ワコールホールディングス 【東証プライム:3591】「繊維製品」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。これらの将来予測には、不確定な変動要素が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。
(1) グループ経営理念(ミッション、創業の精神)
ワコールグループは、純粋持株会社である当社のもと、日本、米国、欧州、中国、東南アジアを中心に、インナーウェア事業などを展開し、従前より「人々の美しさに貢献することで、広く社会に寄与する」ことを目指して活動を続けてきました。そして、2022年には、「世界中のあらゆる人々の豊かな生活に貢献する」こと、「画一的な外見美ではなく、内面も含めた自分らしさの実現をお手伝いする」こと、「環境や人権などさまざまな社会課題の解決に努める」ことを目指し、現代社会において私たちが果たすべき社会的使命「ミッション」を定義しました。この「ミッション」ならびに、70年を超える歴史の中で受け継いできた「創業の精神」をよりどころとして、各事業会社が複雑化・多様化する社会課題への取り組みを将来の「成長機会」として捉え、事業を通じて「社会課題の解決」と「持続的成長」の両立を目指す「サステナビリティ経営」を推進することで、企業価値の向上に努めていきます。
また、私たちの事業活動は、一人ひとりのお客様の声に耳を傾け、謙虚に自らを変革し、人と人とが互いに信頼し合う「相互信頼」を積み重ねることで成り立っております。企業経営の透明性を高めることに継続して取り組み、公正性、独立性を確保することを通じて、「株主」「顧客」「従業員」「取引先」「地域社会」などすべてのステークホルダーとの「相互信頼」の関係を構築することで、社会になくてはならない存在を目指していきます。
ミッション |
ひとりひとりが 自分らしく美しく いられるように
世の中が 自信と思いやりに あふれるように
からだに こころに
いちばん近いところで 寄り添い続けます
からだのここちよさ、こころの美しさ。それはまるで引力のように、自分と社会とを結びつけてくれる。
ありたい自分を知り、一歩ずつ近づくこと。そこで生まれた自信は、多様な人々を受け入れる優しさを育む。
その優しさは、やがて社会や地球へも広がり、思いやりあふれる豊かな未来へとつながっていく。
からだに こころに いちばん近いところで、一人ひとりの輝きに寄り添い続けてきたワコールだから。
変化に挑み、成長を続けることで、世界を美しくする力になれる。私たちは、そう信じています。
グローバル・コーポレートメッセージ
Comfortable inside. Confident outside.
※「グローバル・コーポレートメッセージ」は、ワコールグループ共通のコミュニケーションメッセージです。
詳しくは、当社企業情報サイトの「ワコールグループについて」(https://www.wacoalholdings.jp/group/)をご覧ください。
創業の精神 |
目標
世の女性に美しくなって貰う事によって
広く社会に寄与する事こそ
わが社の理想であり目標であります
社是
わが社は 相互信頼を基調とした
格調の高い社風を確立し
一丸となって 世界のワコールを目指し
不断の前進を続けよう
経営の基本方針
1. 愛される商品を作ります
2. 時代の要求する新製品を開発します
3. 大いなる将来を考え正々堂々と営業します
4. より良きワコールはより良き社員によって造られます
5. 失敗を恐れず成功を自惚れません
(2) 中長期的な会社の成長戦略と目標とする経営指標
①中長期経営戦略フレーム 「VISION 2030」
当社グループは、経営理念の実践に向けて、自社が抱える事業課題やお客様の価値観、社会・環境の変化を見据えつつ、長期的なゴールからのバックキャスティングにより、2030年に向けたグループの将来ビジョンを示す「VISION 2030」を策定いたしました。「VISION 2030」では、「高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する」ことを中長期的に目指す姿として掲げており、以下の取り組み項目を通じて、持続的な成長と企業価値の向上を実現させてまいります。
目指す姿:高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する
基本方針:革新的な視点で新たな価値を生み、持続的成長を実現する
事業領域:「美」「快適」「健康」領域を、「高い感性と品質」で支えられた新たな商品・サービスで深耕・拡大していく
重点戦略:
重点戦略 | マテリアリティ(重要課題) | |
サステナビリティ 経営の推進 | 国内の収益性向上と事業領域拡大 | 国内における着実な成長と、健康領域での新規事業創出 ・CX戦略の推進を通じた国内市場シェアの回復 ・「美・快適・健康」分野における事業領域の拡大 |
海外事業の拡大と高収益構造への変革 | 既存進出エリアの拡大維持と、欧州やインド市場での成長 ・デジタルマーケティングの強化による新規顧客の獲得 ・CRM強化による既存顧客のロイヤル化 ・新規市場におけるブランド投資の強化 | |
グループ経営力の強化 | グループガバナンスの強化、多様性のある人材育成と活用 国内外の技術・生産・R&D拠点の整備 ・品質基準の再定義、縫製工場のスマートファクトリー化、生産・輸送効率の追求 | |
資本効率の高い経営への転換 | 資本コストを上回るROEの継続的な創出 ステークホルダーへの価値配分の最適化 ・ROE10%、資本構成の最適化への取り組み |
主要指標(2031年3月期):
売上収益 | 2,700億円 (うち、海外事業売上比率40%) |
(参考)非連結合弁会社含むグループ売上高 | 3,400億円 |
事業利益(事業利益率) | 270億円(10%) |
営業利益(営業利益率) | 270億円(10%) |
ROE | 10% |
役員・従業員の行動指針(アクション):
「誰かの幸せを想おう」 |
顧客、取引先、ともに働く社員など、周囲の人の幸せを考えられているだろうか |
「好奇心を持って、五感を使い観察しよう」 |
最近、新たな発見や気づきはあっただろうか |
「なぜ?何のために?を考えよう」 |
真意や根本原因を理解できているだろうか |
「異なる意見を尊重しよう」 |
謙虚に人の意見に耳を傾け、忖度抜きで、建設的に議論をしているだろうか |
「未来志向で判断しよう」 |
目先の結果だけではなく、豊かな未来の実現のために行動しているだろうか |
「まずやってみよう」 |
リスクを恐れて立ち止まっていないだろうか 挑戦する人を応援しているだろうか |
「仲間と力を合わせよう」 |
大きな成果を生むために、仲間と切磋琢磨し、共創できているだろうか |
「誠実に、責任を持ち行動しよう」 |
相手に感謝を伝えているだろうか 人のせいにしていないだろうか |
また、「VISION 2030」の策定にあたり、『世界のワコールグループ』の定義を以下のように、更新しております。
『世界のワコールグループ』の定義
・グループの商品・サービスや社会的課題に係る取組みが、全てのステークホルダーから高い信頼を得ている
・グループの人材、資産、ノウハウ、ネットワークを最大限活用し、世界的規模で競争優位性のある事業展開を行っている
・革新的且つ高品質な商品・サービスで、新たな顧客体験を創造し続け、世界中のお客さまの生活を豊かに美しくし続けている
・全世界の従業員がグループの目標、使命を理解し、その実現に向け、常識や過去にとらわれずに挑戦している
②中期経営計画
2023年3月期から2025年3月期までの3カ年は、「VISION 2030」で掲げた「高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する」ことを実現していくための礎を築く重要な期間と位置付けています。グローバルベースでブランドを展開するものづくり企業として、多くの人々の豊かな生活に貢献するとともに、持続的な成長が可能な高収益企業への転換を果たすために、中期経営計画では以下の取り組みに注力します。
コア戦略
(国内事業) レジリエントな企業体質への転換 | <株式会社ワコール> CX戦略とマーケティングイノベーション(再成長の実現) ・CX戦略の推進 ・ブランド力・商品開発力の強化 ・人材開発と組織開発 コスト構造改革の継続(収益性の向上) ・働き方改革、ものづくり構造改革、費用対効果の追求による収益力の向上 |
<連結子会社> 不採算事業の対処(収益性の向上) ・確実な利益を出し続ける体制の構築(恒常的な黒字化) ・定期的な点検(半期毎)を通じた撤退・切り離しの判断と実行 | |
(海外事業) グローバル成長の加速 | グローバルでのDX加速(CX戦略の推進) ・オフラインとオンラインを融合した顧客体験価値の向上 ・デジタルマーケティングの強化による新規顧客の獲得 ・データ活用・CRM強化による既存顧客のロイヤル化 |
(サステナビリティ) マテリアリティに対する取り組みの推進 | ・経営理念の実践と競争力強化に向けた人的資本と組織能力の強化 ・深刻化する環境課題と人権課題への対応強化 ・社会価値創造に向けた共創イノベーションの推進 |
(財務) 資本コストを上回るROEの創出 | ・収益力の向上と資本効率の改善 ・コーポレートガバナンスのさらなる透明性向上 ・重大コンプライアンス違反の撲滅 |
取締役会の実効性向上に向けた取り組み
中期経営計画では、「グループ経営の推進」「グループ力の強化」を引き続き、経営の重要課題と位置づけ、中長期での持続的成長を支える強固な経営基盤の構築を目指してまいります。また、取締役会の実効性向上に向けて、役員報酬制度の見直しに継続して取り組むほか、取締役会の役員構成の最適化(専門性・独立性・多様性の確保)に努めます。
(中期経営計画期間における具体的な取り組み)
・経営体制の見直しと事業責任者の明確化
・役員報酬制度の継続的改善
・取締役会の多様性確保
財務戦略:
財務戦略については、営業キャッシュフローを活用し、成長に向けてIT・デジタル投資を行うとともに、新規事業投資の機会を探ってまいります。また、収益力の向上を最優先課題として取り組むと同時に、資本効率の改善に向けて積極的な株主還元を実施することで、ROE向上に取り組んでまいります。
(中期経営計画の基本方針)
・収益力の向上を最優先課題として取り組むと同時に、資産効率・資本効率を改善させることで、ROE向上を実現
・将来成長への投資を優先すると同時に、資本効率の改善に向けて積極的な株主還元を実施
中期経営計画期間(2023年3月期~2025年3月期)のガイドライン | |
政策保有株式 | ・積極的な政策保有株式の縮減を継続して実施 ・中長期的な政策保有株式の保有指標は、純資産の15%以下 |
株主還元 | ・配当性向50%以上を目安にした安定的な配当の実施 ・資本効率の改善を目的に、機動的な自己株買いを実施 ・適切な成長投資がない場合は、資本効率の更なる改善に向けて、追加還元を実施 |
成長投資 | ・成長に向けてIT・デジタル投資を行うとともに、新規事業への投資機会を検討 |
③2024年3月期の方針
2024年3月期につきましては、多くの国や地域で、感染症の収束に伴う個人消費回復の期待と、物価高や地政学リスク、金融不安などに伴う消費減速の懸念が混在していることから、不安定な事業環境が継続するものと想定しております。このような環境のもと、当社グループは引き続き、複雑化・多様化する社会課題への取り組みを将来の「成長機会」として捉え、事業を通じて「社会課題の解決」と「持続的成長」を両立する「サステナビリティ経営」を推進するとともに、「資本効率重視の経営へさらなる変化」「ガバナンスの強化」「事業収益力の改善」に注力することで、企業価値の向上に取り組んでまいります。なお、資本効率重視の経営への変革を推進し、経営の実効性を高めることで、「業績の立て直し」と「PBR改善」を早期に実現するため、現在の中期経営計画のリバイズを実施することとしました。中期経営計画で掲げる事業戦略を再点検するとともに、収益性と資本効率の改善に向けた経営の基盤強化策を改めて検討し、2023年11月頃に公表する予定です。
上記の取り組みにより、2024年3月期の連結業績は、売上収益2,050億円、営業利益60億円、税引前利益70億円、親会社の所有者に帰属する当期利益48億円を見込んでおります。年間の主要な為替レートは、1米ドル=130.00円、1英ポンド=160.00円、1中国元=19.00円として計画を策定しております。
④目標とする経営指標
主要指標:
| 2024年3月期 (中期経営計画2年目) | 2025年3月期 (中期経営計画最終年度) |
売上収益 | 2,050億円 | 2,200億円 |
事業利益 | 60億円(2.9%) | 160億円(7.3%) |
営業利益 | 60億円(2.9%) | 165億円(7.5%) |
税引前利益 | 70億円(3.4%) | 180億円(8.2%) |
親会社の所有者に帰属する当期利益 | 48億円(2.3%) | 125億円(5.7%) |
EPS | 88円 | 200円以上 |
ROE | - | 6% |
財務指標:
| 2023年3月期~2025年3月期 3カ年累計 |
政策保有株式の縮減 | 縮減目標を150億円に引き上げ (当初計画は100億円) |
総還元性向 | 100%以上 |
株主資本 | 2,100億円(2025年3月末) |
(3) 会社の対処すべき課題
資本効率重視の経営へさらなる変化:
当社においては、将来の成長を加味した市場評価である時価総額が純資産を下回って推移しており、収益性を早期に改善し、資本コストを上回る資本収益性を達成することで、低迷するPBRを1倍以上の水準に回復させることが重要課題と認識しております。そのため、各事業会社・各事業部が従来以上に収益性と資本効率を重視する経営へ移行するとともに、実効性の高い戦略を策定・遂行することで、持続的な成長を通じた中長期的な企業価値向上を実現してまいります。なお、自社の資本収益性や市場評価に関する分析・評価、及びPBRの改善に向けた方針や目標・管理指標、具体的な取り組み、実行の時間軸については、2023年11月頃に開示する予定です。
ガバナンスの強化:
資本効率重視の経営へ移行し、資本コストを上回る資本収益性を達成するためには、業務執行に対する取締役会の監督機能のさらなる強化を図り、経営の実効性を高める必要があります。なお、当社の課題である収益力と資本効率の改善を着実に実行するため、取締役会のスキルセットを検証し、投資・金融資本市場に関する経験や知見を有する社外取締役を追加選任することとしました。
事業収益力の改善:
感染症拡大に伴う各国・地域の行動規制は緩和されたものの、感染症の経験を通して変化した消費者ニーズや消費行動への対応が不十分であったため、収益の回復が遅れています。新しい顧客体験価値の提供と新規事業の創出によって再成長を実現すると同時に、コスト構造改革を継続し、事業効率を高めてまいります。
その他の課題:
少子高齢化による国内市場の縮小、ECの拡大などの流通の変化、消費者の価値観の多様化、節約志向の高まりに加え、地政学的リスクに伴う原材料及び輸送費の高騰など、当社を取り巻く経営環境は引き続き大きく変化しております。また、気候変動などの環境問題や人権問題への深刻さは増大しており、適切な対応と予防が必要です。
当社では、マテリアリティ(重要課題)の項目として定めた「顧客への提供価値の最大化」、「従業員ひとりひとりの成長と働きがいの高い組織の構築」、「次世代に向けた地球環境の保全」、「すべての人が自分らしく活躍できる社会の実現」、「持続的成長の実現に向けたガバナンスの強化」への取り組みを通じて、「社会課題の解決」と「持続的成長」の両立を果たすことで、企業価値の向上に努めてまいります。
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