文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、2020年8月に、環境変化に伴いこれまでの当社単体の経営理念を再定義し、「労働格差をなくし、生き甲斐が持てる職場を創出することで、世界の人々の人生を豊かにする。」とのグループ経営理念を掲げました。
世の中の急激なグローバル化に伴い、人材サービス企業の果たす社会的役割を再考し、当社グループの事業活動が広く社会に還元できる仕組みを追求してまいります。
また、当社グループは、成長の持続可能性を重視しております。SDGs経営に向けたサステナビリティ方針として、世界の様々な人々の「就業機会」と「教育機会」の創造を事業を通して実現し、社会課題の解決と事業の成長、ステークホルダーへの貢献に、持続的に取り組んでまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上収益、営業利益、税引前利益、当期利益、親会社の所有者に帰属する当期利益であります。これらの指標は決算短信の連結業績予想でお示ししており、2023年12月期は、売上収益7,700億円、営業利益305億円、税引前利益275億円、当期利益185億円、親会社の所有者に帰属する当期利益180億円であります。
当社グループは、利益率の改善及び利益成長に軸足を移し、事業の選択と集中によるグループ再編や、スケールメリットに加えてデジタルテクノロジーを活用した販管効率化を加速させ、収益性向上を追求することにより、経営効率を高めてまいります。具体的には、中期的経営目標として、2025年度において営業利益率5%超を掲げております。連結売上収益は、2023年度7,700億円、2024年度8,475億円、2025年度9,455億円、連結営業利益は、2023年度305億円(営業利益率4.0%)、2024年度390億円(同4.6%)、2025年度515億円(同5.4%)を計画しております。
また、当社グループでは、これまでのゼロ金利環境下とは異なる財務戦略に転換し、攻守にバランスの取れた財務体質を実現することにより企業価値向上を図ってまいります。持続的な成長に向けた中期的な財務目標として、配当性向30%を継続するほか、2025年度に社債及び借入金を当期利益の3倍に抑えるとともに、のれんを資本合計で除した比率を0.7倍に抑え、さらには自己資本比率を30%前後に引き上げることを掲げております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社は、2023年2月14日に、2023年12月期から2025年12月期までの3か年の新中期経営計画「VISION2025:Building a New Stage」を策定いたしました。攻守にバランスの取れた強靭な財務体質や、社員が安心していきいきと働ける内部統制・ガバナンス体制を構築した上で、企業価値向上を追求してまいります。重点施策といたしまして、以下を掲げております。
1.財務体質の改善による経営基盤の強化
・ゼロ金利環境下とは異なる財務戦略に転換し、2025年度までに社債及び借入金を当期利益の3倍以内に抑える。
2.グループ再編によるグローバル内部統制の強化と効率化による利益率向上
・連結子会社の統廃合を含めたグループ再編を実行し、ガバナンスの強化と事業効率化による利益率の向上を実現する。
3.ニーズの変化を捉えたオーガニック成長の強化
・ポストコロナ時代の人材ニーズの変化を機動的に捉え、既存ビジネスの持続的な成長を実現する。
4.販管効率の向上につながる最新テクノロジーを組み入れた営業・管理体制の構築
・デジタルテクノロジーを活用しながら、業界の慣習に囚われない取組をグループ横断的に実行し、販管効率を向上させる。
当社グループは、近年多くのM&Aを手掛けてまいりましたが、新中期経営計画「VISION2025:Building a New Stage」では、これまでの業績平準化による成長基盤の強靭化戦略により成長を持続させる経営資源を確保できたことに加えてゼロ金利時代から金融政策タイト化への移行を踏まえ、M&A戦略を転換します。今後は新規のM&A投資を抑制して財務体質の改善に重きを置き、オーガニック成長に注力してまいります。加えて、「(2)目標とする経営指標」記載の財務目標をはじめ、軽量経営の強みをいかして安定的なキャッシュ創出を図ります。
当社グループは、リーマンショック以降、その時々の環境変化に合わせた的確なビジョン策定と具体的戦略により、事業ポートフォリオを変化させながら持続的な事業拡大を実現してまいりました。新中期経営計画期間においても、M&A戦略の負の部分であった営業利益率の停滞や有利子負債の増加などの経営課題の解消に取り組むほか、経営環境の変化に機動的かつ柔軟に対応してビジネスチャンスを切り拓き、更なる成長、ひいては企業価値の最大化を目指してまいります。
SDGs経営を念頭においた中長期的なマテリアリティ(重要課題)及びKPIといたしまして、以下を掲げております。
1.「就業機会の提供」
・日本の労働力減少という社会問題の解決に資する在留外国人の就労サポート人数を、2024年までに30万人、2030年までに50万人に拡大する。
・教育とテクノロジーの力を駆使して、2030年までに3万人を労働集約セクターからスペシャリスト人材へのキャリアチェンジを実現する。
2.「質の高い教育の提供」
・キャリアアップに向けた質の高い教育機会の提供を目的とし、グローバルに展開する研修プログラムの延べ利用人数を2030年度までに30万人とし、生産的な雇用への結びつきや働きがいへ貢献する。
3.「多様性の尊重とダイバーシティ経営の実現」
・女性が活躍する社会の実現に向けてグループとしてその推進を行い、グループの取締役(マネジメント)総人数に占める女性の比率を2030年度までに30%にまで高める。
4.「脱炭素社会の実現に向けた取組強化」
・2025年度までに国内グループの営業車両の全てを次世代自動車(電気自動車・ハイブリッド車等)に、2030年までに海外を含むグループ全体の同比率を70%とする。
5.「産業全体の生産性の向上」
・グローバルかつ幅広い産業で蓄積した生産技術と先端的なデジタル技術を活用し、産業生産性を改善させるスペシャリスト人材を2030年度までに10万人育成し、世界の生産性を向上させる。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の世界経済の見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる深刻な影響は後退しつつあるものの、変異ウイルスによる感染拡大のみならず、ウクライナ情勢による地政学的リスクの高まりや、インフレ圧力の高止まり、金融引き締め強化など、国際情勢に重大な影響を及ぼす事象の発生が続いており、これらのリスク増大によって世界経済は、不透明感がなお色濃い状況であります。
当社グループでは、このように先行きが不透明な事業環境にあっても、持続的成長を実現していくために、以下を対処すべき主要課題と捉えております。
① ガバナンス体制の強化
グローバルに事業拡大している当社グループでは、買収した会社も含めて上場企業のグループ会社にふさわしい健全な経営を行う必要があります。これを継続して実現するため、グローバル経営の視点に立った同一目標・同一管理手法を確立し、加えて、内部統制システムを全社に適用し、当社グループ全体のガバナンス強化及びコンプライアンス体制の拡充を図ってまいります。
当社は、2022年2月22日に株式会社東京証券取引所より改善報告書の徴求及び公表措置の通知を受け、2022年3月8日に改善報告書、2022年9月22日に改善状況報告書を提出しております。ステークホルダーの皆さまに、多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますことを、改めて深くお詫び申し上げます。当社では、再発防止策の実行による内部統制の整備・運用を図るとともに、当社グループにおける内部管理体制等の強化に努めてまいりました。当社及び国内子会社において、発生原因となった企業風土改革・従業員のコンプライアンス意識の醸成・会計リテラシー向上について一定の成果が現れてきたものと考えております。しかしながら、一部の在外子会社においては、在外子会社側での管理体制の脆弱性やコンプライアンス意識の不徹底が存在し、当社の全社的内部統制として、在外子会社に対するモニタリングが不十分であり、内部統制に重要な不備があると認識しております。
当社は、特に在外子会社におけるガバナンス体制の強化、在外子会社に対するモニタリング機能の強化に向け、以下の再発防止策による内部統制の整備・運用を図るとともに、当社及び国内子会社においても、内部統制の再徹底を図ってまいります。
(再発防止策)
・在外子会社に対するコンプライアンス意識の改革、再発防止策の徹底
・在外子会社の管理体制の見直しによる牽制機能の強化
・当社における在外子会社に対するモニタリング機能の強化
・在外子会社の内部通報制度の整備・運用
併せて、コーポレート・ガバナンスの更なる強化を目的として、2023年3月28日開催の定時株主総会の承認をもって、経営の監督機能と執行機能の分離をより一層明確にし、経営監督機能を強化しながら迅速・果断な意思決定を行うために、社外取締役が過半数を占める指名・報酬・監査の3つの委員会を有し、かつ取締役会から執行役へ大幅な権限委譲が可能な指名委員会等設置会社へ移行いたしました。
今後も、中長期的な企業価値の向上に努めるにあたり、株主、取引先、地域社会、従業員等を含むステークホルダーの皆さまとの堅強な信頼関係の持続的な構築に向けて、自律機能、倫理性の高いコーポレート・ガバナンスを構築し、定期的な検証を行うことを経営上の重要な課題と認識してコーポレート・ガバナンスの充実に取り組んでまいります。
② SDGs経営の強化
当社グループは、サステナビリティ方針に基づき、社会と企業の持続可能な発展に貢献できるよう取り組んでおります。この活動をさらに強化し、5つのマテリアリティ(重要課題)に沿ってKPIを定めており、事業を通じて社会問題の解決に寄与しながらSDGsの目標達成に貢献してまいります。
③ 人材育成による企業体質の強化
人材を活用したビジネスを行う当社グループは、人材を最も重要な資産として捉えております。人材を適正に扱うため、また人材を扱った各種サービスを適正に提供するための基礎的な知識・能力や、生産現場における労務管理能力及び生産管理能力を向上するための教育・育成を徹底しております。併せて高度・多様化し続ける顧客ニーズに迅速、柔軟かつ的確に対応するためにも、優秀な人材確保及び人材育成を重要課題として取り組んでおります。
今後も、世界で通用する規律・遵法意識を兼ね備え、多様な知識と経験を有する有能な人材を、国籍や性別を問わず、グローバルに採用・教育すること通じて、企業体質の強化に取り組んでまいります。
④ 変動の激しい事業を補完する体制の構築
製造系アウトソーシング事業は、生産変動の激しい量産工程に対する人材派遣や業務請負を行っている性質上、リーマンショックのような大きな景気後退時には、急激かつ大量の雇用解約が発生するのに対し、景気回復時の増産時には採用が追い付かず、往時の業績に戻ることのできない同業者が散見され、機会損失が非常に大きな問題となっています。
このような状況に対し、当社グループでは、急な大型減産でもグループ全体では黒字を維持しながら雇用解約せずに人材を確保しておき、その後の増産に即時配属して業績を回復できる体制が必要と考えます。そのために製造とは異なるサイクルの分野や景気の影響を受けにくい分野の事業拡大を推進し、製造系アウトソーシング事業の売上構成比を相対的に抑制しながら、業績平準化による成長基盤の強靭化を目指してまいります。
⑤ 成長機会を逃がさない基盤構築
日本国内の人口は減少傾向にあるため人材市場は限定的となり、今後の大きな成長は望めませんが、世界全体では人口は増加傾向にあり、今後30億人増加するともいわれております。当社グループの事業の多くは稼働している人員数に業績が連動しているため、人口が増加し余剰感のある国から不足している国へ、グローバルに人材を流動化させる体制を構築し、この成長ポテンシャル獲得に取り組んでまいります。併せて、人材流動化スキームで移動する労働者をサポートするための事業にも取り組み、雇用を伴わない新たな事業の柱としての確立・発展を目指します。グローバル人材流動ネットワークを確立した暁には、世界一の人材サービス企業への道も拓けると考えており、体制構築に向けた成長投資を推進してまいります。
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