企業兼大株主日本ハム東証プライム:2282】「食品業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 本項においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、当連結会計年度末現在における一定の前提に基づき当社グループが判断したものであり、様々な要因により実際の結果は大きく異なる可能性があります。

(1)当社グループのサステナビリティに関する基本的な考え方

 当社グループは、企業理念の実現を追求するうえでのマイルストーンとして、2021年3月に「Vision2030」を策定しました。これは、2030年における「ありたい姿」を描いたもので、これまでの提供価値である「安全・安心」「おいしさ」に加え、常識にとらわれない自由な発想でたんぱく質の可能性を広げ、社会環境や人々のライフスタイルの変化に対応する多様な食シーンを創出し、毎日の幸せな食生活を支え続けたいという想いを込めています。

 このビジョンの策定を機に、従来の「5つの重要課題」を見直し、「Vision2030」の実現に向けて優先的に解決すべき社会課題を「5つのマテリアリティ」として再特定しました。

 当社グループは、持続可能な社会の実現に向けて「5つのマテリアリティ」の達成を目指してまいります。

「5つのマテリアリティ」は「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。また、詳細につきましては、当社ウェブサイト「サステナビリティ」に掲載しておりますので、ご参照ください。(https://www.nipponham.co.jp/csr/)

① ガバナンス

 当社グループは、当社の代表取締役社長が指名する取締役、執行役員及び社外有識者で構成される「サステナビリティ委員会」を設置しております。同委員会は原則として四半期に1回開催しており、ESGに関する知見を有する社外有識者や社外取締役からの意見を踏まえ、サステナビリティに関する方針、戦略の策定、グループ各社の取り組み状況の確認などを行います。その内容をまとめ、決定機関である取締役会に諮っております。

 同委員会の下部組織である「ES(環境・社会)部会」と「TCFDタスク会議」は、サステナビリティ担当取締役と関係部署の部室長などで構成されており、委員会で話し合われた戦略を具体化し、事業部門の施策に展開しております。


② 戦略

 当社グループは、「Vision2030」の実現に向け、「5つのマテリアリティ」を掲げ、サステナビリティ戦略と事業戦略の融合による持続的な企業価値の向上に取り組んでおります。「5つのマテリアリティ」に沿った各種の施策について、様々なステークホルダーと対話を重ねながら実行することにより、事業を通した社会課題の解決に努め、持続可能な社会の形成に寄与してまいります。

 具体的な施策については、「④指標と目標」に記載のとおりです。

③ リスク管理

 当社グループにおける全般的なリスク管理については、「3事業等のリスク (1)リスクマネジメントに関する体制」に記載しております。サステナビリティに関するリスクにつきましても、基本的にはこの枠組みでマネジメントされますが、とりわけ、気候関連のリスクや機会の特定、戦略並びに具体的な施策の検討は「TCFDタスク会議」が行い、上部組織である「サステナビリティ委員会」での討議を経て、取締役会にて審議・決定をしております。

④ 指標と目標

 当社グループは、「5つのマテリアリティ」に沿って、それぞれ施策・指標を策定しております。各施策や指標の進捗状況については、業務執行部門により定期的に取締役会に報告されております。

5つのマテリアリティ

指標と目標及び施策

たんぱく質の安定調達・供給

 

たんぱく質の

安定調達・供給

生きる力となるたんぱく質の摂取量向上(国内)

家畜の疾病対策

サステナブル調達の推進
(2030年度までに重要な一次サプライヤーへの方針周知とSAQ実施率100%、重要な二次サプライヤーへの方針周知とSAQ実施)

サプライヤーへの人権デューデリジェンスの実施

アニマルウェルフェアに配慮した取り組み推進 *1
 国内全農場の妊娠ストール廃止(豚)(2030年度まで)
 国内全処理場内の係留所へ飲水設備の設置(牛・豚)(2023年度まで)
 国内全農場・処理場への環境品質カメラの設置(2023年度まで)

スマート畜産等の新たな技術の開発と活用

たんぱく質の

選択肢の拡大

植物由来のたんぱく質商品の拡充拡販(2030年度 出荷金額100億円)

代替肉の技術開発の取り組み

食の安全・安心

第三者認証の取得推進(FSSC22000、SQF、BRC、JFSなど)

専門技術認定をはじめ研修を通じた人財育成

・eラーニング受講者数(2030年度までに67,000名)

・基礎技術研修の修了者数(2030年度までに2,400名)

・専門認定試験の合格者数(2030年度までに90名)

・食品表示検定(中級) (2030年度までに800名)

・食品表示検定(上級)(2030年度までに100名)

食の多様化と健康への対応

 

食物アレルギー

対応

食物アレルギー関連商品の拡充及び啓発(2030年度 出荷金額40億円)

食物アレルギーに関する研究や情報発信

健康増進

認知機能を改善する新たな素材の研究と商品化(2026年度までに年間300万食相当を供給)

健康に寄与する商品の開発

健康寿命の延伸についての情報発信

食の多様化

多様な文化・宗教などに対応した商品の開発、販売の実施

持続可能な地球環境への貢献 

 

気候変動への対応

化石燃料由来のCO2排出量削減 *2

省資源・資源循環

国内の廃棄物排出量削減(2030年度までに2019年度比で製造数量当たりの原単位5%削減)

生物多様性の対応

持続可能な水産資源の認証品の取り扱い品目増(MSC/ASC)

食やスポーツを通じた地域・社会との共創共栄

 

地域社会の発展

スポーツを通じた地域共創の活動の推進(北海道新球場、スポーツ・食育教室など)

文化的活動を含めた地域貢献活動の推進(地域イベントへの協力や清掃活動など)

食を通じた社会福祉活動の推進(フードバンクや子ども食堂への食材の提供など)

食育等を通じた次世代育成の支援(出前授業、キャリア教育支援など)

従業員の成長と多様性の尊重 *3

 

従業員の

働き甲斐向上

仕事に対するやり甲斐の支援、挑戦できる組織風土の醸成等

多様性の尊重

人権尊重(人権教育の実施)、人権デューデリジェンス体制の構築等

(注) 1 SAQはSelf-Assessment Questionnaire(自己評価シート)のことを指しております。

2 *1は当社グループの連結子会社を対象としております。

3 *2の詳細については「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への取り組み」を参照ください。

4 *3の詳細については「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) 人的資本」を参照ください。

(2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への取り組み

 当社グループは、「Vision2030」の実現に向けて優先的に解決すべき社会課題を「5つのマテリアリティ」として再特定しました。

 企業理念の実現に加え、持続的な社会の実現のためにも、気候変動への対応は不可欠と考えております。2015年の「パリ協定」、2018年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)「1.5℃特別報告書」、2021年のCOP26で採択された「グラスゴー気候合意」を経て、気候変動対応の重要性はますます高まっています。このような状況を受け、当社は世界の主要食肉企業に先駆けて2020年にTCFD提言への賛同を表明いたしました。その後、2021年10月のTCFD中間開示を経て、2022年5月に開示を開始し、2023年6月に更新いたしました。

① ガバナンス

 当社グループでは、「持続的な地球環境への貢献」をマテリアリティの一つとして特定しております。サステナビリティに関する方針や気候変動を含む施策について、社内に設置された「サステナビリティ委員会」で議論しています。この委員会は、代表取締役社長が委員長を務め、取締役・事業本部長、社外取締役、社外有識者で構成され、広く意見を交換しています。サステナビリティ委員会での議論の結果は、取締役会に報告され、審議・決定されています。

 「TCFDタスク会議」は2021年度、「サステナビリティ委員会」の下部組織として設置されており、サステナビリティ担当取締役・事業本部管理統括部担当役員・コーポレートスタッフ部門担当者および中央研究所責任者で構成され、気候変動に関するリスク・機会の抽出、シナリオ分析や事業インパクトの影響および対応状況の検討を全社レベルで行っています。

また、これら会議体の事務局であるサステナビリティ部については、経営企画部門内に配置され、担当取締役がサステナビリティ分野を統括する任を担っています。

(検討プロセス)

2022年度はTCFDタスク会議を7回、さらに詳細な検討を行うために事業本部と事務局での会議を7回実施し、リスクおよび機会に対する施策の検討、議論を行いました。検討の進捗についてはサステナビリティ委員会等に報告し、最終的に取締役会の合意を得ています。

時期

会議名等

主な議論内容

2022年4月

TCFDタスク会議

前年度より継続している施策や取り組み、課題について共有し、推進体制を確認。

5月

TCFDタスク会議

対応・適応策のうち、生産調達コストの増加を抑制、低炭素・脱炭素の施策に重点的に取り組むことを決定。具体策については、別途打ち合わせを実施し、詳細に検討を進めることに合意。

7月

TCFDタスク会議

施策ごとの進捗および、開示イメージの共有

8月

TCFDタスク会議

高潮リスクの分析結果を説明し、該当拠点の対応、状況の確認

10月

TCFDタスク会議

飼料および家畜生育に対する施策の進捗確認と開示文書案の検討①

11月

サステナビリティ委員会

TCFDタスク会議で議論している対応状況について経過報告

2023年1月

TCFDタスク会議

施策の進捗確認と開示文書案の検討②

2月

TCFDタスク会議

開示の概要について合意、来期のTCFDタスク会議の進め方の共有

6月

 

TCFDタスク会議で議論、推進した内容について開示

② 戦略

 サステナビリティの戦略のうち特に重要となる気候変動対応に関しては、 2015年のパリ協定、2018年のIPCCによる「1.5℃特別報告書」の内容も踏まえ、当社グループの主要事業において気候変動が与えるリスク・機会についてのシナリオ分析を行いました。その結果、中長期的に、畜産・畜肉の事業環境が大きく変わる可能性があることがわかり、特に重要な物理的リスクとして、気温上昇により飼料穀物収量、家畜生育に対して中長期的に大きな影響を及ぼす可能性があると特定しました。

 当社グループではそれらリスクに対して、飼料配合の変更や飼育環境の制御技術の向上などにより飼料要求率の改善(※)に取り組んでいます。また、水害に対しては、災害時の安定した供給体制を構築しております。水ストレスに関しては水の有効活用、節水について環境目標を定めて推進しております。

 また、低炭素・脱炭素を実現するために導入される炭素税によるエネルギー費用の上昇を重要な移行リスクとして特定しています。加えて、昨今のエネルギー価格・穀物飼料価格高騰が長期化する可能性、畜産業における家畜由来の温室効果ガス排出の削減なども重要な課題として認識しており、その削減については社外研究機関と連携して研究・開発を進めております。

一方で、人口増によるたんぱく質需要の増大、低炭素社会への移行に伴う消費者意識の変化や技術革新等などの影響を考慮し、畜肉に加え、新たんぱく質市場の成長を重要な事業機会として特定しています。大豆等植物や、微生物由来のたんぱく質、さらに、細胞性食品(培養肉)含め研究・開発を進めており、今後、マテリアリティおよび中期経営計画に反映させていく予定です。

※ 配合飼料における穀物等の配合を成長に適したものに調整し、効率の良い体重増加を促すこと。

③ リスク管理

 気候関連のリスク特定とマネジメントは、「持続可能な地球環境への貢献」に向けた重要な課題と位置付けています。その取り組みとしてリスクや機会の特定、戦略並びに具体的な施策の検討はTCFDタスク会議で行われ、その上部組織であるサステナビリティ委員会での討議を経て、取締役会にて審議・決定をしています。また、2022年度に全社的な気候変動のリスクについてはリスクマネジメント委員会(※)でリスクを発生頻度と影響度等で分類したリスクマップにて抽出されており、具体的な気候変動リスクへの対応についてはTCFDタスク会議で検討し、推進しております。

※ 全社的なリスクを一元的にカバーし、各種リスクの識別、評価、重点リスクの特定および対応方針の検討などを努める場として設置する委員会。同委員会の方針を踏まえ、各事業部門および各部署は自らの事業領域や職掌に関するリスクの統制活動を実施しており、これらの結果は同委員会を通して取締役会に報告され、必要に応じた対応がとられる体制を構築しています。

④ 指標と目標

 当社グループは、「中期経営計画2023」において「収益性を伴ったサステナブルな事業モデルへのシフト」を経営方針として定めています。また、マテリアリティ「持続可能な地球環境への貢献」を実現するためにも、中長期環境目標として2030年度を見据えた化石燃料由来のCO2排出量削減を設定しています。2022年度には海外における2030年度をゴールとした環境目標を設定しました。今後はより一層グローバルな観点で持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めて行き、2050年カーボンニュートラルの実現を目指します。

 また、物理リスクとしては水ストレスについても特定しており、それに対する指標としては、CO2排出量削減と同様に中長期環境目標として2030年度を見据えた目標を設定、水資源の有効活用に努めております。

指標

2030年度目標

対象

2021年度実績

化石燃料由来

CO2排出量

46%以上削減(2013年度比)

国内全拠点

削減量:70,453t-CO2 

進捗率:27.8%

24%以上削減(2021年度比)

海外全拠点

用水使用量
原単位

5%削減(2019年度比)

2030年度目標削減値:0.8㎥/t

国内処理・製造拠点

削減量:0.2㎥/t
進捗率:25.0%

5%削減(2021年度比)

海外処理・製造拠点

 また、日本最大級(※)のたんぱく質供給企業として、より環境負荷に配慮した畜産業を追求することは使命と考えています。家畜由来の温室効果ガス排出量をグループ全体で可視化、開示しています。削減に向けて、国内では豚、海外では牛由来のGHG削減に向けた研究開発を社外研究機関と協力して推進し、効果が確認できた施策については自社の農場に導入する予定です。

 ※ 当社取り扱い重量データおよび外部データをもとに当社にて推計しております。

(シナリオ分析)

「1.5℃/2℃上昇シナリオ」と「4℃上昇シナリオ」の2つの気候変動シナリオをもとにした前回のシナリオ分析について引き続き内容の深掘り、特に対応状況の検討を進めてまいりました。

 シナリオ分析においては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によるRCP2.6(2℃未満シナリオ)、RCP8.5(4℃シナリオ)およびIEA(国際エネルギー機関)によるNet Zero by 2050 シナリオ(1.5℃シナリオ)等を参照しています。

2021年度に実施したシナリオ分析の結果、当社グループの気候変動に対する重要なリスク・機会として、以下のものが特定されました。

重要なリスクと機会

影響
見込み

対応状況

物理

リスク

飼料価格の

上昇・不安定化

・飼料要求率改善

・自社配合・飼料会社との連携強化による飼料改良

・低リスク地域からの食肉の新規調達の検討

家畜生育への

気温上昇影響

拠点における

災害リスクの高まり

・洪水リスクに対する設備の強化

・災害時の製品供給体制の強化

・水ストレスリスク高拠点における水資源有効活用

拠点における

水ストレスの高まり

移行

リスク

炭素税導入による

エネルギー費用の高まり

・処理・製造工程でのエネルギー利用の効率化・燃料転換

・再生可能エネルギーの利用拡大

・低排出車両への転換・物流効率化による物流での排出削減

機会

環境志向消費の強まり

・サステナビリティ価値の高い商品の開発

・新たんぱく質を活用した商品開発

・新たんぱく質の研究開発

新たんぱく質市場の拡大

a. 飼料価格の上昇・不安定化

(現在の状況)

 今後、人口増による食糧需要の拡大、気候変動による穀物飼料の大幅な収量の増加が見込めないため、穀物飼料の需給ひっ迫が見込まれます。気候変動に伴う局所的な干ばつの発生頻度増が飼料穀物供給において大きな不安定要素となる可能性も指摘されています。その不安定化要素が顕在化した場合は、飼料価格の上昇が考えられ、当社グループにおける畜肉生産コストに大きな影響を及ぼす可能性があります。加えて、昨今の穀物輸出国の情勢の不安定化などにより、穀物価格が上昇、伴って飼料価格も上昇しています。このトレンドは今後も継続する可能性があるため、対策の検討をはじめています。

 また、日本の飼料用トウモロコシの調達先は主に米国とブラジルであり、両国における水ストレスに関する分析結果から、ブラジルは現在・将来ともに低水準である一方、米国では主要飼料生産州において水ストレスの悪化が見込まれています。加えて、米国は牛肉・豚肉の主要な調達先でもあり、飼料穀物不作によって食肉供給に影響が出る可能性もあります。これらの環境変化は、飼料調達コストやグループ外からの畜肉調達コストに長期的なリスクをもたらす可能性があると考えられます。

(対応の状況)

 当社グループでは、穀物飼料価格高騰への対策として過去から飼料要求率(家畜の増体重量当たりの必要飼料量)の改善に取り組んでおり、技術開発を進めることで、飼料コストの削減を進めています。今後も飼料要求率改善の取り組みを継続してまいります。さらに、輸入する飼料穀物の不足や高騰の際に安定的に飼料調達を行うため、飼料会社を巻き込んで対策を進めております。具体的には、玄米など国産原料を活用した独自配合飼料の共同開発などを通じて、国産原料の利用拡大に向けた給餌を行うことで、安定的に飼料を調達する施策の検証をしております。

 また、グループ外からの畜肉調達におけるコスト上昇や不足の影響にも対応するため、気候変動を考慮した畜肉調達先の検討に取り組み、安定した供給を維持するため、同じ国や地域でも新たな取引先を開拓して調達先を拡大し、より安定的な畜肉調達網の構築を進めております。

b. 家畜生育への気温上昇影響

(現在の状況)

 家畜の生育には気温や湿度などの環境が大きく影響します。当社グループの生産飼育拠点が存在する日本、豪州、トルコにおいて、分析を行った結果、気候変動による気温上昇に伴い、一日あたり増体量が数パーセント悪化する可能性があることから肥育における緩和策を実施しております。

 また、気温の上昇は、グループ外からの畜肉調達コストについても長期的リスクの可能性となることについてはこれまで通りと考えております。


(事例)

 養鶏時の暑熱対策として、トルコの鶏舎においては全てクーリングパッド(※1)、国内の鶏舎においてはそれぞれが所在する地域の特性に合わせて対策を展開しています。例えば、宮崎県と新潟県に所在する鶏舎についてはすべてクーリングパッドまたはミスト装置(※2)を設置、北海道については設置予定の鶏舎のうち約67%に装置が設置されており、残りの鶏舎についても、設置を進めるとともに、その効果を検証していく予定です。一方、青森県では夏場の湿度が高く、主な鶏舎構造であるセミウィンドレス鶏舎(半無窓鶏舎)においては、ミスト装置を使用した場合鶏舎の湿度が上がってしまい、鶏の生育への影響が予測されます。そのため東北地方では遮熱対策として窓開放の上、送風装置を使用しております。

 今後については、更に換気や飼育管理などの改善を行うとともに、暑熱環境下での生産成績を上げるための技術開発の検討を進めてまいります。

※1 クーリングパッド

※2 ミスト装置

 


クーリングパッドは、湿らせたパッドを外気取り入れ口に設置して、外気が通過することで気化熱を利用して空気を冷やします。

 


ミスト装置は、鶏舎内に霧状の水を散布する装置で、霧状の水を蒸発させることで気化熱により空気の温度を下げます。

c. 拠点における災害リスクの高まり

(現在の状況)

 気候変動に伴い異常気象が増加する中、激甚災害のリスクが高まると言われています。当社グループでは、農場、処理・製造工場、物流センターの合計226拠点(国内206拠点・海外20拠点)のうち、国内6拠点および海外7拠点が洪水高リスクの地域に位置していることを確認しました。

2022年度は新たに高潮に関するリスクについて確認した結果、国内2拠点および海外3拠点が高リスクの地域に位置していることが判明しました。

 なお、評価においては、国内拠点についてはハザードマップを、海外拠点についてはWorld Resources InstituteのAqueductを参照しています。

(対応の状況)

 洪水高リスクの地域に位置している国内6拠点および海外7拠点については、2022年度に実施した分析並びに現地へのヒアリングの結果、引き続き洪水による影響は軽微と判断されました。また、国内の水害に対しての保険を付保することで対応していると2021年度に評価したものの、一部で十分にカバーできない可能性が判明しました。対応について改めて検討します。

 また、高潮への対応については、国内の2拠点は被災時に他の製造拠点から主要製品が供給できることを確認しており、大きなリスクにはならないことが確認できました。海外の3拠点中2拠点は高潮に加えて洪水のリスクはあるものの過去の災害状況及び浸水対策等により、影響は軽微と判断しています。他の1拠点は豪州の処理工場です。豪州は3か所ある処理工場の所在地を分散させて配置しており、万が一自然災害による影響を受けた場合の事業影響は軽微と判断しています。洪水、高潮については、リスクとしては軽微と見込まれますが、今後もリスクモニタリングを継続します。

 対応状況について、下表に記載しています。

 

国や
地域

拠点数

高リスク
地域拠点数

対応状況

リスク
評価

洪水
リスク

国内

206

・主要製品の供給体制を含めたBCPの見直し

・水害に対する付保については拠点により十分にカバーできない可能性があるため対応方法を検討中

軽微

海外

20

・設備の床上げ等対策を実施済(3拠点)

・工業団地で対策が実施されている(1拠点)

・現地でのヒアリング及び過去の災害状況から発生可能性は低い(3拠点)

軽微

高潮

リスク

国内

206

・主要製品の供給体制を含めたBCPの見直し

軽微

海外

20

・洪水リスクの高い拠点と同じ拠点、過去の災害状況や浸水対策実施済みにより軽微(2拠点)

・豪州の処理工場3拠点の所在地が分散しているため、一部が被災しても事業影響は軽微

軽微

d. 拠点における水ストレスの高まり

(現在の状況)

World Resources InstituteのAqueductのWater Stress指標を用いて、グループ内の農場、処理・製造工場、物流センターの合計226拠点(国内206拠点、海外20拠点)について、水ストレスの初期評価を実施しています。

(対応の状況)

 初期評価の結果、国内拠点については、いずれの拠点も水ストレスによる影響が大きくなる可能性は低いと評価されました。一方、海外拠点については、2℃上昇シナリオでは8拠点、4℃上昇シナリオでは9拠点が、高い水ストレスを受ける可能性があることが判明していますが、いずれも影響は軽微と確認しています。2022年度に改めて状況を確認したところ変化はありませんでした。

 水ストレスについては、マテリアリティとして特定した「持続可能な地球環境への貢献」に基づく目標設定を海外にも範囲を広げ水使用量削減の取り組み、水資源の有効活用に努めています。

 水ストレスに関するリスクは、今後も継続的にモニタリングを行います。また、中長期環境目標の達成に向けて、取り組みを継続します。

地域

拠点数

 高リスク地域
 拠点数

対応状況

リスク
評価

国内

206

軽微

海外

20

(2℃シナリオ)

9(4℃シナリオ)

操業規模の観点から影響は軽微(4拠点)

軽微

過去の水ストレスによる事業影響や現地ヒアリングによりリスクは軽微と判断(5拠点)

e. 炭素税によるコスト増

(現在の状況)

 化石燃料由来のCO2排出に対する炭素税の導入が事業に与えるインパクトを算出しました。グループ事業所からのCO2排出量について、2021年度の排出量での計算と2030年度の削減目標が達成された場合を比較しました。炭素税価格についてはIEAのWorld Energy Outlook 2021のNet Zero by 2050シナリオ(1.5℃目標相当)に則り2030年度はUSD130/t- CO2、2050年度はUSD250/t- CO2として算出いたしました。

 その結果、1.5℃シナリオにおいて導入が進む炭素税は、事業に大きなインパクトを与える可能性が特定されました。また、先進国における現行の炭素税制を考慮した上で、今回の評価では化石燃料由来のCO2排出のみを対象としております。しかしながら、中長期的には家畜由来の排出に対しても炭素税導入の可能性があり、削減施策の検討を進めてまいります。

 また、国際情勢の影響により、化石燃料の高騰が続いています。この状況が2030年まで続いた場合、国内の電気料金が2022年と比べて年間約10~20億円程度の影響を受ける可能性があります。

シナリオ

項目

2030年

2050年

2021年時点排出量前提

炭素税インパクト(億円)*

107

206

排出量(千t-CO2)

633

633

炭素税額(USD/t-CO2)

130

250

2030年削減目標達成前提
(2030年以降は横引き) 

炭素税インパクト(億円)*

68

132

排出量(千t-CO2)

405

405

炭素税額(USD/t-CO2)

130

250

(注)1 「*」については1USD=130円で算出しております。

(対応の状況)

 化石燃料由来のCO2排出の削減に取り組むため、当社グループは老朽化設備の更新を含めた省エネ機器の導入や再生可能エネルギーの利用拡大を進めております。例えば自社敷地等における太陽光パネルの設置や、製造工程から発生するバイオマス資源の活用にも力を入れており、豪州では排水由来のバイオガスプラントが稼働しております。国内では、加工食品事業で使用済みのフライ油や排水中の油分を回収したものを燃料として活用する廃油ボイラーにより、年間約2,600 tのCO2削減の効果が期待されます。


 太陽光発電については2023年4月時点で国内24拠点に設置され、年間の発電量はおよそ6,400 MWhと見込まれます。さらに、北海道南幌町には年間約3,000 MWhの発電量を有する太陽光発電施設の設置を計画し、そこで発電した電力はグループの養豚施設に供給する予定です。加えて北海道旭川市にもおよそ1,100 MWhの太陽光発電施設の設置を計画しています。また、当社グループは2023年度より、一定金額以上の設備導入・更新時にインターナルカーボンプライシング(ICP)の考え方を取り入れています。

取り組み

設置拠点数

CO2削減量

太陽光発電

稼働24拠点(6,400 MWh)

2,400 t-CO2

稼働計画5拠点(5,500MWh)

2,000 t-CO2

廃油ボイラー

6拠点

2,600 t-CO2

 家畜由来の温室効果ガス排出削減についても具体的な施策を推進中です。豪州牛事業では、飼料への添加物配合による消化管内発酵メタン抑制の検証とともに、牛の肥育や肉質への影響についての検証を進めております。また国内の養豚事業では排せつ物・排水処理から発生するバイオガスのエネルギー利用を行っております。さらに、家畜由来のメタン排出量抑制につながる研究については北海道大学、大阪大学、徳島大学とそれぞれ連携して進めております。

連携先

研究テーマ

北海道大学

ウシルーメンにおけるメタン発生抑制法の開発

大阪大学

メタンに対する特異的吸着能を保有する多孔質有機塩の研究

徳島大学

ブタにおける温室効果ガス排出に関する研究

f. 環境志向消費の強まり

(現在の状況)

 脱炭素が進む社会では、気候変動への関心が高まり、環境対応が進む企業や商品が選ばれやすくなることが予想されます。当社グループは、サステナビリティ価値を実現し、消費者に伝えることがますます重要になると認識しています。

 このため、グループ全体で持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進し、サステナブルな商品・サービスを提供することを目指しております。さらに、消費者の期待に応えるため、持続可能性に配慮したパッケージングや、環境負荷の低い商品開発なども積極的に取り組んでいます。

(対応の状況)

 当社グループでは、パッケージの使用量が大きい主力ブランドを中心に取り組みを継続して実施しています。2021年度には「シャウエッセン®」の包装形態を巾着タイプからエコ・ピロタイプへ変更、さらに2022年度には中華名菜®群のノントレイ化を実施しました。これにより、プラスチック使用量を削減することで、およそ4,380 tのCO2排出量を削減できると想定しています。このほか、「豊潤®」などのウインナー商品のエコ・ピロタイプへ切り替え、「イーセイ スキル」シリーズの容器をプラスチックから紙へ変更、その他の製品についても包装サイズの見直しやプラスチックトレイの縮小、紙トレイへの変更など、プラスチック使用量の削減を通して、CO2排出量の削減に継続して取り組んでいきます。

 また、原料の一部にバイオマス素材を使用したプラスチックの利用について、加工食品の包材での一部使用に加え、鶏肉「桜姫®」の包材の一部にも使用を拡大しています。

 加えて、「あじわいレンジ」シリーズなどの食品ロス削減につながる常温長期保存商品についても「中期経営計画2023」における注力領域として取り組みを強化しています。これらの取り組みの拡大を進めるとともに、今後はサステナビリティ価値のより明確な商品開発に取り組みます。

 


 


 


 


 

中華名菜®

包装からトレイをなくし、包装資材重量を約19%削減(※)

※自社調べ 2021年度 中華名菜 酢豚・八宝菜・青椒肉絲・回鍋肉の出荷数量に基づき算出。

 

豊潤®

エコピロタイプへの変更でプラスチック使用料22%削減(※)

※従来品との比較

 

イーセイ・スキル

紙容器への変更によりプラスチック使用料94.1%削減(※)

※従来品との比較

 

桜姫

包材の一部にバイオマス素材を使用

 

 

g. 新たんぱく質市場の拡大

(現在の状況)

 将来的には世界人口増によるたんぱく質需要の増大を背景に、畜肉市場に加えて新たんぱく質を含め市場の拡大が見込まれます。特に、脱炭素社会への移行に伴う消費者意識の変化や技術革新等も背景となり、新たんぱく質市場は大きな成長が予想されます。外部機関が公開している新たんぱく質の将来市場規模の推計値には幅がありますが、脱炭素への移行が進むシナリオにおいては、グローバルで数十兆円超規模の市場が見込まれており、中長期的に大きな事業機会が生まれることが予想されることから、引き続き研究開発に取り組んでおります。

(対応の状況)

 当社グループは、すでに植物由来商品である「ナチュミート」シリーズをコンシューマ向け、外食・流通企業向け双方で展開し、国内での販売を進めています。また、日本発のPBF(Plant-Based Food)として海外にも販売しています。

 新たんぱく質については畜肉の代替だけではなく、水産資源の枯渇などを踏まえ、水産物代替品の開発も進めており、国内でフィッシュ風フライを外食産業向けおよびコンシューマ向けに販売をしています。また、昨今の海外からの原料調達の状況を踏まえ、国産素材を活用した製品の研究・開発も進めています。当社グループは2030年度の植物由来たんぱく質製品の売上高100億円を目標に開発・拡販を進めています。

 当社グループは植物由来たんぱく質に限らず、多様なたんぱく質の活用を視野に研究開発を進めています。家畜由来の細胞を大量に増やして食品とする細胞性食品(培養肉)に関しては、インテグリカルチャー㈱との共同研究を行っております。また、コストの高い動物血清を使用しない、食品を主成分とした培養液を使用し、これまでより安価に細胞を培養する方法の開発など、将来の商品化に向けた研究を進めております。さらに、微生物由来も含めた新たんぱく質の食品への応用の可能性も検証を進めております。

 畜肉由来のたんぱく質を基盤に新たんぱく質を含めたたんぱく質の可能性を広げ、安定供給と多様な食の選択肢を提供してまいります。

<培養肉のイメージ>


(3) 人的資本

 当社グループは企業理念に「わが社は、従業員が真の幸せと生きがいを求める場として存在する」と掲げており、企業価値最大化に向けて重要な原動力である人財を「人的資本」と捉え、その価値を最大化するための「人財戦略」を策定しております。

 また、経営戦略や事業戦略とも連動させていくことにより、「個人・組織の成長(人的成長)」と「グループの成長(企業価値向上)」との両立を目指しています。

 その実現に向けた柱となるのは、「個の成長」、「組織の成長」、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」であり、それぞれの求める成果に紐づく取り組みを人的資本投資として推進しております。


①戦略

a. 人財育成方針

 多様な価値観や経験・知が交わることによる新たな気付きや発想を重視し、組織における人財の多様性を高める取り組みや多様な人財の交流機会創出を推進してまいります。

「キャリアの考え方」については、「会社から提供されるもの」から「個人と会社が一緒にすり合わせて築くもの」へシフトし、キャリア自律を目指して従業員自らがキャリアを描き成長していくことを支援しております。

「挑戦」については、各々のやりがいや成長につながる機会であると同時に、組織や会社全体の価値創造につながる重要なマインド・行動として捉え、様々な機会や仕組みで、「挑戦」の奨励・促進を進めております。

b. 社内環境整備方針

 心理的安全性実感の下、多様な価値観が尊重され一人ひとりが生き生きと活躍できる環境を提供し、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの実現をめざしていきます。

 多様なキャリア・働き方が選択できるような、働き方改革・学び方改革、両立支援の取り組みを進めていくと同時に、多様な個・経験・スキルが活かされ、共に成長できる場の実現にも取り組んでまいります。

 また、健康経営の推進にも力をいれてまいります。

②指標と目標 

指標

2022年度実績

2030年度目標

女性管理職比率

9.8

20.0%以上

障がい者雇用率

2.6

2.3%以上 *

総労働時間

1,970時間

1,870時間

時間外労働時間

226時間

200時間

健康診断再検査実施率

81.0

100

喫煙率

23.6

12.0

ストレスチェック受検率

97.9

100

(注) 1 当社日本ハム㈱の実績と目標であります。

2 *につきましては、法律の改正に伴い目標を随時変更する可能性があります。

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