企業東洋建設東証プライム:1890】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

  • 早わかり
  • 主な指標
  • 決算書
  • 株価
  • 企業概要
  • 企業配信情報
  • ニュース
  • ブログ
  • 大株主
  • 役員
  • EDINET
  • 順位
  • 就職・採用情報

企業概要

 当社はコーポレート・メッセージとして『人と地球への責任を果たす企業へ』を掲げております。これは「技術は人のため、地球に生きるみんなのために使われるべきものであり、技術を使う我々は、それを理解して事業活動を持続していく」という精神と決意を謳っております。総合技術研究所をはじめ、本社技術部門ではこの決意に則って、研究開発に取り組む技術が地球環境に優しいこと、また生産性を向上させること、そしてより安全であることを希求して日々研鑽を積んでおります。

 当連結会計年度においては「カーボンニュートラルに資する洋上風力関連事業への取り組み」「ICTおよび自動化技術の導入による生産性向上」「建設DXの推進」等の社会課題に対して研究開発を推進してまいりました。

 主な成果は以下のとおりです。なお国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業を対象に行った研究開発活動

 の総額は1,055百万円となりました。

(1) TLP方式による浮体式洋上風力発電施設の係留基礎に関する実証試験

 当社は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)により採択されたグリーンイノベーション基金事業の一環である「TLP(Tension Leg Platform『緊張係留』)方式による浮体式洋上風力発電低コスト化技術検証事業」において係留基礎設計手法および低コスト化施工方法の開発に向けた実証試験を実施しております。

 本事業は当社並びに三井海洋開発株式会社、古河電気工業株式会社、株式会社JERA(以下、当社を含め「4社」)によるコンソーシアムで構成され、2022年度はTLP方式の実証試験に向けた準備の一環として、北海道石狩湾における実証試験に必要な海底地盤構造や特性を把握する目的で、海底地盤調査を実施いたしました。

 当社は海底調査結果に基づき、係留基礎の設計技術および係留工事における低コスト施工技術の確立を目指してまいります。

(2) サクションバケット基礎(マルチタイプ)の施工技術実証試験

 当社は、NEDOの助成を受け、着床式洋上風力発電施設の基礎工法であるサクションバケット基礎工法を日立造船株式会社と共同で開発を進めており、2021年度のモノタイプの実海域実証試験に続き、2022年度は15MW以上の大型風車に対応したマルチタイプの実海域実証試験を実施いたしました。

 本試験を通じて、サクションバケット工法の特徴である、確実な撤去性、振動・騒音・汚濁といった環境影響が少ないことに加え、モノタイプに比べ鉛直精度をより容易に確保できる優れた施工性を確認できました。今後、技術認証を経て2026年頃にサクションバケット基礎の実用化を目指してまいります。

(3) 「安全ルールの見える化ツール」をモバイル端末に実装

 当社は、安全ルールの共有方法や安全指示の伝達方法を改善する「安全ルールの見える化ツール」を技術職員に貸与したiPhone に実装いたしました。従来、若手職員は現場で紙ベースの安全手帳で安全ルールを確認したり、作業所に戻りパソコンで社内ポータルサイト内の社内通達等を確認するなど、ルール確認に手間と時間を要しておりました。

 今回実装した「安全ルールの見える化ツール」は、チャットボット(自動会話プログラム)に労働安全衛生法に加え、社内規程等の安全ルールをイラストと共に覚えこませたもので、検索したいキーワードをキーボード・音声検索することで、法規制、社内通達や水平展開事項が、瞬時に黄色でマーキングされた検索ワードとともにイラストで「見える化」して表示されます。これにより、若手職員がモバイル端末を使用して、作業中にいつでもどこでも安全のポイントや社内ルール等を分かりやすく確認でき、協力会社にも必要に応じて安全ルールのイラストに加筆したものを転送することで情報共有ができます。

「安全ルールの見える化ツール」の主な効果

●全技術職員に貸与したiPhoneを利用して、いつでもどこでも簡単に安全ルールを検索できるため確実な安全指示や効率化が図れる。

●検索結果の労働安全衛生法と社内規程の両方が安全のポイントとして1枚のシートでイラストと共に表示されるため、対象作業の安全のポイントを俯瞰的に捉えられ若手にも分かりやすく理解できる。

●ビジネスチャット「direct」※1のトーク機能を使って、検索結果のイラストに手書きの丸印や必要なメッセージを追加し協力会社に転送することで、リアルタイムな指示や具体的な情報共有ができる。

●「eYACHO」※2の開発ツールを利用して、プルダウン選択や安全率の計算、電子印・電子サイン機能を付けた作業計画書や安全パトロール指導票を作成し、これに「安全ルールの見える化ツール」を組み込むことで、重大事故を未然に回避するためのルールを反映させた作業計画の作成や連絡調整および安全パトロール時の確実な是正指示が行える。

 当社は、ICTの推進を通じた業務の効率化や若手職員のレベルアップを図ることで、若者にとって魅力ある建設産業の実現に貢献してまいります。

※1「direct」は株式会社L is Bの登録商標です。

※2「eYCHYO」は株式会社MetaMoJiの登録商標です。

(4) AIで航行船舶の長期針路を予測できるシステムを開発

 当社は、AIS(Automatic Identification System:船舶自動情報識別装置)データから工事海域周辺を航行する一般船舶の針路を予測できる「AI長期針路予測システム」を開発いたしました。

 AI長期針路予測システムは、タンカーや貨物船など航行する一般船舶の針路を60分後まで予測できるシステムです。本システムは、航行船舶の将来位置を高精度に予測する富士通株式会社のAI技術をベースに、可変長の系列データを扱える時系列予測モデルであるSeq2Seq(Sequence To Sequence※3)を用いて、港ごとに過去のAISデータを教師データとして機械学習させています。運用中は、航行するAIS搭載船舶から発信されるリアルタイムAISデータをインプットデータとして、船舶の長期針路を予測します。

 これまで当社は、AISや船舶レーダー、GNSS(Global Navigation Satellite System :全球測位衛星システム)情報などから工事海域周辺の一般船舶をリアルタイムに把握し、船舶の進行方向と速度の現在情報から10分後までの針路を直線ベクトルで表示していました(当社開発:航行船舶監視システム「みはりちゃん」)。今回、AI長期針路予測システムを開発したことで、地形や航路などの港湾形状による船の進行方向や速度などの変化を加味した60分後までの針路を予測できるようになりました。これにより当社工事の作業船が、接近してくる一般船舶をより早期に把握して対応できるとともに、工事海域から一般船舶が往来する航路へ進入する際に作業船船長の判断基準の1つとして使用できるので航行の安全が向上します。

 今後、主要港でのAISデータを学習させることで当該システムの全国的な展開を図るとともに、船舶レーダー情報を学習させるなどAIS非搭載船を含めた全ての船舶の針路予測が可能なシステムの開発に繋げ、海上工事での更なる安全性向上を図ってまいります。

※3 「Sequence To Sequence」は、系列を別の系列に変換する確率をモデル化したGoogleにより開発されたAIモデルです。

(5) 小型AIステレオカメラを活用した建設現場における「クレーン作業安全支援システム」を開発

 当社は、リコーインダストリアルソリューションズ株式会社と協働し、「クレーン作業安全支援システム」を共同開発いたしました。

 クレーン作業は、合図者の指示に従ってクレーンの操作をクレーン操縦者が行いますが、作業場所の環境によってはクレーン操縦者が吊り下ろし場所を直接目視確認できない場合があります。このようなリスクを低減させるため、建設現場で使用する移動式クレーンの先端に、移動する物体を認識し、物体の3次元位置を把握できる小型AIステレオカメラを設置し、吊荷と作業員をAI により識別し、クレーン操縦者へ吊荷への作業員の接近を通知するシステムを構築いたしました。

 本システムでは吊荷の3次元位置を把握できるため、クレーンの吊荷が地面から離れた(地切り)状態を検知することが可能となり、吊荷と作業員の平面位置に加え上下関係をクレーン操縦者が把握できます。

 また、本システムでは、危険と判定されると、判定前後の作業映像をクラウドに保存できるため、この映像を活用した危険作業の原因特定や関係者へのフィードバック等が可能となります。

 これまで海上工事での消波ブロックの設置や鋼管杭の打設、ケーソン製作などでAIカメラに作業状況を学習させ、システムの動作検証を行った結果、安全性が向上することを確認いたしました。今後は、本システムを建設作業機械の自動化施工へ応用し、システムの改良を行ってまいります。

(6) 「海上工事デジタルツインシステム」の開発

 当社は、作業船位置や石材検収情報、気象情報などをリアルタイムに仮想空間上のBIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)に反映・表示する「海上工事デジタルツイン※4システム」を開発いたしました。

 本システムは、仮想空間に海上工事状況を再現しリアルタイムに情報を集約表示させるため、理解しやすく直感的に扱うことができるので、的確な施工管理を行うことが可能となります。今後、多種多様なICTシステムから得られる情報にも対応し、機能を拡張していく予定です。

 また、ガット船※5による石材投入前に実施する数量検収作業では、複数人により検尺ロッドや測量ポールを使用して写真撮影や計算を行う必要があり、データ反映までに手間と時間を要するなど課題がありました。本システムでは、AR画像技術を応用した体積自動計算アプリである「ガット船測りマス(株式会社エム・ソフト)」からクラウドにアップロードされた検収データを、デジタルツインシステム内に表示させるとともに管理表に自動出力します。これによりデータ入力手間がなくなったほか、クラウド経由でデータ共有を行えるため、現場事務所や支店など遠隔地でのBIM/CIMによるリアルタイムデータ管理が可能となりました。

 当社は、綿密な施工計画作成のためのBIM/CIMによる施工シミュレーション技術(Toyo Virtual Construction)と、施工現場での生産性向上を目的としたICT技術を拡充してまいりました。当社はこれからも施工計画から施工現場管理への総合的なDX推進を図り、施工技術及び生産性の向上を図ってまいります。

※4 デジタルツインは、現実空間から収集したデータを仮想空間上に再現する技術です。

※5 ガット船は、石材等を輸送、海中に投入する作業船舶です。

(7) 設計施工一貫BIMプロセスの研究・開発

 当社は、BIMを活用したデジタルプロセスを普及させ、建築生産プロセスや維持管理に関わる全ての関係者(発注者、設計者、審査者、施工者、維持管理者など)がBIMを通じてデジタルデータを活用することで、生産性向上や新たな価値創出、サービス向上などの様々な恩恵を最大限に享受できるよう、BIMプロセスの標準化と実現のための要素技術の開発に取り組んでおります。

 その一環として、国土交通省が実施している「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」に応募し、2022年度は「先導事業者型」として採択され、「新しい設計概算手法によるコスト算出の迅速化とAIコスト予測に関する評価・検証およびBIMモデルと、自律型ドローンを活用した遠隔工事監理手法(進捗管理効率化)に関する評価・検証」に取り組み、以下の効果と実現可能性を確認いたしました。

①新しい設計概算手法によるコスト算出の迅速化とAIコスト予測に関する評価・検証

 評価検証の結果、設計BIMモデルとExcelで作成した仕上表、仕上単価表を連携させた「シンプルで新しい設計概算プロセス」により、従来の積算専用ソフトとのデータ連携作業を削減できることや、設計BIMソフトから積算専用ソフトへのデータ変換時の情報欠落やエラーに対する対応業務量を大幅に削減できることを確認いたしました。また、設計段階での設計概算コストを容易に把握できることも確認いたしました。さらに、将来のコスト変動を予測するための価格予測AIモデルの評価と概念検証も行い、その有効性を確認いたしました。価格予測AIモデルによって、計画初期段階から着工時のコスト変動リスクを把握することができれば、発注者や受注者にとって大きなメリットとなります。

②自律型ドローンとBIMモデルを活用した遠隔工事監理手法に関する評価・検証

 評価検証の結果、施工段階で自律型ドローンと正確に構築された施工BIMモデルを活用した遠隔対応可能な工事監理手法の導入可能性を確認いたしました。自律型ドローンによる現場状況の遠隔確認が容易になることで、工事監理者の移動時間を削減し、現場確認の頻度を増やすことができます。これにより、手戻り工事の防止や生産性向上が期待されます。

PR
検索