文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
<長期ビジョン:「E-Vision2030」>
当社グループは1912年の創業以来、創業の精神である「熱と誠」のもとに、「水と空気と環境の分野で広く社会に貢献する」ことを企業理念とし、事業を行ってきました。創業当時は日本の水インフラの整備に貢献し、「水を安全かつ安定的に供給するための事業を通じて国づくりに貢献する」という意思をもって社会の要請に応えてきました。第2次世界大戦からの戦後復興と高度経済成長期には、産業インフラや都市化による建設需要に対して、さまざまなニーズに基づく多種多様な風水力製品・サービスや、市民生活の高度化に伴って生じる廃棄物を処理する焼却設備等を提供してきました。さらに、情報化社会の進展に伴う半導体の爆発的な需要拡大に対して半導体製造装置・機器を開発し、進化する情報化社会に貢献しています。近年は持続可能な社会の要請に対して製品の省エネ化を徹底するなど、事業を通じて社会の様々な課題の解決に貢献してきました。
今後100年の人類社会や地球環境を展望した場合、多くの課題が考えられますが、当社グループは、気候変動、特に温暖化現象の悪化による異常気象と自然災害の激甚化、海面上昇による高潮、陸地の浸食、さらには食料や水の資源枯渇等を大きな課題と捉えています。また、高度情報化社会はますます進化し、デジタル社会の加速によりライフスタイルが大きく変化することが予想され、社会を支える半導体の技術革新はさらに進むとともに需要も拡大していくと考えられます。
このように事業環境が見通しにくい中で、当社グループが今後も社会課題の解決を通じて更なる成長を続けていくためには、今後の社会の展望と課題を認識したうえで、将来のありたい姿を描き、その実現に向けた方針・戦略を明確にすることが不可欠と考え、2020年2月に長期ビジョン「E-Vision2030」を策定しました。
<5つのマテリアリティ>
荏原グループは今後も “荏原らしさ”、培われた技術力および信頼性を強みとして、事業を通じてさらに広く社会に貢献し続けていきます。また、2030年に向けて荏原グループが解決・改善していく重要課題を「5つのマテリアリティ」として設定し、その実現プロセスを価値創造ストーリーとして策定・実践していきます。
① 持続可能な社会づくりへの貢献
技術で、熱く、持続可能で地球にやさしい社会、安全・安心に過ごせる社会インフラ、水や食べるものに困らない世界を支えます。
② 進化する豊かな生活づくりへの貢献
技術で、熱く、世界が広く貧困から抜け出す経済発展と、進化する豊かで便利なくらしを実現する産業を支えます。
③ 環境マネジメントの徹底
二酸化炭素排出を実質的にゼロにするカーボンニュートラルに向けて、再生可能エネルギー利用を含めた二酸化炭素削減を推進します。
④ 人材の活躍促進
多様な人材が働き甲斐と働き易さを感じながら活躍し、“競争し挑戦する企業風土”を具体化します。
⑤ ガバナンスの更なる革新
成長へのビジョンを描き、グローバルで勝ち続ける経営を後押しする攻めと守りのガバナンスを追求します。
(2)10年後のありたい姿
当社グループは、今後10年間、SDGsをはじめとする社会課題の解決に資する5つのマテリアリティの実現を通じて持続的に貢献し、①社会・環境価値と②経済価値を同時に向上させていくことで企業価値を向上させることにより、グローバルエクセレントカンパニーを目指します。2030年における企業価値向上の目安として、時価総額1兆円規模を設定します。
<成果目標の代表例>
①社会・環境価値
・CO2約1億トン相当の温室効果ガスを削減する
・世界で6億人に水を届ける
・最先端の半導体デバイスである14オングストローム(100億分の1m)世代への挑戦により、くらしの進化に寄与する
②経済価値
・投下資本利益率(ROIC)10.0%以上
・売上高1兆円規模
<ROE目標の追加>
E-Vision2030の最初の3年間が経過した今、改めてE-Vision2030を見直した際に、その大きな方向性(価値創造ストーリーやマテリアリティなど)については、依然として色褪せず、現時点で特に抜本的な変更を要しないものと認識しています。一方で、これまで進めてきたROIC経営の取り組みを通じ、株主資本効率も向上させるという視点からROE 15%以上を目指すこととしました。
<ROIC経営>
「ROIC経営」は株主が重視する企業価値の最大化と、事業部門が重視すべき事業価値の最大化とを橋渡しする有用な経営手法と捉えています。当社の「ROIC経営」においては、管理すべき事業単位毎にWACC(ハードル・レート)を設定し、各事業単位でROIC・WACCスプレッドの最大化を目指した施策を展開しています。ROICツリーにより、事業単位で管理し易い指標にまで分解し、それらを各担当者レベルの評価指標として位置付けると共に、プロセスKPI*として進捗を月次でモニタリングしています。
(3)中期的な経営戦略と目標とする経営指標
E-Plan2022の振り返りをベースに今後3年間で取り組むべき戦略・課題と「E-Plan2022」の総括から明確になった解決すべき課題への対応等に基づき、「E-Vision2030」のありたい姿に着実に近づき実現するために、2023年度からの3か年の中期経営計画「E-Plan2025」を策定しました。
<E-Plan2022の振り返り>
E-Plan2022では、当該計画期間(2020-2022 年度)を“E-Vision2030の実現に向けた「更なる成長に向けた筋肉質化」のステージ”と位置づけ、①事業成長への挑戦、②既存事業の収益性改善、③経営・事業インフラの高度化、④ESG 経営の進化の4つの基本方針の下、様々な施策を実行してまいりました。その結果、最重要経営指標と位置付けた投下資本利益率(ROIC)及び営業利益率の 1 年前倒し達成を含め、主要な指標で目標を達成し、全般的には良好な進捗であったと総括しています。
<E-Plan2025の位置付け・方向性>
E-Plan2022での成果をベースに次のステージとして、それぞれの事業で更なる競争力強化を図るべく、E-Plan2025では「顧客起点での価値創造」をテーマとしています。その上で、E-Plan2025期間を、E-Vision2030に掲げる「2030年にありたい姿」に着実に近づき、2030年にそれを確実に実現するための3年間と位置付け、以下のとおり方向性を定めました。
1.マーケットインを強化していくことで、プロダクトアウトから脱却し、「顧客起点での新たな価値創造」を行う企業文化を根付かせる。
2.対面市場に向かってそれぞれの事業がパフォーマンスを最大限に発揮する体制となることを企図し、対面市場別5カンパニー制へと組織改変を行う。
3.「2030年にありたい姿」の実現をより確かなものとしていくための資本投下(成長投資/基盤投資)を積極的に行う。
4.効率性/収益性指標(ROIC、営業利益率)については、2022年に実現したE-Vision2030で掲げた目標水準(ROIC 10%など)を維持する。
5.“ROIC経営の深化”を継続的に進めつつ、「2030年に時価総額1兆円」の実現をより強力に推進するために、E-Vision2030で目標として掲げるROEを重要指標として加え15%以上を目指す。
6.グループ全体最適と機能毎のグループガバナンス高度化を目的としてCxO制を導入する。
以上の1~6の実践を通じ、「2030年にありたい姿」実現への道筋がより確実に見通せる位置に到達していることがE-Plan2025の目標となります。事業成長については、E-Plan2025期間のトップラインのCAGRを7%と置くこととし、成長分野と位置付ける「建築・産業」と「精密・電子」の2事業を中心にそれを実現していくものとします。
<E-Plan2025のテーマと重点領域>
E-Plan2025では対面市場別組織が顧客起点での価値の創発を行うことで新たな事業創出を目指していきます。
テーマ: 「顧客起点での価値創造=起業化」
挑戦し続けるマインドセットをサポートする組織風土を醸成するとともに、会社全体を顧客の要望、課題に真摯に向き合う組織構造へと変化させ、ビジネスを創出する一連の流れを生み出すことにより、継続的な「起業」とそれによる価値創造を目指します。
また、テーマ実現を支える5つの重点領域を以下のとおり定めます。
1. 対面市場・顧客起点
2. 新たな価値創発
3. グローバル事業基盤の確立
4. 経営インフラの高度化
5. ESG経営の進化
<事業セグメントの変更>
当社グループでは、長期ビジョンの実現に向けた次の成長ステージとして、「E-Plan2025」の中で、より市場に向き合い顧客起点での価値創造を実現していくためには、従来の製品軸のセグメントから対面市場軸のセグメントへと事業セグメントを変更することが合理的と判断いたしました。
「風水力事業」「環境プラント事業」「精密・電子事業」の従来の3事業セグメントを、「建築・産業事業」「エネルギー事業」「インフラ事業」「環境事業」「精密・電子事業」の5事業セグメントに変更します。
具体的には、ポンプ、コンプレッサ・タービン、冷熱機械等の製品軸で構成される現行の「風水力事業」セグメントを、「建築・産業事業」「エネルギー事業」「インフラ事業」の3つの対面市場別セグメントに再構成した上で、それらを「環境事業」「精密・電子事業」と並ぶ事業セグメントに位置づけます。
<目標とする経営指標>
E-Plan2025の最終年度である2025年度に達成すべき目標として以下の各項目を設定します。
財務数値目標
分類 | 項目 | 2025年度目標 |
収益性 | 全社営業利益率 | 10.0%以上 |
<セグメント毎営業利益率> |
- 建築・産業 | 7.0%以上 |
- エネルギー | 12.0%以上 |
- インフラ | 6.0%以上 |
- 環境 | 7.0%以上 |
- 精密・電子 | 17.0%以上 |
効率性 | ROIC※1 | 10.0%以上 |
ROE | 15.0%以上 |
成長性 | 建築・産業 売上CAGR(2022-2025年度) | 6.0%以上 |
精密・電子 売上CAGR(2022-2025年度) | 15.0%以上 |
健全性 | D/E レシオ(倍) | 0.3~0.5(管理目安) |
※1 ROIC計算式
NOPLAT(みなし税引後営業利益)÷投下資本{有利子負債(期首期末平均)+株主資本(期首期末平均)}
非財務目標
分類 | 項目 | 2023年度~2025年度 目標 |
環境(E) | CDP評価(気候変動) | B以上を維持 |
SCOPE1,2 GHG排出量 | 2018年比32.0%削減 |
SCOPE3 | 2030年1億トン 削減に向けた合理的測定手法の確立 |
社会(S) | 競争し、挑戦する風土へ変革し、多様な社員が働きやすさを感じて活躍できる環境づくりを目指す ・エンゲージメントサーベイスコア向上(連結) | 2025年度 83以上 2030年度 86以上 |
グローバルモビリティの向上を目指す ・Global Key Position(GKP)における 非日本人社員比率(連結) | 2025年度 30.0%以上 2030年度 50.0%以上 |
男女の賃金差異解消 ①GKP女性ポジション比率(連結) ②女性基幹職比率(単体) | ①2025年度 8.0%以上 2030年度 10.0%以上 ②2025年度 8.0%以上 |
性別に関係なく仕事と育児を両立できる企業風土を醸成 ・男性育児休暇取得比率(単体) | 2023年中にデータ収集方法を確立し、取得比率向上のアクションプランに基づく目標値を設定する |
障がいのある社員の活躍促進 ・障がい者雇用比率 (単体+グループ適用会社4社) | 2025年度 2.6%以上 |
サプライヤー向けの人権DDの結果に基づく必要な施策の実施 |
ガバナンス(G) | 取締役会の実効性の向上と G to V(Governance to Value)への貢献 |
E-Plan2025期間におけるキャッシュ・アロケーションの目安(3年間累計)
項目 | 内容 | 2023~2025年度 3年間累計 |
成長投資 | 事業ポートフォリオに基づく成長投資 (増産対応設備、研究開発、新規事業、M&A等) | 1,800億円~2,250億円 (内、研究開発費650億円) |
基盤投資 | 持続的成長を支える基盤の強化等 (維持更新設備、人的資本、ERP等のIT、ビジネスインフラ、ESG関連投資) | 500億円~800億円 |
株主還元 | 配当方針:連結配当性向35.0%以上 自己株式取得:親会社所有者帰属持分水準、他の投資対象、手元現預金水準、株価の動向、業績の動向等を総合的に勘案し、適切な局面で機動的に実施する |
(4)経営環境
E-Plan2025を策定するうえで前提とした経営環境は以下の通りです。
表中「市場別・地域別トレンド」の矢印は市場の成長動向を示す。
(5)E-Plan2025期間中に対処すべき課題
(5-1)事業別の対処すべき課題
各事業は、下記の基本方針と基本戦略で課題解決を行っていきます。
① 建築・産業
(ⅰ)基本方針
・建築・産業市場において、顧客視点でのポンプ・冷熱製品・サービスを組合せた新たなソリューション提供により、事業の更なる成長を目指す。
・DXを活用した業務・事業運営の高度化、効率化
(ⅱ)基本戦略
・ソリューション事業強化
-顧客へのソリューション提供によるモノ売りからコト売りへの転換
-新たなビジネスモデルの創出と展開
-IoT+クラウドを使った顧客との接点強化
・成長市場(海外)の取り込み
-M&A拠点製品(Vansan社、Hayward Gordon社)のグローバル展開
-高付加価値製品の投入による新市場の開拓
-食品、半導体市場を中心とした先進国の産業ユーティリティ市場への参入
-アフリカ地域での販路拡大と灌漑向け製品強化
-アフリカ、南米、アジア、北欧地域への新拠点の設立
・グローバルでの事業インフラ再構築
-海外生産拠点の拡充及び地政学リスクを考慮したグローバル調達・生産配分の見直し
② エネルギー
(ⅰ)基本方針
・エネルギーシフトをリードし、脱炭素社会に貢献するため、サステナビリティやサービス分野で新たなビジネスモデルを確立する。
・既存事業領域の収益性を更に向上させるため構造改革を行う。
・コンプレッサ・タービンとカスタムポンプの統合により、顧客や市場に新たな価値を提供する。
(ⅱ)基本戦略
・製品(New Apparatus)
-選別受注の継続による、収益性の向上
-新規ソリューションの市場投入準備完了
・S&S(Global Service)
-サービス拠点の構造改革
-コンプレッサ・タービンとカスタムポンプのサービスリソース活用
-新たなS&Sビジネスの開発と市場投入
・グローバルでの生産体制(Global Manufacturing)
-荏原グループ全体最適化の視点でのエンジニアリングの最適化、統一の推進
-自動設計の対象機種拡大
-生産体制の再構築
-LCC(Low Cost Country)からの調達拡大による調達コストの低減
③ インフラ
(ⅰ)基本方針
・国内:生産工場との協働により製品開発力を強化し、底堅い官需のシェアと収益を維持する。
・海外:成長市場を見定めて、ポンプ設備や周辺技術、エンジニアリング技術を用いた新たな価値を創造する。
(ⅱ)基本戦略
・国内ポンプ市場でのシェア拡大
-製品開発力・エンジニアリング機能の強化
-大型機場の延命化提案の推進
-有資格技術者の増員と代理店の活用による、機会損失の低減
・海外ポンプ市場の深堀と利益確保
-国内で高評価を得ているエンジニアリング技術の海外拠点への展開による競争力の強化
-フロントローディングによる戦略受注の継続および収益性の確保
・国内外での生産性向上
-マーケットニーズに即した製品開発
-調達能力の強化
-生産拠点の連携の深化
-DX、AIを活用した生産技術の向上
④ 環境
(ⅰ)基本方針
・中核事業の基盤強化
・脱炭素や資源循環など市場の変化を適切に捉え、Life Cycle Assessment(LCA)を基軸とした、ソリューションプロバイダとしての取り組み強化
(ⅱ)基本戦略
・新規DBOの価格競争力向上・EPCの追加原価発生防止
[EPC]
-工事費用・機器購入費・設計管理費などの削減
-設計の標準化や方針の見直しによる施設のコンパクト化
-設計の標準化や自動化等の設計業務プロセス改善成果の徹底活用
-計画精度の向上による、土木建築やプラント施工時の追加原価発生の防止
[O&M]
-長期包括案件におけるメンテナンスメニューの最適化、相見積によるコスト低減
・既設O&M案件の収益基盤のさらなる強化
-周辺業務の拡大
-施設運営期間の最大化
・LCAを基軸とした脱炭素・資源循環ソリューションプロバイダとしての取り組み強化
-ケミカルリサイクル技術の精度向上と、実用化に向けたスキーム構築
-ロボット開発による運転やメンテナンスなどの高度化
-新技術やサービスの開発・提供
・地域戦略の推進
-中国拠点との協業で、機器販売およびエンジニアリングビジネスの東南アジアへの拡大
⑤ 精密・電子
(ⅰ)基本方針
・製品・サービスを提供するのみでなく、顧客のプロセスやユーティリティにおける課題解決を通じてユニークな価値を提供する。
・地域戦略からグローバルアカウント戦略に転換し、顧客のグローバル展開に合わせた戦略立案とグローバル全体最適化によりシェア拡大を図る。
(ⅱ)基本戦略
・製品・ソリューション開発力の強化
[コンポーネント]
-顧客の半導体製造の脱炭素化への貢献、AI・DXを活用した新たな価値、半導体以外の産業領域への展開など、半導体工場のサブファブ領域全体に対する価値・ソリューション提供
-ドライ真空ポンプ、排ガス処理装置、半導体製造装置向けチラー、次世代EUV露光装置向け排気システムなどの製品開発
-データモニタリング、故障予知機能などのソリューション開発
[CMPおよびその他装置]
-マーケットインのソリューション開発体制構築
-研究開発施設の増強
-データサイエンス活用によるさらなる価値創造
・生産能力増強
[コンポーネント]
-ドライ真空ポンプは、自動化工場の稼働率向上、グローバルでのオーバーホール能力増強の実施
-EUV露光装置向け排気システムを含む各製品は、需要増に向けた設備投資
[CMPおよびその他装置]
-熊本事業所へ新棟建設
・事業規模拡大に対応したグローバルでの事業インフラ再構築
-ローカル中心の対応から、グローバルでの顧客サポート強化によるS&Sの強化
-サプライヤーのマルチ化、海外調達拠点の設立、在庫戦略の再構築によるサプライチェーンの強靭化
-需要増に対応したグローバル組織体制の再構築
(5-2)ESG経営上の対処すべき課題
① 気候変動への対応
<TCFD提言に基づく気候関連シナリオ分析>
荏原グループでは、気候変動は世界が直面している重大な課題であると認識し、2019年にTCFDを支持する署名を行いました。ステークホルダーとの対話を通じて、気候変動に対するガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標について情報を開示し、取り組みを推進することの重要性を認識しています。
事業ごとに気候関連のリスクと機会をより明確にすることを目的とし、対面市場別のシナリオ分析に着手しました。脱炭素社会に向けて進化しているオイル&ガス市場と、社会全体の高効率化に欠くことのできない半導体製造市場向けの事業について、それぞれの事業が気温上昇を4℃未満に抑える4℃シナリオ、1.5℃未満に抑える1.5℃シナリオでどのような財務インパクトが生じるのかを推計し、その結果に基づき、気候関連リスク・機会に対する2050年までの対応策を検討しました。TCFD提言に基づく情報開示に際しては取締役会の確認を得るプロセスとしています。詳細につきましては以下のサイトに開示しています。
https://www.ebara.co.jp/sustainability/think/information/tcfd.html
https://www.ebara.co.jp/ir/library/annual-report/pdf/__icsFiles/afieldfile/2023/01/20/8_INT22_fvc_JP_1_1.pdf(P57~58 TCFD提言に基づく情報開示)
本開示は、環境省のシナリオ分析実践ガイド2022年度版のシナリオ分析開示例(国内外)に掲載されています。
上記に続き、建築産業市場向け事業、環境市場(固形廃棄物処理)向け事業、社会インフラ市場向け事業についても順次シナリオ分析を行い、気候変動に対してよりレジリエントな戦略の策定を進めています。
<カーボンニュートラル>
荏原グループは、自社とバリューチェーンにおけるGHG排出量を低減することにより、2050年にGHG排出ネットゼロを目指します。詳細につきましては以下のサイトに開示しています。
[2030年の目標]
1.Scope1+2 :2018年度比GHG排出量を55%削減
2.Scope3 :CO2換算として1億ton削減
https://www.ebara.co.jp/sustainability/environment/information/carbon-neutrality.html
② 人的資本経営への対応
E-Plan2022で重点課題として推進してきた「グローバルでの持続的成長」を実現するための基盤整備をより加速させ、「競争し、挑戦する」人材を育成し、グローバルモビリティの向上を通じて最適配置をグループ全体で強化していきます。更に、対面市場別への組織改変に対し、CHROオフィスを軸にグローバルに各種施策を強力に推進していきます。全社員が荏原グループで働くことへの誇りを持ち、事業成長のために自ら考え、チャレンジし、安心・安全にいきいきと働くことができる環境・体制を構築していきます。
②-1.多様な人材の活躍推進とグローバル基盤の確立
(ⅰ)学びたい人、挑戦したい人に対して機会を提供し、適所でモチベーション高く働けるよう支援していきます。そのために、様々なキャリアの可視化など、自らキャリアチェンジを目指せるような仕組みを構築し、リーダー候補の早期選抜・育成、必須の研修から希望者制の研修への転換、自由度の高い学びなおしの支援などを通じ、挑戦したい人材の選択肢を増やしていきます。
(ⅱ)海外グループ会社のローカル社員がより重要なポジションで活躍するには、GKP(グローバルキーポジション)※1における非日本人比率を高めることが重要であり、グローバルモビリティの活性化が必要です。そのために、グローバルに統一された役割等級制度導入の推進、グローバル人材育成プログラムの全社展開、国内外のサクセッションの戦略的実行などを推進していきます。
(ⅲ)リファラル採用やアルムナイ制度を継続するとともに、データドリブンで多様な人材の獲得を進めます。また、多様な人材がより働きやすい環境を提供するために、ENW(EBARA New Workstyle)の更なる拡大を行います。多様な働き方を実現することで、従業員エンゲージメントの向上につなげるとともに、多様な人材が活躍できる風土醸成を目指します。
※1 GKP(グローバルキーポジション):グループ全体の役割等級が高いマネージャー
②-2.グローバル共通人材マネジメント基盤の構築
人材ポートフォリオの基盤となる「グローバルHCM(Human Capital Management)プラットフォーム」を構築します。それにより、「人材の見える化」をグローバルに加速させ、各人事施策の効果を定量的にモニタリングしPDCAを回せる体制と人的資本可視化要件をグローバルにモニタリングできる体制を構築していきます。
②-3.ダイバーシティ&インクルージョン
(ⅰ)タスクダイバーシティの推進
イノベーションを起こせるチャレンジャー人材を、「増やす」「見つける」「育てる」「つなぐ」施策を進めます。サーベイに基づき現状把握を進め、性別、国籍などの目に見える違い(デモグラフィックダイバーシティ)だけではなく、経験、能力など目に見えない違い(タスクダイバーシティ)と心理的安全性の高い組織の実現に目を向けて、適材適所、インクルージョンが行える施策を、ピープルアナリティクス、メタバースなどの活用を通して進めていきます。
(ⅱ)ピープルアナリティクス
人事領域における施策について、データドリブンで客観的かつ科学的に意思決定を行っていきます。多様な人材の採用モデルを作り、データを活用した採用を進めます。スムーズなピープルアナリティクスが行えるように、データ基盤の整備、業務に必要なデータベースの設計、問題の見える化、業務標準化、業務無人化を行いながら、総合的な人事領域の組織・業務のデザインを構築していきます。このようにピープルアナリティクスを通して、データを活用して意思決定ができるよう推進していきます。
(ⅲ)障がいのある社員の活躍推進
法定雇用率上昇や対外環境の変化に確実に対応するため、荏原グループの障がい者雇用管理を一元化し、グループ一体で障がい者雇用・事業を推進していきます。キャリア形成の視点で障がいのある社員の能力開発を行い、挑戦・成長できる環境整備を進め、さらに、グループの事業プロセスへの参入拡大を図ることで、障がいの有無にかかわらず全グループ社員が「ともに働き、世の中に価値を提供し続ける」ことの実現を目指します。
③ コーポレート・ガバナンスでの対応
取締役会として、以下の方針の下、コーポレート・ガバナンスの強化・改善を継続し、実効性のさらなる向上を図ることで、ガバナンスが企業価値向上に貢献し具体的な成果を出していく「Governance to Value(G to V)」を目指していきます。
(ⅰ)中長期的課題の解決に向けた荏原グループの成長をサポート
E-Vision2030及びE-Plan2025の実現に向け、取締役会において荏原グループの中長期的課題(事業ポートフォリオ、人的資本、人材育成、多様性の推進、サステナビリティに関する重要課題等)について十分な議論を行い、執行側が改革のスピードを速めることができるように後押しを続けるとともに監督・検証を行っていきます。対面市場別組織への移行に合わせて執行側が進めるガバナンス体制の再構築について、事業の自立性とそれに基づく意思決定と、規律あるガバナンスの両立が図られているのか、荏原グループのコーポレート・ガバナンスの中核である当社取締役会において監督・検証を行っていきます。
(ⅱ)取締役会及び各委員会におけるサステナビリティに対する監督
執行側のサステナビリティに関する取組みを監督・後押しするため、取締役会における議題設定と議論に加えて、指名委員会(経営人材育成等)、報酬委員会(役員報酬への評価指標の反映等)、監査委員会(リスクの監督等)において、それぞれの役割と責務に応じた議論を深化していきます。
(ⅲ)取締役会とステークホルダーとの対話
サステナビリティ課題への取組み及び企業価値向上に資する経営を実施する上で、取締役会と株主・投資家をはじめとするステークホルダーとの対話とその結果について取締役会による監督・検証の重要性が増すと考えられるため、取締役会として前向きに取り組んでいきます。
(ⅳ)実効性向上に向けた取組みの継続
当社グループの成長とその価値の継続的な向上のためには、コーポレート・ガバナンスを有効に機能させることが必須であり、そのためには取締役会の役割と責務が実効性のあるものでなければいけないと考えています。当社取締役会は、その趣旨に沿って、E-Plan2025期間中も取締役会自身が取締役会の実効性評価を毎年行い、課題を抽出し、その解決を図りつつ、継続的にガバナンス改革を目指していきます。
取締役会の実効性評価は、2022年より、さらに実質的に深いレベルで実効性を検討・議論することを目指し、取締役会の内情をよく理解する取締役会議長が取締役全員との個別インタビューを実施することによる取締役個人の自己評価とピア(相互)評価の方式としました。E-Plan2025期間中もこの取組みを継続し、実効性のさらなる向上を図っていきます。
就職・転職をするときに最低限チェックしておきたい項目をまとめました。
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