企業兼大株主電源開発東証プライム:9513】「電気・ガス業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月29日)現在において当社グループが判断したものです。

(1) 経営の基本方針 

 当社グループは、「人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する」というミッション達成のため、2050年に向けて発電事業のカーボンニュートラル実現に挑んでいくこと、そのマイルストーンとしてCO2排出量を2025年度までに920万トン削減※1、2030年までに46%削減となる2,250万トン削減※1することを目標に掲げており、国内外でのCO2フリー電源※2開発の加速化、既存資産による新たな価値創造(アップサイクル)、新たな領域への挑戦の三つを組み合わせて、カーボンニュートラル実現に取り組む中で企業価値の向上を目指します。また、電力安定供給やレジリエンス(強靭性)強化の要請に応えつつカーボンニュートラル実現に取り組んでいくために、それを支える強固な事業基盤の構築を図っていきます。

 当社グループは、サステイナブルな成長を実現し、その成果を全てのステークホルダーと共に分かち合い、持続可能な社会の発展に貢献していきます。

※1 当社グループ国内発電事業CO2排出量の2013年度実績比

※2 発電時にCO2を排出しない、水力や風力、太陽光などの再生可能エネルギー電源、並びに原子力電源

(2) 当社グループを取り巻く経営環境と対処すべき課題

 わが国の電気事業は、日本政府による2050年カーボンニュートラル宣言、国際社会に向けた2030年度CO2削減目標の決定及び非効率石炭火力のフェードアウトなどの気候変動問題への対応と、2016年4月から開始された電力小売の全面自由化と卸規制の撤廃、2020年4月からの発送電分離や、新たな市場の創設(2020年の容量市場や2021年の需給調整市場等)などの電気事業制度改革の進展により、事業環境は大きく変化しております。また、世界的な脱炭素化の潮流の加速、エネルギー需給構造の分散化やデジタル化の進展に加え、世界的なエネルギー資源の供給不安から資源価格が高騰し大きく変動するなど、エネルギー業界は大きな転換期を迎えています。

 このような状況のなか、当社グループは、2021年2月に発表したJ-POWER "BLUE MISSION 2050"において、2050年に向けた国内発電事業のカーボンニュートラル実現と2030年の国内発電事業CO2排出量の削減目標を掲げ、2021年4月にはこうした取り組みの第一歩として中期経営計画(2021年度~2023年度)を発表しました。

 中期経営計画に基づき、国内外でのCO2フリー電源開発の加速化、既存資産による新たな価値創造(アップサイクル)、新たな領域への挑戦の三つを組み合わせて、カーボンニュートラル実現に取り組むなかで企業価値の向上を目指します。

2030年のCO2排出量の削減に向けては、2022年5月に中間地点である2025年度のCO2排出削減量(2013年度比920万トン)を設定しました。また、2023年5月に発表した「中期経営計画の取組み状況」では、石炭火力でのバイオマスやアンモニアの混焼、国内でのCCS※3への取組みを更に加速化することとし、2030年のCO2排出削減目標を2013年度比46%(2,250万トン、従来は44%)に引上げました。

 電力安定供給やレジリエンス(強靭性)強化の要請に応えつつ、こうした取組みを進めていくために、それを支える強固な事業基盤の構築を図っていきます。収益力と資本効率の向上に注力するとともに、ESG※4経営を推進してサステイナブルな成長を実現し、その成果を全てのステークホルダーと共に分かち合い、持続可能な社会の発展に貢献していきます。

※3 Carbon dioxide Capture and Storage、CO2の分離・回収・貯留

※4 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を組み合わせた用語

① CO2フリー電源の開発加速化

a.グローバルな再生可能エネルギーの開発加速化

 当社グループは、水力発電・風力発電を中心に国内最大規模の設備出力を有する再生可能エネルギーのトップランナーであり、海外においても風力発電・太陽光発電等を中心に再生可能エネルギーの開発に取り組んできました。今後は優先的な投資配分と人員増強により、国内及び海外における再生可能エネルギー開発をさらに加速していきます。

2017年度以降に運転開始した再生可能エネルギーのプロジェクトは、イギリスのトライトン・ノール洋上風力発電プロジェクト、新桂沢発電所(水力発電)、江差風力発電所や鬼首地熱発電所リプレース工事を加えて、43.2万kWとなりました。

 国内においては、建設段階にある陸上・洋上風力発電(上ノ国第二、南愛媛第二、石狩、響灘洋上ウインドファーム)、水力発電(おなばら)及び地熱発電(安比)の各プロジェクトの着実な推進に加え、開発調査段階の地点の培養や新たな地点の発掘を進め、再生可能エネルギーの設備出力を拡大していきます。また、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取り組みで注目されている洋上風力発電でも一般海域での洋上風力開発案件への参画を目指します。

 海外においては、オーストラリアのケーツーハイドロ揚水発電プロジェクトやフィリピンでのミンダナオ島水力発電事業を着実に推進しつつ、新たな大規模再生可能エネルギー開発案件への参画に向けた取り組みを加速していきます。

b.安全を大前提とした大間原子力計画の着実な推進

 当社グループは、青森県下北郡大間町にて、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用する大間原子力発電所(出力138.3万kW、運転開始時期未定)の建設を進めております。

 同発電所は、エネルギー安定供給を支えるベースロード電源であり、気候変動問題対応の社会的要請に応えるCO2フリー電源としての役割に加えて、フルMOX運転により原子燃料サイクルの中核を担います。特に、日本政府が「プルトニウム利用の基本的な考え方」(2018年7月原子力委員会決定)を示しプルトニウムの保有量減少を求める中、多くのプルトニウムの消費が可能な大間原子力発電所の重要性はより高まっています。

 引き続き一層の安全性の向上を不断に追求するとともに、地域の皆様にご理解・ご信頼を頂けるように、より丁寧な情報発信・双方向コミュニケーションに努めながら、着実な推進を図っていきます。

2014年12月、原子力発電所に係る新規制基準への適合性審査を受けるため、原子力規制委員会に対し、原子炉設置変更許可申請書及び工事計画認可申請書を提出いたしました。現在、当社グループは、原子力規制委員会の適合性審査に真摯かつ適切に対応しており、引き続き必要な安全対策などを着実に実施することで、早期の建設工事本格再開を目指します。

c.再生可能エネルギーの導入拡大への貢献

 これからの再生可能エネルギーの大量導入に向けて、再生可能エネルギーの適地(北海道、東北、九州等)で発電された電気を消費地まで届けるための電力ネットワークの拡充が要請されています。当社グループでは、現在実施中の新佐久間周波数変換所と関連送電線の増強工事を着実に推進するとともに、洋上風力発電の普及に不可欠な高圧直流送電システムの構築・運用に関する調査にも取り組みました。これまで培った直流送電線・海底ケーブル等の幅広い技術と知見を活かして更なる事業機会を追求していきます。

 また、電力ネットワーク設備の高経年化や激甚化する自然災害へのレジリエンス強化にも取り組み、電力の安定供給にも引き続き貢献していきます。

② 既存資産による新たな価値創造(アップサイクル)

 新規設備を導入するだけではなく、既に保有する資産を高付加価値なものに再構築するなど新たな価値を創造(アップサイクル)することで、電力の安定供給を維持しつつ、経済合理性を持って早期に新技術を適用し、環境負荷の低減を実現していきます。

a.再生可能エネルギー資産のアップサイクル

 当社グループの70年にわたる再生可能エネルギー開発の中で蓄積してきた知見を活かし、水力発電・風力発電を中心に、再生可能エネルギー資産の価値最大化に取り組んでいきます。

 当社グループは、戦後の電力不足解消のために建設され、60年以上にわたって電力の安定供給に寄与してきた佐久間発電所を、次世代水力発電所にアップサイクルすることを決定しております(NEXUS佐久間プロジェクト)。既存のダムや水路は流用しながら水車・発電機等の主要電気設備や建屋等を最新技術により刷新することで、貴重な純国産の再生可能エネルギーを次世代にも引き継いでいくべく、2020年代後半の着工を目指し、主要電気設備や建屋の設計と着工に向けた事前準備工事を進めていきます。

 これに加えて、水力発電においては、最新の水車・発電機の適用(尾上郷、長山)や小水力の開発(おなばら)により、豊富な水資源の最大限の活用と、それに伴う設備出力・発電電力量の増加に取り組んでいきます。また、激甚化する自然災害へのレジリエンス強化にも努めていきます。

 風力発電においては、設備の寿命を迎えた風車を最新の大型風車に建て替えることにより(苫前、さらきとまない、仁賀保)、好風況地点の最大限の活用、風車数減少による環境負荷の低減、発電電力量の増加を同時に実現していきます。

b.既設火力資産のアップサイクル

 当社グループは、石炭ガス化技術(石炭から生成したガスを水素とCO2に変換する技術)とCO2分離・回収技術の組合せによるCO2フリーの水素発電の実現を目指して、これまで技術開発・実証試験に取り組んできました。

 松島地点は、オイルショック後のエネルギー源多様化の要請に応えた、わが国で初めての輸入石炭を燃料とする火力発電所です。運転開始以来40年が経過した同発電所に新技術の石炭ガス化設備を付加することにより、将来のCO2フリー水素発電の実現に向けた第一歩を踏み出します(GENESIS松島計画)。2021年9月より環境影響評価の手続を開始しており、既存の発電設備を活用することにより、電力安定供給を維持しつつ、経済合理性を持って早期に新技術の実用化を図っていきます。

 また、石炭火力発電によるCO2排出量を削減するため、バイオマス導入の取組みを拡大するとともに、適切なタイミング・規模でアンモニア混焼を導入すべく、燃料調達や輸送・貯蔵・受入・混焼の実施体制確立を目指していきます。

③ 新たな領域への挑戦

 これからのカーボンニュートラルへの移行やデジタル技術をはじめとするイノベーションの進展により、社会・経済構造の大きな変革が想定されています。当社グループは、エネルギー利用の分散化、脱炭素化とデジタルトランスフォーメーションをキーワードに、新たな事業領域への拡大を目指していきます。

 水素社会の実現には大量かつ安定的な水素供給が必要となり、再生可能エネルギーに加えて、化石燃料からのCO2フリー水素製造が必要です。当社グループは、国内外でのCO2フリー水素の製造・供給及び発電利用の具体化を迅速かつ効率的に進めるべく、2021年度より水素・CCSについて部門横断的に相互が協力して取り組む体制を構築しています。化石燃料からのCO2フリー水素製造においては、日本国内での石炭ガス化技術の実用化の取組みに加えて、水素サプライチェーン構築の日豪共同の実証試験を完了しており、今後、商用化に向けて取り組んでいきます。また、再生可能エネルギーからのCO2フリー水素製造においても、国内外で複数のプロジェクトの組成又はプロジェクトへの参画を目指しており、CO2フリー水素製造の可能性を追求していきます。

 また、天候により出力が急激に変動する再生可能エネルギーの導入拡大のためには、出力変動を補う調整力の確保が重要となります。当社グループは、保有する大規模揚水発電による調整力の提供のみならず、電力小売を通じ、保有する豊富な再生可能エネルギーを活用した需要家への環境価値提供や、需要家が保有する水道施設等のリソースを遠隔・統合制御することによる調整力の確保・活用など、新たな付加価値の創出にも取り組んでいきます。

 加えて、これまで取組みを進めてきたスタートアップ企業とのネットワーク拡大を通じた新事業の創出においても、様々な分散型サービス提供の可能性を探求していきます。

④ 事業基盤の強化

 当社グループは、ウクライナ等を巡る国際情勢の影響により経済情勢が不透明ななか、引き続き電力安定供給やレジリエンス強化の要請に応えつつ、カーボンニュートラル実現に取り組んでいくために、それを支える強固な事業基盤を構築していきます。

a.海外における事業基盤の拡大

 当社グループは半世紀以上にわたり、世界各地で電源の開発及び送変電設備等に関するコンサルティング事業を行ってきました。そして、国内事業と海外コンサルティング事業で培った経験・信用・ネットワークを活かして、2000年より本格的に海外での発電事業に参画し、2010年以降は主に火力電源の新規開発によって規模及び収益を拡大してきました。その結果、海外事業は、設備出力と利益貢献の両面において、当社グループの主力事業のひとつに成長しております。

 当社グループがイギリス、アメリカ及びインドネシアにおいて建設工事を進めてきた大型プロジェクト(トライトン・ノール洋上風力発電プロジェクト、ジャクソン火力発電所、バタン発電所)は、2022年のそれぞれ4月、5月及び8月に運転を開始いたしました。また、アメリカ、オーストラリア及びアジアを重点地域とし、多様化する発電設備等の開発ニーズに応じて、再生可能エネルギーをはじめとした新規開発案件への参画を目指していきます。

b.収益力・資本効率の向上

 デジタル化による業務プロセスの変革や設備保守の高度化等をはじめとして、これまでの発電コスト低減や管理間接部門経費の削減の取組みを加速するとともに、火力発電所の計画外停止低減や小売事業者向け販売等のリスク管理強化に取り組むことにより、収益力のさらなる向上を図っていきます。

 また、既存資産に対しては、設備信頼性とバランスをとりつつ更新投資を抑制するとともに、適宜保有資産の見直し・入替えを図り、新規投資に対しては資本効率を踏まえて経営資源を配分することで、資本効率の向上を図っていきます。保有資産の見直し・入替えでは、2023年2月に米国でのジャクソン火力発電所の一部権益を譲渡して確実に開発者利益を獲得しており、譲渡で得た資金は新たなプロジェクトの投資に充当していきます。

c.人財育成

 世代を問わず学び続ける風土を醸成し、多様な人財の自律的な成長を支援することで、様々な経営課題に挑戦する人財を育成していきます。柔軟な働き方の実現を通じて個人の多様なニーズに応えるとともに、職場の安全と従業員の健康を十分に確保することで、多様な人財が意欲的に活躍し、継続的なイノベーションを促進する人財育成・職場づくりに取り組んでいきます。これらに加えて、戦略的人財活用や幹部人財の育成などにも取り組み、様々な経営課題に挑戦する人財開発を推進していきます。

d.DX(デジタルトランスフォーメーション)の取組み

 データの蓄積・連携・共有と分析による意思決定(データドリブン)を基軸に、安全・安心、効率性・即応性と稼ぐ力の三つのSの創出に取り組んでいます。

安全・安心

Safety

◆事故・労働災害のゼロ化  ◆労働環境の向上

◆健康経営の増進          ◆サイバーセキュリティ対策

効率性・即応性

Smartness

◆作業自動化・省力化      ◆労働生産性の向上

◆間接コスト削減          ◆分析の高度化・効率化

稼ぐ力

Strength

◆販売収益力の向上        ◆無事故・稼働率の向上

◆発電コスト最適化        ◆予知・予防保全

◆現場力の向上

 こうした取組みにより、社員の「よりょく」(与力(新たな力)、余力(ゆとりの力)と予力(予見の力)の三つの総称)を創出することにより、サステイナブル経営と企業価値の向上を支えるとともに、ワークインライフの推進と労働生産性の向上に取り組んでいきます。

e.ESG経営の推進

 当社グループは、時代ごとの様々なエネルギーに関する社会課題の解決に事業を通して貢献してきました。「エネルギーと環境の共生」を基調に、2000年代初頭より気候変動問題への対応にもいち早く着手するなど、未来を見据えた持続的な成長を目指しています。

2021年度よりESGの担当役員と総括部署を設置しており、2022年8月には当社グループにとっての重要な社会的な課題(マテリアリティ)に関する取組み項目について、その進捗管理のための目標(KPI)を設定し、この進捗状況も役員※5報酬(業績連動報酬)の評価指標に加えることにしました。また、2022年6月には人権尊重に関して「J-POWERグループ人権基本方針」を策定しています。気候変動問題をはじめとする環境問題への対応、社会の良き一員としての事業活動やガバナンスの強化など、これまでの取組みを更に強化していきます。

※5 取締役及び執行役員(社外取締役及び監査等委員等を除く)

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標として、以下を採用しております。

項目

経営目標

連結経常利益

 2023年度     900億円 以上

連結自己資本比率

 2023年度        30% 以上

再生可能エネルギー開発(2017年度比)

 2025年度     150万kW 以上

国内発電事業CO2排出量(2013年度実績比)

 2025年度  △920万トン

 2030年  △2,250万トン(△46%)

(注)上記財務目標は、有価証券報告書提出日(2023年6月29日)現在において予測できる事情等を基礎とした当社グループの合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

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