企業第一生命ホールディングス東証プライム:8750】「保険業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) グループの理念体系

 グループ理念体系(Mission・Vision・Values・Brand Message)の共有により、グループ各社が、それぞれの地域や国で、生命保険の提供を中心に人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献いたします。また、グループ戦略の共有により、各社がベクトルをあわせてグループ価値の最大化と持続的な成長を目指します。

2022年に創業120周年を迎えた当社グループは、将来にわたって、すべての人々が世代を超えて安心に満ち、豊かで健康な人生を送れるwell-being(幸せ)に貢献し続けられる存在でありたいと考えております。そのため、事業領域を4つの体験価値(保障、資産形成・承継、健康・医療、つながり・絆)へと拡げることで、従来に増してお客さまに寄り添ってまいります。また、私たちが追求するすべての人々の幸せは、社会のサステナビリティがあってこそ実現するものであります。今般、社会の持続可能性の実現を事業運営の根幹と位置付け、地域・社会の持続性確保に関する重要課題にも、従来に増して取り組んでまいります。


 こうした考えの下、当社グループが安心、豊かさ、健康といった体験価値の総体としてのwell-being(幸せ)をお届けすることをグループが一丸となって目指すため、2022年3月期より、グループビジョンを“Protect and improve the well-being of all”(すべての人々の幸せを守り、高める。)へと改めました。


Mission:私たちの存在意義

「一生涯のパートナー」

“By your side,for life”

 当社グループは、1902年、日本での創業以来、お客さま本位(お客さま第一)を経営の基本理念に据え、生命保険の提供を中心に、地域社会への貢献に努めてまいりました。

 これからも、お客さまとお客さまの大切な人々の“一生涯のパートナー”として、グループ各社が、それぞれの地域で、人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献してまいります。

Vision:私たちの目指す姿

「すべての人々の幸せを守り、高める」

“Protect and improve the well-being of all”

 当社グループは安心、豊かさ、健康といった体験価値の総体としてのwell-being(幸せ)をお届けすることをグループが一丸となって目指してまいります。

Values:私たちの大切にする価値観

「グループ企業行動原則(DSR憲章)」

“Dai-ichi's Social Responsibility Charter (DSR Charter)”

 当社グループは、お客さま、社会、株主・投資家の皆さま、従業員からの期待に応え続けるための企業行動原則として「DSR憲章」を定め、持続可能な社会づくりに貢献いたします。

「DSR」とは、「第一生命グループの社会的責任(Dai-ichi’s Social Responsibility=DSR)」を表し、PDCAサイクルを全社で回すことを通じた経営品質の絶えざる向上によって各ステークホルダーに向けた社会的責任を果たすと同時に、当社グループの企業価値を高めていく独自の枠組みであります。

Brand Message:理念体系を支える私たちの想い

「いちばん、人を考える」

“People First”

 いちばん、お客さまから支持される保険グループになるために、以下の4つの視点から誰よりも「人」を考える会社を目指してまいります。

 いちばん、品質の高い会社

 いちばん、生産性の高い会社

 いちばん、従業員の活気あふれる会社

 いちばん、成長する期待の高い会社

(2) 経営環境及び対処すべき課題

 当社グループは2010年の株式会社化以降、複数の国内生命保険子会社設立によるマルチブランド・マルチチャネルの確立や、積極的な海外展開に取り組んでまいりました。2023年3月期には、ニュージーランドや国内ペット保険事業等、新たな地域や事業へのウィング拡大にも取り組み、事業ポートフォリオの深化と探索を進めました。

 足元では、地政学リスクの高まりや世界規模での金融・経済環境の大きな変動等、世界はますます予測困難なほどに複雑化し、急激で不連続な変化が起こる時代となっております。このように変化が激しく、先を見通すことが難しい時代の中では、過去の経験や常識にとらわれずに変革へ挑戦しなければ、持続的に成長し続けることはできません。

私たちは、環境変化に対する感度を高め、未来志向の視点から自らの意識と行動を変え、変革の実現に挑戦してまいります。そして、すべてのステークホルダーの皆さまの期待を超える価値をお届けすることを目指してまいります。

①経営環境

2023年3月期の世界経済は、エネルギーや食糧の供給懸念等によって多くの国で物価上昇が進行し、それに伴う各国中央銀行の金融引締め等を背景に、2022年3月期対比で成長率は鈍化しました。日本経済は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う行動制限や水際対策について緩和が進められる中で個人消費が回復した一方、円安進行に伴う物価高や海外経済の減速に伴う輸出の伸び悩みがみられ、景気回復ペースは緩やかなものにとどまりました。

金融環境については、米国をはじめ多くの国・地域で金融引締めに舵が切られたことで、景気への先行き懸念から世界の株式市場は低調に推移しました。2023年3月には、米国の金融機関破綻に端を発する金融不安の発生から、金融市場が大きく調整する局面がありました。為替市場は、国内外の金融政策の差異が広がる中、一時1ドル=150円台まで円安が進む等、大きく変動しました。国内では、2022年末に日本銀行が長期金利の変動許容幅の上限を0.25%から0.50%へ引き上げたことで、長期金利の上昇がみられました。

国内外で生命保険事業を中心に事業を展開する当社グループは、コロナ禍における確実な保険金及び給付金のお支払い等を通じて、保険事業者としての役割を果たしてまいりました。また、経営環境が大きく変化する中、中期経営計画「Re-connect 2023」における4つの重要施策(国内事業、海外事業、財務・資本、サステナビリティ・経営基盤)を着実に進展させました。


②優先的に対処すべき課題

 新型コロナウイルス感染拡大を契機としたお客さまの価値観の変化やデジタル化の加速に加え、2023年3月期は世界的な物価高に端を発した各国中央銀行による金融引締めが進み、長く低金利環境が続いた日本においてもようやく金利上昇の兆しが見えてまいりました。2023年3月には、米国発の金融不安が生じる等、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化しております。このような環境変化の中、当社グループでは中期経営計画「Re-connect 2023」の最終年度を迎えております。中期経営計画で掲げた4つの体験価値の提供に向けた取組みは着実に進展し、デジタルを活用した新たなお客さま接点の基盤も作り上げることができました。一方で、CXデザイン戦略の中心である生涯設計デザイナーチャネルの改革はまだ道半ばであります。保険業を狭義にとらえず、4つの領域(保障、資産形成・承継、健康・医療、つながり・絆)で価値を提供する保険サービス業へと進化するべく、新たな経営体制の下で、取組みを加速していきたいと考えております。

 国内事業では、第一生命保険株式会社(以下、「第一生命」という。)において、質と生産性を重視する「深化」を目指し、過去に例のないビジネスモデル変革に取り組んでおります。特にコンサルティングの担い手である生涯設計デザイナーの採用・育成制度改革を通じて、お客さまから選ばれ続けるチャネルへと進化すべく取組みを推進いたしました。しかし、コロナ禍からの回復途上であったことも重なり、営業業績は依然としてコロナ禍前の水準を大きく下回っております。2024年3月期は、中期経営計画仕上げの年として新契約価値等の営業業績の反転に向けた取組みを加速させるとともに、引き続き金銭に係る不正行為撲滅に向けた経営品質刷新に取り組んでまいります。同時に、資産形成・承継事業の中核を担う第一フロンティア生命株式会社(以下、「第一フロンティア生命」という。)ではお客さまからお預かりする資産の拡大を目指し、ネオファースト生命株式会社(以下、「ネオファースト生命」という。)では第三分野において競争力の高い商品を提供する等、グループの力を結集してお客さまの多様なニーズにお応えしてまいります。

 また、持続的な成長を実現するために、新たな領域への事業ウィングの拡大や新たな組織能力・ノウハウの獲得に向けた「探索」を進めてまいりました。国内におけるアイペットホールディングス株式会社(以下、「アイペット社」という。)の買収は、大手生保による新たな取組みとして注目を集めました。海外においては、ニュージーランドのPartners Group Holdings Limited(以下、「パートナーズ・ライフ社」という。)を買収した他、英国YuLife Holdings Ltd.(以下、「YuLife社」という。)への出資を実現いたしました。伝統的な生命保険事業が中心であった当社グループに加わった、これらの新たな組織能力によるシナジーの創出を追求し、当社グループの更なる成長につながる取組みを進めてまいります。

 財務・資本政策では、資本効率の改善に向けてグループ内の各事業会社が持つ余剰資本をホールディングスに集約し、成長領域への投資や株主への還元を行う「資本循環経営」を推進しました。グループの各事業の着実な利益成長による子会社等からのキャッシュ・フロー収入の持続的な増加と、資本効率の改善及び資本コストの低減を通じて、資本コストを安定的に上回る資本効率を実現することで、当社の企業価値の向上を目指してまいります。

 グループ経営管理態勢の面では、グローバルな保険グループを目指す中で経営チームの多様性を高めるべく、執行におけるコーポレート機能の強化に向けたCXO制度の拡充や外部からのプロフェッショナル人財の登用等の取組みを推進いたしました。事業運営の大前提である持続可能な社会の実現に向けては、“Chief Sustainability Officer”を新たに設置する等、推進体制を強化しており、脱炭素目標実現に向けた計画をより具体化していく等、当社のマテリアリティ(重要課題)に対応した各種取組みを事業戦略とともに進めてまいります。

 当社グループは、「一生涯のパートナー」としてお客さまとともに歩みながら創業来の「変革の精神」で業界をリードする多様な取組みに挑戦してまいりました。現在の中期経営計画では中核事業である保険業の「深化」と、デジタルアクセスをはじめとする新たな組織能力の獲得への「探索」に取り組んでまいりましたが、課題も多く残存しております。現中期経営計画の仕上げの年としてこれらの課題解決に道筋をつけ、次期中期経営計画、そしてその先に目指す未来においては、保険業の枠組みにとらわれず4つの体験価値(保障、資産形成・承継、健康・医療、つながり・絆)をよりシームレスに提供することを通じて、お客さまが望む未来を実現するためのサービスを幅広くご提供できる存在でありたいと考えております。「一生涯のパートナー」としてお客さまにwell-beingをお届けするため、そして企業価値の向上へとつなげるため、第一生命グループは変わり続け、目指したい未来へ向かって変革を加速させてまいります。

(3) 中期経営計画『Re-connect 2023』の進捗

「「Re-connect 2023」グループ重要経営指標(KPI)の状況」については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 財政状態、経営成績」をご参照ください。

 各事業における主な取組みは次のとおりであります。

①国内事業

 国内事業では、お客さまに選ばれ続ける保険グループとなることを目指し、顕在化する社会課題の解決とデジタル化の潮流を捉えた商品・サービスの改革に取り組んでおります。従来の保険の枠にとどまらない4つの体験価値(保障、資産形成・承継、健康・医療、つながり・絆)をお届けし、お客さまの一生涯の日常に寄り添いながら、体験価値(CX※1)を最大化するCXデザイン戦略を通じて、すべての人々の“well-being(幸せ)”に貢献する取組みを推進いたしました。それぞれの体験価値を日常的に体験いただけるよう、デジタルの利点とリアルの強みを融合した当社グループ版OMO※2の実現を目指し、デジタル接点の拡充とリアルチャネルのコンサルティング向上に注力しております。

※1 Customer Experienceの略語。お客さまが商品・サービスを通じて体験する価値を意味しております。

※2 Online Merges with Offlineの略語であります。

<4つの体験価値(保障、資産形成・承継、健康・医療、つながり・絆)>

「保障」

 第一生命では社会保障制度と連動したライフプランコンサルティング「新・生涯設計プラン」を2022年7月より新たに導入し、あわせて商品ラインアップも刷新いたしました。これまで以上にお客さま一人ひとりに寄り添ったコンサルティングを実施することで社会保障制度の補完的役割を果たしていくとともに、多様化するお客さまニーズにきめ細やかに応えてまいります。ネオファースト生命では、健診結果改善をサポートするアプリ「Neoコーチ」の提供や、新たにがん保険「ネオdeがんちりょう」を発売する等、お客さまの「ココロとカラダの充実(wellness)」を応援する取組みを進めました。また、第一スマート少額短期保険株式会社では、商品ブランド「デジホ」を通じ、すべてのお手続きがスマホ等で完結するデジタル完結型保険の商品ラインアップ拡充に取り組みました。

「資産形成・承継」

 人生100年時代の到来に伴う「老後の生活資金への不安」や「次世代への資産承継」といった社会課題の解決に向けて、当社グループでは自助努力による老後の資産形成や資産寿命の延伸について、一人ひとりのニーズに沿った最適なソリューションを提供することを目指しております。第一生命では、2022年10月からiDeCo向けの新プラン「第一生命のiDeCoミライデコ」の取扱いを開始いたしました。また、デジタル機能を活用し、資産寿命の延伸に向けたアドバイスや情報を一人ひとりにお届けすることで、より身近な日常から資産形成・承継を考えていただくきっかけとなるべく、デジタルプラットフォームサービス「資産形成プラス」を開始いたしました。同サービスにおいては、住信SBIネット銀行株式会社及び楽天銀行株式会社が提供するBaaS(Banking as a Service)を活用したネットバンクサービスも提供する等、デジタル面でのサービスを強化しております。第一フロンティア生命では、貯蓄商品としての機能に加え、認知症・介護への保障機能も有する「プレミアプレゼント3」を新たに発売する等、幅広い資産形成・承継ニーズにお応えする新商品の投入を機動的に行いました。また2022年8月には、当社グループ傘下に新たな資産運用会社、バーテックス・インベストメント・ソリューションズ株式会社を設立いたしました。同社を通じて、最先端の運用技術を駆使した運用機能・ソリューション等を提供してまいります。

「健康・医療」

「平均寿命と健康寿命のギャップ拡大」といった社会課題の解決に向けて、当社グループでは、将来の医療費適正化や効率的な保健事業運営をワンパッケージで支援する健康保険組合向けサービスHealstep®(ヘルステップ)を提供しております。Healstep®を導入いただいている健康保険組合は着実に増加しており、新たに事業主向けにもトライアル版の提供を開始しております。今後も健康保険組合や事業主のニーズに寄り添ったサポートの提供に取り組んでまいります。

「つながり・絆」

2023年3月期には、業務提携によって、生涯設計デザイナーチャネルを通じたペット保険の販売や人財交流等を通じて信頼関係を築いてきたアイペット社を買収いたしました。国内における希少な高成長を誇る保障性市場であるペット保険へと事業ウィングを拡げるとともに、核家族化の進展等の中で生活に喜びを与え、QOLの向上に資する存在となっているペットを通じて、従来の生命保険の事業領域を超えたお客さまの幸せへの貢献へつながる新たな取組みとなりました。

②海外事業

 海外事業では、地理的・成長段階別に分散の効いた事業ポートフォリオ運営を推進する中で、既進出国からの利益貢献の拡大を目指しながら、未進出地域への展開を通じた生命保険事業の深化と新たな事業領域創出に向けた探索に取り組みました。海外事業の2023年3月期の修正利益※1は、米国政策金利の上昇や金融機関の破綻等による不安定な金融経済情勢を受けて対前年度比で減益となったものの、グループ全体の約3割を占めており、海外事業は引き続き当社グループの持続的な成長の牽引役を担っております。

 新規海外展開では、将来のグループのリスクプロファイルの改善や利益成長への貢献につながる買収等を実施いたしました。2022年8月には、ニュージーランドにおいて、創業約10年で同国業界第2位に成長した生命保険会社グループであるパートナーズ・ライフ社の買収を行いました。同社は、クラウドベースの機動的なシステム開発・運用と卓越したデジタル能力を強みとして、シンプルかつ先進的な保障性商品を提供しております。また、同年7月には、英国において、2016年の設立来急成長を遂げているオンライン団体保険代理店であるYuLife社に出資を行いました。同社は、自社開発・提供しているアプリを通じて、団体保険の加入者一人ひとりが楽しみながら健康増進活動に取り組み、well-beingの向上を図ることに貢献しております。

 米Protective Life Corporation(以下、「プロテクティブ」という。)では、同国の中古車市場におけるパイオニアである損害保険会社のAUL Corp.の買収が完了し、事業規模拡大・収益安定化に向けて一歩前進いたしました。金利上昇等を背景に経営者向け貯蓄性保険の販売が拡大し、基礎的な収益力は増加した一方で、急激な経済環境変化を受けて営業外損益が悪化し、修正利益は大幅に減少いたしました。

 豪TAL Dai-ichi Life Australia Pty Ltd(以下、「TAL」という。)では、大手銀行グループWestpacグループの豪生命保険子会社であるWestpac Life Insurance Services Limited(現TAL Life Insurance Services Limited、以下「TLIS」という。)の買収が完了し、デジタルチャネルを通じて当該銀行の顧客基盤へのアクセスが可能となり、保障性市場における事業基盤が一層強化されました。2023年3月期は、当該買収による利益貢献が開始したことで、基礎的な収益力の改善が進んだ他、前期の豪金利変動に伴う減益要因が解消し、修正利益は大幅な増益となりました。

 新興国市場では、Dai-ichi Life Insurance Company of Vietnam, Limited(以下、「第一生命ベトナム」という。)において、好調な保険販売と、販売品質の更なる向上に向けた取組みによる継続保険料の増加を受けて保険料等収入が拡大し、修正利益も堅調に推移いたしました。その他に進出している各国においても、各国の事業ステージに応じた成長戦略の遂行と、情勢を踏まえた適切な業務運営を行いました。

※1 修正利益とは、キャッシュベースの実質的な利益を示す当社独自の指標であります。グループ修正利益は、グループ各社の修正利益を合計したものであり、株主還元の原資となる指標であります。持株会社である当社は、各社から受け取る配当金等に基づき株主還元を行います。

③財務・資本政策

 <資本循環経営の実践>

 当社グループは、財務健全性を維持しつつ、持続的な企業価値向上と株主還元の更なる充実を目指して、ERM※1(Enterprise Risk Management)の枠組みに基づく資本政策運営を行っております。中期経営計画では、高い資本効率や成長性が見込まれる事業への資本投下を通じてグループの資本効率・キャッシュ創出力を高めるとともに、株主還元を充実させる「資本循環経営」※2を推進しております。2023年3月期実績に基づくキャッシュ・フローについては、グループ会社からの配当性向の引上げや第一生命からの特別配当等により創出したキャッシュを戦略投資や株主還元に活用し、成長に向けた戦略的投資と株主還元の充実が両立する資本配賦を実現しています。2023年3月期グループ修正利益が減益となる一方、グループ会社からの配当等は、グループ修正利益を大幅に超過する約2,600億円を確保する見通しであります。

※1 ERMとは、事業におけるリスクの種類や特性を踏まえ、利益・資本・リスクの状況に応じた経営計画・資本政策を策定し、事業活動を推進することを指しております。

※2 「資本循環経営」とは、事業運営を通じて稼得した資本や、リスク削減によって解放された資本を財源として、財務健全性を確保しつつ、より高資本効率・高成長事業へと資本を再配賦することで資本・キャッシュ創出の好循環を生み出し、企業価値向上を目指す考え方であります。

 <リスクプロファイルの変革に向けた市場関連リスク削減の取組み>

 当社グループでは、資本コストの低減とリスク・リターンの向上を通じた資本効率の改善を目指しております。中長期的に目指す姿として、市場関連リスクに偏った現在のリスクプロファイルを、保険リスク中心のリスクプロファイルにシフトすることを企図しており、中期経営計画では第一生命における金利・株式リスク量の削減目標をグループ重要経営指標に設定し、取組みを推進しております。

2023年3月期の第一生命における市場関連リスク削減の取組みは、中期経営計画2年目を終えて引き続き計画を上回り順調に推移しております。金利リスク削減に向けて、超長期債券の継続的な購入や銘柄の入替えによるデュレーションの長期化等の取組みを着実に進めました。また、保有する国内株式の売却等を通じ、株式リスク削減の取組みも合わせて進めております。これらの取組みにより、市場関連リスクは中期経営計画開始時点の約68%から、2023年3月期末には現中計終了時点の目標であった65%程度を下回る、約61%まで減少いたしました。今後も資本効率の更なる改善に向けて、歩みを止めることなくリスクプロファイルの変革に取り組んでまいります。

④サステナビリティ・経営基盤

<持続的社会の実現に向けて>

社会環境は常に変化しており、当社グループは気候変動等の社会課題の解決への貢献とともに、将来世代を含むすべての人々のwell-beingへの貢献を追求し、事業運営に取り組んでいきたいと考えております。これらの活動を推進するために、14個のマテリアリティ(重要課題)を設定し、2023年3月期は、脱炭素社会実現に向けた取組みやダイバーシティ&インクルージョン、人権デュー・ディリジェンス、国内の自治体と協働での地域振興活動等を推進いたしました。また、企業としての社会的責任を果たすべく、役員報酬評価指標に、CO2排出量削減の進捗を含むサステナビリティ指標を導入いたしました。

2023年3月期に当社は、サステナビリティに関する取組みが優れたアジア・太平洋地域企業として、S&P社の“Dow Jones Sustainability Asia Pacific Index”の構成銘柄に選定された他、CDP(国際環境NGO)による気候変動に関する調査で最高評価の「Aリスト」企業に選定されました。また、環境省の第4回「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」において、第一生命が投資家部門の最優秀賞である金賞(環境大臣賞)を受賞する等、高い外部評価を受けました。

 <気候変動への対応>

 事業会社としての取組み

 当社グループでは、スコープ1※1及びスコープ2※1のCO2排出量に関して、グループ全体で2026年3月期までに50%削減(2020年3月期比)、2041年3月期までにネットゼロを達成する中長期目標を設定しており、第一生命がRE100※2へ加盟する等、排出量削減に向け取り組んでおります。加えて、第一生命ではスコープ3※1のCO2排出量を2031年3月期までに30%削減(2020年3月期比)、2051年3月期までにネットゼロとする目標を設定しており、コンタクトセンターの受電・書類発送業務の見直しやインターネット手続きの推進等の取組みを通じて、CX向上とともにOA用紙使用量の削減を図っております。

 また、気候変動関連リスク・影響度の分析・把握に努めており、2023年3月期には気候変動が生命保険事業に与える影響の分析を進め、試算結果を開示いたしました。具体的には、第一生命の死亡保険金・入院給付金のお支払い実績等を基に、最高気温と死亡・入院発生の関連を推定し、国内生命保険会社3社※3の気候変動による将来の死亡保険金・入院給付金増加額を試算いたしました。結果として影響は限定的であったものの、今後の新たなリスク発現等にも留意しつつ、引き続き気候変動関連リスク・影響度の更なる把握に向け、取り組んでまいります。

※1 スコープ1:当社自らの直接排出、スコープ2:他社から供給された電気等の使用に伴う間接排出、スコープ3:スコープ1・2以外の間接排出です。第一生命のスコープ3は、カテゴリ1(購入した製品・サービス)、カテゴリ3(スコープ1、2に含まれない燃料及びエネルギー活動)、カテゴリ4(輸送、配送(上流))、カテゴリ5(事業から出る廃棄物)、カテゴリ6(出張)、カテゴリ7(雇用者の通勤)、カテゴリ12(販売した製品の廃棄)を対象として集計しております。

※2 事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的イニシアティブであります。

※3 第一生命、 第一フロンティア生命、ネオファースト生命の3社であります。

 機関投資家としての取組み

第一生命では、幅広い資産を中長期に保有する「ユニバーサルオーナー」として、責任投資を資産運用の柱として位置付け、運用収益の獲得と気候変動等の社会課題解決の両立を目指しております。同社では、2021年3月期にネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス※1へ加盟し、資産運用ポートフォリオにおける温室効果ガス排出量を、2025年までに25%削減(2020年比)、2050年までにネットゼロとする目標※2を掲げ、脱炭素社会の実現に向けて取り組んでおります。2023年3月期は、責任投資に関する2025年3月期末までの目標をまとめた「責任投資の中期取組方針」※3や、トランジション・ファイナンスに関する基本姿勢等をまとめた「トランジション・ファイナンスに関する取組方針」※4を策定いたしました。これらの方針の下、投融資先のうち排出量上位約50社へのエンゲージメント強化や気候変動問題の解決に資する投融資の積極化等、目標達成に向けた取組みを着実に進捗させました。また、GFANZ※5のプリンシパルズ・グループ・メンバーを務め、脱炭素社会の実現に向けて50ヶ国・550超の加盟金融機関をリードする役割を担いました。

※1 2050年までに投融資ポートフォリオのネットゼロ移行を目指す機関投資家団体であります。

※2 上場株式、社債、不動産に対する削減目標であります。

※3 方針の内容については右記リンク先をご覧ください。 https://www.dai-ichi-life.co.jp/dsr/investment/pdf/ri-report_005.pdf

※4 方針の内容については右記リンク先をご覧ください。 https://www.dai-ichi-life.co.jp/dsr/investment/pdf/ri-report_008.pdf

※5 Glasgow Financial Alliance for Net Zeroの略称で、ネットゼロへの移行を目的に設立されたアセットオーナー、銀行、保険、運用会社等のイニシアティブの連合体です。加盟機関数は2022年10月時点の数値であります。

 <人財・ダイバーシティ&インクルージョン・人権尊重>

当社グループが更なる成長を成し遂げ、グローバルな保険グループへと進化するには、多様な人財の活躍が必要不可欠であります。グループ各社の独自性を理解・尊重すると同時に、性別、年齢、経歴、国籍等に関係なく、価値創造に貢献できる人財の育成、環境づくりを目指しております。国内においては、同質化を打破し、非「男性・新卒採用・日本人」の比率(ダイバーシティ比率)を高めていく中で、特に女性活躍推進においては、経営の意思決定に常時女性が参画している状態を目指し、2024年4月時点で組織長※1の女性比率※2を30%(2023年4月時点において18.5%)とする目標に向けて取組みを推進しております。加えて、企業価値向上を支える多様な人財を育成するため、2027年3月期を目途に3,300名程度の人財の戦略的シフトに取り組んでおります。特にビジネスモデル変革の原動力となる人財育成を強化し、グループ内外を問わず収益力強化につながる領域や新規事業への人員配置を進めてまいります。また、お客さま第一の実現に向けて組織と社員の結び付きをより高めるため、2021年から全役員と社員との対話の機会の場としてタウンホールミーティングを継続して実施している他、組織と社員の結び付きをエンゲージメント調査にて定期的に測定しております。こうした取組みを通して「誇りとやりがいをもって、仲間とともに生き生きわくわく活躍できる組織」と「社員のwell-beingを互いに尊重し高める」状態を目指し、組織改革につなげてまいります。

当社グループでは、グループ企業行動原則(DSR憲章)及び第一生命グループ人権方針において基本的な人権の尊重を表明しております。本グループ人権方針に基づき、CSA等のフレームワークを用いた人権リスクの特定と影響の評価、是正・救済策等の着実な実行を通じて、グループ各社における人権デュー・ディリジェンスの取組みを進めております。

※1 ライン部長、ラインマネジャー級の職位です。

※2 当社及び国内生命保険3社(第一生命、第一フロンティア生命、ネオファースト生命)合計です。

(4) 中期経営計画『Re-connect 2023』(2022年3月期 ~ 2024年3月期)

 当社グループは、全てのステークホルダーの皆さまと「再度、より良い形でつながり直す」という想いを込めて、中期経営計画『Re-connect 2023』を策定いたしました。全役員・従業員が価値観を共有し、共鳴しあいながら変革を遂げるために改めて結束を強めてまいります。


<第一生命グループの重要課題>

 第一生命グループは、全ての人々のwell-being実現に貢献していくにあたり、重点的に取り組むべき社会課題を以下のとおり選定いたしました。具体的には、ステークホルダーからの期待及び当社の事業活動に照らした重要度、さらにはグループ理念との関係性(ビジョンとの親和性等)から取り組むべき社会課題の優先度・重要度を評価し、中期経営計画「Re-connect 2023」の事業戦略に反映しております。

 具体的には以下の3つのステップにて重要課題を選定しております。
<ステップ1>
・具体性を高めて取り組むべき社会課題の優先度・重要度を検討するために、SDGsの17の目標・169のターゲットを目的によってグルーピングし、50の社会課題を抽出
<ステップ2>
・50の社会課題を対象に、国際機関・ガイドライン策定団体、NGO、投資家にESG情報を提供する評価機関、業界団体をはじめとするステークホルダーからの期待を踏まえて、優先度付けを実施
・国内外の保険会社が取り組んでいる社会課題を踏まえて、重要度付けを実施
<ステップ3>
・保険会社にとっての重要課題を抽出し、「グループ理念」「QOL向上への貢献」との関連度を加味し、個々の重要課題の位置付け・表現を整理
・外部有識者との対話を経て、重要課題を選定

 重要課題毎に具体的な社会課題を定め、中長期目標を設定した上で、当社グループの貢献度の測定にも取り組んでまいります。課題解決を通じて、当社グループにおける非保険分野を含めた、お客さま数の拡大を目指してまいります。

 当社の重要課題のうち、“well-being”を構成する4つの体験価値と、それを支えるCX向上のそれぞれについて、中長期的に目指す方向性については以下のとおりであります。


 一方で私たちが追求する全ての人々の幸せは、持続的社会(サステナビリティ)があってこそ実現するものであります。今般、持続的社会の実現を事業運営の根幹と位置づけ、地域・社会の持続性確保に関する重要課題にも、従来に増して取り組んでまいります。


 中計『Re-connect 2023』においては、ビジョン“Protect and improve the well-being of all”で表現した私たちの目指す姿からバックキャスティングする形で、お客さまをはじめとする全てのステークホルダーとの「つながり」の在り方を見直し、この3年間で4つの重要施策「国内事業」「海外事業」「財務・資本」「サステナビリティ・経営基盤」を展開してまいります。

<中期経営計画「Re-connect 2023」における4つの重要施策>

① 国内事業:保険ビジネスモデルの抜本的転換「事業ポートフォリオにおける深化と探索の同時追求」

 国内事業では、市場シェアの拡大に加え事業効率向上を通じて事業の「深化」を図ると同時に、新たな組織能力の獲得、即ち「探索」に向けて、健康・医療領域の新規サービス提供、デジタル技術の獲得を目的とした外部との協業、資産形成・承継領域の機能強化につながる事業投資等を通じて、グループの持続的成長を目指してまいります。

 マルチブランド・マルチチャネル戦略を基盤としつつ、お客さまの継続した体験、すなわちCXに軸足を置き、対面チャネルに加えてデジタルも活用した総合的なビジネス・サービスプロセスを構築する「CXデザイン戦略」に取り組んでまいります。「CXデザイン戦略」とは、全てのお客さま接点でお客さまの期待を超える体験・感動をお届けすることで、会社の成長につなげていくものであります。デジタル接点を含めたお客さま接点の拡大や、リアルチャネルのコンサルティング力向上、データアナリティクスなどを通じた 「お客さま理解」の深化に取り組むことで、一人ひとりに最適で品質の高いCXを提供できる仕組みづくりを行ってまいります。オフラインであるリアルチャネルの強みを活かしながら、オンラインと融合することでお客さま接点を一つにつなげ、最適な商品・サービス・情報を、最適なタイミング・最適なチャネルで提供する当社版OMO(Online Merges with Offline)を実現し、お客さまにとって「ほしいものがほしいときに自然なかたち」でお客さまの期待を超える体験・感動をお届けすることを目指してまいります。


② 海外事業:環境変化に柔軟に対応し、成長を牽引する海外事業ポートフォリオの構築

 海外事業においては、市場ステージに応じたポートフォリオ戦略を引き続き推進してまいります。

 安定成長と早期利益貢献が期待できる米国及び豪州と、中長期の利益貢献が見込まれるアジア新興国での成長に加え、将来の更なる環境変化に備えた革新的なビジネスモデルの取込みを戦略の3つの柱とし、これらにバランスよく取り組むことで、持続的な利益成長と資本コストを上回る資本効率を同時追求してまいります。

 特に各国の資本規制や引き続き継続する低金利環境に対応した新ビジネスの探索(イノベーション)を進めてまいります。キャピタルライトなビジネスの取り込みや地域・事業分散を通じて、より厳しさを増す外部環境の変化への耐性を持った持続的成長基盤の構築を目指してまいります。

 また、これまでも、社長、海外各社のCEO、関連役員により構成されるGLC(グローバル・リーダーズ・コミッティー)において、グローバルな知見を活用しつつ、グループ共通の課題解決に向けた協働取組みを行ってまいりましたが、海外事業の更なる拡大が見込まれる中、より一層グループ最適な視点から経営戦略を策定し、求心力を発揮することが不可欠であります。

 このために、海外グループ会社の中間持株会社に海外事業戦略を議論する討議体を設置し、その運営を担える国内外のグローバル人財の活用を通じて、よりグローバルな経営スタイルへの転換を加速させてまいります。


 ③ 財務・資本:グループ事業を支える強靭な財務体質への変革と資本循環経営

 財務・資本では、市場関連リスクの削減による健全性の向上や資本コストの低減に加え、ERMに基づく規律ある成長投資や機動的かつ柔軟な株主還元の実践等を通じ、中長期的に資本コストを上回る資本効率を目指してまいります。

 資本コストについては、経営環境が変化する中で、これまでの当社想定8%から10%へと自己認識を改めました。高い資本コストの一因としては、金融市場変動の影響を受けやすい財務体質が挙げられ、当社グループが有する統合リスク量(2021年3月末時点)の構成は、市場関連リスクが68%を占めております。そこで市場関連リスクの削減について、従来以上に削減量・スピードを高め、中期経営計画期間の3年間で2021年3月期時点の約20%を削減することといたしました。2021年3月期の取組みを含めると、当初の4年計画の約1.5倍に相当する削減計画となります。ただし、これはあくまで通過点であり、金利リスクについては流動性も踏まえつつ、中期経営計画期間以降においても更なるリスク削減を図ってまいります。

 資本効率については、改定後の資本コストを安定的に上回る水準を目指します。グループ各社に対しては、事業リスク特性に応じたベータや所在国による市場リスクプレミアムを勘案した資本コストを個別に設定の上で事業成果を評価し、資本の配賦・回収等の意思決定を行ってまいります。

 このような考えのもと、中期経営計画の重要経営指標(KPI)において、資本効率指標として従来のROEVに加えて新たに修正ROEを加えるとともに、市場関連リスク削減に関する具体的な削減金額ならびに資本充足率についても目標設定を行いました。


④ サステナビリティ・経営基盤:サステナビリティ向上への使命・責任を果たし、人と社会と地球の幸せな未来を創る

 当社グループは、地域・社会の持続性確保に関する重要課題にも、従来に増して取り組んでまいります。地域・社会のサステナビリティに関する取組みは、国内グループ中心に“世の中の範”となるための目標を設定しております。将来的には、独自の商品・サービスなどを通じた社会的インパクトの創出も挑戦してまいります。

 例えば、気候変動対応については、カーボンニュートラルの実現に向けて、2024年3月期までに第一生命が事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達する方針を決定いたしました。加えて、責任ある機関投資家としてESG投資をグループ会社へも展開することを目指します。第一生命では、2050年までに運用ポートフォリオの温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指します。

 また、2022年3月期より、社長を委員長とする 「グループサステナビリティ推進委員会」を新設し、グループ横断的に非財務分野に係る方針・戦略の立案や、各社における取組遂行状況のモニタリング等を開始いたしました。多様化するお客さまの価値観・ニーズを先んじて捉え、お客さまの期待を超える体験・感動をお届けするためには、私たちも多様性に富んだ人財・組織である必要があると考えており、ダイバーシティ&インクルージョンを推進してまいります。

 男女共同参画社会の実現に向けた取組みはもとより、中途社員・外国人・専門人財など、様々なバックグラウンドを持つ人財が自分らしく働き、個や組織の能力と生産性を高めながら、仲間とつながり、アイデアの共有や相乗効果を生みやすい環境を整備してまいります。具体的には女性管理職比率の新たな目標として、2021年4月時点で13%を占めるライン部長・ラインマネジャー級の管理職における女性比率を2024年4月までに30%とすることを目指してまいります。

 より良い未来を創造し、世代を超えて人々のwell-being(幸せ)に貢献するためにも、気候変動対策をはじめとする様々な社会課題に一層積極的に取り組むとともに、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、多様な働き方の支援、機動的な人財シフト等を通じて、ビジネスモデル変革の原動力となる人財・組織を強化してまいります。


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