日本軽金属ホールディングス 【東証プライム:5703】「非鉄金属」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、当社グループの強みであるアルミニウムに関する広範な知見の蓄積と多様な事業群を最大限に活用して、企業価値の向上を目指すとともに、事業活動を通じて様々な社会課題の解決を図ることにより、持続可能な社会の実現に貢献していくことを目指しております。当社の経営理念や目的を定義した「日軽金グループ経営方針」は次のとおりです。
日軽金グループ経営方針
◆ 経営理念
アルミニウムを核としたビジネスの創出を続けることによって、
人々の暮らしの向上と地球環境の保護に貢献していく
◆ 基本方針
・健康で安全な職場をつくり、「ゼロ災害」を達成する
・グループ内外との連携を深化させ、お客様へ多様な価値を継続的に提供する
・持続可能な社会を実現するため、カーボンニュートラルに積極的に取り組む
・人権を尊重し、倫理を重んじて、誠実で公正な事業を行う
・多様な価値観を尊重し、長期的かつグローバルな視点で人財を育成する
(改定: 2022年5月16日)
(2)日本軽金属グループの経営環境
①事業領域
当社グループはアルミニウム素材から中間製品、加工製品まで、アルミニウム総合メーカーならではのトータルソリューションの提供により、幅広く事業を展開し、高品質で付加価値の高い製品を生み出しております。
②事業基盤
当社グループの総合力は、異なる事業ユニットをマーケットインの発想で横断的につなぐ《横串》体制を基盤とした「チーム日軽金」としての一体感によって発揮されます。全従業員が「お客様のニーズを探索し、解決に導く」というマインドを持ち、「探って、創って、作って、売る」という一連の流れを担うことで、お客様とともに、市場競争力のある付加価値の高い商品・サービスの創出を行っております。
(3)重要課題(マテリアリティ)
当社グループは、SDGsが目指す持続可能な社会の実現のために、アルミニウムに関する総合的かつ広範な事業領域を通じて貢献していきます。その中で当社グループが特に取り組むべき課題は何かを認識し、当社グループの持続的な成長および企業価値創造のための重要な経営課題としていくため、当社取締役会において『当社グループの重要課題(マテリアリティ)』を特定しています。
①5つの重要課題テーマ
◆地球環境保護 | |
◆持続可能な価値提供 | |
◆従業員の幸せ | |
◆責任ある調達・生産・供給 | |
◆企業倫理・企業統治 | |
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②特定した重要課題
5つの重要課題テーマ | 重要課題 |
地球環境保護 | 自社での温室効果ガス削減(スコープ1、2) |
サプライチェーンでの温室効果ガス削減(スコープ3) | |
気候変動への対応(TCFD) | |
水ストレスへの対応 | |
環境汚染の防止 | |
持続可能な価値提供 | 再生可能エネルギーの利用拡大への取組み |
低炭素商品・サービスの開発、提供 | |
循環型経済・社会の推進 | |
強靭なインフラ整備、提供 | |
食糧の安定供給への貢献 | |
イノベーションによる未来づくり | |
従業員の幸せ | 労働の安全衛生 |
働きがいのある職場づくり | |
ダイバーシティ&インクルージョン | |
人財の確保、育成 | |
責任ある調達・生産・供給 | 安全、安心な商品・サービスの提供 |
人権の保護、尊重 | |
安定したサプライチェーンの構築 | |
変化に柔軟で強靭なバリューチェーン | |
企業倫理・企業統治 | ガバナンスの強化 |
コンプライアンス体制の強化 |
(4)対処すべき課題と中期経営計画
今後の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響沈静化による経済活動の正常化が進む中、緩やかな回復が期待されますが、ロシアによるウクライナ侵攻のさらなる長期化、資源・エネルギー価格の高騰、さらに世界各国で続く物価上昇とそれを抑制するための金融引締めの影響などにより、全く予断を許さない状況が続くものと思われます。
不確実性を増す経営環境において、当社グループの持続的な成長を実現するためには、ガバナンス体制の強化を柱として経営基盤の整備を進め、環境の変化に積極果敢に挑戦することで、お客様のニーズと社会課題への対応を両立させた価値創出を実現し、外部環境に左右されない収益基盤を構築することが必要であると認識しております。
当社グループは、2022年度を初年度とする中期経営計画のもと、2つの基本方針である「社会的な価値の創出に寄与する商品・ビジネスの提供」「経営基盤の強化」に基づく諸施策を着実に実行してまいりました。さらに、東洋アルミニウムの株式譲渡、当社グループの自動車部品事業の統合、カーボンニュートラル実現に向けた戦略的な取組み、および2021年に判明した品質等に関する不適切行為に係る再発防止への取組み(詳細は、下記「当社グループの品質等に関する不適切行為について」をご覧ください。)等、当社グループの企業価値をさらに向上すべくグループの事業構造の変革および経営の改革に取り組む中、新たに2023年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画を策定することとし、基本方針を以下のとおり定めました。
<基本方針1「新生チーム日軽金への取組み」>
お客様をはじめとするステークホルダーの皆さまへ確かな価値を提供することで、当社グループがステークホルダーの皆さまから信頼される企業グループに生まれ変わるべく、経営トップが先頭に立ち、強い決意と覚悟をもって経営改革に取り組んでまいります。
具体的には、東洋アルミニウムの株式譲渡、自動車部品事業統合をはじめとした、グループシナジーを創出するためのグループ資源の最適配分、事業構造の変革を進めてまいります。
また、脱炭素・循環型社会の実現に向けて素材としてのアルミニウムが注目される中、当社グループの脱炭素戦略全般の立案・実行を統合的に推進するため、本年4月に当社内に「カーボンニュートラル推進室」を新設し、グループを挙げて最適な脱炭素戦略を実行してまいります。
さらに、品質問題の再発防止の取組みにあたっては、本年4月に新設した当社社長直轄の「改革推進室」が中心となり着実に実行してまいります。
<基本方針2「社会的な価値の創出に寄与する商品・ビジネスの提供」>
事業部門や開発体制の再構築によるグループ連携体制の強化によりグループシナジーを追求し、サプライチェーン・ライフサイクル全体を通してお客様のニーズを満たし、社会課題の解決にも寄与する多様な商品・ビジネスを提供してまいります。特に、今後の成長分野である環境対応車関連事業においては、既存の関連事業部門を統合して新会社「日軽金ALMO株式会社」を本年10月に発足させ、当該分野における当社グループの確固たる地位の確立を目指してまいります。
また、経済安全保障の高まりを受けた国内での半導体生産工場増設に対応するため、当期において生産能力増強を決定したクリーンルーム用ノンフロン断熱不燃パネルをはじめ、半導体関連ビジネスに積極的に取り組んでまいります。
加えて、放熱性や軽量性といった素材としてのアルミニウムの強みを活かした商品の開発・提供により、お客様のニーズが高まっている温室効果ガス削減にお応えするとともに、地球環境保護に貢献してまいります。
(当社グループの品質等に関する不適切行為について)
当社は、当社グループ会社において「鉱工業品及びその加工技術に係る日本産業規格(JIS)への適合性の認証に関する省令」に定める基準に関する不適切行為の事実が判明したことを受け、2021年6月に外部専門家等によって構成する特別調査委員会を設置し、調査を実施いたしました。特別調査委員会の調査範囲がJIS認証事業所以外に拡大されたことにより、調査に多くの時間を要することとなり、結果として株主の皆さまをはじめステークホルダーの皆さまへの調査結果のご報告が遅くなりましたことをお詫び申しあげます。
本年3月29日、特別調査委員会より「調査報告書」を受領いたしました。特別調査委員会による調査の結果、製造方法、試験・検査方法、試験・検査結果の取扱い、報告・公表に関する不適切行為が当社グループにおける18社36事業所にて214件確認されました。
このような不適切行為により、お客様、株主の皆さまをはじめとするステークホルダーの皆さまに多大なるご迷惑をおかけいたしましたことを改めて深くお詫び申しあげます。また、調査の結果およびその影響を厳粛に受け止め、経営責任を明確にするため、当社代表取締役社長を含む当社役員の報酬を一部減額することといたしました。
当社は、特別調査委員会による調査結果を真摯に受け止め、後述の再発防止の取組みを経営トップが先頭に立ち、当社グループ全役職員が真剣に実行してまいります。なお、グループ全体の再発防止の取組みの進捗を一元管理する組織である「改革推進室」を設置し取組みの推進を図るとともに、その進捗は定期的に当社ウェブサイトを通して報告いたします。
当社グループは、ステークホルダーの皆さまから信頼していただける企業グループに生まれ変わるべく強い決意と覚悟をもって再発防止に取り組んでまいる所存です。
特別調査委員会による調査結果、および当社グループの再発防止等の詳細は、下記当社ウェブサイトに掲載しておりますが、再発防止の要点は以下のとおりです。
当社ウェブサイト https://www.nikkeikinholdings.co.jp/news/news/p2023032901hd.html
当社グループの再発防止の取組み
1.経営改革の推進
①グループ・ガバナンス体制の再構築 ― グループ連携の強化
当社グループにおける小規模な事業をより大きく括ることにより、当社グループが保有する開発・製造・品質保証あるいは管理機能を最大限に活用し、個別事業単独での取組みに付随していた経営資源の制約を克服してまいります。
②当社とグループ会社の関係再構築
当社グループ会社間の連携強化によるシナジーの創出を図ることを目的に、当社グループ会社各社が直面する経営課題に対する具体的な方向性や施策について幅広く議論し、当社グループ全体で認識を共有した上で、連携を強化しながら対処することにより、グループ一体経営を図ってまいります。
③グループでの経営課題・リスクへの対処
当社グループ会社各社の独自性を重視しながらも、グループ横断的なリスクマネジメントの取組みを強化し、取り組むべき事項についてマイルストーンやKPIを明確にしながら、実効的な取組みを推進してまいります。
④営業・開発・製造・品質保証・その他部門による組織横断的な対応
当社は不適切行為の動機・正当化の原因または背景として「納期対応」の問題が重要な要因の一つであったと判断しております。こうした納期対応の問題への対処と、営業・開発・製造・品質保証の関係性を再構築すべく、営業・開発・製造が合意できるルール・体制づくりを進めてまいります。
⑤品質保証体制の再構築
急務となっている品質保証体制の再構築という経営課題に対して、開発・製造の現場に対して十分な指導・支援ができるよう、独立性および権限の強化などを柱として品質保証機能・体制を強化するとともに、品質監査の強化、グループ全体での品質保証体制の強化を図ってまいります。
⑥不断の検証
今後、上記の各再発防止の取組みを進め、不適切行為が再発・存在しないかを不断に検証し、不適切行為の防止とともに、その発見と是正に努めてまいります。
⑦当社取締役会による監督強化
当社取締役会は、再発防止のための施策が実効的に進められているかを注視し監督責任を果たしてまいります。また、取締役会の監督機能の実効性を高めるべく、経営課題に即した体制・構成を確保するための取組みや、取締役会での実質的な審議を図るための運営面の改善を継続してまいります。
2.内部統制機能の強化
①取締役会の監督のもとでの、実効的な内部統制システム構築・運用
当社取締役会にて決議された内部統制システムの基本方針に基づき、実効的な内部統制システムが構築・運用されるよう監督責任を果たしてまいります。
②企業風土の改革
再発防止の基盤として、不適切行為の背景となった当社グループ役職員の意識や組織の風土を改革していかなければならないと考えております。風土改革は長い期間、不断の努力を必要としますが、経営方針、行動理念、行動規範の見直し、企業理念の役職員への浸透、忌憚なく声を上げられる風土づくりを進めてまいります。
③情報の報告・連携の強化
内部統制システムの実効性を支える情報の報告・連携を強化すべく、「悪い情報ほど早く伝える」ことの徹底を図ってまいります。
④コンプライアンス強化活動の推進
不適切行為の原因または背景にあった「製品の安全性に実害がなければ、仕様・手順・規格等への軽微な不適合があっても構わない」という誤った自己都合的解釈による不適切行為の正当化が行われないよう、今後は法令・規制・規格等の違反リスクを当社グループの「重点対策リスク」に指定し、品質コンプライアンスの向上・浸透のため、教育・指導・支援を継続的に実施してまいります。なお、当社は特別調査委員会の調査結果を受領・公表した3月29日を当社グループの「品質の日」と定め、今般の教訓を忘れず、今後の再発防止の取組みの成果を確認する日としていきます。
⑤内部監査部門の強化
いわゆる「3ラインモデル」で強調されるように、営業・開発・製造(第1ライン)が自らリスクの把握・評価・対処に努め、品質保証部門(第2ライン)が第1ラインのリスク管理を支援・牽制するとともに、内部監査部門(第3ライン)を拡充し、第2ラインひいては第1ラインへと深度を深め実効的な内部監査を行ってまいります。
⑥内部通報制度改革
信頼できる内部通報先として当社グループ役職員に認識されるよう、通報者保護の強化、秘密保持の強化、リニエンシー制度の充実などを図るとともに、内部通報制度の理解・浸透とアクセシビリティの向上に継続的に取り組んでまいります。
⑦外部リソースの活用
再発防止策が確実により効率的に、かつ継続的に実行されるよう、専門人材の登用、外部サービスの利用等、外部リソースの活用を図ります。
(5)中期経営計画 主なアクションプラン
当社グループの事業領域は実に多彩であり、グループ各社が異なる得意分野を持つ特性上、具体的アクションは多岐にわたります。その中でも主なものは下記のとおりです。
◆基本方針1「新生チーム日軽金への取組み」
▶ グループの企業価値向上のための構造改革 ▶ カーボンニュートラルへの対応 ▶ 経営改革の推進および内部統制機能の強化 |
・お客様、ステークホルダーの皆様に確かな価値を提供し、改めて信頼をいただける企業グループに生まれ変わるべく、東洋アルミニウムの株式譲渡、自動車部品事業をはじめとするグループシナジーを更に創出できるグループ資源の最適配分や事業構造の変革を進めてまいります。
・2030年度での温室効果ガス30%削減(2013年度比)、2050年度でのカーボンニュートラルに向けて、当社に設置した「カーボンニュートラル推進室」により、当社グループの脱炭素戦略全般の立案・実行を統合的に推進いたします。
・経営トップが先頭に立ち、強い覚悟を持って経営改革に取り組んでまいります。4月に当社に設置した「改革推進室」を核に、品質等に関する不適切行為に対する再発防止策を着実に遅滞なく推進します。なお、再発防止の取組みの進捗は定期的に当社ウェブサイトを通して報告いたします。
◆基本方針2「社会的な価値の創出に寄与する商品・ビジネスの提供」
▶ お客様ニーズを満足する商品・ビジネスの提供 ▶ サプライチェーン・ライフサイクル全体を通じた多様な商品・ビジネスの提供 ▶ 社会的課題を解決するためのグループ連携体制の強化 |
・自動車市場における環境対応車の需要拡大をはじめ市場環境の変化に対応した競争力の向上を図るため、当社グループの自動車部品事業を新会社「日軽金ALMO株式会社」に統合し、お客様へのサービス向上とグループシナジーを追求してまいります。
・経済安全保障の高まりを受けた国内での半導体生産工場増設に対応するため、日軽パネルシステム下関工場に第二工場を設置しクリーンルーム用ノンフロン断熱パネルの生産能力を増強する等、半導体関連ビジネスに積極的に取り組んでまいります。
・放熱性や軽量性といった素材としてのアルミニウムの強みを活かした商品の開発や提供を行っていくことで、お客様からのニーズが高まっている温室効果ガス削減にお応えするとともに、地球環境保護に貢献してまいります。
(6)経営指標
①財務指標
当社グループが持続的に成長していくことを可能とするため、300億円台の経常利益を恒常的に達成できる体制を目指します。「23中計」では、事業部門個々の成長戦略による価値創出とともに、グループ課題への対応を図り、外部環境の変化への耐性が高い収益基盤を構築してまいります。
(金額単位: 億円)
| 2022年 3月期 (実績) | 2023年 3月期 (実績) | 2024年 3月期 (予想) | 2026年 3月期 (23中計目標) |
売上高 | 4,866 | 5,170 | 5,500 | 5,300 |
営業利益 | 222 | 75 | 170 | 300 |
経常利益 | 229 | 89 | 160 | 300 |
親会社株主に帰属する 当期利益 | 168 | 72 | 75 | 200 |
R O C E(%)* | 8.7 | 3.2 | 5.2 | 10.3 |
*ROCE(使用資本利益率):
金利差引前経常利益÷使用資本(自己資本+有利子負債―現預金)
②利益配分の基本方針
「財務体質と経営基盤の強化を図りつつ、中長期的な視点から連結業績等を総合的に勘案し株主の皆さまへの配当を実施する」ことを基本方針としております。利益還元の指標といたしましては、自己株式の取得を含む総還元性向を30%以上とし、配当額等を決定させていただきます。
| 2023年3月期
| 2024年3月期
| 23中計最終年度 2026年3月期 | ||
中間実績 | 期末予定 | 中間予想 | 期末予想 | 年間目標 | |
配当 | 40円 | 10円 | 10円 | 40円 | 100円 |
自動車や半導体関連をはじめとする成長分野における事業拡大と、基盤ビジネス分野における需要創造・収益力拡大に向けた投資に加え、経営基盤の強化、研究開発や人財育成、及びカーボンニュートラルなど将来に向けての投資を行い、企業価値の向上に努めます。
「23中計」の諸施策の実施により収益力を高めたうえで、事業構造の見直しや資本効率の改善を図り、PBR向上を意識した経営に努めてまいります。
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