企業兼大株主東京電力ホールディングス東証プライム:9501】「電気・ガス業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1)経営環境及び経営方針等

 当社グループを取り巻く経営環境は、カーボンニュートラルの実現をめざす世界的な潮流、激甚化・広域化する自然災害に対応したレジリエンス強化の要請、ウクライナ情勢を受けた全世界的な燃料価格の高騰など、大きく変化している。

 このような事業環境の変化に対応していくため、第四次総合特別事業計画(以下、「四次総特」という。)のもと、原子力事業における一連の不適切事案等により毀損した地域や社会の皆さまからの信頼回復に最優先で取り組むほか、ALPS処理水の海洋放出については、2021年4月に国から示された基本方針を踏まえ、安全性の確保と風評影響を最大限抑制するための取り組みを主体的に行っていく。

 加えて、カーボンニュートラルや防災を軸とした新たな価値を提供するビジネスモデルへと転換をはかり、更なる収益力拡大と企業価値向上を実現していく。

(https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210804004/20210804004-1.pdf)

 [東京電力ホールディングスグループ経理理念]

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 四次総特のとおり、賠償・廃炉に関して、当社グループ全体で年間約5,000億円程度の資金を確保する。加えて、年間約4,500億円規模の利益創出も可能な収益基盤を目指す。

(3)経営環境及び対処すべき課題等

 小売事業の競争激化や原子力発電所の長期停止、ESG・SDGsに代表される社会的課題に対する意識の高まり、自然災害の激甚化・広域化に伴う防災・電力レジリエンスの強化に向けた社会的要請に加え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済・社会活動の変容など、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化している。

 このような事業環境変化のなかでも、当社グループは一丸となって、福島第一原子力発電所の事故を決して風化させることなく、福島への責任を全うするため、「復興と廃炉の両立」を推進していく。

 2021年4月に国から示された「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」を踏まえ、安全を最優先として海洋放出に向けた準備を進めるとともに、関係者の皆さまの理解醸成に向けた丁寧な説明を積み重ねていく。

 また、柏崎刈羽原子力発電所で発生した一連の不適切な事案により、事業を進めるうえで最も大切な社会の皆さまからの信頼を大きく損なうことになった。発電所の喫緊の課題である一連の不適切事案に対する改善措置計画を着実に進めるとともに、改革の実績を一つひとつ積み上げ、地域の皆さまから信頼され、原子力事業者として受け入れていただけるよう全力で取り組んでいく。

 昨今、電力業界では、公正な競争や事業者への信頼を揺るがす事案が発生している。このような状況を踏まえ、当社グループとしては、社内体制の強化や社員教育などを通じて、関係法令の遵守を徹底するとともに、不適切な行為の防止に努めていく。

 新型コロナウイルス感染拡大を受け、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき策定した業務計画・行動計画等に則り、電力を安定的に供給するための対応を行うとともに、引き続き、With/Afterコロナ時代を見据えた働き方改革を進めていく。

 2022年3月には、福島県沖地震等により複数の発電所の停止が継続したことに加え、気温の低下が重なったことで、一時、電力需給は大変厳しいものとなったが、皆さまの節電へのご協力により大規模停電を回避できた。

 2023年度夏季は、7月の東京エリアの予備率が厳しい見通しとなったことから、安定供給に万全を期すために追加供給力公募により追加の供給力を確保している。しかしながら、その後に一部電源の補修時期の延長が生じたことにより、最低限必要な予備率(3.0%)を確保しているものの、3.1%と厳しい見通しである。このような状況を踏まえ、国からは、さらに追加供給力公募の非落札電源及びデマンドレスポンスの調達や無理のない範囲での節電の呼びかけ等の需給対策が示されており、当社としても、引き続き最大限対応していく。

 加えて、多様化する社会的な要請にお応えするために、当社グループは安定供給の継続に最大限尽力しながら、「カーボンニュートラル」と「防災」を軸とした、新たな価値を提供するビジネスモデルへと事業構造の変革を図り、収益力向上につなげていく。

①当年度の施策

[ホールディングス]

<福島事業>

 イ.福島復興に向けた取り組み

 当社は、「3つの誓い」として掲げた「最後の一人まで賠償貫徹」、「迅速かつきめ細やかな賠償の徹底」、「和解仲介案の尊重」に基づき、被害者の方々の個別のご事情を丁寧にお伺いしながら賠償を進め、当年度末までに累計約10兆7,163億円をお支払いした。

 また、特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されるなど、復興の進展がみられるなか、帰還に向けた環境整備や地域イベントの手伝い等の活動を実施してきた。

 加えて、風評被害の抑制や払拭に向けた流通促進活動については、小売店や飲食店と連携したイベントを、国内各地にとどまらず、アメリカ、ベトナム、タイ、シンガポールにおいても開催するなど、水産物をはじめとする福島県産品等の取り扱いの拡大に取り組んできた。

 ロ.福島第一・第二原子力発電所の廃炉

 福島第一原子力発電所については、原子炉建屋に滞留する汚染水の浄化を進め、滞留水量を2020年末時点からほぼ半減させるなど、漏えいリスクの低減をはかってきたほか、燃料デブリ取り出しに向け、1号機においてロボットによる格納容器の内部調査を実施するなど、廃炉作業を進めてきた。

 また、政府が示した「2023年春から夏頃」のALPS処理水の海洋放出開始に向け、希釈放出設備の設置工事を安全最優先で着実に進めるとともに、地域や社会の皆さまの理解醸成に向けて丁寧な説明を積み重ねてきた。

 福島第二原子力発電所については、廃止措置計画に定めた廃止措置工程のうち、第1段階となる解体工事準備期間の主要な作業プロセスを具体化する「福島第二原子力発電所廃止措置実行計画2022」を策定した。

<経済事業>

 ハ.原子力発電事業の取り組み

 柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向け、原子力改革における取り組みを一過性のものとしないよう、さらなる安全と核セキュリティの向上を追求してきた。具体的には、核物質防護事案に関する36項目に及ぶ改善措置計画について、着実な実施とその有効性評価を行うことなどにより、核物質防護の強化に取り組んできたほか、安全対策工事の完遂に向けた総点検の実施や主要設備の健全性の確認を進めてきた。

 また、さまざまな自然現象や原子力災害を想定した多様なシナリオを用いた訓練に加え、自治体の消防と合同の消火訓練を行うなど、緊急時の対応力の強化や関係機関との連携をはかってきた。

 地域の皆さまのご理解につながる取り組みとして、定期的な訪問やコミュニケーションブースの開催等を通じて、発電所の取り組みや原子力改革の進捗状況等についてご説明するとともに、広く地域の皆さまのご意見をお伺いしている。

 ニ.持続的な成長の実現に向けた取り組み

 カーボンニュートラルへの社会的要請の高まりなどの事業環境の変化に対応するため、当社グループは、2022年4月に既存電気事業のCO排出削減と地産地消型の設備サービスの拡大に取り組む事業方針を公表した。

 その取り組みの一環として、カーボンニュートラルと防災を軸とした次世代のまちづくりをめざし、交通事業者との間で電気バス向けエネルギーマネジメントシステムの開発・検証を行うとともに、カーボンニュートラルの実現に先行的に取り組む自治体との連携を積極的に進めてきた。

 加えて、次世代まちづくりの早期実現に向け、学校法人早稲田大学との間でエネルギー利用の高度化や共同研究等についての包括連携に関する協定を締結するなど、新たなサービスを生み出す技術開発に向けた取り組みを、産学連携を通じて加速してきた。

[フュエル&パワー]

・株式会社JERAの取り組み

 東京電力フュエル&パワー株式会社は、ウクライナ情勢を背景とした燃料価格の高騰・燃料調達リスクの高まりを踏まえた供給力の確保や、カーボンニュートラル達成に向けた再生可能エネルギーと低炭素火力を組み合わせたクリーンエネルギー供給基盤の構築を株式会社JERAに求めるとともに、その課題解決に向けて、同社と協働してきた。

 株式会社JERAの具体的な取り組みとして、JERA Global Markets社を通じたLNGのスポット調達を安定的かつ機動的に実施したほか、長期計画停止中の発電所の運転再開、リプレース工事が完了した武豊火力発電所5号機・姉崎火力発電所新1号機の運転を開始するなど、供給力の確保に努めてきた。また、2035年度までに2013年度比でCO排出量60%以上の削減を目指す「JERA環境コミット2035」を策定し、水素・アンモニア混焼導入による低炭素火力発電の開発や、ベルギーの洋上風力発電事業者であるParkwind社の買収等、再生可能エネルギー事業を進めている。

[パワーグリッド]

・安定的かつ低廉な電力供給と事業領域の拡大

 電力供給の信頼度確保と低廉な託送原価水準の実現をめざし、効率的でサステナブルな事業運営に取り組むとともに、送配電ネットワークの新たな価値の創造や事業領域の拡大を進めてきた。具体的には、厳しい状況が続く電力需給に対し、広く社会の皆さまにご協力をいただきながら、関係機関との連携をはかること等により安定的な電力供給に努めつつ、設備保全の省力化・自動化や取引先との協働による調達改革等にも取り組んできた。また、ガス・通信のインフラ事業者との間で災害対応や設備点検等の相互連携をはかる取り組みを推進したほか、地方公共団体等とともに環境省の「脱炭素先行地域」に申請し、6地点が選定されるなど、地域のレジリエンス強化や脱炭素化等の取り組みを進めてきた。さらに、他社とのアライアンスを通じて電力使用データを活用した新たなサービスの事業化を実現するとともに、海外でのコンサルティング活動や事業機会の発掘にも積極的に取り組み、2022年8月にはイギリスとドイツを結ぶ国際連系線プロジェクトへ参画するなど、事業領域の拡大を加速してきた。

[エナジーパートナー]

・お客さまの期待を超える付加価値の提供

 世界的な資源価格の高騰に伴う燃料・卸電力市場価格の高騰により、費用が収入を上回る状態となるなど、財務体質が年々悪化してきたなか、東京電力エナジーパートナー株式会社は、コスト削減など経営合理化の徹底や増資による資本増強に加え、苦渋の決断ではあるが、料金見直しを実施し、財務基盤の確保に努めてきた。

 また、変化し続けるお客さまの期待に応え、信頼され選ばれ続けるパートナーであるため、「カ―ボンニュートラル」や「省エネ」などの付加価値の提供に取り組んできた。

 具体的には、那須塩原市、株式会社ヨークベニマルとの間で、東京電力エナジーパートナー株式会社が那須塩原市内のヨークベニマルの店舗に設置した太陽光発電設備や蓄電池等を活用し、カーボンニュートラル推進に加え災害に伴う大規模停電発生時等に電力の提供を通じた住民支援を行う協定を締結した。また、お客さまのご負担軽減に向けた節電キャンペーンとして、「節電チャレンジ2022」の実施や、節電促進プラン「エナジーダイエットプラン」の新設など、省エネ施策を進めてきた。

[リニューアブルパワー]

・事業の基盤強化と領域拡大に向けた取り組み

 国内水力発電事業において、経年水力発電所の計画的なリパワリングのほか、発電所データの収集・活用の仕組みの構築などのDX推進の取り組みを通じて、発電電力量のさらなる増加などの事業基盤の強化に着実に取り組むとともに、小売電気事業者のニーズをとらえ、揚水式水力発電の特性を活かした「電力預かりサービス」の提供を拡大してきた。

 また、再生可能エネルギーの開発ポテンシャルの大きいアジア地域での事業拡大に向け、ベトナムで水力発電事業を行うベトナム・パワー・デベロップメント社に出資参画している。さらに、国内外における洋上風力発電事業の展開を加速していくため、洋上風力発電事業の豊富なノウハウを有するイギリスのフローテーション・エナジー社を完全子会社化するなど、クリーンでサステナブルなカーボンニュートラル社会の実現に貢献する取り組みを展開してきた。加えて、地熱発電事業の事業化に向けた地点開発を進めるなど、さらなる電源の多様化に向けた取り組みを推進してきた。

(参考)

・当年度の新型コロナウイルス感染症への対策と働き方改革の取り組み

 新型コロナウイルス感染拡大を受け、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき策定した業務計画・行動計画等に則り、社員の出社前検温の徹底や地域をまたぐ往来の制限等、徹底した感染予防策を講じてきた。また、そうした経験を踏まえ、With/Afterコロナ時代における在宅勤務下でも社員が自律性を発揮し、多様な働き方を実現できるよう、危機管理の強化と社員の幸福度・仕事の生産性・お客さまの満足度の向上を同時に達成する新しいワークスタイル「TEPCO Work Innovation」の確立に向けた取り組みを進めてきた。具体的には、リモートワークやサテライトオフィスの拡充、コミュニケーションツールの充実化、ペーパーレス・ハンコレス化等の業務プロセスの見直しを行っており、今後はこれらの取り組みをさらに推進し、時間・場所・組織にとらわれない働き方を実現し、お客さま起点の新しい価値を創造していく。

②優先的に対処すべき課題

[ホールディングス]

<福島事業>

 イ.「3つの誓い」に基づく賠償と復興に向けた取り組み

 2022年12月に決定された中間指針第五次追補等を踏まえ、精神的損害等に対する追加賠償の請求の受付を開始している。引き続き、国や自治体の協力をいただきながらご請求の促進をはかるとともに、迅速かつ適切な賠償を実施するために、業務の運用を随時見直すなど、きめ細やかな対応を徹底していく。

 また、特定復興再生拠点区域の避難指示解除などの復興のステージに合わせ、地域のニーズを的確にとらえ、環境整備や地域イベントのお手伝いなど、復興がより一層進むよう地域に根差した取り組みを進めていく。

 加えて、風評被害の抑制や払拭に向け、「発見!ふくしま」キャンペーンの開催などを通じて、福島県産品等の流通促進活動を強化・拡充していく。

 ロ.地域と共生した福島第一原子力発電所の廃炉の貫徹

 長期にわたる廃炉の貫徹に向け「廃炉中長期実行プラン2023」のもと、現場・現物を踏まえたプロジェクト管理と安全・品質管理の機能の強化をはかり、安全・着実かつ計画的に廃炉作業を進めていく。1号機については、使用済燃料プールからの燃料取り出しに向け、大型カバー設置などを着実に進めるほか、2号機については、国際廃炉研究開発機構と連携して燃料デブリの試験的取り出しに向けた作業を進めていく。

 また、「復興と廃炉の両立」の方針のもと、地元企業の参画拡大や域外企業の誘致を通じて、浜通り地域における廃炉関連産業の形成を推進し、地域の雇用創出や人財育成、産業・経済基盤の創造に貢献していく。

 ハ.ALPS処理水の扱い

 ALPS処理水の海洋放出の開始に向けて、実施計画に基づく安全・品質の確保や科学的根拠に基づく情報の国内外への発信、海域モニタリングの強化など、政府の基本方針を踏まえた取り組みを着実に進めていく。

 また、希釈放出設備の設置工事等の進捗に応じて原子力規制委員会による使用前検査や国際原子力機関によるレビューを受け、客観性・透明性の確保に努めていく。さらに、ALPS処理水の放出に伴う風評影響を最大限抑制すべく、国内外の理解醸成に向けた科学的根拠に基づく情報発信に加えて、風評影響を受けうる産業への対策をさらに強化していく。

 それらの対策を講じてもなお放出により風評被害が生じた場合には、迅速かつ適切に賠償していく。

<経済事業>

 ニ.原子力発電事業の取り組み

 原子力発電所の安全と核セキュリティを継続的に追求し、地域や社会から信頼される企業となるために、現場重視の姿勢で原子力改革を推進していく。具体的には、各分野の専門家などの知見を積極的に取り入れるほか、柏崎刈羽原子力発電所の運営に関わる本社機能を新潟県に移転するなどして、本社と発電所が一体となる現場重視・地域共生の事業体制の構築をめざしていく。

 安定供給の継続とカーボンニュートラルの実現のためには原子力発電は必要不可欠であり、安全最優先のもと地域や社会の皆さまから信頼していただけるよう、一つひとつ取り組みを積み上げていく。

 ホ.当社グループの事業戦略と収益力向上への取り組み

 エネルギーの市場価格の変動が激しい事業環境のなか、最適な電源ポートフォリオ等を構築することで、確実に利益を確保できる体質に転換していく。

 また、太陽光発電設備や蓄電池等の導入から長期運用まで含めたエネルギーサービスを提供することにより、自家発電・自家消費や地産地消といった分散・自律型の設備形成の動きを加速化させ、お客さまのエネルギーコストの安定化をはかっていく。あわせてレジリエンス向上に資する防災サービスなどの提供を通じ、災害に強く、カーボンニュートラルに資する“まちづくり”を実現し、安全・安心で快適なくらしの価値を提供していく。こうした施策により、事業環境の大きな変化にも対応できる柔軟な事業構造に変革していく。

 これらの施策を推進していくために、電気を柔軟に賢く「つかう」ための技術開発等に注力するほか、グループ再編も視野に入れたアライアンスを組成することなどにより、四次総特において掲げた「2030年度までに最大3兆円」の3倍以上の投資規模をめざしていく。

[フュエル&パワー]

 東京電力フュエル&パワー株式会社は、カーボンニュートラルの潮流の加速やウクライナ情勢を背景にした燃料価格の不安定化・高騰リスク、国内の電力需給ひっ迫リスクなど、株式会社JERAを取り巻く事業環境が急激に変化していることを踏まえ、同社における事業計画の策定への関与とその進捗に対するモニタリングなどによる質の高いコミュニケーションを通じて、株主として適切なガバナンスを実施していく。供給力の確保やJERAゼロエミッション2050の着実な実施にあたっては、機動的な燃料調達や再生可能エネルギーの開発・導入など各案件の進捗管理等を通じて課題を共有するとともに、その課題への対策が株式会社JERAの施策に随時、柔軟に反映されるよう、支援・監督していく。

[パワーグリッド]

 省エネルギーの進展等により託送事業の規模・収入が伸び悩む可能性がある一方、経年化が進んだ送配電ネットワーク設備の修繕・更新・革新を効率的に進める必要がある。こうしたなか、新しい託送料金制度であるレベニューキャップ制のもと、安定的かつ低廉な電力供給を支え続けるため、送配電ネットワークを健全な状態で効率的に維持し続け、その強靭性を高めていく。また、カーボンニュートラル等の課題解決に向け、他業種を含めた事業者との協業・連携により新たな価値の創造に挑戦するとともに、事業領域をさらに拡大させることで、地域や社会のニーズや期待に的確に応え、持続的な成長を追求していく。加えて、情報漏えい等により広く一般送配電事業者の信頼が損なわれた事態を重く受け止め、内部統制システムの一層の強化を図ることで、一般送配電事業の中立性を確実に担保していく。

[エナジーパートナー]

 イ.販売戦略全体

 最適な電気の調達ポートフォリオを構築するとともに、デマンドレスポンス等を活用して電力需要パターンを柔軟に変化させることで、需給ひっ迫の不安がなく価格変動の少ない安定的なサービスを提供するほか、お客さまの利用形態に応じた電気料金プランの策定などにより、強い収益基盤の構築に取り組んでまいる。

 加えて、設備サービスを活用したエネルギーの地産地消を推進するとともに、省エネ設備の導入サポートを中心とする「TEPCO省エネプログラム2023」を実施するなど、カーボンニュートラル社会の実現とお客さまのご負担軽減に向けた取り組みを展開してまいる。

 ロ.燃料価格高騰を受けた対応

 当社グループは、お客さまに電力を安定的にお届けするよう取り組んでいるが、昨今の世界的な資源価格の高

 騰を背景とした事業環境下において、東京電力エナジーパートナー株式会社は、経営合理化では追いつかないほどの燃料・卸電力市場価格の高騰によって、費用が収入を上回っている状態となっており、財務体質が年々悪化している。

 こうした状況を踏まえ、東京電力エナジーパートナー株式会社の財務基盤を立て直すことを目的として、当社を引受先とする増資を決議し、東京電力エナジーパートナー株式会社に対し2022年10月に2,000億円、2023年1月に3,000億円の払込を行った。また、東京電力エナジーパートナー株式会社において、特に卸電力市場価格の影響が大きい「特別高圧・高圧」のお客さまを対象とした電気料金を2023年4月より順次見直しさせていただくこととした。

 しかしながら、上記対応を施しても収支基盤としては十分ではなく、今後、安定供給に支障をきたすことになりかねないこと及び経営合理化などの経営努力だけでは克服が困難なことから、東京電力エナジーパートナー株式会社は、「低圧」のお客さまを対象とした規制料金について値上げをお願いすることとし、2023年5月19日に経済産業大臣の認可を受け、2023年6月1日より値上げを実施させていただいた。低圧自由料金についても、2023年7月1日から見直しをさせていただく。

 電気料金の見直しに伴い、お客さまにはご負担をおかけするが、ご理解いただけるように丁寧な説明を行ってまいる。また、電力・ガス取引監視等委員会による規制料金認可後のフォローアップに対しても、適切に対応してまいる。

 一方、東京電力エナジーパートナー株式会社は2022年10月28日に閣議決定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」に基づき、お客さまのご負担軽減を直接的に実現すべく、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」(以下、「本事業」という。)に参加申請するとともに、特定小売供給約款における電気料金の特別措置の設定を経済産業大臣に申請した。東京電力エナジーパートナー株式会社は、本事業における電気・ガスの事業者として、2022年12月15日までに採択され、12月16日には経済産業大臣より、特定小売供給約款における電気料金の特別措置の認可を受けた。これに伴い、国からの補助金を受けながら、2023年1月使用(2月検針)分以降の電気・ガス料金において、国が定める値引き単価により、電気・ガスのご使用量に応じた値引きを行っている。

 加えて、お客さまの電気料金のご負担を軽減する節電における取り組みとして、省エネ設備の導入サポートを中心とする「TEPCO省エネプログラム2023」を実施する。

 以上の取り組み等により、お客さまに電力を安定的にお届けできるよう最大限努力してまいる。

[リニューアブルパワー]

 国内の水力発電所のリパワリングを通じて設備強化に取り組むとともに、AI等を活用して発電所設備の制御・運用を最適化するなど、水資源のさらなる有効活用をはかっていく。また、出資参画した海外の事業会社が保有する水力発電所について、国内水力発電事業で培った技術力を活用して、調整池運用方法のカイゼンや機器取替周期の最適化等のバリューアップを進めるとともに、開発ポテンシャルが高い国・地域における開発も継続し、収益力の拡大をはかっていく。

 洋上風力発電事業については、国内公募案件での事業者選定をめざすとともに、子会社のフローテーション・エナジー社とグローバルに案件開発を進め、実案件の設計・建設・O&Mを通じて洋上風力発電事業の技術・運営に関するノウハウ・技術を獲得することにより、国内外における事業拡大を加速していく。

(注)本項においては、将来に関する事項が含まれているが、当該事項は提出日現在において判断したものである。

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