企業兼大株主髙松コンストラクショングループ東証プライム:1762】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社は、グループ全体の技術向上をはかるため、髙松コンストラクショングループ技術研究所を設けております。中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱は、当研究所内で、その他の子会社は自社施設で、各社が得意とする技術分野において研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は617百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。

(1) 髙松建設㈱

① 新型免震構造の実用化研究

 大地震に対する安心感をもたらすことができる免震構造のニーズが高まっています。髙松建設㈱では、東京都市大学との共同研究開発により、中低層の新型免震構造の実用化研究を進めております。従来の免震構造用積層ゴム支承は、建物の規模に応じて一品生産されてきましたが、新たに開発する積層ゴム支承は、建物の規模に応じて形状を大型にするのではなく、個数を調節することで設計する方式を採用し、「積層ゴムの製造+品質管理」と「構造設計+施工管理」の二つのプロセスを分離することが可能であり、免震部品の大量生産と品質管理の合理化が見込めます。この新しい積層ゴム支承を用いた免震構造を「新型免震構造」と呼んでおります。トータルコストで安価な免震構造の実用化をめざしております。

② 耐震設計の高度化研究

 髙松建設㈱では、建築基準法で定められる地震力を15%上回る厳しい耐震設計基準を設けています。しかし、10階を超える中高層建物では、配筋が高密度化し、杭の設計に苦慮する場合が多くなっています。この問題を解決するために、限界耐力計算の導入を検討しております。限界耐力計算は、従来の保有水平耐力計算と比べて高度で難解な計算方法ですが、より精緻な耐震強度を求めることが可能です。特に、10階建て程度以上では保有水平耐力計算よりも合理的な耐震設計が可能になるケースがあります。限界耐力計算に関する技術ノウハウを蓄積し、地震応答変形に立脚した耐震性能の明確化と配筋設計の適正化をはかっていきます。

③ スラブ重量低減技術の開発

 設計地震力は建物の重量に比例するため、建物の重量を減らすことができれば、柱・梁をスリム化し、鉄筋量を削減することが可能になります。そこで、スラブの軽量化に着目し、集成材とコンクリートの合成構造によるスラブを開発します。本来コンクリートだけが担う曲げモーメントとせん断力を集成材にも負担をさせることで、コンクリートを減らし、建物重量を削減します。合成構造の細部の検討をすすめ、各種性能(構造・耐火・遮音)試験を実施しております。

④ コンクリートの品質向上技術に関する研究開発

 建築物の主要な材料であるコンクリートについては、施工性と出来上がり品質の向上が求められています。様々な課題がある中で、特に、土間・スラブコンクリートのひび割れ低減対策に取り組んでおります。土間・スラブコンクリートにおいては、様々な要因でひび割れが発生しますが、温度ひび割れ・収縮ひび割れに焦点を絞り、混和材・鉄筋・誘発目地・養生などを組み合わせた、有効なひび割れ低減対策の確立をめざしております。

⑤ サイホン排水システムの開発

 サイホン排水とは、1つ下の階に排水を落とすことでサイホン力を発生させて、強い水流により排水性能を向上させる技術です。従来の重力式排水システムと異なり、小口径で無勾配の配管システムであるため、水回り設備の自由な配置が可能となります。将来の改装時も既存の設備配置にとらわれない大幅な間取り変更が可能です。満流で高速に排水されるため自浄作用もあり、排水管内の汚れが付きにくくメンテナンス性にも優れた排水システムです。㈱ブリヂストンとの共同開発にて、髙松建設㈱の賃貸マンション仕様に適合するシステムを構築し、設計・施工指針を整備しております。2024年3月期より実装を開始し、普及展開をはかっていきます。

⑥ 配筋検査システムの開発

 近年、熟練工の減少や品質管理の厳格化から、ICT技術活用による省人化、生産性向上が急務となっています。髙松建設㈱では、他社ゼネコンと共同で、AI(人工知能)および画像解析を活用した配筋検査システムを開発しております。撮影された画像より、鉄筋の径と本数、ピッチ等を算出、図面データと照合し、配筋検査の半自動化をはかるものです。現在、立体配筋のAI検知精度向上段階であり、2025年3月期からの本格運用をめざしております。

(2) 青木あすなろ建設㈱

(建築事業)

① 制震ブレースを用いた耐震補強工法

 日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法は、高性能・居ながら(居住しながら)補強がおこなえ、短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しました(累計施工実績は100件)。2023年3月期は、実施適用物件に対する補強効果の確認およびデータの蓄積に加え、新築建物の制震化に用いる摩擦ダンパーの実機試験体を製作し、性能確認試験をおこないました。

② 折返しブレースを用いた耐震補強工法

 折返しブレースは、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すので、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます。2023年3月期は、ブレース材の終局メカニズムの改善に向けた試験体を製作し、性能確認実験をおこないました。(累計実績は10件)

③ 耐震天井工法(AA-TEC工法)の開発

 大地震時の大空間建物の天井被害を軽減するため、耐震天井の開発に取り組んでいます。従来の耐震天井よりも約1.5倍の耐震性能に優れた工法を開発し、2016年10月には建築技術性能証明を取得しました。今期は、建物の柱、梁、壁との隙間をなくした天井の技術資料を整備し、「格子固定天井」として、2022年7月に建築技術性能証明を取得しました。(累計施工実績は2件)

④ 柱RC梁Sハイブリッド構法の適用範囲拡大

 物流施設などでニーズの高い柱RC梁Sハイブリッド構法について、使用材料の適用範囲の拡大および施工工法の合理化をはかりました。構造性能確認実験をおこない、設計施工指針を改定し、技術評価を取得しました。

⑤ 鉄骨梁の横補剛省略工法の開発

 鉄骨造建物の施工合理化およびコストダウンをはかるため、鉄骨梁にとりつくスラブによる補剛効果を適切に評価することによって小梁を省略できる工法を開発しています。2023年3月期は既往の研究結果および設計指針を用いて、第三者機関による構造性能評価を取得しました。

(土木事業)

① 既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究

2013年6月より、首都高速道路グループと、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する共同研究を実施しています。その成果により、2020年には首都高速道路11号台場線において摩擦ダンパーを用いた耐震補強が初めて採用され、摩擦ダンパー6基の設置工事が完了しました。今期は、実装第二弾として、首都高速道路1号上野線において1200kN摩擦ダンパー24基、800kN摩擦ダンパー2基の設置工事が完了しました。また、「スライド機構」という新たな機構を組み込んだ摩擦ダンパーの開発に、首都高速道路技術センターと共同で取り組んでいます。スライド機構によって、橋軸方向の地震動の直角方向への影響が解消され、摩擦ダンパーの更なる採用増加が期待できます。2023年3月期は、大規模な振動台実験をおこない、スライド機構が実際の地震動を再現した条件で適正に可動することを実証しました。2024年3月期は、耐久性確認などスライド機構の実用化に向けた種々の検証試験をおこなう予定です。

② カーボンプール(CP)コンクリートの開発

 セメント焼成工程などで発生する二酸化炭素(CO)を、コンクリート由来の産業廃棄物に固定化させるという「地域内循環の構築」、さらに新たな技術を用いて引渡しまでにCO固定量を最大化する「カーボンプール(CP)コンクリートの開発」に取り組んでいます。これは、当社を含む企業・大学・国立研究開発法人がコンソーシアムを構成し応募したNEDO(※)・グリーンイノベーション基金事業「COを用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」に採択されたものです。事業期間は、2021年度~2030年度の10年間となっております。

(※)NEDOとは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の略称です。

③ 電気的性質を利用した盛土材(複合土質)の締固め管理方法の開発

 建設発生土など複合的な土質特性を持つ材料を用いた盛土の締固め管理において、複合的な土質をいかに適切に管理するかという課題を解決し、その適正化をはかるため、電気的性質を利用した締固め管理手法を開発しました。これは、小型・軽量な計測器をハンマードリルなど簡便な方法で土中に貫入し、導電率や比抵抗値を計測するもので、計測した比抵抗値等から、盛土の乾燥密度を算出することが可能です。2024年3月期以降は、早期の現場実装に向けて測定精度の更なる向上をはかる予定です。

④ トンネル覆工コンクリートの充填性向上技術の開発

 自社開発の「排気排水・注入ホース」を使用した技術により、覆工コンクリートの充填性が良くなり品質が向上します。国土交通省発注の立野ダム仮排水路工事、掛田トンネル工事やニューマチックケーソン基礎等において効果が検証され、当技術をNETIS(新技術情報提供システム)へ登録しました。

⑤ AIを用いた省力化技術の開発

AIを用いたトンネル施工の省力化技術を開発しています。AIモデルの構築に必要なデータは質と量が重要となるため、施工現場での各種データ蓄積後にデータ間の解析、関連付けをおこないディープラーニング(深層学習)に供する予定です。

(3) みらい建設工業㈱

① クレーン吊荷接近警告システム(NETIS:QSK-220003-A)

 本技術は、クレーンを使用する作業において吊荷と作業員の位置を超小型RTK-GNSSデバイスで把握し、あらかじめ設定した距離内に吊荷と作業員が接近した際、作業員とクレーンオペレータに警告するシステムです。作業員の位置はモニタで視覚的に確認もでき、危険を回避することで安全性が向上します。

GNSS衛星の電波が受信できないエリア(ユニットハウス内、高架下、ケーソン製作現場など)に作業員がいる場合は、無線装置と作業員検知装置の組み合わせにより作業員の位置を把握します。

(4) 東興ジオテック㈱

① 高圧噴射撹拌工法の開発

 近年、高圧噴射撹拌工法は適用範囲が広がりつつあり、河川水域部や大径化、大深度での適用例が増加しております。これらに対応するため、独自工法であるウルトラジェット工法の基本技術をベースにバージョンアップをはかり、受注機会の拡大を目指しております。

2022年3月期までに、東京機材センター内の実験用立坑を拡幅して大口径開発の環境を整備しました。また、新規二重管高圧噴射工法の基本特許出願を完了しております。2023年3月期は、水中噴射実験および改良体の造成実験によるデータ測定ならびに検証、分析を実施いたしました。

② UAV吹付技術の開発

 ドローンを用いた植生基材吹付技術の開発に向け、無線型試験機による吹付試験をおこない、生育基盤の造成可否や、プロペラ風圧が飛行および造成基盤に与える影響等を検証しました。また検証結果から、吹付材料の供給に用いるホース部材を改良したうえで再度試験をおこない、法面近接飛行による影響や材料吐出による反力を計測しました。吹付ドローンの実機製作に向け、実証実験や試験機改良による吹付安定化を進めております。

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