企業兼大株主DMG森精機東証プライム:6141】「機械 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社の経営方針は、工作機械メーカーとして「独創的で、精度良く、頑丈で、故障しない機械、自動化システム、デジタル技術を、最善のサービスとコストでお客様に供給すること」です。コネクテッド・インダストリーズ(IoT、インダストリー4.0)の高まりを背景に、工作機械(マシニングセンタ、ターニングセンタ、複合加工機、5軸加工機、アディティブ・マニュファクチャリング機及びその他の製品)、ソフトウエア(ユーザーインタフェース、テクノロジーサイクル、組込ソフトウエア等)、計測装置、修理復旧サポート、アプリケーション、エンジニアリングを包括したトータルソリューションの提供を行い、全世界のお客様にとってなくてはならない企業を目指しております。

(2) 経営戦略及び経営環境

2023年は、工作機械業界はグローバル市場で受注高が減少し厳しい年となりましたが、当社の連結受注額は5,200億円と前年度比4.1%減に留めることができました。マシニング・トランスフォーメーション(MX)戦略が浸透したことで、平均受注単価が61.9百万円(前年度:49.8百万円)と大幅に上昇し、台数の減少を吸収しました。また、連結受注の22%を占める補修部品・サービス部門の受注が16%増と寄与しました。地域別受注は、欧州が健闘した他、米州も中堅・大手企業を中心に第4四半期から自動化案件が好転しています。中国は、大幅な減少となりましたが、輸出管理体制を強化したことにより、受注残のキャンセル処理や受注案件の選別を行ったことが要因です。産業別の受注高は、航空・宇宙、メディカル、金型向けが好調に推移しました。

2024年度の連結受注高は、期初の段階では慎重に2023年度並みの5,200億円と計画しています。四半期ベースの受注高については、2023年度の第3四半期及び第4四半期でほぼ底打ちしたものと考えています。当面の需要の牽引役は、地域別には北米市場が、産業別には航空・宇宙、メディカル、金型、新エネルギー関連と考えています。半導体関連は、次世代最先端向けの需要は堅調ですが、その他の領域はやや回復が遅れており、期後半からの需要増に期待しています。

2025年度には、「中期経営計画2025」の当初計画通り、売上収益6,000億円、営業利益720億円(営業利益率:12%)、当期利益480億円(当期利益率:8%)の達成を目指します。お客様の工程集約、自動化、GX、DXによる生産システムの効率化追求は継続する見込みであり、単価上昇による受注増につなげていきます。お客様へのソリューション提供による値引き率の低下、内部経営資源の効率化により収益性の改善も継続します。営業利益率12%の目標達成も可能であると考えています。収益性の拡大、運転資本の最適化により現金創出力を高め、有利子負債の削減も進めます。2025年12月末には、ハイブリッド資本を含む純有利負債残高を計画通り800億円程度に削減する予定です。

 当社は、業界のリーディング・カンパニーとして、幅広いステークホルダーの期待に応えるべく、持続可能な社会を目指し、サステナビリティへの取り組みを強化しております。環境面においては、2021年年初からグローバルに生産する工作機械の調達から出荷までの全工程において、CO2排出権の利用も含めカーボンニュートラルを達成しました。同年にはTCFD提言に準拠したレポートを開示した他、2030年までのCO2排出量の削減計画がSBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative)により認定されました。CO2排出量削減のための取組みとして、2023年2月には伊賀事業所に自家消費型太陽光発電システムを導入し、第1期(5,400kW)の発電を開始いたしました。2024年予定の第3期発電開始後には、伊賀事業所の年間電力需要量の約30%を賄い、年間約5,300トン相当のCO2排出量を削減できます。太陽光発電については、グローバルに主要生産拠点で導入を進めており、2022年11月から米国のデービス カリフォルニア工場で発電を開始しているほか、2025年には奈良事業所でも発電を開始する計画を進めています。

 人的投資の面においては、当社は「よく遊び、よく学び、よく働く」を経営理念に掲げ、従業員の生活の質向上を支援しております。2021年に健康経営宣言を発表し、「健康経営優良法人」の審査で「ホワイト500」を2023年から2年連続で取得した他、2024年3月には「健康経営銘柄」にも選定されました。また、2022年からグローバル従業員の給与を、職責、技能、資格などを適正に反映して改定をしてきました。大幅な給与水準の改定は2023年度で一巡しましたが、今後はグローバルなインフレ率に連動した給与の改定を継続していく予定です。

 人材育成の面では、国内各地にDMG MORI ACADEMYを開設し、お客様のオペレーターの育成及び工程集約機の導入促進を目的としたスクールを開催しています。2023年に、金沢、仙台、浜松の3拠点で開設済みであり、今後、岡山および九州に開設する予定です。また、当社は次世代の産業を担う学生支援を積極的に行っております。森記念製造技術研究財団は、2019年から工学系大学院生に、2023年からは人文社会科学系学生に奨学金の支給を開始しました。2022年4月に奈良女子大学に設立された工学部の支援として、先端設計生産工学概論の提供や、当社の奈良商品開発センタでの最新実機を使用した実習を開始しました。さらに、工学に対する学生の興味を拡大していくため、全国の女子中高生が奈良商品開発センタに集まり、工学を体験するWE Program (Women Engineers Program)の実施や、奈良女子大学付属中等教育学校での授業等、様々な支援を提供しております。

 コーポレート・ガバナンスにおいては、引き続き取締役の多様性を強化しております。2024年3月28日開催の株主総会での承認により、取締役会の構成は、取締役12名中、社外取締役が5名(構成比:42%)、女性取締役が3名(同:25%)、外国人取締役が3名(同:25%)となっております。また、グローバルで一体となった経営を強化するため、執行役員会においてもAG社の役員の増員や積極的な40代前後の若手の登用を進め、社内の組織体制を変更しました。取締役会及び執行役員会において、より多様な意見を反映させ、企業価値向上につながることを期待しております。2024年には、全世界のステークホルダーに当社のグローバルでの一体感を認知していただくため、ヨーロッパ子会社の社名やロゴを「DMG MORI」というグローバルブランドに統一するプロジェクトを進めて参ります。

 以上のように、顧客価値創造と社会との共生を実現し、事業規模、収益性、財務基盤において、継続的な企業価値向上に努めてまいります。

(3) 目標とする経営指標

 需要変化の激しい工作機械業界の事業環境や市場動向に迅速に対応し、工作機械業界におけるグローバルワンの地位を維持・継続するためには、利益率の向上、財務体質の強化、資本収益性の向上が最重要課題であると考えております。

 中期経営計画(2023年~2025年)の2年目である来期は、連結受注高5,200億円、売上収益5,400億円、営業利益570億円(営業利益率:10%)、当期利益350億円(当期利益率:6%)を、それぞれ計画しております。当社グループでは、顧客価値創造並びに企業価値のさらなる向上のために、たゆまぬ努力を継続してまいります。

(4) 優先的に対処すべき課題

①製品開発

 近年、人手不足による省人化や生産工程における省エネ化への対策は益々需要が高まっています。そこで当社は、工作機械を中心として実現する一連の効果をMX(マシニング・トランスフォーメーション)として、お客様に提案しています。まずは、高精度な5軸・複合加工機により工程を集約し、周辺機器の導入で自動化を実現することで、生産性の向上が可能になります。工程の自動化が進むことで、全工程で生じる情報をデジタル・AI技術で収集・分析・可視化することが可能となり、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を実現します。これらにより、不要な仕掛品や中間在庫、廃棄物、エネルギー消費量の削減が進み、GX(グリーン・トランスフォーメーション)の実現が可能となります。そのため、当社ではMXを実現するために機械・要素・電気・ソフトの開発リソースを適切に配分した体制を整えております。

 2023年9月、ドイツのハノーバーで開催されたEMOショーでMXを実現できる新商品を発表しました。世界初公開の5軸制御横形マシニングセンタ「INH 63」では、解析を駆使し高剛性構造を実現し、優れた切削能力と空間精度を両立させ高付加価値部品の加工を可能にしました。新開発の立型大容量クーラントタンク「zero-sludge COOLANT pro」の採用により、クーラントの保守頻度を大幅に削減し長時間の自動運転も可能にしました。また、新操作盤「ERGOline X」を搭載することで優れた操作性と最新のDXも実現しています。zero-sludge COOLANT proやERGOline Xは他機種へも搭載を進めています。また、自立走行ロボット「WH-AMR」では、新たな機能として工具搬送を追加しました。計測装置との組み合わせで、機械への補正済み工具投入の完全自動化を実現しました。これにより、更なる工程集約により予想される工具本数増加にも対応できます。

 3D造形が可能な「LASERTEC 3000 DED hybrid」では、新たにコーティング機能を開発しました。熱処理やコーティング工程も含めた集約が可能になり大幅な製作リードタイムやエネルギー消費量削減につながる提案が可能になりました。また、機械稼働の遠隔モニタリング「DMG MORI Messenger」、機械の遠隔操作「NETSERVICE」といったアプリケーションや、機械のネットワーク接続をワンストップで支援する「DMG MORI GATEWAY」など、DXを邁進できる商品の提供を進めています。

 今後もMXを提案できる商品開発を進め、お客様の生産性向上とサステナブルな社会づくりに貢献していきます。

②品質

 品質本部では出荷前の製品検査、出荷後の製品の品質分析から、PDCA、SDCAにより製品品質の改善を図り、製品安全の向上を実現いたします。

 これまで製品検査のデジタル化、納入後の不具合の分析による設計・製造工程の改善の取り組みにより出荷後の不具合の削減、問題の早期解決に努めてまいりました。これらの活動は継続しながら更に一段高い品質向上を目指します。

 当社はマシニングトランスフォーメーション(MX)を提唱し、推進しています。これは、5軸マシニングセンタや複合加工機による工程集約により従来複数台で加工していたワークを1台の機械に集約し、自動化によりオペレータをワーク脱着作業から解放し、デジタルトランスフォーメーションにより、オペレータに依存していた切りくずの除去作業、工具の監視や交換作業、ワークの精度測定さらに補正の作業、機械の稼働監視などをデジタルトランスフォーメーションにより機械がこれらの作業をサポートすることで、長時間の無人省人運転を可能とし、グリーントランスフォーメーションを実現します。

 MXをお客様に導入いただく際に品質が最も重要です。機械は5軸加工機、複合加工機で複雑化し、加工だけでなく計測をはじめとする周辺機器が搭載され、自動化のためのロボットなどの周辺装置も組み込まれているため、従来の2軸3軸の単体機に比べて相当高度なメカ機構、制御機構になっています。夜間や休日の無人運転を計画していても、品質問題でチョコ停が発生すれば機械は長時間停止したままになってしまいます。工程集約により機械1台で従来の複数台の役割を持たせるため、システムが停止したときには、1台の機械が停止したときの影響が従来の運用方法よりも遥かに大きくなってしまいます。このため一層の品質向上を目指し、QC活動を活発に行い、システムの品質を向上させお客様に安心してMXを導入いただけるように努めます。

 システム機でのチョコ停の大きな問題の一つとして、機内での切りくず堆積があります。当社では機内への切りくず堆積を無くすべくカメラによる機内映像をAIで分析し機内の切りくず堆積個所を特定し洗い流す、AI chip removalの機能を提供しています。更に新機種から機内のカバーをより切りくず堆積しない材料や形状で設計しています。これらの取り組みは切りくず・ミスト・クーラントの処理を対象とした部門と、シートメタル設計の部門により進められています。クーラントのろ過装置、ミストの処理装置も同様に専門部門で設計された製品を装備することにより、長時間連続稼働においても機械をクリーンな状態で維持することが可能になります。また2023年は日本国内のお客様に対し、当社の遠隔監視システムのMessengerにより集計させていただいたアラームを分析し、お客様が気づかれていない品質問題の予兆を捉えて、お客様に積極的に保守サービスを提案させていただきました。MXを対象にMessengerをグローバルベースで原則100%導入させていただき、アラーム情報、稼働情報から、品質問題を確認しシステムの稼働率を向上させる取り組みを加速します。

 出荷時の精度を継続的に向上させる取り組みとして、開発・製造・品質部門が機種別・部位別に精度出荷限度値と実際の精度検査結果から改善案を週次で打合せし実行することにより、2023年度は精度検査項目の約15%にあたる934項目の精度を向上させる取り組みを実施しました。この取り組みは既存機の精度改善だけではなく、更なる精度取り組みの課題として新機種の設計に反映させます。2023年にはすべての機種での見直しが一巡しましたので2024年は二週目の見直しを実施します。

 製品安全の取り組みについては2021年より、すべての製品安全レビュー、安全回路レビューを品質本部長承認とし管理することで,安全設計に対する意識を向上させ生産機種に反映させています。今後もお客様に安心して使っていただける機械をお届けすることを最重要課題として継続します。

③安全保障貿易管理

 昨年も、2022年2月末に始まったロシアとウクライナ間の戦争は終結とはならず、新たな火種としてイスラエルとハマス間の衝突も勃発、(更には、こうした環境下、北朝鮮とロシア間の軍事協力が強化する動きがみられるなど)世界の安全保障環境は、益々、混とんとしてきており、軍事転用も可能な高性能工作機械を製造・販売している当社グループも継続して厳格な輸出管理を行うべく、日々努めております。

 こうした環境下において、昨年は、当社の輸出管理に関するメディア報道がいくつかなされる事態となりましたが、既にお知らせ済みのステートメントに記載の通り、継続して厳格な輸出管理体制の維持をするとともに、日々、国際情勢の変化を鑑み、管理の強化にも努めてまいりました。

 具体的には、2023年12月までに、当社DMG MORIグループが製造する工作機械への移設検知装置(不正な輸出を防止する目的で、据付場所からの移設を検知すると稼働できないようにする装置)の完全搭載を実施・完了させました。これによって、今後製造販売の当社工作機械には、全てこの移設検知装置が搭載されることになります。

 また、DMG MORI AG各社が行っていた各国政府への輸出許可申請といった輸出管理業務を欧州本社に移管し、日本と同じ基準と体制でより統一した輸出管理審査を行うべく、体制も変更いたしました。

 今後も世界情勢の変化に伴い、各国間の関係性の変化や各国法の変更が見込まれる中で、各国の法令を遵守し、お客様をはじめとしたステークホルダーの皆様に安心していただけるよう、引き続き厳格な輸出管理体制の維持・強化を、重点課題として取り組んでまいります。

④法令遵守

 経営者自ら全従業員に対し法令及び企業倫理に基づいた企業活動の徹底を指示し、役員・従業員のコンプライアンス意識の向上と浸透を図っております。当社グループでは、グローバルな事業展開に対応したコンプライアンス体制を構築するために、日本を含む各国においてコンプライアンス担当者を選任し、これらを連携させることにより、各国の制度に適応しながら統制の取れた体制の確立に取り組んでおります。また、コンプライアンスに関する問題の予防、早期発見・対策のため、2020年より多言語対応の通報窓口を設置し、海外グループ企業も含めたグローバルでのコンプライアンス体制を強化いたしました。以上のほか、内部監査部を主管部署とした定期的な法令遵守活動のモニタリングも継続しております。

 勤務間インターバル制度については、当社では2018年より導入し、2020年度からは在社時間の制限を原則10時間、勤務間インターバルを12時間として従業員の健康維持、ワークライフバランスの適正化に取り組んでおります。

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