企業日本ケミファ東証スタンダード:4539】「医薬品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

  (1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは「医薬品を中核としたトータルヘルスケアで人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことを経営理念とし、国内外において存在価値のある企業グループとして発展することを目指しております。

  (2) 中長期的な会社の経営戦略

(1)の経営理念の下、当社はグループの経営課題としてかねてより以下の3つのミッションを掲げております。すなわち、
ⅰ)ジェネリック医薬品市場におけるプレゼンスを確立する
ⅱ)アルカリ化療法に関する臨床研究の成果を最大限に活用する
ⅲ)自社開発創薬により社会に貢献する
さらに、将来にわたる当社グループの成長持続のためには、国内のみならず海外での事業拡大が不可欠と考えており、2015年度からは
ⅳ)海外の事業基盤確立
を「3つのミッションプラス1」として加え、これらの達成を経営戦略の中心に据え、日々事業に取り組んでいます。

  (3) 当社グループをめぐる業界や市場の動向等の経営環境

 医薬品業界につきましては、2022年4月の薬価改定で、薬剤費ベースで6,000億円を超える削減が実施されました。また、ジェネリック医薬品同業他社の品質問題等に関する市場全体の供給不足は、その他のメーカーによる増産対応や設備投資などを通じた安定供給確保への努力により改善傾向にあるものの、依然として解消されておりません。

 このような環境下で、当社グループは引き続き「信頼できるジェネリック医薬品」の普及に貢献するべく、ジェネリック医薬品の品質向上と安定供給に注力するとともに、生産性及び効率性の向上に資する施策を推し進めてきました。

 また、ジェネリック医薬品事業と並行して取り組んでいる、「アルカリ化療法剤」や「新薬開発」に関しては、他社とのアライアンスを活用した革新的な創薬テーマへのチャレンジや、国内外企業への導出活動に努めています。当社グループは、まだ十分な治療薬がない病気に苦しむ患者さんのために、画期的新薬の開発に取り組んでいます。

  (4) 会社の対処すべき課題

 ① ジェネリック医薬品

  1) 品質保証

 当社グループでは、2022年4月に設置した「グループ品質保証統括部」が中心となり、課題の検討や解決、統一した管理基準・管理手法の提案や運用等を行い、グループ全体での品質保証レベルの引き上げと、さらなる品質の強化に取り組んでいます。具体的には、グループ製造拠点及び社外製造委託先や原薬製造所に対し、定期的な監査、すなわち製造施設設備・製造記録及び試験記録等の確認をとおして、医薬品の製造管理及び品質管理が適正に実施されていることを、原則的に3年に1回の頻度で確認しています。併せて、重大な製品クレーム等が発生した場合には臨時に監査を行い、迅速かつ適切な措置を講じ再発防止に努めています。

 また、当社グループが製造販売するジェネリック医薬品の原薬製造国や製剤製造会社名、安定供給体制等に関する情報をホームページ上で公開することにより、医療関係者のご要望に応えるとともに透明性の高い製造管理体制を構築しています。

  2) 安定供給

 一昨年来、複数のジェネリック医薬品メーカーで製造管理及び品質管理体制に関する法令違反が発覚し、業務停止や製品の出荷停止となる事態に至り、ジェネリック医薬品のみならず医薬品全体で供給不足が続いています。できるだけ早期に市場の需要を満たし、業界に対する信頼を回復することが喫緊の課題であることから、当社においても、前期より国内工場の人員と生産設備を増強するための投資を続けてまいりました。しかしながら、人員確保が計画通り進まなかったことなどから、他社製造委託品も含め製造余力の面で上記の代替需要すべてに応えることはかないませんでした。2023年度以降も人員増強や勤務体系の見直しによる体制の整備や設備投資の実施などにより増産に努めてまいります。また、原薬につきましても、安定供給の観点より複数の製造所から購入するマルチソース化への取り組みも進めています。

 当社グループの生産量拡大とコスト削減を実現する、Nippon Chemiphar Vietnam Co., Ltd.(以下、NC-VN社)では、コストメリットの大きい品目を中心に国内工場からの移管が順調に進んでいます。また、同工場においても日本での供給不足に対応するため、2交代制の勤務を導入するなど増産対応に取り組んでいます。

  3) 販売

 国内ジェネリック医薬品市場は、オーソライズドジェネリックの台頭による競争の激化や、2021年から始まった薬価の中間年改定などの影響で厳しい事業環境となっています。加えて近年では供給不足の影響から各ジェネリック医薬品メーカーが製品の出荷調整と解除を繰り返す状況も続いており、販売面でよりいっそう難しいかじ取りを強いられています。当社グループはこの状況に対処すべく、グループ全体の営業活動を一元管理する「グループ医薬営業本部」のもと、多様な販路へ効率的に営業活動を行うため、AIを使った顧客管理・MR活動計画の立案などにも取り組んでいます。

   4) 開発

 ジェネリック医薬品の開発については、品質への信頼性を高めることを最優先としながら、市場競争の激化にも対応すべく、医療関係者・患者さんのニーズを反映し、付加価値のある製品の開発と市場への投入を目指しています。また開発品目の選定にあたっては、先発品の市場規模に加え、参入するメーカー数やオーソライズドジェネリックの発売可能性などを重要な検討項目とし、特色のある品目の開発はもちろん、ニッチな品目の選定なども考慮に入れて、販売時の競争優位性を確保することを重視していきます。

 臨床検査薬

 臨床検査薬の主力品であるアレルギースクリーニング機器・試薬「ドロップスクリーン」は、わずか1滴の血液で、41項目のアレルゲンを、30分という短時間で測定することができ、これまで検査センターに外注していたアレルギー検査を院内で測定することを可能にした製品であり、導入された医療機関からは大変高い評価をいただいています。2022年10月からスタートした当社営業部門によるプロモーションサポートにより、製品の販売拡大に確実な手ごたえを得ており、当面の目標である国内設置台数1,000台を早期に実現させていきます。

 ドロップスクリーンについては、海外企業からも照会を受けるなど、2027年度ごろの海外発売を目指し、引き続き製品開発、各国法規制対応、パートナー選定などに取り組んでまいります。

② アルカリ化療法剤

 当社グループがウラリットで培ってきたアルカリ化療法剤については、さまざまな方面で展開が進んでいます。

 まず、抗がん剤開発に特化した創薬系バイオベンチャー企業であるDelta-Fly Pharma株式会社(以下、DFP社)とライセンス契約を締結している抗がん剤候補化合物「DFP-17729」は、本剤と他の抗がん剤の併用群、並びに他の抗がん剤単独群との比較によるフェーズⅡ試験を当期に終了し、現在は次フェーズの実施に向けてデータの解析が進められています。対象疾患である膵臓がんは早期発見が難しく、特に末期では満足できる治療剤がない状況です。DFP-17729はがん細胞周辺の微小環境改善作用を有し、酸性に傾いているがん細胞周囲の微小環境をアルカリ化することで、難治性がんの治療効果が期待されています。

 次に、当社グループが協力を行いながら東北大学で進められていた、アルカリ化療法剤と慢性腎臓病(以下、CKD)との関連を解明する臨床研究「CKOALA Study」は、すでに試験を終了しており、その中でCKDに対するウラリットの有用性が示唆されました。現在は試験で得た結果について責任医師による論文化が進められています。また、AIを活用して実施したリアルワールドデータ(RWD)の解析により、CKOALA研究のデータをサポートする結果が得られており、これらの結果を踏まえてウラリットの適応拡大の可能性を検討しています。

 さらに、これまで得られたデータを応用し、クエン酸塩の健康食品や保健機能食品としての開発も進めています。2022年10月~2023年1月にはその一部としてクエン酸塩と植物性乳酸菌を配合した製品のテスト販売を行っており、テスト販売で得られた情報をもとに、新製品の検討が行われています。

③ 新薬開発

 新薬の研究開発については探索研究に重点を置き、得られた成果を早期段階で導出することで、開発上のリスクを軽減しつつ効率的に開発を進めていきます。また、パイプラインの拡充やAIなどの新技術を活用した研究開発を進めるため、各分野において最先端の研究を行っている企業・研究機関とのアライアンスにも積極的に取り組んでいます。

  1) パイプライン

 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「CiCLE事業」に採択されている、抗うつ、抗不安薬「NC-2800」(オピオイドデルタ受容体作動薬)については、住友ファーマ株式会社(以下、住友ファーマ)と共同研究開発契約及びオプション契約を締結しており、現在は同社がCiCLE事業の研究開発に分担機関として参画し、開発が進められています。2021年7月よりフェーズIを開始しており、2027年ごろまでにはフェーズⅡaを終了する予定です。また、フェーズⅡbに移行する時点で、全世界をテリトリーとした開発・販売権を得られるオプション権を住友ファーマに対して付与しており、今後の開発の進展に応じたオプション料、並びにオプション権を行使してライセンス契約に至った場合にはマイルストーン及びロイヤリティ収入が期待できると考えています。

「NC-2500」(キサンチンオキシドレダクターゼ阻害薬、以下XOR阻害薬)については、2023年2月に南京寧和衡信製薬有限公司(Nanjing Neiwa Faith Pharmaceutical Co., Ltd.、以下「NF社」)と、中国における痛風及び高尿酸血症領域での開発、製造、販売などの独占的実施権をNF社に許諾するライセンス契約を締結しました。現在汎用されているXOR阻害薬は、急激に血中尿酸値を低下させるため痛風発作を引き起こすことが課題となっていますが、NC-2500は徐々に血中尿酸値を低下させるという特性から、この課題を解決できる可能性を有しています。2017年に終了した日本国内のフェーズⅠでは、良好な忍容性に加え、上記の特性も示唆されました。また、今回の契約により、NF社が中国において痛風・高尿酸血症領域での開発を進め得られたノウハウは当社が他地域へ展開することが可能であり、本契約の締結を足掛かりにNC-2500が有する価値の最大化に努めてまいります。

「NC-2600」(P2X4受容体拮抗薬)については、神経障害性疼痛に加え、新たに複数の疾患への適応可能性が期待されています。そのうち慢性咳嗽に対しては、新規の作用機序を有する薬剤として既存薬にはない特長を有する可能性が示されており、さらに開発を進め早期の導出を目指していきます。また、「NC-2700」(URAT1阻害薬)についても、そのユニークな特性を国内外の企業へアピールしながら引き続き導出活動を行っており、共同開発なども含め、さまざまな可能性を検討しています。

 さらにDFP社と日本国内における独占的販売権を取得するライセンス契約を締結している「DFP-14323」(抗がん剤候補化合物)については、DFP社が実施したフェーズⅡ試験において、DFP-14323と標準用量の半量のアファチニブを併用した場合の無増悪生存期間が、アファチニブやオシメルチニブの単剤にて報告されている期間より長いという結果が出ており、2022年6月米国臨床腫瘍学会年次総会においてDFP-14323の有用性が発表されました。DPF社はこれらのデータをもとに、現在フェーズⅢ実施に向けた検討を 進めているところです。なお、DFP-14323は、がん免疫担当細胞の表面に存在するアミノペプチダーゼNと結合してがん患者の免疫応答を強め、標準的な抗がん剤と併用しても副作用を増強することなく効果を高めることから、高齢者や末期のがん患者の治療剤として期待されています。

  2) 新技術を活用した創薬・臨床開発

 当社グループは進歩が著しいAIなど新技術を活用した手法を導入することで、有望な創薬テーマの創出や開発プロセスの迅速化、業務の効率化などにつなげたいと考えています。この数年の取り組みとして、AIの導入により初期の化合物スクリーニングが可能となり、ターゲット化合物の探索からバックアップ化合物の確保など付加価値を見出すプロセスで幅が広がることや、開発確度が向上することなどが成果として期待できるようになりました。

 現在はデジタル技術に強みを持つ企業2社への出資や業務提携を行っており、AI創薬企業である株式会社MOLCUREとは、創薬プロセスの初期段階における化合物の探索と最適化のプロセスを効率化することを目指しています。これまでは同社との協業により当社グループとして初めてペプチド医薬品の素となるリードペプチドの創成と最適化について開発を進めてまいりましたが、今後はこの学習効果を生かし、より精度を上げたAIと実験システムで効率的に成果を生み出すべく、続く第2号テーマの選定作業を開始することで同社と合意しています。

 また、デジタル医療を推進するサスメド株式会社とは、特定の開発候補テーマに関して、同社のAIシステムとRWDを用いた多面的な分析を行い、将来の共同開発も視野に入れ、効率的な治験デザインを構築するチャレンジを行っているほか、同社の臨床開発システムを用いた臨床試験効率化の検討も行っています。

④ Plus1 海外展開

 ベトナムでは、2022年12月にNC-VNが「レバミピド100mg」の販売承認を取得し、2023年の発売に向けた準備を進めております。また海外市場向けに日本国内と用量規格の異なるジェネリック医薬品の開発も行っており、既に1品目をベトナム当局に申請中です。併せて近隣国への申請準備も進めています。引き続き現地開発・現地製造の強みを活かし、市場ニーズに合った製品を投入してまいります。

 中国では、新型コロナウイルスの感染拡大を機にオンライン診療が急速に普及しました。当社のカルバン錠についても、2022年よりインターネット病院での処方が開始され処方数を伸ばしています。また2023年度には、ジェネリック医薬品1品目の承認を取得する予定です。現地でBE試験(生物学的同等性試験:bioequivalence study)を行い、中国の最新薬事規制をクリアした初の日本製ジェネリック医薬品となります。さらに、新たに現地でBE試験を予定している品目もあり、引き続き中国での実績を着実に積み上げてまいります。

 また、香港では、2017年より全ての公立病院で当社のシロスタゾール50mg錠が処方されておりますが、今般次の3年分の入札も獲得し、2026年まで販売が継続されることになりました。

 昨年来、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)に支援していただいている中東・アフリカの市場調査では、同公社の助言・ネットワークを活用し、対象国とパートナーの絞り込みが進んでいます。同公社とともに、新興市場の人々が手ごろな価格で高品質の医薬品にアクセスできるよう取り組んでまいります。

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