エキサイトホールディングス 【東証スタンダード:5571】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、「デジタルネイティブ発想で心躍る未来を創る。」をミッションに掲げ、インターネット関連事業を創造し続けることを通じて、中長期的な企業価値の向上を図り、持続的な成長の実現に向けて積極的な事業活動を推進してまいります。
また、当社子会社であるエキサイト㈱は設立当初より、インターネット利用者数の増加やインターネット広告市場の成長を背景に、インターネット分野を中心に事業を創出し続けてまいりました。当社によるTOB後は、既存事業であるプラットフォーム事業及びブロードバンド事業の深化をさせながら、コスト構造の転換を行い安定的に成長してまいりました。また、併せて新規事業創出にも注力し、事業再生・事業成長のノウハウを生かしたSaaS・DX領域や、既存事業の強みを活かしたD2C領域への新規参入を果たしております。今後も持続的な成長に向けた既存事業の深化と新規事業の探索を図りながら、両利きの経営を実践し、企業価値の向上に取り組んでまいります 。
また、株主・ユーザー・ビジネスパートナー・従業員等の全てのステークホルダーへの社会的責任を果たし、事業を通じて社会に貢献していくことを目指してまいります。
(2) 経営環境
(プラットフォーム事業)
①カウンセリングサービス市場
働き方改革により副業や兼業が促進され、個人のスキルを共有するスキルシェアリングサービスの市場規模は、2022年度の2,579億円から2030年度には最大2兆6,637億円まで拡大するものと予測されております。(一般社団法人シェアリングエコノミー協会「日本のシェアリングサービスに関する市場調査(2022年1月18日公表)」)
また、近年は経済・産業構造の変化や新型コロナウイルス感染症の影響により生活様式が変化する中で、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合が高くなっており、厚生労働省「精神疾患を有する総患者数の推移(2022年6月9日公表)」によると、特にうつ病や不安障害などの精神疾患が急激に増加しております。
この傾向に対して政府も労働者・企業に対してメンタルヘルスケアを推進しており、心理カウンセリングやメンタルヘルス市場の重要性は今後さらに高まるものと予想されることから、気軽に相談できるオンラインカウンセリング市場の成長は促進されると考えております。
当社グループが運営する「エキサイトお悩み相談室」は2006年12月、「エキサイト電話占い」は2007年9月に非対面型のカウンセリングサービスとして開始しており、長年にわたり、サービスを提供し続けてきた運用実績、占い師・カウンセラーの指導ノウハウ、担当制によるマネジメント体制等が、他社にとって参入障壁になっていると考えております。今後につきましても引き続き経験豊富な良質な占い師・カウンセラーの確保に努め、より多くのユーザーに支持されるサービス運営を実現することで、ユーザー、占い師・カウンセラーの双方にとって価値の高いサービスを提供することができると考えております。
②メディアサービス市場
メディアサービスが属する広告市場は、2020年から続く新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言・まん延防止重点措置などにより、消費の低迷と広告出稿が減少する等の影響を受けておりますが、社会のデジタル化が後押しする形で特にインターネット市場規模の拡大が続いております。㈱電通「2021年日本の広告費(2022年2月24日公表)」によると、2021年のインターネット広告市場は、前年比21.4%増加の2兆7,052億円に達し、マスコミ四媒体広告費(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ広告費の合算)を初めて上回り、今後につきましても、同様の傾向が継続すると予測されております。
当社は、女性向け情報メディア「ウーマンエキサイト」を1999年11月より長年にわたり運営してきた実績やノウハウ、女性ユーザーに特化した良質なコンテンツ、ブランド等を有している強みがあります。今後も良質なコンテンツの拡充を図るとともに多くの女性ユーザーに支持されている顧客基盤を活かし、「セノバス+」や「EMININAL」等の女性ユーザーを対象とした新たなビジネスを開発することにより、収益の多角化と拡大を目指してまいります。
(ブロードバンド事業)
新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークやWeb会議などが普及する中、自宅やオフィスでのブロードバンド回線の需要が大幅に増加し、2022年3月末のFTTH(光回線サービス)の契約数は3,666万件と、2021年3月末から164.7万件の純増(伸び率は4.7%)となっております。今後については、テレワーク等の在宅需要はやや落ち着く見通しではあるものの、FTTHの契約件数は2025年3月末には4,000万件に達するものと予測されております。(㈱MM総研「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査(2022年5月31日発表)」)
なお、当事業はユーザーとの継続的な取引を基盤とする事業であり、当社グループは、2002年8月よりインターネット接続サービス「BBエキサイト」等のISPサービス、2016年6月より格安SIM「エキサイトモバイル」等のMVNOサービス提供しており、長年にわたり培った運営実績やノウハウ、顧客基盤を有していることに競合優位性があると考えております。また、当社のサービスは契約の最低利用期間を設けずシンプルな料金体系かつ業界最安水準の価格を実現しており、ユーザーの利便性向上を図ることで他社と差別化をしております。MVNOサービスにおいては、2021年に大手3キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンク)や楽天等の各社が低料金プランサービスを開始し競争が激化している中で、当社は2021年4月より新たな段階料金制プラン「Fit」、定額料金制プラン「Flat」の提供を開始するなど、ユーザーニーズに合わせたサービスプランの開発・提供を行っております。
(SaaS・DX事業)
近年情報サービス通信事業は、人手不足や働き方改革の影響からデジタルトランスフォーメーションによる業務効率化を推進する企業が増加する等、IT投資への意欲は引き続き旺盛に推移しております。また、新型コロナウィルス感染症の影響によるリモートワーク環境の広がりからSaaSサービスのニーズは一層高まり、㈱富士キメラ総研「2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編/ベンダー戦略編(2022年3月15日公表)」によると、2020年度のDXの国内市場規模は1兆3,821億円であり、2030年度には3.8倍の5兆1,957億円と予測されております。
このような状況の中、エキサイト㈱を短期間で再生させた経営管理手法を活かし、2021年6月にクラウド経営管理ソフト「KUROTEN」をリリースしております。様々な経営データを一元管理し、予実管理の精度を高めるサービスであり、上場を目指すベンチャー企業から中堅企業までを主な顧客層として受注拡大に努めております。また、2022年7月には、ウェビナー施策に関わる全てのタスクを一元管理できるウェビナーPDCAクラウド「FanGrowth」をリリースし、SaaSサービスの拡充を図っております。
DX事業においては、2020年8月に子会社となったiXIT㈱の有する顧客基盤を活用し、受注件数及び受注単価の拡大を図るとともに、見込み顧客の獲得・育成を行う「ウェビナーコンサルティング」や企業の経営改善を行う「KUROTEN経営改善コンサルティング」を開始しており、今後も事業の拡大に向けた取り組みを行ってまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略等
当社グループは、プラットフォーム事業及びブロードバンド事業のユーザー数拡大による「既存事業の成長」、その収益基盤を活用したSaaS・DX事業への積極投資による「新たな事業の柱の構築」、M&Aによる「事業ポートフォリオの強化」により、持続的な成長を目指してまいります。
プラットフォーム事業は、「エキサイト電話占い」、「エキサイトお悩み相談室」等のカウンセリングサービスにおいては、良質な占い師・カウンセラーの継続的な獲得によりサービスの品質が向上しております。引き続き、経験豊富な質の高い占い師・カウンセラーの獲得や監視機能の強化によりサービス・健全性の向上に努め、新規ユーザーを獲得しながら相談件数を増やし、事業を成長させていく方針であります。また、カウンセリングサービスはリピート率が高いサービスであり、広告宣伝費を利益ベースにて約4ヶ月で回収しております。今後も費用対効果を管理しながら、積極的な販売促進活動を行ってまいります。メディアサービスにおいては、主要メディアであるウーマンエキサイトにおいて、コミックエッセイを中心に良質なオリジナルコンテンツ・記事を自社制作し、拡散させることによりメディア価値を高め、広告収入の拡大に取り組む方針であります。
ブロードバンド事業は、提携電気通信事業者より回線の提供を受けてサービスを展開しているため、競合他社との差別化には、ユーザーニーズに応えるサービスプランの開発・提供が重要となります。そのため、当社はコールセンターを活用し、ユーザーからの問い合わせ等に迅速に対応する体制を強化し、ユーザーにとって安心であり、満足度の高いサポート体制の充実を図っております。また、ユーザーニーズに合ったサービスラインナップの拡充に努めながら、会員獲得のためのプロモーションを行うことにより、ユーザー数の拡大を図ってまいります。
SaaS・DX事業においては、SaaS事業の「KUROTEN」及び「FanGrowth」は、2022年3月期以降に開始したサービスであるため、継続的な機能拡充により完成度を高めながら拡販を図り、DX事業は、2020年8月に子会社化したiXIT㈱が有する顧客基盤を活用し、受注件数及び受注単価の拡大を図ることで、プラットフォーム事業、ブロードバンド事業に続く新たな収益の柱とするべく注力する方針であります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、より高い成長性を確保する観点から「売上高」の成長率を重視しております。また、企業価値の向上を図るという観点から「営業利益」も重要な経営指標として位置付けております。
各サービス別では、プラットフォーム事業においては、カウンセリングサービスは課金サービスであるため課金件数の増加を重要しており、2019年3月期より着実に売上高を伸長しております。メディアサービスではページビュー(PV)数の増加を重視しており、安定的に売上高は推移しております。
| 単位 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 |
プラットフォーム事業売上高 | 千円 | 2,126,034 | 2,407,264 | 2,777,284 | 2,907,194 | 3,206,719 |
うちカウンセリングサービス 売上高 | 千円 | 844,103 | 1,144,803 | 1,579,041 | 1,654,972 | 1,883,904 |
うちメディア・D2Cサービス 売上高 | 千円 | 1,281,931 | 1,262,461 | 1,198,243 | 1,252,221 | 1,322,815 |
プラットフォーム事業営業利益 | 千円 | 103,614 | 355,501 | 345,230 | 520,935 | 683,535 |
(注)営業利益は全社費用等の調整額を配賦する前のセグメント利益となります。
ブロードバンド事業においては、ユーザーの利用期間が長期にわたるLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)が高いビジネスモデルのため、課金会員数を重視しております。ユーザーニーズに合ったサービスラインナップの拡充に努め、着実に売上高を伸長させ安定的な収益基盤を得ております。
| 単位 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 |
ブロードバンド事業売上高 | 千円 | 3,119,966 | 3,118,872 | 3,299,853 | 3,450,862 | 3,677,838 |
ブロードバンド事業営業利益 | 千円 | 590,505 | 590,968 | 577,261 | 575,300 | 649,689 |
(注)営業利益は全社費用等の調整額を配賦する前のセグメント利益となります。
SaaS・DX事業においては、新たな収益の柱とするための新規事業立ち上げの時期であるため、SaaS事業はMRR(Monthly Recurring Revenue:月次経常収益)を、DX事業はプロジェクト件数を重視しております。2020年8月にiXIT㈱が当社グループ入りしたことや、新規サービスの顧客の積み上げにより売上高の伸長を実現させております。
| 単位 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 |
SaaS・DX事業 | 千円 | 59,509 | 78,638 | 636,311 | 681,085 | 648,490 |
SaaS・DX事業 | 千円 | △93,246 | 13,312 | 8,922 | △148,341 | △163,149 |
(注)営業利益は全社費用等の調整額を配賦する前のセグメント利益となります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは以下5点を経営課題として認識しております。
① 新規事業への先行投資・成長
当社グループは企業価値最大化を目指し、プラットフォーム事業、ブロードバンド事業に続く新たな事業の柱を構築するため、事業運営で蓄積してきた知見やノウハウを活かし、新規事業としてSaaS事業やD2Cサービス等の立ち上げを行っております。
SaaS事業においては開発体制や営業体制の強化を行うにあたり導入社数や営業状況を考慮し、D2Cサービスにおいては販売促進費の費用対効果を考慮しながら、規律ある先行投資を行い、新たな事業の柱となるよう育成してまいります。また、M&Aによる事業領域の強化・拡大を進め、企業価値最大化に取り組んでまいります。
② プラットフォーム事業における経験豊富で良質な占い師・カウンセラーの獲得・メディアコンテンツの拡充
プラットフォーム事業のサービス価値向上のためには、カウンセリングサービスにおいては、経験豊富で良質な占い師・カウンセラーの継続的な獲得、メディアサービスにおいては、コンテンツの拡充が重要であると考えております。
厳正な審査により実績・経験豊富な占い師・カウンセラーを継続的に獲得し、様々なユーザーのライフステージに応じたメディアコンテンツの拡充に努めることにより、ユーザーから選ばれるプラットフォームへと成長させてまいります。
③ 人材育成・組織体制の強化
当社グループが持続的に成長するためには、優秀な人材の採用と育成、組織体制の強化が重要な課題であると考えております。そのため、採用イベントの開催やリファラル採用等の多様な採用方法により、優秀な人材の採用を進めるとともに、教育制度の充実や活躍できる機会の提供等により、人材の育成と定着に努めてまいります。
④ 内部統制・コンプライアンス体制の強化
急速な事業変化に適応し、持続的な成長をしていくためには、内部管理体制及びコンプライアンス体制の強化が重要な課題であると考えております。財務報告の適正性の確保、情報セキュリティの向上、個人情報の保護、リスク管理等の内部統制及びコンプライアンス体制につきまして、より実効性の高い体制となるよう適宜見直し・改善を行ってまいります。
⑤ 財務体質の強化
当社はLBOを活用し、2018年10月にエキサイト㈱の株式取得を行ったことから、のれん及び借入金が増加しております。業績及び資金繰りに努めてきた結果、自己資本比率や有利子負債比率等の財務の健全性指標は大きく改善しておりますが、今後も成長投資と財務規律の調和を図りながら、財務体質の一層の強化に取り組んでまいります。
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