企業新晃工業東証プライム:6458】「機械 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは「豊かな創造力と誇れる品質」を経営理念とし、顧客をはじめ社会や社員に対し「信頼と満足」を普遍的に提供することを経営の基本方針としております。また事業領域を「快適環境の創造」と定義し、業務用空調機器を中核にしながら、建物に関わる各種事業へ業容拡大を目指しております。

(2) 経営環境

① 当社の主力事業領域

 空調システムは、大きく家庭用と業務用に分けることができます。業務用は、事務所、工場、病院、ホテル、商業施設などを指し、建物の規模によって空調方式を使い分けます。

 大規模な建物で採用されるセントラル空調は、建物を一体のシステムと捉える空調方式です。熱源機器を集中設置してまとめて熱を作り、建物全体に循環させて空調します。それに対し中小規模の建物で採用される個別空調は、各部屋に室外機、室内機をセットで設置して、個々で熱を作って空調します。当社は両空調方式において、居室の温度、湿度、気流、清浄度をコントロールする業務用の空調機器のメーカーです。


② 各方式の特徴と動向

 空調方式は、建物の規模や運用によって最適なものが選択されます。熱源機器を大型化して効率を上げ、システムを一括で制御するセントラル空調は、建物全体の管理や省エネルギーに適しています。一方、熱源機器を集中しても効率化されない規模の建物では、個々に制御でき、システムが簡易で利便性が高いと言われる個別空調が採用されます。

1) セントラル空調(大規模建物)

 大規模建物においては、エネルギー効率の面から古くよりセントラル空調が採用されてきました。近年、その簡易性から個別空調の採用が増加していましたが、「2050年カーボンニュートラル」に代表される地球環境の面から、セントラル空調が改めて注目されております。その大きなメリットの一つは、熱源からAHU内までの熱の搬送に地球温暖化係数の高いフロンガスを使っていないという点にあります。AHUは自然冷媒である冷温水を使用して熱交換するため、気候変動関連で規制が強化されているフロンガスの使用量を削減することができ「カーボンニュートラル」に貢献いたします。

 空調分野において、熱の移動を媒介する冷媒ガス(以下、冷媒)には、古くはアンモニアや二酸化硫黄、20世紀半ば頃からは高効率かつ不燃性で毒性もないフロンが利用されておりました。ところが、フロンによるオゾン層破壊問題がクローズアップされ、1987年のモントリオール議定書によって特定フロンが規制されると、オゾン層を破壊しない代替フロンへの転換が始まりました。その後さらに、地球温暖化問題が顕在化し、1997年の京都議定書では先進国が、2015年のパリ協定では発展途上国を含む全ての国が温室効果ガスの削減に取り組むこととなり、温暖化係数の高い代替フロンに対する規制が全世界で進んでおります。

 セントラル空調には、その他にも、フロンガスにはできない精緻な温度・湿度制御ができる、上質な空気質を作ることができる、熱源をまとめて大型化するためエネルギー効率の高い運転ができる、機器がまとまって設置されているため保守性がよいなど、多くのメリットがあります。

2) 個別空調(中小規模建物)

 中小規模の建物においては、簡易性、利便性に加え、エネルギーの効率からも個別空調が採用されており、今後も続くものと思われます。

 個別空調で使用される機器についても高効率化は進んでおり、省エネルギーを意識したシステムにはなっているものの、今後は地球温暖化係数の低い冷媒への転換に加えて、フロンガスの使用量を削減するようなシステム設計が進められる見込みです。

③ 当社製品の役割

 当社の主力製品は、セントラル空調で使用されるエアハンドリングユニット(AHU)、ファンコイルユニット(FCU)です。大型のAHUはフロア全体の換気・空調を、小型のFCUは各部屋の空調を行います。セントラル空調は建物用途に合わせて個々に設計されるため、そこで採用される製品もその要求仕様に合わせて一品一様で設計・製造されますが、当社は特にAHUに強みを持っております。

 また個別空調で使用されるヒートポンプ式エアハンドリングユニット(HP-AHU)も主力製品の一部です。セントラル空調と比べると簡易的なシステムが構築されるため、採用される製品も汎用品が多くなりますが、建物の換気・空調を行うHP-AHUには固有の要求仕様が多く、当社がセントラル空調分野で蓄積してきたノウハウを存分に活かすことができます。


④ 業界構造

 一定以上の規模の業務用建物の工事において、空調機器は建築工程に合わせて納入、設置されます。発注主としてディベロッパーなどの施主、建物の設計をする設計事務所、建築工事として全体を束ねるゼネコン、設備工事を請けるサブコンを中心に多くの企業が関わり、工事が進められます。サブコンにはそれぞれの専門分野があり、熱源、空調、計装の各メーカーは、空調設備工事を担当するサブコンに対して製品を納入します。

 従いまして当社の事業は、主にサブコンから発注を受け、製造した空調機器を建物の工期に合わせて建築現場に納入するという流れで進められます。


⑤ 今後の業務用空調市場

国内市場

 新型コロナウイルス感染症の影響はなお続いているものの行動制限の緩和により社会経済活動は正常化に向かっております。ロシアによるウクライナ侵攻のほか各国の金融政策が今後の景気に影響する可能性が認められます。空調機市場においては、制御盤やモーター等を中心とした部品の遅延はおさまりつつありますが原材料価格の高止まりは続いており、これらに対応するための購買力強化並びに原価低減と価格転嫁対応を重要課題として取り組んでまいります。

 東京オリンピックを境に控えられた建設投資は2021年度以降回復しており、産業空調並びに東京大阪を中心とした大型再開発などで新築物件が見込まれます。2025年度頃からは納入後20~30年が経過したAHUの更新需要を中心としたストックビジネスへの移行が予測されます。

 更新物件については、高度経済成長期に建設された高層ビルの建て替えや1980~1990年代に建てられた施設の設備更新の時期が到来しております。例えば建設後50年が経過し、3度目の大規模更新を迎えた日本初の超高層ビルとして知られる霞が関ビル、1990年前後にオープンしたランドマークタワーや東京ドームなどは当社が継続的にAHU更新を行ってきた大規模建物の一例になります。また既設機器の保守サービスについて、これまでは都市圏での引合いが中心でしたが、需要は地方にも広がっております。その中には、過去に撤退した大手電機メーカー製AHUも多く含まれており、これまで以上に個々の現場に合わせた柔軟性と技術力が求められる状況になっております。

アジア市場

 アジア最大の市場である中国では、ゼロコロナ政策の解除を機に経済活動が正常化し景気回復局面に入っております。米国との対立を見据えた「科学技術の自立自強」のための政策を背景にハイテク分野の投資加速が見込まれ、中長期的には製造業を中心とした内需拡大を予測しております。

(3) 中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、少子高齢化に伴う労働者不足、気候変動問題への対応を含むESG経営・SDGsに対応し、持続的に発展できる企業グループへ更なる成長を遂げるため、2021年度からはじまる4ヶ年の中期経営計画を策定いたしました。中長期的な経営戦略を次の項目として、2025年3月期に連結売上高520億円、連結営業利益75億円を目指してまいります。

① SIMAを軸にした新しい製販体制

 製販体制のデジタル化がSIMAプロジェクト(SINKO Innovative Manufacturing of AHU)であり、AHU設計業務の3DCAD化、BOM化を進めることで、長年の課題でもある労働集約型の事業からの脱却を目指してまいります。将来に渡りSIMAを拡充していくことで、従来からの設計・製造指示やカスタマイズに必要な各種ノウハウがデジタル化され、上流の販売情報、設計、生産を一気通貫で融合した、革新的な空調機生産方式となるよう目指してまいります。開発された3DCADシステム、AIによる生産工数予測、図面上の部品画像を認識する検索システムなどの導入も始まっております。

 また、製品組立工程に「ライン生産方式」を部分的に導入し、「セル生産方式」と併用で最適な生産体制を進めております。

 製品データベース(BOM)を中心としたデジタル設計・生産体制の構築と需要予測の精度向上・インパクト営業の確立を両輪とする業務プロセスのイノベーションを通じて、個別受注対応と生産効率を両立することで、企業間競争による低価格化の進行、原材料価格・労務費の上昇によるコストの高騰等に対応し、中長期的に事業の発展性・収益性を高めてまいります。

② 重点取組項目

1) AHU強化と5つの重点ターゲット

 需要予測の精度向上とインパクト営業の確立、情報の一気通貫による生産効率の向上などSIMAプロジェクトの効果をフル活用することで個別受注対応と生産効率を両立し、基盤事業の圧倒的な競争優位の維持・向上を目指してまいります。

 当社ではAHU市場を5つの重点分野に分け、それぞれのターゲットに合った販売戦略を立てております。5つの重点分野とは、大型ビル空調、産業空調、データセンター、更新案件、個別空調をいいます。それぞれのターゲットは固有の市場特性があり求められる技術要件も異なりますが、当社が培ってまいりましたノウハウをもって5つの分野にオールラウンドでアプローチしてまいります。

 例えば、データセンター市場は、ChatGPTなどの生成AIの登場によってますます投資が活発化することが見込まれます。当社はデータセンターでの実績も多く、データセンター銀座と呼ばれる千葉県印西市周辺では、国内企業を中心に約半数の建物で採用されてきました。海外企業の進出が進むなか、サーバーの高性能化による1台当たりの発熱量の増加から、大容量で性能の高い空調機器が求められており、AHUの成長分野として注力してまいります。

2) 個別空調・HP-AHU強化

 感染症の拡大によって換気の重要性が再認識され、特に中小規模の建物で需要が高まっております。また冬期の加湿不足という慢性的な課題を抱えており、安定した湿度コントロールを行う大風量・大容量タイプのHP-AHUの要望は根強く存在しております。

 セントラル空調分野で蓄積したノウハウを存分に活かし、パートナーとの協創を進めHP-AHUの製品ラインアップを拡充させ、市場シェアの拡大を目指してまいります。

3) 工事事業強化

 工事事業については、AHUの施工、保守・整備を中心とした独自性を武器に収益の改善が進んでおります。近年はHP-AHUへ技術の幅を広げておりますが、更なる成長を見据えて、空調工事業へ拡張することを目指してまいります。また、空調機器の省エネ性や快適性の維持・向上、耐用年数の延長、故障の予防などを目的とした保守ニーズは確実に存在しており、メーカーの強みを活かした保守サービス体制の充実を図ってまいります。

4) 中国事業強化

 中国市場においては、ここ数年、当社グループの強みが活かせない汎用品の安値受注競争に巻き込まれ、利益の低下を招く要因となっておりましたが、計画段階から高機能型AHUを提案することにより価格競争を回避し、採算性重視の販売戦略を徹底することで収益の改善を進めております。一方、国内で培った原価低減ノウハウを中国市場で展開することで収益性を高めてまいります。

5) 技術深耕・品質向上

 長年培ってきた実績・経験・ノウハウを活用し、引き続きコア技術(送風機・熱交換器)の高効率・コンパクト化の研究開発に注力し、環境負荷低減・CO2削減・省エネルギー化のニーズに応えてまいります。また施工現場、生産現場での人手不足に対応するため、分割搬入・現地組立が可能な製品の設計やAIなどを活用した現場省力化の技術開発に努めてまいります。

③ ESG経営の推進、SDGsへの貢献

 環境面において、塗装や溶接の削減など生産工程での環境負荷低減を進めるほか、現場の省力化や省エネルギーを可能にする製品開発を進めてまいります。また社会面において、ワーク・ライフ・バランスを実現する働き方改革などを進めるほか、空調機器メーカーとして抗菌・抗ウイルスや熱中症対策などの環境構築による社会貢献を目指してまいります。併せて、内部統制システムの整備やリスク管理とコンプライアンスの徹底を通じてガバナンスを強化いたします。

(4) 目標とする経営指標

当社グループは需要を見据えた製品開発と販売戦略及びコストダウンなどを通じた、連結営業利益を経営指標としております

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題を以下のとおり認識しております。

事業上の強み

① 需要予測に基づく受注生産力

 多品種少量生産の枠組で製造されるAHUは、それぞれに異なる建物の空調ニーズに応じた能力が求められる製品です。部材手配からラインの組み換えまで、生産現場が柔軟に対応する必要があり、量産メーカーにとっては高い障壁となりますが、より困難なことは、月によって出荷のバラつきが大きく、生産量を安定させられない点にあります。

 当社は、建物の計画段階から設計を手伝う業界最大の上流営業部門を構え、早期に案件情報を獲得し、共有された情報による需要予測により、新築案件、納入実績からの更新案件、短納期が多い小口案件などの生産要求を柔軟に組合せた計画により、生産量を安定させる仕組みを構築しております。

② お客様への信頼と満足の提供

 セントラル空調が納まる建物は、工場や研究所、オフィスや商業施設など、いずれも収益を上げるためのインフラであり、その竣工に向けて高い水準の工期管理が求められます。定められた工期ですべての設備を納めるためには、空調機の品質はもとより、施工過程で生じる技術的要求への対応力や様々な調整力が必要とされます。当社は、過去国内の代表的な建物に製品を納めてきたなかで、お客様とともに数々の挑戦とトラブル対応を含めた経験を共有してまいりました。豊富な現場経験によって高められた製品品質と納入後のメンテナンスを含むサービスの品質に対する安心が当社の提供する付加価値であり、要求の厳しい建築現場におかれているお客様に信頼と満足を感じていただけるよう今後もその向上に努めてまいります。

対処すべき課題

 当社グループは、事業環境の変化に耐えうる利益体質の構築と事業基盤の強化を経営課題としております。国内では、新型コロナウイルスの影響の他、人口減少や働き方改革を背景にした労働者の不足・労務費の上昇が顕著になっております。アジア市場においては、新型コロナウイルスに加えて、米中の覇権争いに伴う経済への影響は予断を許さず、厳しい事業環境が続くものと思われます。

 このような背景を受け、当社グループが取り組む重要課題は以下のとおりであります。

① 気候変動対応としてのセントラル空調及び個別空調

 気候変動問題は顧客の購買行動に大きな変化をもたらします。当社の主力製品であるAHUは、熱源からAHU内の熱の搬送に地球温暖化係数の高いフロンガスではなく、自然冷媒である冷温水を用いております。顧客要求に応えるAHUを提案し、温室効果ガスの使用量が少なく環境性の高いセントラル空調採用の建築物を増やしていくことに貢献してまいります。一方、個別空調で使用される機器は主にフロンガスが用いられますが、気候変動関連の規制強化の流れから、今後はより温暖化係数の低い冷媒への転換が進む見込みです。新冷媒対応をしっかりと進めることで今後の更新需要の取り込みに備えてまいります。

② 挑戦する幹部人財の育成

 当社グループの事業運営においては、空調機器の販売・製造を基盤事業として磨きつつ、新しいマーケットに挑戦する能力とマインドを持つ幹部人財の育成が成長のカギになります。販売・製造・開発などにおいて気候変動やデジタルなどの環境変化のなかに機会を見いだし、持てる専門性を活かして挑戦を続ける幹部人財の育成に注力し、グループの組織力の強化を進めてまいります。

③ 材料費の高止まりと部品遅延への対応

 近年、銅・アルミ・鋼材などの材料費が急速に高騰し、高止まりしております。高騰の要因は、需要供給バランスの変化、コロナ禍及びロシアによるウクライナ侵攻の影響によるところが大きく、今後も企業努力の範囲を超える値上がりについては製品価格への反映が必要です。足元では、一部の部品において納期遅延が続いており、購買力を引き上げることで可能な限り納期への影響を抑えてまいります。

④ 生産方式の進化

1) 業務のデジタル化

 労働者の不足・労務費の上昇は技術・製造分野で顕著になっております。また近年の生産現場は外国人労働者が増加し、伝統的な阿吽の呼吸によるものづくりは限界を迎えております。当社が強みとする個々の現場への対応力をさらに高めるには、個人の習熟度合いに左右されない業務体制の確立が急務であり、そのためには顧客要望やそれに伴う設計・製造指示、カスタマイズに必要な各種ノウハウなどのデジタル化による業務プロセスのイノベーションが必須になります。SIMAプロジェクトを確実に推進し、需要予測の精度向上、設計工程の見直し、造り方改革、生産工程を効率化するAI開発などを通して、労働集約型工場からの脱却を進めてまいります。

2) 総合品質の向上

 製品品質の更なる追求に加え、多種多様な要望に対応する個別設計・生産、建築現場の要望に沿った納期対応、納品後の保守サービスなど、グループを挙げて総合的な品質を向上させ、お客様に対しより大きな安心を提供できるよう努めてまいります。

⑤ 海外事業の安定化

 アジア市場において、中国現地法人では採算性を重視した販売戦略への切り替えや原価管理の強化によって、収益の改善が進んでおります。継続的に利益を確保できる体制構築を進めるため、国内事業で蓄積してきたノウハウを現地ニーズに合致・深化させ、製品改良や現地法人の技術者の育成など、事業基盤の安定に注力してまいります。

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