム間の経営情報の流通を実現し、それを活かしてサービスの質を向上していただくために実施するものであります。サービスの質を向上したいという意欲を持つシニアホーム運営事業者に必要な情報を提供するものでありますが、特に、加盟するシニアホームに自らの強みを認識していただくことに重点を置いております。そのプラットフォーム「ケアプライムコミュニティサイト」の提供価値を明確に伝えることで、加盟者の募集を行います。

※18 一般財団法人 社会変革推進財団(以下、「SIIF」という。)が中心に提唱しており、2023年7月にインパクト投資の推進・中立機関であるGSG国内諮問委員会にインパクトIPOのワーキンググループが発足。SIIFによると、インパクトIPOとは、①ポジティブなインパクトの創出を意図している企業が、インパクトの測定及びそのマネジメント(Impact Measurement & Management,IMM)を適切に実施していることを示しながら、IPOを実現すること。②IPOに際して、インパクトの追求とIMMを継続的に実施できるよう、当該企業を取り巻くステークホルダーに対して、インパクト及びIMMの状況を説明し、インパクト志向の資金提供者からの資金調達をめざすことで、企業価値の向上を図ることであることとしている。出展 https://www.siif.or.jp/wp-content/uploads/2022/11/インパクトIPO実現・普及に向けた基礎調査.pdf

※19 インパクト・メジャメント&マネジメントとは、企業や非営利組織の活動やサービスが、社会や環境に与えた変化や効果を可視化するのが「インパクト測定」、社会的な効果に関する情報にもとづいて事業改善や意思決定を行い、インパクトの向上を志向することを「インパクトマネジメント」という(社会変革推進財団HPより抜粋)

〔当社事業の社会インパクトの成果指標〕

 当社が「家族が心の介護に向き合い、高齢者が笑顔で居る社会」を目指す過程で、「介護する家族・ケアラー」に焦点を当て、「介護家族にとって、ホーム介護の利用がポジティブ/当たり前になっている社会」を実現していくことは、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標である持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:以下、「SDGs」という。)(※20)の達成にも寄与するものであります。

 在宅での介護を抱え込まざるを得ない状況に追い込まれている介護家族の負担を軽減することで、SDGsの目標5「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」の中のターゲット5.4「公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する」ことに繋がると考えております。

※20 持続可能な開発目標(SDGs):2015年9月の国連サミットで採択された、持続可能な開発のための2030アジェンダで掲げられる国際目標。

当社が目指す『介護家族が心の介護へ向き合い、高齢者が笑顔で居る社会』は、SDGs5.4.に係る社会インパクトを創出しており、成果指標としては、介護家族の身体的介護負担からの解放によって生み出された時間とポジティブな使い方を計測しております。



(2)目標とする経営指標

 当社の目標とする経営指標として、前述のロジックモデルに記載の短期アウトカムから設定しております。当社が重視している経営指標等であるKPIの内容、目安としている水準は以下のとおりであります。なお、KPIの大前提として、リアルタイムで測定できる数値、かつコントロールできる数値であるものとしております。

(a) シニアライフサポート事業

〔KPI1:MSWからの紹介数〕

 当社の主要な案件獲得元である病院の退院支援室で働くMSWからの依頼を示す、成約数のリード測定指標であります。MSWを介して、シニアホーム探しの相談を受けた患者の人数によって計測されます。2026年10月期には紹介数18,700人を経営目標として計画の策定を行っており、2023年10月期においての実績は6,466人となっております。

 患者の退院支援を担うMSWは、退院後のシニアホーム探しも職責の業務となるものの、そのために必要な情報へのアクセスには限りがあり、転院調整等の他の業務の多忙さから、時間がかけきれない等の現状があります。

 当社は、豊富なシニアホーム情報を有しており、退院までの業務も把握した関与が可能であるため、退院期日短縮と同時に満足度の高いシニアホーム入居を実現できる確率が高まります。さらに、MSWへの報連相のタイミングなどを均質化した教育体制を強みに信頼関係を構築することで、継続した紹介獲得に繋がります(2023年10月末現在においてMSWからの紹介数が全体の約7割を占めております。)。

 こうしたことから、MSWからの紹介数を管理することは、「退院期限が決まっていることもあり成約率が高い」、「受注から成約までのリードタイムが比較的短期間」、「平均報酬が高い」という特徴を持つリード数を管理することを意味し、当社の生産性向上に繋がる指標にもなります。

〔KPI2:家族会議実施数〕

 介護家族と入居対象者が今後の生活方向を決める会議で、介護家族と入居対象者の意識の変革と成約率の向上の測定指標であります。当社が目指す社会変化(インパクト)の視点からは、入居可能性のある入居対象者の介護を担う介護家族との早期の接触を行い、介護家族に家族会議を開いてもらうことでシニアホーム介護への納得感を醸成してもらい、シニアホーム介護利用の心理的抵抗感を和らげることに繋がることから、成約の確度がより高まり、成約数の予測に繋がります。当社のコーディネーターが入居対象者や介護家族(身寄りのない生活保護受給者の場合は役所ケースワーカーが該当)と対面や電話、オンラインのいずれかでシニアホーム選定のための条件や要望確認、優先順位の整理等の話し合いを実施した案件数によって計測されます。2026年10月期には家族会議実施数9,300件を経営目標として計画の策定を行っており、2023年10月期においての実績は3,296件となっております。

 当社のシニアホーム紹介サービスでは、「インターネットを介しての遠隔でのマッチングサービス」上のシニアホーム検索との差別化を図り、より満足度が高いシニアホーム提案を行うため、「介護家族を知る」ことを大切に「条件(身体状況、予算、エリア等)」と「要望(どのような暮らしを行いたいか、リハビリの要否等)」を分けてヒアリングする機会である「家族会議」を実施しております。介護家族の状況を正しく把握することで、満足度の高いシニアホーム提案に加え、入居に伴い必要とされる煩雑な手続きについても的確な支援を行うことが可能となります。

〔KPI3:スマイル数〕

 実際にシニアホーム入居に至った入居対象者の数を表す指標であり、当社営業収益に直結する指標であります。2026年10月期にはスマイル数8,000人を経営目標として計画の策定を行っており、2023年10月期においての実績は2,381人となっております。

 一般的に、介護家族自身が検索・選択を行う形の「インターネットを介しての遠隔でのマッチングサービス」を利用したシニアホーム探しにおいては入居後のミスマッチが生じる可能性があります。一方、当社サービスの利用者は、将来予測等を踏まえた付加価値のある提案により「その方らしい」シニアホームを中立・公平に見つけることができるため、入居後の暮らしまでを想定した納得の入居が可能となります。さらに見学調整、シニアホームや病院とのやり取り代行及び役所の申請手続サポートなど、相談から入居までのトータルサポートを行っているため、「インターネットを介しての遠隔でのマッチングサービス」を利用したシニアホーム入居よりも成約率が高まる傾向にあります。

 マッチするシニアホームとの出会いを実現することにより、シニアホーム介護の利用が増加することで、介護家族の負担が軽減され、入居対象者に対する「心の介護」に専念できる状態を作り出すことに繋がると考え、成約数を示す本指標を経営指標として追求しております。

(b) ケアプライム事業

〔KPI4:プラットフォームサイト登録数〕

 シニアホームのサービス向上に繋がる外部サービス広告掲載など将来のマネタイズ余地の測定指標であります。プラットフォーム「ケアプライムコミュニティサイト」に登録されたシニアホームの数によって計測されます。2023年3月にポータルサイトをリリースし、2023年10月末現在5,335件となっております。2026年10月期にはプラットフォームサイト登録数8,000件を経営目標として計画の策定を行っております。

 この指標を管理することは、当社の目指す社会変化(インパクト)の観点からは、シニアホームが介護家族ニーズを把握し、また自社の強みを認識する機会が増加していることを表します。これにより、自らの強みを伸ばしてサービスの質を上げ、介護家族に安心を提供しているシニアホームが増加することへ寄与します。

(3)経営環境

当社が提供するシニアホーム紹介サービスが属する市場は、高齢者人口の推移、要介護認定者数の推移及び要介護認定者の介護を行うケアラーの人口推移に大きく影響を受けます。

日本における65歳以上の高齢者人口推移は以下の図のとおりであり、2022年度に3,627万人(前年3,621万人)となり、前年と比べ6万人増加し、過去最多となりました。

また、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上の人口割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム期(1971年~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には、65歳以上人口割合は35.3%になると見込まれております。


出典 総務省:住民基本台帳年齢階級別人口(都道府県別)(2022年1月)

   国立社会保障・人口問題研究所:日本の地域別将来推計人口(2018年3月)

 このように65歳以上の人口増加に伴い、介護を受ける者・介護をする者の人口も上昇を続けており、自宅で介護を受ける者と介護をする者の双方が65歳以上の高齢者「老老介護(※21)」については、以下の図のとおり年々増加傾向にあります。厚生労働省の調査によれば、同居する家族や親族が自宅で介護をする在宅介護のうち、2022年老老介護の割合は63.5%と、調査を始めた2001年以降、最も多くなっております。

※21 老老介護とは、自宅で介護を受ける者と介護をする者の双方が65歳以上の高齢者をいう。


 出典 「国民生活基礎調査Ⅵ介護の状況 動向調査 2022年」(厚生労働省)

  (https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/14.pdf)を加工して作成

上記のとおり「老老介護」の増加に加え、働きながら介護に当たる「ビジネスケアラー」、家族の介護やケア、身の回りの世話を担う18歳未満の「ヤングケアラー」の負担が大きな社会問題となりつつあります。

今後、以下の図のとおり2035年度まで要介護認定者数が増加することが予想され、要介護認定者数に対する「老老介護」、「ビジネスケアラー」及び「ヤングケアラー」の割合は上昇していくものと想定されます。


 出典

・ビジネスケアラー 

 過去数値:総務省統計局の「就業構造基本調査(2018年7月)」の「介護をしている」の「仕事が主な者」

 将来数値:

①将来要介護認定者数:要介護認定者数の将来数値

②将来人口:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」

③将来ビジネスケアラー:年齢別要介護認定者数の増減実績割合及び年齢別人口増減実績割合に対する総務省統計局の「就業構造基本調査(2018年7月)」の「介護をしている」の「仕事が主な者」の人口増加数の実績割合を、①の増減率及び②の増減率に乗じた人数が増加するとして試算。

・ヤングケアラー 

 過去数値:文部科学省「令和4年学校基本調査」における中学生・高校生の生徒数に、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「ヤングケアラーの実態に関する調査報告書」における世話をしている家族がいる率を乗じ試算。

 将来数値:

①将来生徒数:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」に年齢別の人口数に対する生徒数の実績割合を乗じ試算。

②将来ヤングケアラー:①で算出した将来生徒数に三菱UFJリサーチ&コンサルティング「ヤングケアラーの実態に関する調査報告書」における世話をしている家族がいる率を乗じ試算。

・老老介護 

 過去数値:総務省統計局の「就業構造基本調査(2018年7月)」の「介護をしている」65歳以上を集計。

 将来数値:

①将来要介護認定者数:要介護認定者数の将来数値

②将来人口:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」

③将来老老介護:65歳以上の年齢別要介護認定者数の増減実績割合及び65歳以上の年齢別人口増減実績割合に対する総務省統計局の「就業構造基本調査(2018年7月)」の「介護をしている」65歳以上の人口増加数の実績割合を、①の増減率及び②の増減率に乗じた人数が増加するとして試算。

・要介護認定者数 

 過去数値:厚生労働省「介護保険事業状況報告」

 将来数値:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」に年齢別の要介護認定者数の実績割合を乗じ試算。

 特に「ビジネスケアラー」及び「ヤングケアラー」が抱える問題として、「ビジネスケアラー」は40~50代が多く、会社や同僚にプライベートなことを相談しづらいため突然の離職に至るケースも多い等、仕事と介護の両立に切迫した不安・課題を抱えている傾向にあり、「ビジネスケアラー」の人口は今後、2030年度には、300万人以上にも達すると見込んでおります。

 また、働きながら介護にあたる「ビジネスケアラー」の介護による労働時間短縮の労働生産性への影響は経済産業省の推計により2030年度にはおよそ9兆円の損失へ繋がると見込まれております。

 さらに、「ヤングケアラー」については、その生活が“当たり前”で、自身が「ヤングケアラー」という認識がないという子どもも少なくないと言われており、介護やケアに忙しい等、本来受けるべき教育を受けることができない、同世代との人間関係を満足に構築できづらいなど、大きなリスクをはらんでおります。「ヤングケアラー」の人口は2022年度には32万人に達しており、今後は少子高齢化社会の進行に伴い徐々に減少していく見込みではありますが、それに反して要介護認定者数は増加していく見込みであり、「ヤングケアラー」一人当たりの負担は増加していくものと見込んでおります。

 なお、2018年3月に公表された国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、65歳未満の人口は2021年度(8,928万人)から2040年度(6,912万人)におよそ2,000万人減少すると予想されており、「ビジネスケアラー」及び「ヤングケアラー」の負担が益々増えてくると見込んでおります。

 このように、高齢者の人口割合の上昇とともに要介護認定者が増えることにより、こうした多様化する介護家族の一人当たりの介護を担う人数は今後益々増えることが予想されます。

 当社は、事業を通じて、介護家族が高齢者に対する「心の介護」に専念できるよう、「介護家族にとって、シニアホームの利用が『ポジティブ/当たり前』になっている状態」を目指しており、介護される側も含めて「共倒れ」にならないためにも、「老老介護」、「ビジネスケアラー」及び「ヤングケアラー」が抱えている問題を解決できるようシニアホーム紹介サービスを提供しております。

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

シニアホーム紹介業の知名度向上と社会的信用

不動産や保険選定に紹介のプロフェッショナルがいるように、シニアホーム紹介業においても紹介のプロフェッショナルがいることについて世に広く認識していただくことが重要な課題と認識しております。そのため、介護家族に対する相談、提携するシニアホームの双方についてサービスの質の向上と数の拡大を目指してまいります。

②人材の確保及び育成

 当社が展開するシニアライフサポート事業は労働サービスの提供事業であるため、人材の確保が事業継続の要となります。また、案件をご紹介いただく医療機関のMSWやCM等の信頼を継続的に得るため、且つ、入居対象者や介護家族に適切なシニアホーム提案をするためには、コーディネーターの課題対応能力の効率的な育成が重要だと認識しております。そのため、優秀な人材の確保を継続的に行いながら、CRMシステムを利用した顧客関係管理の質の向上、動画コンテンツを活用した教育体制の強化に取組みを行うとともに、一人一人が価値ある存在として自立することにより退職予防にも努め、事業拡大を目指してまいります。

③情報管理体制の強化

当社は事業を通じて取得した個人情報を所有しており、その情報管理を強化していくことが重要な課題であると認識しております。現在、当社では「個人情報の保護に関する法律」の規定に則って、「個人情報保護基本規程」や「特定個人情報取扱規程」等の諸規程を定め、当社で保有する個人情報の適法かつ適正な取扱いの確保と、個人の権利・利益を保護するよう社内体制・ルールを確立しております。今後も社内教育や研修などを継続して行ってまいります。

④内部管理体制の強化

当社は事業の拡大・成長に応じた内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。経営の公正性・透明性を確保すべく、コーポレート・ガバナンスを強化し、適切な内部統制システムの構築を図ってまいります。

⑤財務基盤の強化

当社は、財務基盤の安定性を維持しながら、様々な事業上の課題を解決するための事業資金を確保し、また、新たな事業価値創出のために機動的な資金調達を実行できるよう、内部留保の確保と株主還元の適切なバランスを模索していくことが、財務上の課題であると認識しております。

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