文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社グループは、サイエンスとテクノロジーに立脚し、医薬品の研究(創薬)から初期の臨床開発に特化した企業です。世界をリードするサイエンスによって人生を変える医薬品を生み出すことをミッションとし、日本発の国際的なリーディングバイオ医薬品企業になることを目指しています。
(2) 経営環境
医薬品開発は、国際的な巨大企業を含む国内外の数多くの企業や研究機関等により激しい競争が行われている分野であり、開発には多額の先行投資と、長期に亘る開発期間が必要となりますが、成功確率は高くありません。しかしながら、世界には、アンメットメディカルニーズが存在し、患者様に価値をもたらす新薬が待ち望まれています。
(3) 経営戦略等
① 当社グループの事業
当社グループは、独自のStaR®技術及びSBDDに基づき、革新的で生産性の高い創薬プラットフォームを確立しており、創薬ターゲットとして最大のタンパク質ファミリーであり、多くの疾患に関連することが知られているGPCRに対して、前例のないレベルでの創薬を可能とします。このプラットフォームを応用することで、多くの開発品を創出しており、提携先のグローバルバイオ医薬品企業及び自社での開発が進められています。
GPCRは、幅広い生体内反応に影響を与えるシグナル伝達経路に関係し、さまざまな疾患や障害に関与する重要な医薬品標的となります。そのため、GPCRは現在市販されている医薬品の約34%(※)に関係しています。また、GPCRは約400個の非嗅覚受容体を有する最も大きなヒト膜タンパク質ファミリーを形成し、そのうち約75%は未だ探索されていないため、多くの創薬可能性を秘めています。
現代医学における最も重要な医薬品標的の一つであるにもかかわらず、GPCRを標的とする創薬は依然として困難なものとなっています。GPCRに関する入手可能な構造情報によると、低分子医薬品の開発が可能であると考えられています。しかし、抽出されると不安定になるという性質上、これまではGPCRを細胞膜から抽出・構造解析を行うことは難しく、しばしば構造特定は大変困難でした。また、このようにGPCRが不安定であるという性質は、抗体を得るために必要となる、安定した抗原を生成する妨げとなっていました。
(※) Hauser A. S., Attwood M. M., Rask-Andersen M., Schiöth H. B., Gloriam D. E. (2017). Trends in GPCR drug discovery: new agents, targets and indications. Nat. Rev. Drug Discov. 16, 829–842. 10.1038/nrd.2017.178
② 当社グループのソリューション
当社グループは独自のStaR®技術を用いて、GPCRの構造を高度に解析することにより、GPCRを「解き明かす」技術を開発しました。StaR®技術は、リガンド結合部の外側に少数の点変異を起こさせ、細胞膜からGPCRを抽出した後でも立体構造を保持できるようにするもので、効果的にGPCRを安定化させることができます。その結果得られる安定化されたタンパク質(StaR®タンパク質)は、同種の「天然型」タンパク質、つまり変異されていないタンパク質よりはるかに安定しています。これらのStaR®タンパク質は比較的容易に精製でき、さまざまなヒットディスカバリー及び生物物理学的アプローチに供することができます。例えば、これらのStaR®タンパク質は、詳細なX線または他の構造解析のための結晶化が可能であり、天然型タンパク質を用いた創薬に比べて、より安全性と有効性が高く前臨床及び臨床段階での開発中止率が低い革新的医薬品を設計する手助けとなります。また、StaR®技術による安定化タンパク質は、in vitroでのファージディスプレイを用いたスクリーニングやin vivoでの抗原として使用可能で、生物製剤の探索にも利用可能です。
③ 当社グループのGPCRパイプライン
当社グループは、革新的で生産性の高い創薬プラットフォームを活用し、神経疾患、免疫疾患、消化器疾患、炎症性疾患等の疾患領域においてファーストインクラスまたはベストインクラスの医薬品になる可能性があると考えられる、GPCRを標的とした候補薬のパイプラインを創出してきました。
当社グループの提携パイプラインには、 Abbvie Inc.(以下「アッヴィ社」)、AstraZeneca UK Limited、Genentech Inc.、GlaxoSmithKline plc.、Eli Lilly and Company(以下「イーライリリー社」)Neurocrine Biosciences, Inc.(以下「ニューロクライン社」)、ノバルティス社、Pfizer Inc.(以下「ファイザー社」)および武田薬品工業株式会社等の大手グローバル製薬企業、ならびにその他の新興バイオ医薬品企業とのプログラムが含まれます。当社グループは、SBDDを活用して発見したムスカリン作動薬プログラム等の単一あるいは複数の候補薬を提携先が開発したり、複数のGPCRターゲットを対象とした創薬及び初期開発における提携を行っています。これらの提携により、当社グループのGPCRに関する技術とSBDDの可能性が実証され、新規提携に伴う一時金及びマイルストンに関する収益を得られると考えています。
当社グループの自社開発パイプラインは、提携につながる新規候補物質創出のために当社グループ独自で行う創薬及び初期開発段階のプログラムで構成されており、今後、臨床開発及び商業化のために大手製薬・バイオ医薬品企業へのライセンス供与を目指します。
④ 当社グループの事業戦略
2022年に発足した新経営体制のもと、独自の創薬プラットフォーム及びパイプラインを起点とし、世界と日本の両面から事業を成長させる、明確で進化した新たな戦略を打ち出しています。
この戦略では、以下の4つを柱としています。
(1) 社内での継続的なイノベーションと、それを補完する優れたテクノロジーを持つ他社との提携を通じ、世界をリードするStaR®/SBDDに基づく創薬プラットフォームの競争優位性を、さらに拡大・強化する。
(2) グローバル製薬企業との既存の提携を前進させ、加えて価値の高い新規提携を行うことで、契約一時金、開発マイルストン、上市品の売上から得られるロイヤリティなどから、継続的な売上を確保する。
(3) 研究開発体制のプログラム重視型モデルへの転換、ターゲットの機能への深い理解、トランスレーショナルメディシンへの注力を通じて迅速に臨床POCを確立することで、開発品の品質と投資対効果を向上させ、より高い価値でのライセンスと、日本での自社開発を見据えた重厚なパイプライン構築を目指す。
(4) 日本での臨床開発~販売体制をアジャイルかつ拡大可能な形で構築し、日本という大きく魅力的な市場で、見逃されている市場の発掘に取り組む。まずは、開発リスクの低い、海外で承認済あるいは後期臨床開発段階の開発品の導入から始め、中長期的には自社品の開発によりパイプラインの拡充を図る。
⑤ その他の当社グループの事業活動
当社グループの中心となるGPCR関連の創薬・開発における活動に加えて、既存ビジネスとしてノバルティス社の呼吸器疾患製品シーブリ® ブリーズヘラー®、ウルティブロ® ブリーズヘラー®及びエナジア® ブリーズヘラー®のグローバルでの販売からのロイヤリティ収入を受領しております。ロイヤリティ収入は、当社グループの戦略的目標を支える資本の源泉となっています。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 事業の進捗と戦略
当社グループは、高いアンメットメディカルニーズの存在する疾患に対する新規医薬品の創薬及び初期開発を推進する、独自のStaR®技術とSBDDに基づく創薬プラットフォーム、専門性の高い研究開発力及び新規開発品を起点に、世界と日本の両面から事業を成長させる戦略を打ち出しています。
日本以外の地域では、創薬からトランスレーショナルメディシンを通じた初期臨床開発までの研究開発を自社で行い、その後はこれら自社品の主に日本以外の権利を提携先へ導出することを目指しています。日本においては、開発リスクの低い、海外の承認済あるいは後期臨床開発段階の開発品の導入から始め、中長期的には自社品の開発によりパイプラインの拡充を図る方針です。
当社グループの4つの戦略の柱は、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営戦略等」をご参照ください。
② 当社グループの認識するリスクへの対応
当社グループは、自らが事業を展開している製薬業界特有のさまざまなリスクを負っており、当社グループの
事業、財政状態及び業績は、これらのリスクにより悪影響を受ける可能性があります。当社グループは、「2.事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループの財政状態及び経営成績に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を認識しており、これらのリスクに対する必要な対策を講じています。
③ 価値創造
医薬品業界では、特許の失効、承認の負担増大、継続的なコストの増加など、大手企業は多くの困難に直面し、急速な変化が起こっています。これにより、医薬品開発における財務上・商業上のリスクを取って研究開発を目指す事業者の数が減少しています。業界全体を通じて、効率よく外部のイノベーションを確保することが新しい戦略として重視されています。さらに、多くの先進国での高齢化の進行により、差別化されたより良い治療法の必要性が高まっています。その結果、大手製薬・バイオ医薬品企業は、研究、創薬及び開発活動全体にわたり、技術に立脚した比較的小規模な企業との提携により、研究開発における課題への革新的ソリューションを見出そうとする傾向が強くなっており、当社グループは有利な立場にあります。
このように業界の状況が変化する中で、当社グループは、事業拡大と価値創造の機会を定期的に認識、評価し、持続的にビジネス機会を創出する資本効率の良いビジネスモデルを追求しています。
④ コーポレート・ガバナンス
当社グループは複数の地域において事業活動を行っており、コーポレート・ガバナンス体制の重要性を認識しています。各国の規制に対応するため、体制やプロセス強化の方策について継続的に検討しています。さらに、最高水準の透明性、完全性、説明責任にコミットする企業文化の強化に引き続き取り組みます。
当社の取締役会は、規範と説明責任を維持するために、経営の監督とリスク管理及びコンプライアンス活動に責任を有しており、取締役の過半数は独立社外取締役です。執行役は、当社の長期的かつ持続可能な成長を達成し、株主価値を創出するために、取締役会との緊密な連携のもと、取締役会の委任を受けて会社の戦略と重要な業務執行について決定し、執行します。
就職・転職をするときに最低限チェックしておきたい項目をまとめました。
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