文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「人々の清潔で、快適な生活空間づくりのために、たゆまぬ技術革新と感動を与えるサービスを提供し、社会に貢献する」ことを経営理念としており、個人向けの衣料クリーニングのみならず、家庭向けのハウスクリーニングや、法人向けのリネンサプライ・ユニフォームレンタル等、人々の清潔で快適な生活空間づくりに関連するサービス・事業を総合的に展開しております。1906年の創業から百十余年間、業界のリーディングカンパニーとして、たえず新しいサービスや技術に挑戦し、最先端を走り続けてまいりました。
2021年度からは、「Together 2023」をテーマとする中期経営計画(3ヵ年)を開始しており、新型コロナウイルス感染拡大の影響で毀損した自己資本を回復し、成長軌道への回帰を果たすべく、不採算店舗の閉鎖や工場の再編等による固定費の削減や、ペーパーレス化の推進による業務効率の改善等、構造改革の更なる加速化に取り組んでおります。さらに、デジタルマーケティングの推進によるクリーニング需要の創造や、事業横断的な地域戦略の推進によるユニフォームレンタルの業容拡大等、経営計画に基づいた事業戦略を進めております。これらに加え、コンプライアンスの更なる徹底とコーポレートガバナンスの強化を通じて中長期的な企業価値の向上を図り、ステークホルダーの皆さまの期待と信頼に応えてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、中期経営計画(2021年度より3ヵ年)において、自己資本比率の20%以上への回復を目標としております。
(3)会社の経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
①経営環境と中期経営計画
当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症に関する行動制限の緩和に伴い市況が回復傾向にある一方、水道光熱費や資材費の高騰、物価高、需要回復に伴う人手不足、国際情勢の悪化等の懸念材料も見られる状況です。
2021年12月において、当社グループは構造改革の規模の拡大及び一層の加速化を図るべく、中期経営計画「Together 2023」の見直しを行いました。修正後の計画では、コロナ禍によって人々のライフスタイルが変化し、需要が十分に回復しないことが想定される個人向けクリーニング事業を中心に、経営基盤の再構築に向けた取り組みを加速しております。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)を一層推進し、DX人材の計画的育成、デジタルを活用した売上機会の創出、付加価値創造による売上向上、電子化進展に伴う現場事務の本社集約による管理経費の削減等を進めております。
中期経営計画の最終年度である2023年度においては、これらの構造改革にスパートをかけて計画を完遂し、「成長軌道への回帰」を実現してまいります。
②各事業セグメントの市場環境と戦略
ユニフォームレンタル事業においては、HACCP(食品衛生管理の世界標準)の義務化等を背景に市況の活性化が見込まれることから、収益事業・成長事業と位置付けた上で、クリーニング事業からの人事異動等を通じて営業体制を強化し、新規取引先の獲得による業容拡大を目指してまいります。
リネンサプライ事業については、新型コロナウイルス感染拡大によって一時的に市況が大きく悪化したものの、ウィズコロナにおいてホテル稼働率やインバウンドの回復傾向が見られ、また国の観光立国化政策を背景としてホテルの新規開設が多く予定されていることから、今後急速な需要拡大が見込まれます。安定供給と収益性の向上を果たすため、グループ各社間での生産拠点・物流拠点の再構築、取引先ごとの収支に基づく適正な価格改定、採算を十分考慮した新規取引ホテルの受注等を進めてまいります。
個人向けのクリーニング事業においては、新型コロナウイルスの感染拡大以降、外出の自粛や在宅勤務の浸透に伴って需要の低下が加速しており、人々のライフスタイルが変化していることから、感染拡大の鎮静化後も需要の回復は限定的になることを前提として、事業戦略を策定しております。
具体的な取り組み事項として、不採算店舗の閉鎖計画の完遂による固定費圧縮と、「CLP(集配スタッフ)」「らくらく宅配便(宅配便を用いたネット宅配クリーニング)」への売上構成シフトを加速することにより、収益性の改善を図ってまいります。また、スマートフォンアプリの機能拡充による顧客接点強化・デジタルマーケティングの推進や、非衣類・非クリーニングのサービス拡充等、市場環境の変化を踏まえた営業戦略をスピーディに遂行してまいります。
③事業ポートフォリオの基本方針
当社グループは、企業理念に基づきビジネスモデルを明確化し、経営戦略を策定したうえで、事業ポートフォリオを定期的に見直す仕組みを構築し、資本効率の高い事業ポートフォリオへの転換を実現することで、中長期的に企業価値の向上を図ってまいります。
事業ポートフォリオマネジメントを実施するための体制整備として、事業部門から独立した経営企画部を責任部署に定め、取締役会にて年1回以上、事業ポートフォリオに関する審議を行うこととしております。
事業ポートフォリオの見直しにあたっては、当社グループが保有する各事業について、資本収益性と成長性を軸とし、ROIC(投下資本利益率)等の指標を活用した定量的な事業評価とそれに基づく判断を行うことにより、経営資源配分の適正化に加え、事業ポートフォリオの転換、事業の切り出しを含めた事業再編を行ってまいります。
(4)サステナビリティへの取組み
当社グループは、基本精神である「奉仕の徹底」「一人代表」「開拓者精神」のもと、経営理念である「人々の清潔で、快適な生活空間づくりのために、たゆまぬ技術革新と感動を与えるサービスを提供し、社会に貢献します」を実践しています。
経営にあたってはESGを重視し、サステナビリティを巡る課題への対応は重要な経営課題であるという認識のもと、事業と環境や社会とのかかわりに注視し、それらへの影響、それらからの影響を経営戦略に組み込み、規律づけられた企業統治のもとで持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。
①マテリアリティの設定
自社グループおよびステークホルダーにとって重要度の高い課題の中から、特に優先すべき8つのマテリアリティと23の解決に向けた手段を設定し、取組を進めています。
| マテリアリティ | 解決に向けた手段 |
社会 | 1.事業収益力の改善 | グループ総合力の発揮 | 事業ポートフォリオの再構築 | イノベーションの創出 |
2.たゆまぬ品質向上 | 品質管理・品質監査の充実 | 洗濯科学研究所の機能強化 | |
3.働く仲間の成長と活躍 | 専門能力の向上 | 若手・中堅社員の育成 | ESの向上 |
4.ダイバーシティ | 女性活躍の推進 | 多様な人材の雇用と育成 | |
5.職場の安全と健康 | 職場の安全対策 | 健康維持・増進への取組 | |
環境 | 6.気候変動対策と環境負荷低減 | CO2排出削減 | 環境配慮型溶剤への転換 | 水使用量の削減と排水管理 |
7.廃棄物削減と使用資源の循環 | プラゴミ削減・回収 | 資材のリユース・リサイクル | |
統治 | 8.強固な経営基盤の確立 | 取締役会の実効性向上 | リスクマネジメント | コンプライアンス |
企業理念の浸透 | 人権の尊重 | 地域社会との共生 |
②サステナビリティ推進体制
白洋舍本社にサステナビリティ委員会、支店・事業所・グループ会社にSDGs委員会を設置し、委員長である代表取締役社長執行役員のもと、全社での取組を推進しています。また、活動状況については定期的に取締役会に報告を行い、取締役会における意見等を活動に反映しています。
③サステナビリティに関する主な取り組み内容
イ.人権の尊重に向けた取組
経営理念の実践にあたり、全ての事業活動の基盤となるのが人権の尊重です。2022年度においては、その責任を果たすというコミットメント(約束)を社内外のステークホルダーに向けて明確に表明するため、「白洋舍グループ人権方針」を策定いたしました。また、事業活動を通じて人権を尊重する当社グループの姿勢を取引先、製品・サービスに直接関与する関係者に対して示し、サプライチェーンにおける人権配慮への期待を明確化するため、「サステナブル調達方針」および「サステナブル調達ガイドライン」を策定いたしました。こうした人権尊重への取組の意義について、全従業員を対象とした人権研修などを通じ、社内理解・浸透を図っています。
ロ.気候変動対策と環境負荷低減・循環型社会に向けた取組
a.気候変動対策と環境負荷低減に向けた取組
フッ素系溶剤であるHFC365mfc(商品名:ソルカン)は衣類に対する影響が小さく、ソフトに洗浄できる一方、地球温暖化の原因となると言われています。代替溶剤の開発を進め、将来的には全て移行することにより100%削減します。
また、排水中に含まれるテトラクロロエチレン濃度の自社基準を法定基準の1/2に設定しております。研究員による定期的な測定・分析により、法定基準・自社基準を大きく下回る0.0013㎎/ℓ(2022年度平均)を維持しております。
b.循環型社会に向けた取組
2022年4月1日より施行された『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』では、クリーニングの衣類用ハンガーおよび衣類用カバーが対象製品となりました。当社グループでは、従前より実施しているハンガーのリユース・リサイクル・回収の呼びかけ、使用量の把握・ 記録等を一層強化するとともに、衣類用カバーについて、薄肉化(より薄くする)とバイオマス配合素材(10%)への変更を進めています。
〔ハンガーのリユース・リサイクルの取り組み〕
ハ.人財開発に関する取組と女性活躍の推進
当社グループは、蓄積された技術・心のこもった接客を通して、お客さまにご満足いただけるトータル品質を提供することを目指し、従業員の人財開発に関してさまざまな取組みを行っています。工場技術者について、仕上げ・洗浄・しみ抜き等の業務ごとに独自の技術者資格制度を設けているほか、店舗スタッフ・集配スタッフについても資格制度があり、厳格に運用することによって、お客さまが安心してお品物をお預けできるクリーニング知識と接客技術の向上に努めています。
また、社内研修・教育制度として「人財育成プログラム」を運用し、社員の成長支援、多様な人材の育成に努めています。特に女性活躍推進に向けたプログラムとしてNext Stage塾を設け、リーダーになるための心構えや役割、スキルを習得させるとともに、参加者同士のネットワーク構築やモチベーション向上を促進しています。2022年には、女性取締役とのオンライン懇談会を開催し、ロールモデルとの対話を通じて、参加者自身が目指すリーダー像の認識を深化させました。
こうした取組みにより、2022年度末の女性管理職比率は、前年の5.2%から5.9%に上昇いたしました。今後も順次登用を進めると共に、更なる女性管理職候補者の確保・拡大に努めてまいります。
〔人財育成プログラム〕
就職・転職をするときに最低限チェックしておきたい項目をまとめました。
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