企業兼大株主横河電機東証プライム:6841】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営の基本方針

 当社グループは、2021年度に長期経営構想の見直しと中期経営計画「Accelerate Growth 2023」の策定を行うにあたり、YOKOGAWAのIdentityを以下のとおり整理しました。創業の精神と、それを受け継いだ企業理念は、社会におけるYOKOGAWAの在り方を示すものです。Vision statementは、10年先を見据えてYOKOGAWAが何をしていくかを示し、共有する価値観は行動をするうえでの指針を示しています。Yokogawa’s Purposeは、それら全てを踏まえ、YOKOGAWAが存在する意義を、意思を込めたコミットメント(公約)として示しています。

[創業の精神]

 創業にあたり、横河民輔は、日本の計測業界の先駆者として歩み始めた横河一郎(後の初代社長)と青木晋(後の初代技師長)に、「君たちは、この仕事でもうけようなどと考える必要はない。それよりもまず、技術を覚え、技術をみがくことだ。横河電機の製品はさすがに良い、といわれるようにしてもらいたい」と語りました。この言葉は創業の精神として今日まで受け継がれています。

[企業理念]

 創業の精神を受け継ぎ1988年に制定された企業理念は、社会に向けてのYOKOGAWAの使命とYOKOGAWA人の価値基準や行動指針を表した、YOKOGAWAの決意表明です。Yokogawa’s Purposeの制定を機に、「より豊かな人間社会」にとどまらず、広く地球環境へのYOKOGAWAの貢献を示すために、「持続可能な社会」に変更されました。

[Yokogawa’s Purpose]

 お客様、市場、社会からの要望や期待に応えるYOKOGAWAのコミットメントであり、社会に存在することの意義を表したものです。同時に組織としての求心力を高め、グループ全社員の変革への志を喚起します。

[共有する価値観]

 企業文化や風土を醸成し継承していくうえで、YOKOGAWA社員一人ひとりが「大切にすべき」行動の指針と意志をより具体的に示したものです。共有する価値観に根差した行動は新たな価値の創造を実現し、他社との差別化力、競争力をもって社会に貢献し続けるための原動力となります。

[Vision statement]

 長期経営構想で描くYOKOGAWAの10年後のありたい姿、企業としての理想を端的に示したものです。2015年に発表した中期経営計画「Transformation 2017」策定時に定めたVision statementを置き換えるものとして新たに制定されました。

(2) 中長期的な経営戦略

 長期経営構想と中期経営計画の全体像

[長期経営構想]

 当社は2015年度の中期経営計画「Transformation 2017」策定時に、10年先のありたい姿とその実現に向けた考え方を長期経営構想として定め、「Transformation 2017」の次の中期経営計画「Transformation 2020」策定時に、一部内容を見直しました。今回の中期経営計画「Accelerate Growth 2023」の策定にあたっては、改めて10年後に考えられる大きな環境変化を鑑み、社会共通価値の提供を通じた持続的な成長を目指すために抜本的な見直しを行いました。

<Vision statement>

 10年後のYOKOGAWAのありたい姿を端的に表現したVision statementを以下に変更しました。

 YOKOGAWAは、自律と共生によって持続的な価値を創造し、

 社会課題の解決をリードしていきます。

<お客様への提供価値>

 世界は今、あらゆるものが複雑につながり合う時代となっています。運用や管理に独立性のあるシステムが連携し、単独では実現できない目的をシステム全体として実現する「System of Systems(SoS)」が進む世界において、当社は、効果的な「つながり」を進め、統合化・自律化・デジタル化による「全体最適」の価値を生み出していきます。当社は「IA2IA※1」と「Smart Manufacturing※2」によるアプローチでこれを実現し、社会全体が「SoS」となる世界をリードするインテグレーターになることを目指します。

(※1) IA2IA(Industrial Automation to Industrial Autonomy)

 ロボティックスやブロックチェーンなどのDX(デジタルトランスフォーメーション)トレンドを取り込み、Industrial Automation(自動)からIndustrial Autonomy(自律)へと進化させる活動です。

(※2) Smart Manufacturing

 DX(デジタルトランスフォーメーション)やIA2IAによって生産現場、エンタープライズ、及びサプライチェーンにおける自律を実現し、革新的な生産性向上を達成することです。

<事業セグメント>

 事業環境の変化を踏まえ、YOKOGAWAが磨き上げてきた技術・ノウハウや強みを生かせる事業領域を成長させていくために、従来の製品・機能別組織から業種軸の組織に再編し、ビジネス拡大とソリューションビジネスへの転換のスピードアップを図っています。

● エネルギー&サステナビリティ

 多様化するエネルギーの生産・供給・利用・廃棄・リサイクルのバリューチェーン全体にわたり安全かつ最適な運用を支えていきます。

● マテリアル

 素材産業のお客様との強固な関係を生かして変革に貢献するとともに、環境対策、エネルギーマネジメント、開発・生産へのデジタル技術活用などの強みを生かし、快適さとサステナビリティを両立させる社会を支えていきます。また、自らがマテリアルを生産し市場を開拓する事業にも展開していきます。

● ライフ

 人々の命と健康を守る医薬、誰もが安心して口にできる安全な水と食料の供給に貢献します。前中期経営計画で医薬品・食品産業のバリューチェーン全体の生産性向上に寄与するために立ち上げた、ライフイノベーション事業の取り組みを強化していきます。

 測定器事業、新事業他(横河バイオフロンティア株式会社、アムニモ株式会社など)は、製品や商流の特性などから、独立した事業運営を維持する必要があるためセグメントを分けていますが、10年後の提供価値についての方向性は共有していきます。

※ あるべき姿として描いた業種別の事業セグメントは上記のとおりですが、2021年度より制御事業のサブセグメントとしての位置づけで「エネルギー&サステナビリティ事業」「マテリアル事業」「ライフ事業」に関する情報開示を充実させてきています。

[中期経営計画 「Accelerate Growth 2023」]

 長期経営構想で定めた10年後のありたい姿を実現するために、2023年までの3年間で取り組むべきこととして、4つの基本戦略とその重点施策を策定しました。それぞれの基本戦略の概要は以下のとおりです。

「Accelerate Growth 2023」の4つの基本戦略

● IA2IA/Smart Manufacturingの実行と存在価値の変革

 IA2IAの構想を実行フェーズに移行します。また、Smart Manufacturingの鍵となる上位系基幹システムビジネスのグローバル展開を図っていきます。

● 業種対応力の強化と非業種依存のビジネス拡大

 変わりゆくエネルギー産業のお客様に新しい価値を提供しつつ、多種多様なお客様に価値を提供していきます。

● 収益性の確保と健全な成長

 販管費率の改善など健全な収益構造に向けて、一層の改善を図っていきます。

● 社内オペレーションの最適化とマインドセットの変革

 グループ構造や機能の最適化と変革に向けた社員一人ひとりの能力向上を図っていきます。

 

中期経営計画「Accelerate Growth(アクセラレート グロウス)2023」についての詳細は、当社ウェブサイト

https://www.yokogawa.co.jp/about/yokogawa/company-overview/corporate-strategy/ をご参照ください。

 

(3) 経営環境

 当社グループは、1915年の創立以来、計測、制御、情報の技術を軸に、最先端の製品やソリューションを産業界に提供し、社会の発展に貢献し続けています。また、社会課題・お客様のニーズを捉え、その主要製品・サービスの内容を変化させてきており、2022年度のセグメント別売上高比率は制御事業約94%、計測事業約5%、新事業他約1%となっています。

 主力事業の制御事業では、石油、ガス、化学、電力、鉄鋼、紙パルプ、医薬品、食品などの多様な業種展開により日本国内で高いシェアを有しています。さらに、日本での多様な業種展開により得られた知見やノウハウのもと、アップストリーム、ダウンストリームを中心に、中東、ロシア、中国、アセアンなどの資源国や新興国で高いシェアを有しています。なお、2022年度の海外売上高比率は約73%となっています。現地に根付いたグローバルな事業展開を始めてからの約60年で、競合他社に比べ偏りがない地域構成を実現してきており、世界中で4万件以上のプロジェクトを手掛けてきた豊富な納入実績があることも特徴です。豊富な納入実績を活用することで、お客様の既設のプラント設備の生産性向上につながる運用や、保守の効率化に向けたソリューションの比重を高め、あらゆる外部環境の変化にも耐えられるレジリエンス(変化に柔軟に対応できる適応力・回復力)を高めてきています。

 今後10年間における事業環境のメガトレンドは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の観点で、大きく変化していくと想定しています。Politicsでは、自国主義や法規制の強まり、Economyでは、資源の枯渇や、食料・水の不足、Societyでは、高齢化、都市化や気候変動、Technologyでは、AI、IoT、5G、バイオテクノロジーの進歩など、さまざまな変化が予想されます。2019年度第4四半期から全世界に拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による経済活動への影響は、2022年度にようやく終息に向かう様子となりましたが、ロシア・ウクライナ情勢の深刻化によるエネルギー需給のひっ迫、資源・原材料価格高騰などの影響は継続しており、先行きの不透明感が増しています。政治、経済、社会活動の課題が浮き彫りになる中、さらにパラダイムシフトが加速すると考えています。このような中で、当社グループのお客様は、プロセスの変革、持続可能な未来を意識したビジネスモデルへのシフトを進めており、かつ、安全安心、セキュリティなどの観点から人の介在を減らすことの重要性も認識されています。主力事業の制御事業におけるProcess Automation 業界では、既存製品の市場が成熟し、ハードウエアのコモディティ化が進んでいると同時に、MES(Manufacturing execution system)やセキュリティ関連のソフトウエア、センサの市場は成長し、サブスクリプションなど新しいビジネスモデルの普及が進んでいます。また、当社グループの成長の糧であるオイル&ガスなどのハイドロカーボン系エネルギーの需要はその社会的役割・位置づけからも急激に失われないと考えられますが、エネルギー活用の多様化、環境規制対応などへの世界的な再生可能エネルギー活用、デジタルトランスフォーメーション(DX)への世界的な要求も高まってきています。

 劇的に変化する事業環境において、当社グループは、未来世代のために目指す持続可能な低炭素・循環型社会の姿として定めたサステナビリティ目標「Three goals」の「脱炭素社会(Net zero emission)」「循環社会(Circular Economy)」「人の命と健康に対する要求の高まり(Well-Being)」が事業機会になると捉えています。長期経営構想でもお示しした通り、「System of Systems(SoS)」が進む世界の中で、統合化・自律化・デジタル化により複雑につながり合う社会システム全体を効果的に結びつけ、当社グループが先駆者として「全体最適」の価値を生み出すことで、3つの事業機会をしっかりと捉え、私たち自身が変革しながら、社会共通の課題の解決と持続的な成長を実現していきます。グローバルの競合のみならずIT企業との競合が激化するなど、事業環境は厳しさが増している中で、これまで蓄積・獲得してきたシステムインテグレーション(SI)とエンジニアリングの能力を、さらにSoSのためのSIやエンジニアリング能力に昇華させ、世界をリードするインテグレーターになることを目指します。

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

[中期経営計画「Accelerate Growth 2023」で目指す経営目標]

 中長期的視点での企業価値及び株主価値の最大化を基本方針とし、1株当たり当期純利益(EPS)成長、営業キャッシュフローの創出、自己資本利益率(ROE)の向上を目指すべき指標とします。

(*)EPS:1株当たり当期純利益、ROS:売上高営業利益率、ROE:自己資本利益率

想定為替レート(1米ドル):105円

[資本政策・財務戦略]

「Accelerate Growth 2023」では、持続的な企業価値及びTotal Shareholders Return(TSR:株主総利回り)の向上を実現するために、成長を支える財務基盤の維持、成長投資、株主還元への最適なキャッシュフロー配分を行いながら、将来的かつ累積的なキャッシュフロー創出力を強化していきます。

● 資本性成長投資(戦略投資)枠を3年間累計で700億円とします。リスク総量、自己資本増減、及びリスク投資実行に伴うリスク量の増加想定を織り込んだ上で最適資本構成を維持します。

● 株主還元方針(利益処分に関する基本方針)は、中長期的な企業価値向上の最大化に向けた投資に優先的に配分していくものの、一定の財務基盤の確保を前提に、積極的な配当による株主還元の向上を図るものです。配当性向による期間利益の一定比率を還元する考え方に加え、株主資本配当率を踏まえた安定的な配当の維持の考え方を維持します。

[株主価値の考え方]

 株主資本コストを上回るTSR(株主総利回り)を実現し、中長期視点での株主価値の最大化を図っていきます。

 成長投資により、「成長性」「収益性」を高め、さらにキャッシュ・フローを増大し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指す中で、一定の財務基盤の確保を前提に積極的に配当還元の向上も図ります。

 さらに、IR活動を通じて資本市場をはじめとするステークホルダーの皆様との対話を積極的に行うなかで、共通理解を深めるとともに、信頼の醸成に努めます。

[非財務目標]

 当社が社会に価値を提供し続けるためには、ESG(環境・社会・ガバナンス)の3つの視点で経営を行うことが大前提であり、長期経営構想ではこの点を重視しています。

「Environment」と「Social」の2つについては、当社のサステナビリティ目標「Three goals」の達成に向けて、「サステナビリティ中期目標」を設定し、「Accelerate Growth 2023」の取り組みと連携させて進めています。

 サステナビリティに関連する事項は、第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 にも記載しています。

「Governance」については、既存の仕組み/体制の活用・改善、取締役会のさらなる多様化や情報開示の充実など、コーポレートガバナンスのさらなる強化を目指しています。

 当社グループは、グループ全体に適用される企業理念とYOKOGAWAグループ行動規範を定め、すべてのステークホルダーとの適切な関係を持ち、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に努めています。また、「企業は社会の公器である」との考えのもと、健全で持続的な成長により、株主、お客様、取引先、社会、社員等すべてのステークホルダーからの信頼に応えていくことを企業経営の基本的使命と位置づけています。

 当社グループは、企業価値の最大化を実現するためには、コンプライアンスの徹底、リスクの適切な管理、株主をはじめとするステークホルダーとの建設的な対話のための情報開示等が重要と考えます。

 当社グループは、こうした考え方からコーポレートガバナンスの継続的な充実に取り組む基本方針として「YOKOGAWAコーポレートガバナンス・ガイドライン」を制定しています。

 

当社グループのコーポレートガバナンスについての詳細は、当社ウェブサイト

https://www.yokogawa.co.jp/about/ir/governance-ja/ をご参照ください。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

[中期経営計画「Accelerate Growth 2023」で目指す経営目標]

「Accelerate Growth 2023」の2年目となる2022年度の受注高は、前期後半から引き続きCOVID-19からの本格的な経済活動の回復を背景としたお客様の投資意欲が堅調であったことや為替の変動影響があったことから、前期比で23.3%増(為替の変動影響を除くと12.6%増)となりました。売上高は、前期比で17.1%増(為替の変動影響を除くと6.7%増)となりました。営業利益は、粗利率悪化、販管費増加の影響を受けながらも主に売上高の増加及び為替の変動影響により、前期比で44.7%増(為替の変動影響を除くと0.8%減)となり、売上高営業利益率(ROS)は9.7%となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益が増益となったことから1株当たり当期純利益(EPS)成長率が83.0%/年、自己資本利益率(ROE)は10.9%となりました。なお、営業キャッシュフローは約404億円となりました。

「Accelerate Growth 2023」策定時の想定に対し、ロシア・ウクライナ情勢の影響や部材調達難の長期化など、事業環境の厳しさが増しています。経営のレジリエンスを高めながら、引き続き「Accelerate Growth 2023」の取り組みを加速し、2023年度の目標達成に向けて注力していきます。

[資本政策・財務戦略]

「Accelerate Growth 2023」では、利益成長及び資本効率向上により、営業キャッシュフロー1,400億円以上(3年間累計)の創出を目指しています。2年間で創出した営業キャッシュフローは約920億円で、中長期的な企業価値の最大化に向けたM&Aやアライアンスを含む資本性成長投資(戦略投資)として約121億円(2年間累計約243億円)、継続的・安定的な配当を行い株主還元として約91億円(配当性向:2022年度:23.3%)を配分しました。2022年度の戦略投資の主な実績としては、廃棄物・バイオマス発電プラントの効率改善および利益率向上のためのソリューション提供の実現を目指しDublix Technology ApSを、ライフ事業拡大のためポリマーおよびバイオ医薬品業界での自律操業とデジタルトランスフォーメーションを目指しFluence Analytics, Inc.をそれぞれ買収しました。また、今後成長が見込まれる核酸、ペプチド等の中分子医薬分野において、受託開発から受託製造までを一貫して請け負うCDMO※1に研究機能を加えたCRDMO※2事業を推進する合弁会社「シンクレスト株式会社」(横河電機49%出資)を設立するなど、主にライフ事業や再生可能エネルギー分野を中心に厳選して投資を行っており、概ね順調な進捗であると認識しています。引き続き、中長期視点での株主価値の最大化のため、成長を支える財務基盤の維持、成長投資、株主還元への最適なキャッシュフロー配分を行っていきます。

※1 CDMO:Contract Development and Manufacturing Organization、医薬品受託開発製造

※2 CRDMO:Contract Research, Development and Manufacturing Organization、医薬品受託研究開発製造

[財務・非財務目標達成に向けた現状認識と課題]

 当社グループは、2021年度からYokogawa’s Purposeとサステナビリティ目標「Three goals」を事業として実現するため、これまでの製品や機能を中心とした組織から、お客様の事業活動の業種を基軸にビジネス展開を行うサブセグメント体制に制御事業を移行させました。また、3つのサブセグメントを共通して支える機能として、CoE(Center of Excellence)機能、開発機能、デリバリー機能、サービス機能を設けています。これらの機能と3つのサブセグメントが組織横断的な連携を行う中、新たな価値の創造に向け、中期経営計画「Accelerate Growth 2023」の4つの基本戦略をこれまでとは異なる次元のスピードで実行していきます。

 主力の制御事業は、2021年度から業種軸でグローバルの連携強化を進め、それぞれの事業セグメントの注力すべき分野で一定の成果を得ています。エネルギー&サステナビリティ事業では、再生可能エネルギー分野でのM&Aの実行なども含め、成長の足掛かりをつかんでいます。マテリアル事業は、グローバルでナレッジ共有の体制を強化しながら、化学、半導体・EV向けなど市場環境も好調の中、着実に成長しています。ライフ事業は、食品生産・医薬品生産・水といった従来国内で強みのあった分野で海外のお客様への提案が増え、その結果受注も獲得しています。バイオ関連のM&Aなど新たな取り組みも継続しています。

「Accelerate Growth 2023」の2年目となる2022年度も、4つの基本戦略を着実に実行しており、その戦略ごとの現状と課題は以下のとおりです。

1.「IA2IA/Smart manufacturingの実行と存在価値の変革」においては、価値提供の拡張に確かな手応えがあり、実績と成果を積み上げ、社外・お客様からの評価と期待が高まっていることを感じています。IA2IA/Smart manufacturingを実現するソリューションの中から、早期にスケールアップが可能なものを見極めてパッケージ化を進め、2022年度も新たに50件のソリューションをリリースしました。リリースされたソリューションにより、今後、グローバルにおけるさまざまな業種で効率的なプロモーション展開が可能になります。

 また、IA2IA/Smart manufacturing事業の受注件数は160件となり、2021年度に続き一定の案件数を維持していると同時に、1件ごとの受注金額も増加傾向となっています。国内で成功してきた課題解決型ビジネスの手法を活用しながら、より大きなマーケットである海外でのスケールアップに重点的に取り組んでいきます。前述の新規ソリューションの活用・展開することでも加速させていきます。

2022年3月に、世界で初めてAIによる自律制御で化学プラントを35日間連続運転することに成功したENEOSマテリアル社(旧JSRエラストマー事業部門)との共同実証実験を受け、国内外の多くの化学メーカーからの反響をいただいていますが、この化学プラントの蒸留塔のマニュアル操業工程をその後1年にわたり安定操業させたことで、AIソリューションのビジネス化へ大きく前進しました。提供価値の変革・拡張に向けた先進的な取り組みにも着実に成果が見えてきている状況です。

 リカーリング/サブスクリプションなどの新しいビジネスモデルの確立とビジネスのスケールアップには課題もあるものの、様々なプラクティスの積み重ねや人財の育成、各地域拠点やお客様のグローバル全体最適を支援する製造業DX支援を目的に設立した横河デジタル㈱での取り組みを通じて実現を加速していきます。引き続き、IA2IAの構想の実行フェーズへの移行、Smart manufacturingによるソリューションの提供範囲の拡大に向けた活動を加速させ、産業の自律化をリードしながら、お客様のESG・サステナビリティ経営の取り組みに貢献するビジネスの成長を目指します。

2.「業種対応力の強化と非業種依存のビジネス拡大」においては、3つのサブセグメントでの組織体制が始動した中、グローバルでの連携による業種拡大を着実に実行しています。

 エネルギー&サステナビリティ事業では再生可能エネルギー業種に注力しており、2022年度の受注は71億円、前期比で58%増となりました。また、廃棄物・バイオマス発電所向けの効率改善技術を持つDublix社を買収するなど、今後の同業種ビジネスの拡大に向けた取り組みを継続しています。

 マテリアル事業では高機能化学業種に注力しており、日本国内で培ったソリューションの強みを生かして、海外での受注拡大を目指しています。2022年度の海外での受注は136億円、前期比で51%増となっており、継続的な成長を実現しています。

 ライフ事業は、事業全体が注力領域となっていますが、医薬・食品業種は、2022年度の受注は前期並みとなりました。また、水ビジネスの海外展開にも注力しており、海水淡水化あるいは再生水など、水ビジネスの高度ソリューションの案件が増加してきています。

 ライフ事業においては、特に海外のビジネス成長で、ライフ事業領域のM&Aやアライアンス、人財確保の難しさなど、「Accelerate Growth 2023」で目指すビジネス成長には若干遅れがありますが、事業基盤強化の取り組みを進め、着実に成長しています。引き続き、ライフ事業の成長加速に取り組むとともに、総合エネルギー企業にシフトするお客様への新たな価値の提供、他業種、非業種依存のビジネスの拡大に向けた活動を加速させます。

3.「収益性の確保と健全な成長」においては、生産部品・プロジェクト調達品の調達難と価格高騰などを始めとしたコスト上昇要因による事業環境の厳しさは続いており、収益性向上にむけた道のりには厳しさがあるものの、グループ全体であらゆる対応を進めています。また、中長期の収益性向上の鍵となるグローバルでのオペレーション効率化に向けて、グループ全体での効率化・コストダウンにつながる基盤整備を進めています。成長に向けた収益性確保の観点からは、さらに各施策の実行力を高め、加速していく必要があります。

4.「社内オペレーション最適化とマインドセットの変革」においては、グループ全体で人財のスキル転換、マインドセット変革の重要性が共有され、各取り組みが前進しています。持続的成長に向け、中長期を見据えたオペレーションの最適化や情報インフラの整備を粘り強く行ってきた成果が出ています。すべての施策に対して異なる次元のスピードと実行力を得るべくマインドセットの変革が必要であり、引き続き、戦略立案機能の強化、挑戦を奨励する企業文化や組織風土の醸成、Internal DXとビジネスモデル変革、人財のスキル転換とエンゲージメント向上のための活動を加速させます。

2022年度は、期初から上海ロックダウンなどのCOVID-19感染再拡大の影響が引き続き残り、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、部材の調達難、エネルギー価格の高騰やインフレなど、厳しい事業環境が続きましたが、中期経営計画「Accelerate Growth 2023」の基本戦略に沿ってこれらの困難に対処しながら事業機会をしっかりと捉えることで増収増益を達成することができました。しかしながら、世界的なインフレの進行やロシア・ウクライナ情勢の長期化によるエネルギー需給のひっ迫、資源・原材料価格高騰、地政学的な緊張感の高まりなどが継続している中、今後の国際情勢及び世界経済は不透明感を増しています。

 このような状況の下、中期経営計画「Accelerate Growth 2023」の最終年度となる2023年度は、当社グループの目標達成に向け、個々の活動計画の完遂と効果の刈り取りが極めて重要な1年となります。引き続きグループ一丸となって、取り組みを加速していきます。

 当社グループは、お客様の業種軸を主体とした「エネルギー&サステナビリティ」「マテリアル」「ライフ」の制御事業の3つのサブセグメントを中心に、SDGsに直結するビジネスで世界全体をつなぎ、地球の未来に責任を果たしていくことができる存在です。当社グループの強みを生かし、IA2IAとSmart Manufacturingの活動を加速させ、統合化・自律化・デジタル化による全体最適を通じて価値を生み出していくことを通じて、社会全体がSystem of Systems(SoS)となる世界で、社会共通課題の解決をリードしていく企業へと変革していきます。

「Accelerate Growth 2023」の目標達成に向けて中長期的に当社グループが持続的成長をするための変革を加速し、「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす。」というYokogawa’s Purposeの実現に向け邁進していきます。

※あらゆるものが複雑につながり、構成要素のそれぞれがシステムとして扱われ、運用の独立性とマネジメント

 の独立性を保ちながら連携し、単独では実現できない目的をシステム全体として、創発的に実現する世界

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