企業兼大株主王子ホールディングス東証プライム:3861】「パルプ・紙 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものですが、予測しえない経済状況の変化等さまざまな要因があるため、その結果について当社が保証するものではありません。

(1) 企業集団の経営戦略

 当社グループは、「革新的価値の創造」、「未来と世界への貢献」、「環境・社会との共生」を経営理念とし、「領域をこえ 未来へ」向かって、新たな未来を支えるモノづくり、持続可能な社会への貢献に取り組んでいます。

 また、企業存続の根幹である「コンプライアンス・安全・環境」を経営の最優先・最重要課題と位置付け、企業としての社会的責任を果たすための法令遵守、労働災害リスク撲滅、環境事故防止等を全役員・全従業員へ確実に浸透させる取り組みを続けています。

2022年5月、経営理念を踏まえ、当社グループのあるべき姿として、「森林を健全に育て、その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていく」という当社グループの存在意義(パーパス)を策定しました。

 当社グループの事業の核は、大切な財産である「森林」です。森林を適切に育て、管理することは、二酸化炭素の吸収固定や生物多様性保全、水源涵養、土壌保全等、森林が持つ様々な公益的機能を高めることに繋がり、森林資源を活用した製品群は、化石資源由来の素材・製品を置き換えていくことが可能です。今後も森林資源に根付いた事業活動を通じて環境問題・社会課題への対応に尽力していきます。

 また、当社グループのあるべき姿の実現に向け、「成長から進化へ」を基本方針とする2030年までの長期ビジョンを策定し、「環境問題への取り組み」、「収益向上への取り組み」、「製品開発への取り組み」の3つの柱を掲げ、企業価値の向上に取り組んでいます。

・環境問題への取り組み

 石炭使用量ゼロに向けた燃料転換、再生可能エネルギーの利用拡大による温室効果ガス排出量削減や、植林地を取得・拡大し、有効活用することにより森林による二酸化炭素純吸収量の拡大を図り、環境問題に対する取り組みを進めていきます。

・収益向上への取り組み

 コスト削減や操業改善等により既存事業を掘り下げ深化させていくことに留まらず、戦略投資やM&A等を通じて、既存の有望事業や環境配慮型製品等により事業を伸ばしていきます。

・製品開発への取り組み

 環境配慮型素材・製品の開発、プラスチック代替品の商品化等、木質由来の製品を新しく世に出していきます。

 これらの取り組みを通じて、2030年度までに売上高2.5兆円以上を目指し、また、2030年度に2018年度対比で温室効果ガス排出量70%以上の削減を目標とする「環境行動目標2030」を達成し、企業価値の向上と社会への貢献をしていきます。

 この2030年までの長期ビジョンのマイルストーンとして、2022年度から2024年度までの中期経営計画を策定し、以下の数値目標を設定しています。

2024年度経営目標

連結営業利益

連結純利益

海外売上高比率

ネットD/E※

1,500億円以上

1,000億円以上

(安定的に1,000億円

以上を継続)

40%

(将来的には50%を

目指す)

0.7倍維持

(2022年3月末0.7倍)

※ ネットD/E=純有利子負債残高/純資産

 具体的には以下の取り組みを行います。

(a) 生活産業資材

・産業資材(段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業)

 需要が底堅く推移する段ボール事業について、生産体制再構築や原紙加工一貫生産化を進めると同時に、新工場建設・M&Aを通じ一層の事業拡大に努めています。

 海外では、東南アジア・インド・オセアニアでのパッケージング事業のさらなる強化を図ります。2022年度にはマレーシアとベトナムで3つの段ボール新工場が稼働し、さらに2023年度上期にベトナムで新たに1工場が稼働する予定です。国内では、段ボール需要の伸びが特に大きいと期待される首都圏を中心とした段ボール事業の拡大・強化を図っています。2023年2月には栃木県において段ボールの原紙加工一貫工場が稼働しました。

 加えて、環境意識の高まりに伴い、紙製品への期待が一層集まる中、国内外で脱プラスチック製品の開発・拡販を一段と進めていきます。

 液体紙容器事業では、既にチルド市場においては原紙製造から加工、販売に至る一貫体制を実現していますが、2023年5月にイタリアの液体紙容器事業会社であるIPI社を買収し、アセプティック市場においても、原紙製造から加工、販売及び充填機の製造、販売までを行う総合一貫体制を確立し、国内外での事業拡大を目指します。

 段ボールの加工技術を応用したフィルター製造販売事業では、衛生意識の高まりにより拡大する空気清浄機の需要に応じ、「用途別脱臭フィルター」を開発しました。今後も国内外でさらなる事業拡大を目指します。

・生活消費財(家庭紙事業、紙おむつ事業)

 家庭紙事業では、国内において「ネピア」ブランドのブランディング強化・拡販に取り組んでいます。森を守るために業界に先駆けてFSC®認証を取得し、また、バイオマスインキの使用、パッケージフィルムの紙化、ティシュ取り出し口の紙化やフィルムレス化等を行った環境配慮型製品や、「鼻セレブ」に代表される高品質製品を取り揃えた製品を展開しています。また、2022年8月、王子ネピア江戸川工場内に自社物流倉庫が竣工し、家庭紙加工拠点と配送拠点の一体化により関東圏での競争力強化を図っています。

 紙おむつ事業の子供用分野では、国内外での統一ブランド「Genki!」の販売を通じて、「ネピア」ブランドの価値向上に努めています。国内では、2023年4月にパンツタイプのリニューアルとテープタイプの新発売を行いました。赤ちゃんの快適さを追求し、環境負荷軽減にも配慮する薄型化を実現しています。海外では、マレーシア・インドネシアにおいて周辺国を含め一層の事業拡大を、中国において現地消費者のニーズを取り込んだ製品の拡販に取り組み、海外における拡大・強化を進めています。大人用分野では、要介護・要支援人口の増加に伴い成長が見込まれていることを受け、2022年9月に王子ネピア福島工場で新たな加工機が稼働しました。高齢化が進むわが国の介護現場が抱える課題を解決する製品の開発を進めていきます。

(b) 機能材(特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業)

 環境配慮型素材及び製品の開発を進めるとともに、市場ニーズを先取りし、お客様の期待を超える製品やサービスを迅速に提供できるよう、新たな事業領域の拡大にも積極的に取り組んでいます。

 海外では、感熱製品の世界市場での拡販と印刷・加工を含めた競争力強化を進めています。南米での旺盛な感熱紙需要に対応するため、ブラジルで生産能力を倍増させたほか、ドイツにおいても感熱紙の生産設備の増強(2024年1月稼働予定)に取り組んでいます。2022年9月には、東南アジア及び中国の6か国に事業拠点を有する高機能ラベル印刷加工会社Adampakグループを買収しました。タイで展開する感熱紙・粘着紙事業、マレーシアの高機能ラベル印刷・断裁加工事業に、新たにAdampakグループが加わり、原紙から加工までの一貫生産が可能となりました。東南アジア・南米・中東・アフリカ等の経済発展に伴い事業の拡大を進めるとともに、既存拠点での競争力強化を図っていきます。

 国内では、高機能・環境対応製品の積極的な開発に継続的に取り組んでいます。また、生産体制の継続的な見直しを行い、競争力・収益力を高めることで既存事業の基盤を強化しています。脱炭素社会への転換がグローバルに進行し電動車が急速に普及していることを受け、王子エフテックス滋賀工場で、電動車のモーター駆動制御装置のコンデンサに用いられるポリプロピレンフィルムの生産設備増設を進めており、2023年に1台が稼働し、2024年にも1台の稼働を予定しています。

(c) 資源環境ビジネス(パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業)

「総合パルプメーカー」として世界的なパルプ事業の拡大・強化に加え、森林資源を活かしたバイオマス発電事業や木材加工事業等の拡大に注力しています。

 パルプ事業では、パルプ市況の変動に耐え得る事業基盤作りのため、主要拠点での戦略的収益対策を継続して実施しています。また、国内では、成長性のある溶解パルプ事業で増産・拡販を進めるとともに、高付加価値品の生産拡大による収益力向上を図っています。

 エネルギー事業では、再生可能エネルギーの利用拡大を目指し、さらなる事業拡大を進めており、2022年12月には、伊藤忠エネクス株式会社との合弁によるバイオマス発電設備が徳島県で稼働しました。また、国内外の拠点を活かし、エネルギー事業の拡大に合わせたバイオマス燃料の調達・販売強化を進めています。

 植林事業では、国内外に保有する社有林において、森林の健全な育成・管理に取り組み、持続可能な資源活用を図っています。また、「環境行動目標2030」に掲げる「海外植林地面積を250千ヘクタールから400千ヘクタールに拡大する」という目標に向けて持続可能な森林資源の取得を推進しています。

 木材加工事業では、国内外で製材・木材加工製品の生産能力増強、販売強化に取り組んでいます。また、国内では建築資材分野での拡販等を通じ、収益力の強化を図っています。

(d) 印刷情報メディア(新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業)

 需要動向を見極め、引き続きコストダウンを徹底すると同時に、保有するパルプ生産設備・バイオマス発電設備等の資産を最大限有効活用し、当社グループ全体としての最適生産体制再構築等を通じて、収益力・競争力の強化に取り組んでいます。2021年10月には、王子製紙苫小牧工場の新聞用紙生産設備1台を段ボール原紙生産設備に生産品種を転換しました。また、2022年4月には、同工場において王子マテリア名寄工場から移設した特殊ライナー・特殊板紙生産設備も稼働しました。さらに、王子製紙米子工場では既存のパルプ生産設備に連続工業プロセスを導入し、高品質な溶解パルプの生産を行っています。加えて三菱製紙株式会社との業務提携を継続し、提携メリットの最大化に努めています。

 中国では、数少ない紙パルプ一貫生産体制の強みを最大限に活かしたコストダウンを徹底して行い、さらなる競争力強化に取り組んでいます。

(e) グリーンイノベーションによる新たな価値創造

 創業当時から紙づくりや森づくりで培ってきた多様なコア技術と、国内外に保有する豊富な森林資源を活用することにより、当社ならではの新たな価値を創造し、社会的課題を解決するためにイノベーションを推進しています。現在は、三つのテーマを中心に進めています。

 まず、「木質由来の新素材開発」として、石油由来のプラスチックからの脱却に向けた木質由来のバイオマスプラスチック(ポリ乳酸など)の開発や、化石燃料由来の温室効果ガス排出量削減に向けたバイオマスプラスチックフィルムの製造に取り組んでいます。また、木質由来のエタノールの製造開発を進め、持続可能な航空燃料(SAF)の原料として供給する可能性を検討しています。その他、セルロースナノファイバーやセルロースマットなど、循環型社会の実現に向けて木質由来の新素材を開発していきます。

 次に「メディカル&ヘルスケア領域への挑戦」として、木材の主要成分を用いた医薬品の開発や、高品質な国産の漢方薬原料の安定供給、再生医療の発展に向けた細胞培養基材の開発などにも取り組んでいます。未来の医療を見据え、従来の事業を超えた新たな領域に挑戦しています。

 そして、「環境配慮型製品の開発」として、既存のプラスチック製品を紙製品に置き換える脱プラスチックソリューションを進めています。また、植物由来のポリ乳酸を使用したラミネート紙や、現行の紙リサイクルシステムで再生可能な紙コップ原紙などの開発を進め、温室効果ガス排出量削減や脱プラスチックにつながる取り組みを行っています。

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