企業サイフューズ東証グロース:4892】「医薬品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1) 経営方針

「細胞から希望をつくる」

「細胞のみから成る立体的な組織・臓器を患者さまへお届けする」

 当社は、「革新的な三次元細胞積層技術の実用化を通じて医療の飛躍的な進歩に貢献する」という企業理念のもと、2010年の創業以来、「細胞だけで」立体的な組織・臓器を作製し、再生医療・創薬分野をはじめとする再生・細胞医療分野において、社会貢献することを企業使命として事業を進めてまいりました。

 当社は、当社独自の人工の足場材料を用いることなく細胞のみで立体的な組織・臓器を作製することを可能とする三次元細胞積層技術(基盤技術)及びこの基盤技術を搭載した細胞版の3Dプリンタ(バイオ3Dプリンタ)を用いて作製した立体的な組織・臓器を「3D細胞製品」として実用化し、患者さまにお届けするとともに、将来的には、当社の事業拡大を通じて、日本発の本技術をグローバルに展開し、再生・細胞医療分野での中心的存在になることを目指しております。

(2) 中長期的な経営戦略及び経営環境

 中期経営計画における事業戦略として、バイオ3Dプリンタの普及により「ベース収益の確保」と「シーズ育成環境」を実現し、研究用組織(創薬/再生医療研究用途等)で「細胞製品の実用化」を実現する段階を経て、中長期的に「再生医療等製品の承認取得」を目指し、再生医療ベンチャーとしての事業価値最大化を図ることとしております。

 中長期的な経営戦略及び当社事業を取り巻く経営環境は以下となります。

1. 再生医療等製品の上市(開発パイプラインの事業化)

2. 開発会社としての細胞製品の実用化に向けた研究開発体制及び上場会社としての経営管理体制の強化

3. 上市・上場後の飛躍的成長へ向けた開発パイプラインの拡充及びグローバル展開

① 再生医療領域

 開発パートナー企業とともに、複数パイプラインの臨床開発を進め、再生医療等製品の承認取得を実現し、長期的ドライバとしての事業確立を目指します。

 バイオテクノロジー及び再生・細胞医療領域においては、現政府が提唱する「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」における成長政策として科学技術・イノベーションへの重点的投資が掲げられ、特に、経済産業省が令和4年度補正予算「再生・細胞医療・遺伝子治療の社会実装に向けた環境整備事業」において総額約50億円の拠出を決定する等、再生医療の産業化を後押しする活動が拡がっております。

 直近では、CAR-T細胞製品が相次いで承認される等、再生医療等製品市場は急速に拡大をし、また、2018年にはそれまで有効な治療法の存在しなかった脊髄損傷を対象とした製品が承認される等、再生医療によりこれまで存在しなかった新たな市場領域が生み出されました。こうした動きは今後iPS細胞技術並びに2020年にノーベル賞を受賞した「クリスパー・キャス9」といったゲノム編集技術と合わせて新しい細胞を用いた再生医療等製品の登場によりますます加速していくと考えられます。

「2020年度再生医療・遺伝子治療の市場調査業務」の最終報告書(アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)から委託を受けた調査)では、国内の市場規模は2020年時点の250億円から2040年時点の1.1兆円規模まで拡大し、今後20年で40倍以上の規模に成長すると見込まれております。

 領域別でみても、筋骨格領域、神経領域をはじめとして、様々な領域において急速に市場が拡大すると予想されています。

 筋骨格領域に関しては、現在対象疾患から除外されている変形性膝関節症を対象とする再生医療等製品が上市することにより、適応となる患者数が大幅に増えるため、市場が拡大すると想定されます。

 神経領域の疾患に関しては、脊髄損傷に対する再生医療等製品が承認されたことで、今後は、神経系に係る治療法の普及とともに市場が大きく拡大していくことが予想されています。

 これ以外にも、直近では角膜疾患を対象とした製品上市が続いている眼科領域に加え、肝臓や腎臓が掌る内分泌・代謝系の領域、心血管・血液領域、泌尿生殖器領域、消化器領域等、また昨今の新型コロナウイルス感染症のような感染症や呼吸器に関する領域等いずれの領域も、新たな製品が上市されることで再生医療の新たな治療領域として市場の拡大がより一層進んでいくことが予想されています。

 一方、これらの再生医療等製品の多くは細胞治療に分類され、細胞懸濁液等を静脈注射する治療法が主流となっています。今後は、立体形状を有する製品として、二次元のシート状組織や三次元の立体組織を移植する製品群の開発が進行することが予測されております。

 また、現在の再生医療領域がおかれている状況下にあって、移植待機患者数の増加等の社会的課題に対して、当社が開発を進める3D細胞製品のような社会的意義の大きい新たな再生医療等製品の誕生により、臓器移植の新たな選択肢としての再生医療が実現することへの期待が高まっている状況にあります。

② 創薬支援領域

 開発パートナー企業とともに、創薬支援分野において肝臓構造体の毒性評価モデルの事業化を実現し、中期的ドライバとしての事業確立を目指します。

 科学技術のテクノロジーの進歩が著しい昨今においても、近年のヘルスケア業界における製品開発では、数年以上の長期間、数十億ドル規模の研究開発費を要することに加え、より開発が困難な新製品創出が求められる現状が続く一方で、製品の安全性の要求も高まっており、新製品の開発コストは増加の一途をたどっています。

 また、現状では、動物実験により製品の安全性や有効性を検証する方法により製品開発が進められていますが、近年、世界各国において動物の保護を目的とする法整備が進んでおり、EU域内においては化粧品開発のための動物実験が全面的に禁止される等、その動向は世界的に加速しています。

 例えば、今後の化粧品の研究開発において動物実験が全面的に禁止される可能性があり、様々な製品開発において動物実験を代替する新製品誕生に対するニーズが高まっているという状況にあります。

 さらに、食品・化粧品等のあらゆる製品の開発には動物実験が介在しているものの、現状ではこれに代わるソリューションがなく、動物実験の代替製品の市場だけでも、世界的には2020年の91億ドルから2025年には149億ドルに、年平均成長率10.3%で市場拡大が進むと予測されています。

 このような現状にあって、現在の企業の製品開発においては、なお動物試験を継続して、あるいはヒト臓器から取り出した細胞をシャーレ上で培養したものを研究開発に使用する等、根本的に動物試験に代替する製品が市場には存在しておらず、今後、当社の3D細胞製品のようなこれまでにない新たな革新的製品を事業化することにより、医療業界及びヘルスケア業界全体が抱える社会課題に対するソリューションを安価に平等に提供できることへの期待が高まっている状況にあります。

③ デバイス領域

 開発パートナー企業とともに、バイオ3Dプリンタによる基盤技術の普及を進めるとともに、再生医療領域において必要となる基盤技術の応用や新技術開発を継続し、基盤技術のグローバル・スタンダード化を目指します。

 再生医療周辺産業においても、2015年から2030年までCAGR+23%での成長が予測されており、装置類や消耗品類、製造受託等のサービス類が市場を牽引すると見込まれております。また、再生医療に使用する目的以外にも、新薬開発や研究用の組織としての製造受託等の各種受託の需要も見込まれており、特に、創薬分野では三次元培養によって作製した細胞や3D細胞製品を用いて、生体内により近い環境下での、肝炎、肝臓病、がん等に関する研究が行われています。

 今後、再生医療の産業化・市場拡大が進み、神経、骨、血管等の各種組織・臓器を立体的に作製するニーズが増加することに伴って、再生医療周辺産業の市場もさらに拡大すると見込まれております。

 バイオ3Dプリンタ(装置以外の各種消耗品も含む)市場では、大学や研究機関での技術導入に加え、今後は企業での導入が進むと予想されております。特に製薬会社の創薬・スクリーニングでは細胞の使用量が多くなるため、自動装置及びバイオ3Dプリンタの需要が高まるとみられます。

 さらに、立体的にヒトの皮膚を培養した化粧品のサンプルテストへの応用、医師の手術用練習ツールとしての人工臓器の作製等の様々な領域への技術応用が拡大しており、今後は、医薬における研究以外の様々な分野での需要拡大も予想されます。

(3) 目標とする経営指標等

 当社は、独自の基盤技術を活用して創出する新たな細胞製品により市場の開拓及び拡大成長を目指して、積極的にパイプライン開発及び研究開発・技術開発等への先行投資を行っている段階であり、2021年12月期においては黒字化を達成したものの、安定して利益を計上するに至っておりません。

 このため、現時点において当社は、現預金残高水準(キャッシュポジション)を経営指標等としております。具体的には、今後、経済・金融環境の変化に備えて十分な手元流動性を確保し、中長期的な財務基盤の拡充を図り、確実に再生医療等製品の事業化を達成するための経営指標等として、安定した資金力(キャッシュポジション)の確保・維持することを重視しております。さらに、多様な資金確保手段を講じ安定的な現預金残高水準を確保・維持するとともに、大手金融機関・政府系金融機関・地方銀行等の複数の金融機関との間でコミットメントライン契約等を含む融資枠を設定しております。中長期的には、再生医療等製品をはじめとする事業成長等による収益安定化の実現により経営指標等の達成を目指してまいります。

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社は、企業理念である医療の革新的進歩への社会的貢献を目的として、パートナーシップ戦略の展開を軸に、①細胞製品の実用化・商業化、②組織体制及び財務基盤の経営基盤の強化に加え、③医療分野のみならず、次世代ヘルスケア分野や教育分野等の他領域への価値還元や社会的価値と経済的価値の共存を目指したSDGsやESGの推進に取り組む等、持続的な成長を推進してまいります。

① 細胞製品開発の実用化・商業化
(a) 開発パイプラインの実用化

 当社が、再生医療ベンチャーとして中長期的な企業成長と事業価値の最大化を図るためには、再生医療等製品の承認取得をはじめとして、当社独自の基盤技術から生み出される3D細胞製品の開発を着実に進め、継続的に開発パイプラインの価値を拡大・発展させていく必要があります。

 当社では、早期の再生医療等製品の承認取得を目指し、当社が中心となってパイプライン開発を推し進め、高度な開発力・技術力等の専門性を有する複数の事業会社との間で構築した強固かつ効率的な共同開発体制に基づき開発を進めるとともに、将来の細胞製品の実用化・商業化を見据え、事業会社とのパートナリングを通じた製造販売体制を強化しております。

 また、当社の再生医療等製品の商業化及び将来の安定的・継続的な収益構造の構築に向けて、さらなるパートナリングの強化によるバリューチェーン構築及び再生医療等製品のコスト低減に資する製造体制の整備を進めております。

 さらに、当社の製品優位性に基づき将来の再生・細胞医療市場を牽引していくことを視野に入れ、原料の安定供給、製造、販売等の各機能についても、パートナー企業との戦略的な提携等を通じて、再生医療等製品の安定供給、マーケティング、顧客となる医療機関へのネットワーク、販路構築等の拡大に対処すべく体制強化に努めております。

 加えて、現在の主要開発パイプラインに続く次世代の研究開発シーズの探索も重要であり、さらなる開発パイプラインの拡充を目指して、引き続き大学や研究機関との共同研究及び自社独自の研究開発についても促進しております。

(b) 基盤技術普及

 当社では、将来の持続的な企業成長のため、再生・細胞医療領域における基盤技術のポジション確立及び次世代のパイプライン(研究開発シーズ)の普及・探索の拡大のため、事業活動とともに、バイオ3Dプリンタ等のデバイスを通じた基盤技術普及を着実に遂行していく必要があります。

 そのため、当社は、バイオ3Dプリンタ「Regenova®」及び「S-PIKE®」について販売提携パートナーとともに、学会や展示会等での普及活動を進め、ベース収益の確保を進めるとともに、ユーザーの研究開発を支援し、ユーザーの論文投稿等今後の研究開発促進に繋がるフォローアップ活動についても継続してまいります。

 また、バイオ3Dプリンタのグローバル展開を通じた基盤技術のさらなる普及拡大を通じて、当社の3D細胞製品開発のみならず、再生・細胞医療分野における様々な研究開発の促進及び新たなシーズの開拓の促進を目指してまいります。

② 経営基盤の強化
(a) 組織体制の強化

 当社の製品開発の源泉は、開発会社としての研究開発力・技術開発力にあり、当社が再生医療等製品の承認取得へ向けたパイプライン開発や独自の3D細胞製品開発に必要となる技術革新を着実に実行していくためには、当社の基盤技術を習得した人材の確保及び人材の育成を中心とした組織体制を強化する必要があります。

 そのため、研究者・技術者がそれぞれの専門性や能力を最大限に発揮できる組織体制を構築し、組織的な開発力・技術力の向上を図るとともに、開発や事業の進展に合わせ柔軟に組織体制の見直しを行い、組織体制の効率化を進めてまいります。

 さらに、企業の事業継続性の維持・向上のため、高度な専門性を有する優秀な人材の確保及び将来の企業成長を牽引していく中核的人材の育成にも努めてまいります。

(b) 財務基盤の強化

 研究開発型ベンチャー企業である当社では、製品・サービスの販売及び技術ライセンス等の知的財産権の事業化等により収益を安定的に確保できるようになるまでは、研究開発に対する多額の先行投資による継続的な営業損失と、営業キャッシュ・フローのマイナスを計上することになることから、将来の持続的な企業成長のため、収益の多様化や安定化を図り、財務基盤を強化する必要があります。

 当社では、これまで、独立行政法人科学技術振興機構(JST)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)及び東京都等の行政からの研究開発・技術開発に対する支援を得る等、効果的な開発資金の獲得及び開発投資の実行により、様々な研究開発や技術開発を進めてまいりました。

 また、当社では、効率的で安定した運転資金を確保するため、大手金融機関からの融資枠の供与や政府系金融機関からの長期借入を通じて対外信用力を強化する等、間接金融による財務状況の安定性強化に努めてまいりました。

 今後も、細胞製品の上市による安定的な収益実現まで、細胞製品及びデバイス関連の売上を伸ばす一方、研究開発費を中心とした事業活動資金を継続的に外部より調達し、予算管理の徹底を通じてコスト抑制を図るとともに、株式市場からの調達等を含めた資金調達手法の多様化を図ることで、事業活動に必要な資金の安定的かつ機動的な調達を通じて財務基盤の強化を目指してまいります。

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