企業兼大株主パナソニックホールディングス東証プライム:6752】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループでは、リスクを的確に把握し、適切な対策を講じることによって、事業目的の達成と持続的かつ安定的な発展をより確実なものにすることを経営における重要課題と位置づけ、「パナソニックグループリスクマネジメント基本規程」に基づきグループのリスクマネジメント活動を推進しています。

 リスクマネジメントの専任部門であるパナソニック ホールディングス㈱(以下、「PHD」)のエンタープライズリスクマネジメント室(以下、「PHD ERM室」)がリスクマネジメント活動を推進し、グループ・チーフ・リスクマネジメント・オフィサーを委員長、PHDの各機能部門のトップを委員とした「PHD エンタープライズリスクマネジメント委員会」(以下、「PHD ERM委員会」)を定期的に開催しています。

 当社グループは、当社グループの事業活動に影響を与える可能性のあるオペレーション上の「損失」や「脅威」となる事象を「オペレーショナルリスク」と定義しています。当社グループでは年1回のサイクルで、外部要因・内部要因の変化等を踏まえて想定されるオペレーショナルリスクを網羅的に洗い出すことで「リスクインベントリー」を更新し、インベントリー上の全てのリスクを対象として、財務・非財務両面の評価軸によるリスクアセスメントを実施しています。PHD ERM委員会では、当該評価を基礎として、当社グループの経営・事業戦略と社会的責任の観点から審議を行い、グループ経営上の重要リスク(以下、「グループ重要リスク」)を決定します。決定したグループ重要リスクについては、当該リスクを担当する機能部門が中心となって、対応策の策定・実行及び進捗状況のモニタリングを実施することで、継続的な改善に向けて取り組んでいます。

 オペレーション上のリスクマネジメントに加えて、当社グループでは、経営・事業戦略の立案・意思決定に際して、中長期的に事業目的の達成上の「機会」又は「脅威」となりうる不確実な事象を「戦略リスク」として捉え、リスクの度合いに応じて適切なリスクテイクを推進する活動にも取り組んでいます。戦略リスクに関しては、当該リスクを担当する複数部門が連携し、予め設定した先行指標に基づき定期的なモニタリングを行うことで、把握したリスクの大きさに応じ、講じている対応策の適時の見直しを図っています。当該活動を通じて、従来推進しているオペレーション上のリスク管理との両輪でリスクマネジメントの強化を図っています。

PHD ERM委員会は、これらのリスクマネジメントのPDCAサイクルに基づき、グループ重要リスクや対応策の進捗状況等を定期的に取締役会及びPHD戦略会議に報告しています。また、内部監査機能が連携し、リスクアセスメント結果に基づき選定したテーマによる監査を実施しています。

 また、各事業会社においても、自主責任経営のもと「事業会社ERM委員会」を設置し、PHDと同様のPDCAサイクルで各事業会社グループのリスクマネジメント活動を推進しています。各事業会社では、グループ共通のリスク項目に当該事業会社特有のリスクを追加したリスクインベントリーを用いて、グループ共通の評価軸で評価を行い、事業会社経営上の重要リスク(以下、「事業会社重要リスク」)を決定します。各事業会社のリスクアセスメント結果及び事業会社重要リスクはPHD ERM室を通じてPHD ERM委員会に報告され、グループ重要リスクの決定にあたり活用されています。

 そして、各事業会社では、決定されたグループ重要リスク及び事業会社重要リスクに基づき、対応策の策定・実行及び進捗状況のモニタリングを実施します。特にグループ重要リスクに関しては、各リスクを担当する事業会社の機能部門はPHDの機能部門と連携し、グループ共通の対応策に加えて、事業会社の事業等の特性に応じた独自の対応策を策定・実行します。PHDの機能部門は各事業会社におけるグループ共通及び独自の対応策の進捗状況をモニタリングすることで、当社グループ全体での対応を徹底しています。

 このような枠組みにより、PHDでは当社グループ全体のリスクマネジメントの推進及び高位平準化を図っています。

     [リスクマネジメント体制図]

     [リスクマネジメントプロセス]

 なお、当社グループの2023年度の主なグループ重要リスクと、それらの「3 事業等のリスク」における記載箇所は下記のとおりです。

 事業活動に影響を与える可能性のあるリスク(グループ重要リスクを含む)のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しています。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。当社グループの事業、業績及び財政状態は、かかるリスク要因のいずれによっても著しい悪影響を受ける可能性があります。

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識しているリスクは、以下のとおりです。なお、下記「(2) 当社グループの事業運営活動に関するリスク」及び「(4) コンプライアンス・訴訟・レピュテーション等に関するリスク」については、事業活動に影響を与える可能性の程度に応じて、「特に重視しているリスク」及び「重視しているリスク」に分けて記載しています。また、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2023年6月27日)現在において判断したものです。
 

(1) 経済環境に関するリスク

 経済状況の変動

 当社グループの製品・サービスに対する需要は、それらの販売を行っている国又は地域の経済状況の影響を受けるため、世界の市場における景気後退及びこれに伴う需要の減少により、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。2023年度の経営環境は、日本においては、コロナ禍からの回復やインバウンド効果による下支えが期待されますが、世界経済の先行きが見通しにくい状況が続きます。ゼロコロナ政策撤廃を背景とした中国経済の回復が期待されるものの、地政学リスクやインフレ、金融の引き締めによる影響等が懸念され、当社グループはこうした影響を少なからず受けるとみられます。このようなリスクに対処するため、新たに事業構造改革の実施が必要となった場合、それによる費用増大等の可能性があります。

 原材料価格や物流費の高騰、半導体や部材の不足については、製品・サービスの価格改定や調達先の複数化により、当社への影響は概ね解消する見通しです。しかしながら、オートモーティブやインダストリーの車載向け半導体等で供給不足が継続することが見込まれ、その場合には当社グループ顧客の生産計画に影響を及ぼし得るため、今後の需要動向を注視してまいります。

 世界経済が想定以上に悪化する場合や、急激な社会の構造的変化、消費者の消費行動変化が起こる場合等には、当社グループを取り巻く経営環境が現在の予想よりも厳しくなる可能性もあり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 このような経営環境の変化に対して、当社グループは今後も影響を見極めつつ適切な対応策を取ってまいります。

 為替相場の変動

 外貨建てで取引されている製品・サービス等のコスト及び価格は為替相場の変動により影響を受けるため、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。加えて、海外の現地通貨建ての資産・負債等は、連結財務諸表作成の際には円換算されるため、為替相場の変動による影響を受けます。当社グループでは総じて、現地通貨に対する円高は業績に悪影響を及ぼし、円安は業績に好影響を及ぼしますが、一部通貨に対する円安は、輸入商品価格の上昇を通じて、事業によっては業績に悪影響を及ぼすこともあります。

2022年度は、前年度と比較して、ドルやユーロに対して円安に動いたことにより輸出でのプラス影響がありましたが、中国元に対する円安が悪影響となる等、全体としては業績に対する大きな影響はありませんでした。また2023年度については、年間を通してドルやユーロに対して円高、中国元に対してやや円安に動くと想定しており、全体としては業績に対して一定の悪影響が生じることを見込んでいます。しかしながら、為替相場に過度な変動があった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。これらのリスクに対して、事業活動を通じて得た外貨を同一外貨建ての支出に充てる「為替マリー」や、将来における外貨の売却価格もしくは購入価格と数量を事前に契約しておく「為替予約取引」、消費地に近い地域で製品の生産を行う「地産地消型製造」等により、経営への影響の軽減を図っています。

 金利の変動

 金利の変動により支払利息、受取利息あるいは金融資産及び負債の価値が影響を受けるため、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。また、当社グループは事業資金等を円及び他通貨での有利子負債等により調達しており、国際的な政情不安等による経済情勢の変化を受けた金融市場の不安定化や、金融政策の変化等により金利が上昇した場合、資金調達コストが増加する可能性があり、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 資金調達環境の変化

 当社グループは、事業資金等を社債・コマーシャルペーパーの発行等により調達しています。当社グループは、国際的な政情不安等、様々な外的要因により金融市場が不安定となり、又は悪化した場合、あるいは格付機関による当社の信用格付の引下げ等の事態が生じた場合、必要な資金を必要な時期に適当と考える条件で調達できない等、資金調達が制約されるとともに、資金調達コストが増加する可能性があり、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループでは、事業の競争力強化や運転資本の圧縮等を通じて、事業からのキャッシュ・フロー創出力向上を図るとともに、保有資産の見直し等のバランスシートからの資金創出に継続的に取り組む等、資金創出力の強化に努めています。なお、2021年6月に複数の金融機関との間で期間を3年間とする総額6,000億円のコミットメントライン契約(注)を締結しており、現金及び現金同等物の残高とあわせて十分な流動性を確保することで経営への影響の軽減を図っています。

(注)コミットメントライン契約:金融機関との間で予め契約した期間・融資枠の範囲内で融資を受けることを可能とする契約

 株式価値の下落

 当社グループは、金融資産の一部として国内外の企業等の株式を保有していますが、株価下落等の株式価値の減少により、親会社の所有者に帰属する持分が減少する可能性があります。

(2) 当社グループの事業運営活動に関するリスク

a. 特に重視しているリスク

 国際的な事業運営における障害

 当社グループは、海外市場での事業拡大を戦略のひとつとしていますが、海外では為替リスクに加え、政情不安(戦争・内乱・紛争・暴動・テロを含む)、経済動向の不確実性、宗教及び文化の相違、現地における労使関係等のリスクに直面する可能性があります。また、投資規制、収益の本国送金に関する規制、現地産業の国有化、輸出入規制や外国為替規制の変更、税率変更等を含む税制改正及び移転価格課税等の国際課税リスク、海外での商慣習の差異といったさまざまな政治的、法的その他の障害に遭う可能性があります。

 特に、昨今の貿易規制・経済制裁に関する各国の法規制の変更は、グローバルに生産拠点を持ち、製品を供給している当社グループの事業に大きな影響を与えます。当社グループはこうした動向を注視し、グローバルで連携して日々情報収集を行うことにより、当社グループの事業に影響のある新たな貿易規制・制裁を早期に把握し、グローバルポリシー、ガイダンスを適宜更新する等の対応や、新たな規制分野で対象となる貨物・技術の該非判定を徹底して実施しています。また、社内への周知徹底、取引リスク回避のための対応策の発信等、国内外の従業員啓発にも取り組み、さらなるコンプライアンス強化に努めています。

 また、経済安全保障問題については、各国で産業基盤強化の支援、先端的な重要技術の研究開発、機微技術の流出防止や輸出管理強化等の施策の推進・強化が進められる中、我が国でも2022年に「経済安全保障推進法」が成立し、段階的に施行しています。今後の経済安全保障政策の拡充に向けた動向が当社グループの事業に与える影響を絶えず注視しながら対応をしてまいります。

 地政学リスクについては、国際情勢や欧米諸国、中国等の政策・法規制の動向に関するモニタリングを通じて、当社グループの事業への影響の把握及び適時の対応に努めています。ロシア・ウクライナ情勢に関しては、これまでの当社グループの業績及び財政状態に直接与える影響は軽微でしたが、エネルギー・原材料価格のさらなる高騰等によって、今後、事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、米中対立に関しては、貿易摩擦に端を発する市場のデカップリングや各国の経済安全保障政策の強化、世論の対極化等に起因する事業環境の急激な変化によって、グローバルに生産拠点や市場を有している当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、中長期的視点でのサプライチェーンの複線化や製品の地産地消も見据えた生産体制の点検・再構築に取り組んでいくとともに、こうした動向について、事業に対する脅威及び経済安全保障政策に基づく税制関連措置の活用等の機会も含めて引き続き注視してまいります。

 環境問題・気候変動

 当社グループでは、気候変動を含む地球環境問題の解決は、当社グループが目指す「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」という遠大な使命の中で最優先で取り組むべき課題であると考えています。

 特に重視しているリスクとして、環境問題への意識の高まりに伴う、国際社会での環境規制・政策の導入・拡大があげられます。2023年3月に国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、パリ協定に基づく世界のCO₂排出削減量の達成に向けたさらなる段階的な目標を示したことで、企業の取り組みにも一層の加速が求められています。また、欧米をはじめとした、電気・電子機器に関するリサイクル及び「修理する権利」の法制化により、修理を前提とした製品の長寿命化や原材料の再資源化等に応えるビジネスモデルへの変革が喫緊の課題となっています。これらの動向を注視し、環境重視の政策・環境規制に対応した新規技術・事業開発の機会の拡大や、サステナブル・エシカル消費といった消費者の意識変化による環境志向型の製品やサービスの需要拡大を見据えた事業活動を実施してまいります。一方で、炭素税や排出権取引制度等のカーボンプライシングの導入等によりエネルギー調達コストが増加すること、排出権の購入を余儀なくされること、環境負荷の低い材質への切り替えにより製造コストが増加すること、低炭素製品のコモディティ化等により、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、こうした環境問題対策が遅れることにより欧州をはじめとする各国市場への事業進出機会の喪失や取引停止等による事業機会の喪失につながる可能性があります。加えて、各国のエネルギー安全保障、気候変動対策に関連する法制度に基づく税控除、補助金等を活用した事業機会への参入にあたり、想定通りの効果が得られず、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、資源不足・資源制約によるサーキュラーエコノミーの進展により、再生可能エネルギーの積極利用による企業価値の向上が図れる機会が増大すると同時に循環資源を用いた低炭素製品の需要拡大も見込まれます。一方で、循環資源(再生材・再利用原材料)の価格上昇・供給不足による生産コストの増大や生産の遅延が頻発・常態化する可能性があります。脱炭素循環型社会への移行状況について、EUにおける炭素国境調整メカニズム(CBAM)、米国におけるグリーンニューディール政策その他の各国の関連法令等に関する動向を中心に注視してまいります。

 2021年5月に、当社グループは「2030年にグループのCO₂排出を実質ゼロ」を目標とすることを発表しました。また、2022年1月には、グループ長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を発信し、私たちが提供する商品を通じてお客様が排出するCO₂も含めた自社バリューチェーン全体の1.1億トンのCO₂排出に見合う削減の責務を果たすことに加え、さらに幅広い事業領域を活かして、社会へのCO₂削減貢献量を拡大するとの方針を示しています。その目標として、2050年までにグループの事業活動を通じて、現時点の全世界のCO₂総排出量の「約1%」にあたる3億トン以上の削減インパクトを目指します。特に大きなCO₂削減貢献目標を掲げている事業である環境車向け車載電池事業や欧州での空質空調事業による貢献に向けた取り組みに加えて、エネルギーの地産地消を目指し、水素及び太陽光発電で燃料電池工場の稼働に必要な電力の100%を再生可能エネルギーでまかなう「RE100ソリューション」の実証施設の稼働を2022年にスタートさせています。

 また、当社グループでは、2022年7月に、2050年の目標に向けたマイルストーンとして2024年までの環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024」を策定し、自社バリューチェーンにおけるCO₂排出の削減量(OWN IMPACT)、既存事業による社会へのCO₂排出の削減貢献量(CONTRIBUTION IMPACT)、サーキュラーエコノミー領域のそれぞれにおいて、2024年までに実現する具体的な行動計画と2030年の目標をあるべき姿からのバックキャスト(逆算)で定めています。この2024年までに、当社グループでは37拠点でCO₂排出の実質ゼロ化を実現することを計画していますが、2022年度までにすでに28拠点が達成し、オートモーティブでは全14拠点のゼロ化を実現しました。一方で、現時点において共通的な算定方法が確立されていない削減貢献量について、当社グループが現在採用している方式と異なる算定方法が標準化された場合には、当該時点において削減貢献量の見直しを行う可能性や、目標の達成状況が変動する可能性があります。

 当社グループは、地球温暖化の進展による特定の商品・サービスに対する需要の変化や、環境問題への意識の高まりによる国際社会での環境規制・政策の導入・拡大を見据えながら、関連ビジネス市場を通じてこうした活動を強化し、環境問題、気候変動問題に取り組んでまいります。

 情報セキュリティ及びサイバーセキュリティに関するリスク

 当社グループは、事業の過程で、顧客等のプライバシーや信用に関する情報(顧客の個人情報を含む)や、他社等の機密情報を入手することがあります。また、顧客や他社等の情報以外に、当社自身の営業秘密(当社グループの技術情報等)を取り扱っています。これらの情報は、システムの不正アクセスやサイバー攻撃を含む意図的な行為や従業員や業務委託先の過失等により外部に流出する可能性があります。

 また、当社の製品・サービス、生産設備、管理システムは、インターネットを利用するものが増加しており、製品・サービスへのネットワークを介した予期せぬ侵入、不正操作等による外部への機密情報・個人情報の漏洩、外部への情報流出、サービス停止、工程への影響等が発生する可能性があります。さらに、当社の製品・サービスにサイバーセキュリティ上の脆弱性が発見された場合、当社製品の大規模なリコールや製品・サービスの長期間の提供停止等に発展することに加えて、多大な対策費用等が発生する可能性があります。また、製造業である当社グループにおいては、サイバーセキュリティインシデントの発生による当社グループへの原材料、部材の供給停止又は当社グループが提供元となる提供先への悪影響等、いわゆるサプライチェーンにおけるサイバーセキュリティリスクも当社グループの事業へ影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、より高度な情報セキュリティレベルを実現するために、IT環境の健全性の確保及びサイバーレジリエンスの向上に取り組んでいます。特に、国内のみならず海外子会社のインフラを含むネットワーク、サーバ、パソコン等を対象としたさらなる異常監視の拡大及び工場内部のセキュリティ監視との一体化と、グローバルかつ一元的なセキュリティ監視体制の強化のための対策を実施しています。また、従前より当社グループの製品やサービスのセキュリティを検査、担保する体制を整備し、運営のさらなる強化に努めています。さらに、技術的な対策に加えて、情報セキュリティ教育プラットフォームの構築及びグローバルの従業員に対する定期的な教育実施、システム運用等の委託先に対する定期的なセキュリティチェックの取り組み等、人的な対策も強化・推進しています。各国の個人情報保護又はサイバーセキュリティに関する法令・規制については、その動向を外部専門家とともに調査したうえで、当社規程等へ反映、社内へ周知する仕組みを運営することによって、法令・規制等への対応を進めています。

 2022年度はサイバーインシデント対応の強化に向けた取り組みとして、インシデント発生時の対応プロセスの見直しと合わせて、組織横断によるインシデント対応訓練を実施しました。また、情報、製品、工場セキュリティに対する複合的なサイバーセキュリティリスクへの対応やサプライチェーン全体への一元的・横断的な対応を推進するため、2023年4月に当社に新たな組織として「サイバーセキュリティ統括室」を設置するとともに、各事業会社に複合的なサイバーセキュリティリスクへの対応を管掌するサイバーセキュリティ統括責任者を設置しています。

 一方で、当社として最大限の防御策は講じるものの、激化・巧妙化するサイバー攻撃を完全に防御できず、その結果、事業活動の停止・中断や当社グループのイメージ・評判の低下により、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 有能な人材確保における競争

 当社グループは「企業は社会の公器である」という考え方を経営の基本とし、人材についても社会からお預かりした貴重な経営資源として、「社員稼業」と「衆知経営」を実践し、事業の創出と成長の源泉及び組織活力の維持を担う人材の継続的な確保に努めています。

 このような理念のもと、2023年3月に新たな採用ブランドスローガンとして「誰かの幸せのために、まっすぐはたらく。」を制定しました。当社グループにおける幅広い事業領域や職種を有するパナソニックグループの「多様な挑戦の機会」、「人づくり」を大切にする風土のもと、「誰かの幸せのために、まっすぐはたらきたい」と思える仲間と共に、これからの幸せをつくりたいという想いを込めています。

 また、当社グループでは、一人ひとりが心身ともに健康で、挑戦の機会を通じて幸せと働きがいを感じている状態、つまり「社員のウェルビーイング」の実現をグループ共通の人事戦略として、「安全・安心・健康な職場づくり」、「自律的な挑戦意欲と自律したキャリア形成支援」及び「Diversity, Equity & Inclusionの推進」に取り組んでいます。2022年度以降、順次「働く時間」「働く場所」の選択肢の拡大のための制度を部分的に導入しています。社会環境の急速な変化や価値観の多様化が進む中、社員一人ひとりの多様なニーズにきめ細かく対応し挑戦を後押しするために、今後も取り組みを加速していきます。

 一方で、有能な人材の確保をめぐる競争は激化しています。上記の取り組みが進まず、在籍している社員の流出防止や、経営戦略の推進に必要な人材の獲得ができない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 労働安全・労働時間管理

 当社グループは、職場作業環境や作業手順の不備、不適切な労務管理により従業員や関係者が肉体的、精神的な被害を受ける可能性があります。また、不適切な労働時間管理により、従業員の健康被害、職場における士気の低下等の可能性もあります。

 当社グループは、各種法令や当社の経営基本方針に基づき、労働安全衛生ポリシーや安全衛生管理規程を制定し、従業員の安全と衛生の確保、快適な職場環境の実現と労働災害防止の基準を定め、安全衛生活動を展開しています。また、グループ安全衛生管理部門を責任者とした中央安全衛生委員会を設置し、その傘下に事業会社・事業場の安全衛生組織を設置し、安全衛生管理に係る重要な方針や政策を審議・決定し、活動やモニタリングを実施しています。加えて、各事業会社における自律的な安全衛生管理の取り組みを推進するため、当社グループの各事業会社の安全衛生担当者が参加する「健康・安全衛生フォーラム」や、経営層を対象とした研修等を開催し、知見の共有及び意識醸成に努めています。また、適正な労働時間の把握・管理については、昨今のリモートワーク拡大も踏まえ労働時間に関する客観的データの収集・活用方法を刷新するとともに、従業員に対する継続的な意識啓発、勤務管理システムの拡充等により過重労働の防止に努めています。

b.重視しているリスク

 競合他社との競争

 当社グループは、広範多岐にわたる製品・サービスの開発・生産・販売を行っており、国際的な大企業から小規模ながら急成長中の専門企業まで、さまざまなタイプの企業と競合しています。当社グループは、戦略事業への投資を推進していますが、特定の事業に対する投資を、競合他社と同程度に、又はタイムリーに、場合によっては全く実施できない可能性もあります。また、競合他社がそれぞれの競合事業において当社グループよりも大きな財務力、技術力及びマーケティング資源を有している可能性があります。

 そうした競合環境の中、当社グループでは、長期視点で戦略を再構築し、競争力強化を目指しています。まず、喫緊の課題である環境問題の解決に向けた取り組みを強化することで、お客様へのお役立ちを通じて競争力の強化を図ってまいります。また、キャッシュの獲得を前提として、事業会社のみならずグループとしても強みを持つ事業に戦略的に投資してまいります。

 次に、競争力の強化には、事業のあらゆる現場において、ムダや滞留を撲滅し事業のスピードを高める「オペレーション力」が不可欠です。当社グループでは、正味付加価値を生まない業務のIT活用による効率化を推進すると同時に、事業の競争力強化テーマ、開発設計、製造・販売、調達等グループ共通でスケールメリットのあるテーマについてビジネスプロセスの変革に取り組んでいます。加えて、デジタル技術の活用と業務改善活動の積み重ね、職場のあらゆるムダと滞留、手戻りを排除する活動を展開することにより、コストを削減し、競争力強化を図っています。

 他社との提携・企業買収等の成否

 当社グループは、新しい製品やサービスの提供等を目指し、他社との業務提携や合弁会社設立、他社の買収等を行っており、これら戦略的提携や企業買収の重要性は増加傾向にあります。当社グループでは、重要な戦略的提携については、検討の段階に合わせて所定の審議を実施しており、事業戦略との整合性、検討の抜け漏れの有無確認、価格や契約内容の妥当性、リスクの洗い出し、統合プラン等の検証を実施していますが、相手先とのコラボレーションが円滑に進まない可能性や、当初期待した効果が得られない可能性、投資の全部又は一部が回収できない可能性があります。また、事業展開の過程で相手先が当社グループの利益に反する決定を行う可能性があります。加えて、これらの相手先が事業戦略を変更した場合等には、当社グループは提携関係を維持することが困難になる可能性があります。企業買収については、買収にかかる多額の費用が発生する可能性や、買収後の事業統合・再編等にあたり、期待した成果が十分に得られない、又は予期しない損失を被る可能性があります。

 当社グループは、2021年9月にBlue Yonder Holding, Inc.(以下、「Blue Yonder」)の80%分の株式を追加取得し同社を完全子会社化しています。当社グループは、Blue Yonderの様々なサイバー分野でのケイパビリティを取り込むことで、現場プロセスイノベーションの実現を加速し、また、両社のシナジー最大化に取り組んでいます。しかしながら、キーマネジメントメンバーを含めた優秀な人材の保持及び従業員の士気の維持ができない場合、事業環境や競合状況の変化等により、Blue Yonderの競争力が大きく低下する場合、重要な顧客やその他関係者との良好な関係を維持できない場合等により、これらの期待した効果が十分に得られない可能性があります。また、完全子会社化に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、事業環境や競合状況の変化等により期待した効果が得られないと判断され、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合、又は適用される割引率が高くなった場合は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります(詳細は「(6)その他のリスク」の「非金融資産の減損」を参照)。これらのリスクに対して、2022年7月に就任した新CEOを含む新たなBlue Yonderの経営陣と共に、成長戦略に伴う重点施策等を着実に推進し、Blue Yonderの事業競争力を更に強化することで、リスク軽減を図っていきます。

 なお、Blue Yonderを中心としたサプライチェーンマネジメント(以下、「SCM」)事業を取り巻く環境は大きく変化しています。企業のSCMソリューションに対する期待が高まり、市場拡大が見込めるとともに、研究開発活動(R&D)やM&A等の投資競争が激化しています。そのような中、SCM事業の競争力を強化するためには、資本市場の力を借りてグローバルでの成長を加速させるために株式上場を行うことが最適であると判断し、当社が議決権の過半数を保有する重要な連結子会社と位置付ける事を前提に、Blue Yonderを中心としたSCM事業の株式上場に向けた準備を開始することを、2022年5月11日に公表しています。株式上場に関しては、証券取引所その他の関係当局の承認や許認可等を得られることが前提となり、株式上場の準備過程における検討の結果次第では、当社グループの組織再編が必要な場合やSCM事業は株式上場しないという結論に至る可能性もあります。

 当社グループは、Blue Yonderの事業成長及び両社のシナジー最大化に向けて、PMI(買収後の経営統合)を着実に推進しています。具体的には、両社間において新たな経営体制・協業プランを推進し、本件取引完了後のリスク軽減を図っています。

 事業再編の成否

 当社グループは、多くの子会社及び関連会社等を有していますが、経営の効率化と競争力の強化のため、グループ事業体制を再編(他社への事業又は株式の譲渡や、グループ内の組織又は拠点再編等を含む)することがあります。しかし、現在及び将来における再編において、当初期待した成果が十分に得られない可能性や適切な事業ポートフォリオ・マネジメントが実行できない可能性があります。

 当社グループは、より中長期的な視点での当社事業の競争力強化に向けて、2022年度から当社を持株会社とする事業会社制へ移行しました。各事業会社は、外部環境の変化に応じた迅速な意思決定や事業特性に応じた柔軟な制度設計等を通じて、競争力のさらなる強化に取り組む一方、当社は、持株会社として各事業会社の競争力強化を積極的に支援するほか、当社グループの成長戦略を立案・推進し、グループとしての企業価値向上に努めています。しかしながら、事業会社制における組織の多層化による意思決定スピードの低下や、各社で独立した管理業務が発生することによるコスト増加等により、当初期待した成果が十分に得られない可能性があります。

 事業会社制において多層化による意思決定スピードが低下するリスクに対処するため、必要な権限は事業会社へ委譲することで、意思決定の専門性とスピードを強化し、2022年度は多くの決裁を事業会社で完結する運用となりました。人事制度についても、事業会社毎に経営状況、競争力、従業員エンゲージメント等を踏まえた取り組みを推進しました。また、当社取締役の一部が事業会社取締役を兼務するなど、これまで実施してきた当社グループとしてのガバナンス強化の視点は変えずに、適切な情報収集を行いそれに基づくガバナンスの実行を目指しています。

 各社で独立した管理業務が発生することによるコスト増加のリスクについては、間接機能の重層化や機能の重複を解消し、軽量化するため、プロフェッショナルサービス(間接部門)を担う会社を新たに設置しました。プロフェッショナル機能及びオペレーション機能として間接機能の提供価値をグループで見える化するとともに、間接業務の効率化・高度化を推進することで、間接固定費の高効率化に努めています。

 2023年5月に、成長フェーズに向けて、当社グループの事業ポートフォリオ見直しや入れ替えも視野に入れた経営を進めていくことを発表しました。しかしながら、判断や意思決定に時間を要し、事業構成の組替がスムーズに進まない可能性があります。グループ内で将来にわたってお役立ちを果たせる事業か、あるいはグループ外での競争力獲得が事業の成長のスピードに寄与するかを見極める具体的な判断軸を用いて、事業ポートフォリオの見直しを進めていきます。

 原材料等の需給・輸送の混乱、価格高騰

 当社グループの製造事業にとって、十分な品質の原材料、部品、機器、サービス等をタイムリーに必要なだけ入手することが不可欠であり、当社グループは、信頼のおける供給業者を選定しています。しかし、災害・事故、感染症の拡大や供給業者の倒産等により、供給が不足又は中断した場合や業界内で需要が増加した場合には、供給業者の代替や追加、他の部品への変更が困難な場合があります。加えて、当社グループが部材を納入している取引先においてこれらの事象により生産の中断・停止、生産規模の縮小が生じた場合、当社グループの販売数量が減少する可能性があります。これらの事象により当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 また、昨今では、原材料・燃料費の高騰に加え、コンテナ輸送費用の高騰や国内・海外双方でのドライバー不足等が続いています。当社グループでは、原材料・部材の高騰に対しては、先物予約ヘッジを積極的に推進し、グループでの集中購買をさらに加速し、価格上昇の抑制や安定確保に取り組んでいます。また、物流費の上昇については、積載効率向上による使用コンテナ本数の削減、海上輸送ルートの複線化、中長期的なコンテナスペースの確保に加え、出荷平準化の推進等の合理化活動の強化に取り組んでいます。

 このように、原材料の高騰や物流費の上昇をはじめとする生産コスト増に対する取り組みを継続していますが、内部努力だけでは当該影響を吸収しきれない状況であることから、当社グループでは、2022年8月以降、国内向けの家電製品の出荷価格を改定しています。今後は、商品価値に見合った適正価格に基づき、安定した販売を実現することで、お客様のニーズに沿った製品開発による「お役立ち」につなげてまいります。しかしながら、こうした価格改定が適時に実現できないことや、価格改定によって製品への需要が減少することにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 さらに、ロシアによるウクライナ侵攻、米中対立の激化による各国の経済制裁や物流の混乱が深刻化した場合、さらにコストが上昇し、当社グループの事業が悪影響を受ける可能性があります。

 製品価格の下落

 当社グループは、国内外の市場において激しい競争にさらされており、当社グループにとって十分に利益を確保できる製品価格を設定することが困難な場合があります。当社グループはコスト削減、高付加価値商品の開発に取り組んでいますが、これらの企業努力を上回る価格下落圧力は、当社グループの利益の維持・確保に深刻な影響を与える可能性があります。BtoC(一般消費者向け)分野のうち、国内向けの家電機器については、従来型の取引形態に起因する販売価格の下落が製品のライフサイクルの短縮化を引き起こし、顧客志向の開発や製品の競争力に影響を及ぼしています。当社グループでは、2020年より販売店との取引形態の見直しと新たな「指定価格制度」の導入に取り組んでおり、販売価格の維持及びより付加価値の高い製品の開発につなげる試みを始めています。他方で、当該制度が販売店・一般消費者を含む国内の家電機器市場で受け入れられない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。一方で、BtoB(企業向け)分野においては、依存度の高い特定の取引先からの企業努力を上回る価格下落圧力や製品需要の減少・設備投資圧力等により、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 技術革新・業界標準における競争

 当社グループは、新製品やサービスをタイムリーに開発・提供していく必要があります。当社グループの主要事業においては、BtoC(一般消費者向け)分野及びBtoB(企業向け)分野のいずれにおいても技術革新が重要な競争要因になっており、当社グループが将来の市場ニーズを把握しきれず、これに応えるための新技術を正しく予想し開発できない場合や、当社グループが開発・提供した技術が業界において主流とならず、競合他社が開発した技術が業界標準となった場合には、新しい市場での競争力を失う可能性があります。

(3) 将来の見通し等の未達リスク

 当社グループは、2022年度からスタートした中長期戦略の2年目を迎え、2023年5月に、中長期で目指す姿として、地球環境問題の解決を最重要の経営課題ととらえて必要な投資を進めていくことや、お客様一人ひとりの生涯の健康・安全・快適にお役立ちを果たすべく、グループのシナジーを発揮していくことを発表しました。また同年6月には各事業会社による戦略を発表し、これらの実現に向けた具体的な施策を推進しています。これらの戦略は、設定時において適切と考えられる情報や分析等に基づき策定しています。

 2023年度の世界経済は、ゼロコロナ政策撤廃を背景とした中国経済の回復が期待されるものの、地政学リスクやインフレ、金融の引き締めによる影響等が懸念され、先行きの見通しにくい状況が続きます。日本においては、コロナ禍からの回復やインバウンド効果による下支えが期待されますが、世界経済の動向が懸念材料です。今後、こうした世界経済の影響、その他の要因により、期待される成果が実現に至らない可能性があります。中長期戦略の推進にあたっては、世界経済や事業環境の動向を踏まえ、定期的な進捗管理と課題の見極めや適時適切な対策の検討・実践等を通じて、未達リスクの最小化に努めてまいります。

(4) コンプライアンス・訴訟・レピュテーション等に関するリスク

a. 特に重視しているリスク

 コンプライアンスリスク

 当社グループでは、「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準」において、「社会の公器」として公正な事業慣行に取り組むことを定め、法令と企業倫理の順守を明記して、当社の基本姿勢を全社員に共有・徹底するとともに、「独占禁止法・競争法違反」や「贈収賄・腐敗行為」等の重大なリスクに対しては、グローバル規程に基づくコンプライアンスの徹底のための研修や、贈収賄・腐敗行為に関するリスクベースアプローチによるコンプライアンス監査等の取り組みを通じて未然防止、早期発見に努めています。また、従業員に対しては、年間を通じて、各種リスクに対応したコンプライアンスの取り組みを実施し、倫理・法令順守意識の強化に努めています。さらに、一元的な内部通報窓口として、国内外の拠点や取引先からも通報ができるグローバルホットラインを設け、適切な社内調査を通じて問題の早期発見と是正を図っています。

 また、「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準」では私たちの社会的責任のひとつとして「人権の尊重」を掲げています。当社グループの事業活動は、グループで働く社員はもとより、製品・サービスをご利用いただいているお客様、調達・販売等に関わっていただいているお取引先様、さらにはビジネスパートナーの皆様など、多くの方々に支えていただくことで成り立っていることを前提に、こうしたすべての人びとの心身の健康や幸せな人生に少しでも貢献するために、「パナソニックグループ人権・労働方針」及び「人権・労働コンプライアンス規程」を制定しています。国際連合や国際労働機関が提唱する人権に関する国際規範や法令の順守に取り組むと共に、多様な人材がそれぞれの力を最大限に発揮できる働き甲斐のある労働環境を実現するため、基本方針と社員が果たすべき役割について規定しています。当社は、国連の世界人権宣言、労働の基本原則及び権利に関する国際労働機関(ILO)宣言、OECD多国籍企業行動指針の基本原則を支持し、人権・労働に関する重要な法的要請の変更等については、情報を収集して各拠点に徹底し、コンプライアンス強化に努めています。

 これらのコンプライアンス強化に向けた取り組みについては、追加的な費用や支出が生じることにより当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があるほか、このような取り組みに関わらず、万が一、当社グループにおいてコンプライアンス違反行為が発生したり、コンプライアンス上の問題に直面した場合には、当社グループが、課徴金等の行政処分、刑事処分又は損害賠償訴訟の対象となり、また、当社グループの社会的評価が悪影響を受ける可能性があります。

 サプライチェーンに係るリスク

 当社グループは、グローバルで約13,000社以上の購入先様と取引をしています。近年、サプライチェーンにおける企業の社会的責任の要請は日増しに強くなっており、こうした流れは法規制の動きにも表れ、特に人権分野を中心に新たな規制の制定や発動が行われています。当社グループでは、「サプライチェーン・コンプライアンス規程」を制定し、グループの調達活動及びサプライチェーンにおけるコンプライアンスに関する基本的事項並びに各組織の役割及び責任を明確にし、取締役及び従業員が果たすべき役割を定め、責任ある調達活動を推進するための体制及び基本方針を規定しています。

 当社グループでは、購入先様と共に責任ある調達活動を実践できる人材を育成するため、調達業務に従事する社員に対するグローバルでの教育・研修を実施し、汚職・腐敗防止等のコンプライアンス、サプライチェーン上での人権・労働、安全衛生等の課題を含むCSR(企業の社会的責任)に関する基礎知識等の定着を図っています。また、購入先様には、順守頂きたいCSRの要請項目(人権・労働、安全衛生、地球環境保全、情報セキュリティ、企業倫理等)について、法令並びに国際規範・基準に基づき定めた「パナソニック サプライチェーンCSR推進ガイドライン」を発行しています。当社グループでは当該ガイドラインに基づいて、購入先様にパナソニックグループのCSR調達の考え方をお伝えし、CSR自主アセスメントや監査等の取り組みを推進することによって、共にサプライチェーンにおけるコンプライアンス順守のための実践をしています。さらに、購入先様に当該ガイドラインの要求事項を二次以降の購入先様にも伝達し、順守状況の確認を要請することで、サプライチェーン全体でのCSRの徹底を図っています。

 しかしながら、サプライチェーンにおける責任ある調達活動への取り組みによって期待した成果が得られない場合、当社グループのイメージ・評判の低下、顧客の流出等を惹起し、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

b. 重視しているリスク

 製造物責任や補償請求による直接・間接費用の発生

 当社グループでは、製品安全に対する知見や不安全事象の未然防止策を、グループの安全規格へ盛り込むと共に、日々のリスク管理を行っています。しかしながら、製品の欠陥による品質問題(不安全事故等)が発生した場合、欠陥に起因する損害(間接損害を含む)に対して、当社グループは生産物賠償責任保険で補償しきれない賠償責任を負担する可能性や多大な対策費用を負担する可能性があります。また、当該問題が生じることにより、当社グループのイメージ・評判の低下、顧客の流出等を惹起し、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 知的財産権に関連した損害

 当社グループは、事業に対する知的財産起点での戦略提案、グローバルな知的財産の獲得・保護・活用及び知的財産に係る紛争の予防と解決により、現在と将来にわたる事業の優位性と安全の確保を目指すとともに、近年では社会課題の解決への貢献も視野に入れて、知的財産活動を推進しています。当社グループは、上記方針のもと、事業戦略及び研究開発戦略を踏まえた知的財産戦略に基づき、自ら研究開発を行うとともに、他者とも共創関係を構築することによって、グローバルな知的財産ポートフォリオの構築に努めています。しかしながら、当社グループが出願する特許及びその他の知的財産については、国・地域によって当該知的財産に対して権利が付与されない場合や、知的財産権が十分に保護されない場合があります。

 当社グループは、必要に応じて弁護士、弁理士、外部コンサルタント、取引関係者、政府機関等の協力を得ながら、当社グループの保有する特許、ブランド、デザイン及びその他の知的財産に関する侵害品・模倣品の監視及び排除に努めています。しかしながら、当該知的財産が第三者によって侵害され、当該侵害品・模倣品が出現した場合には、当社グループの正規品の販売に対する悪影響やブランドイメージの毀損等が発生する可能性があります。また、当社グループは、戦略的に当該知的財産のライセンス等を付与する場合があります。ライセンス等の付与にあたっては、適切な条件の下で行うよう努めていますが、当社グループにとって不利な条件で当該知的財産のライセンス等をせざるを得ない可能性があります。さらに、当社グループが自らの知的財産を保護又は活用するために相当の費用及び経営資源を費やして訴訟等を提起しなければならない場合があり、これらの事象が発生した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 加えて、当社グループは、第三者の知的財産を尊重するための社内規程を定め、従業員全員が順守するように定期的な教育を行っており、また、第三者の知的財産を利用する必要があるときは適切なライセンスを取得するよう努めています。しかしながら、第三者が保有している知的財産権については、当社グループが当該知的財産のライセンスを取得できないこと、取得していたライセンスが継続できないこと、又は不利な条件でライセンスを取得及び継続せざるを得ない可能性があります。さらに、当社グループが第三者の知的財産に関して訴訟等を提起されることがあり得ます。当該訴訟等には、多額の費用及び経営資源が費やされることがあり得ます。また、当該訴訟等において当社グループの主張が認められない場合には、当社グループが特定の技術等を利用できなくなることや損害賠償責任を負う可能性があり、これらの事象が発生した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 その他の法的規制等による不利益及び法的責任

 当社グループは、日本及び諸外国・地域の規制に従って事業を行っています。法規制には、商取引、独占禁止、知的財産権、製造物責任、環境保護、消費者保護、労使関係、金融取引、内部統制及び事業者への課税に関する法規制に加え、事業及び投資を行うために必要とされる政府の許認可、電気通信事業及び電気製品の安全性に関する法規制、国の安全保障に関する法規制及び輸出入に関する法規制等があります。より厳格な法規制が導入されたり、当局の法令解釈が従来よりも厳しくなったりすることにより、技術的観点や経済的観点等から当社グループがこれらの法規制に従うことが困難となり、事業の継続が困難と判断される場合には、当社グループの事業は制限を受けることになります。また、これらの法規制等を順守するために当社グループの費用が増加する可能性があります。さらに、当社グループがこれらの法規制等に違反し、又は法令遵守のための内部統制体制が不十分であったと当局が発見又は判断した場合には、当社グループが、課徴金等の行政処分、刑事処分又は損害賠償訴訟の対象となり、また、当社グループの社会的評価が悪影響を受ける可能性があります。

(5) 災害・事故等に関するリスク

a.災害・事故等一般に共通するリスク

 当社グループは、製造、販売、研究開発等の活動をグローバルに展開しており、世界中に拠点を有しています。地震、津波、洪水等の自然災害(気候変動によって発生するものも含む)や火災・爆発事故、戦争、テロ行為、感染症の流行等が発生した場合に、当社グループの拠点の従業員、設備、情報システム等が大きな損害を被り、その一部の操業が中断し、生産・出荷が遅延する可能性及び損害を被った設備等の修復費用が発生する可能性があります。加えて、これらの災害・事故等が、部品等の供給業者や製品納入先等といった当社グループのサプライチェーンにおいて発生した場合には、供給業者からの部品等の供給不足・中断、製品納入先における生産活動の休止又は低下等により当社グループの生産活動・販売活動等が大きな悪影響を受ける可能性があります。

 当社グループでは、こうしたリスクを低減するため、サプライチェーンも含めたBCP(事業継続計画)の見直しを定期的に実施しています。また、「グループ緊急対策規程」を制定し、緊急事態発生時に速やかに対応できるよう、対応方針、組織体制やそれぞれの機能の役割等を具体的に規定しています。2022年度は、「事業継続マネジメント(BCM)ガイドライン」の改定を行い、内閣府の南海トラフ地震及び首都圏直下型地震の最新の被害想定並びにそれに対応した防災・減災対策を織り込むとともに、調達、物流、IT等それぞれの機能におけるBCPとの連携を明確化するなど、実効性向上に努めています。

b.自然災害

 自然災害については、平時における備えを強化するとともに、緊急事態時には迅速に緊急対応体制に移行できるよう、当社グループ全体で「防火・防災対策委員会」を設置しています。「防火・防災対策委員会」では、地震、津波、洪水の分科会を設置し、災害別の対策強化を図っています。特に、過去の災害時には電力需給のひっ迫が生じたことも踏まえ、事業継続のための非常用電源設備等をBCPに取り入れています。さらに、毎年緊急時を想定した訓練を実施し、グループ緊急対策本部における対応や事業会社緊急対策本部との連携を確認しています。2023年1月には南海トラフ地震を想定したグループ防災訓練を実施しました。災害の被害が甚大であるために、グループ緊急対策本部メンバーの参集が難しいという想定に従って、公共交通機関を使わずに参集可能な「近隣メンバー」によりグループ緊急対策本部を立ち上げる想定での訓練を実施しました。

 さらに、当社グループは、リスクマネジメントの取り組みの一環として、災害・事故等の中でも当社グループの事業への影響が甚大であると想定される南海トラフ地震、首都圏直下地震をストレス事象とし、その影響分析を実施しています。当社グループでは、分析結果に基づき必要な対策の強化を図るとともに、当社グループにおける適切なリスク認識の構築、リスクコミュニケーションの強化に取り組んでまいります。

c.感染症リスク

2022年度は、新型コロナウイルス感染症による当社グループ全体への大きな悪影響は発生しませんでした。本感染症については国内外での制限緩和が進み、国内でも感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律上の「5類感染症」へ移行しました。これに伴い当社グループにおいても、基本的な感染対策は継続しつつも行動制限等については順次緩和しています。

 これまで当社グループは、新型コロナウイルス感染症について前述の「グループ緊急対策規程」に基づき2020年1月に全社緊急対策本部を発足、社員の人命・健康の安全確保を最優先とし、各事業会社の対策本部と連携を図りながら、経

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