企業兼大株主愛知製鋼東証プライム:5482】「鉄鋼 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループは、「つくろう、未来を。つくろう、素材で。」のスローガンの下、「素材業のDNA」を活かした用途・商品開発と展開、スマート社会に向けた次世代事業の着実な育成と強化をめざして、自動車向け特殊鋼及びステンレス鋼の開発、特殊鋼を素材とする自動車部品用鍛造品の開発、電子機能材料・部品及び磁石応用製品の開発等を中心に積極的な研究開発活動を行っております。

 主力製品である特殊鋼・鍛造品では、自動車の電動化(HEV、BEV、FECV)時代の機構革新による、部品機能変化、新規搭載部品、ユニットの更なる小型軽量化、そしてグローバルコスト競争激化に対し、鍛鋼一貫の技術力を活かし、材料設計から部品製造までを見据え、プロセススルーで開発を推進、新素材と既存開発鋼を駆使した高機能・高付加価値部品の提供を目指してまいります。

 当連結会計年度の研究開発活動に関する支出は、4,506百万円、研究開発人員は約290名であります。

 なお、研究開発活動に係る支出は無形資産に計上された開発資産を含んでおります。

 セグメント別の研究の目的、研究の成果及び研究開発活動に関する支出は、次のとおりであります。

(1) 鋼(ハガネ)カンパニー

自動車部品用の新しい特殊鋼の開発を行っております。

当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

鋼材開発では、省資源・低コストを実現した省Mo(モリブデン)鋼「SCrH20」の拡販を推進、更に他の鋼種についても省Mo化を検討しております。また、カーボンニュートラルへ貢献するため、部品の製造工程の省略を実現する鋼材開発や、CO2の発生の少ない環境対応プロセスに対応した鋼材開発を推進しております。

また、電動ユニット部品の小型・軽量化に対応した高強度用鋼の開発や、鍛鋼一貫開発として、鍛(キタエル)カンパニーに関わる革新的な工法開発の競争力をより引き出す材料開発にも注力しております。加えて、次世代モビリティ時代を見据え東北大学と「次世代電動アクスル用素材・プロセス共創研究所」を設立しており、更なる高強度鋼の研究開発を推進しております。

 鋼(ハガネ)カンパニーに係る研究開発活動に関する支出は1,866百万円であります。

(2) ステンレスカンパニー

インフラ関連や自動車部品用のステンレス鋼の開発を行っております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

 ステンレス鋼ではエネルギー/社会インフラの高寿命化に貢献する商品であるステンレス鉄筋バーや二相系ステンレス形鋼の商品レパートリーの拡充、また、ステンレス構造部材ビジネスの拡大や、水素社会に対応する安心安全な省資源・低コストの鋼材開発に取り組んでおります。

 特に燃料電池車向けの高圧水素用ステンレス鋼の開発に注力しており、2013年に高圧水素用ステンレス鋼「AUS316L-H2」を開発し、同年より水素ステーション向けに、2014年からはその高強度仕様鋼がトヨタ自動車㈱の燃料電池自動車初代MIRAIに採用されております。2020年には、新たにレアメタルであるMoを使用せず、既存の「AUS316L-H2」と同等の強度と耐水素脆化特性を確保すると共に、省資源化によるコスト低減と、お客様の部品加工性の向上にも大きく寄与する省資源高強度高圧水素用ステンレス鋼「AUS305-H2」を開発し、新型MIRAI向けに供給を開始いたしました。

 また、これらの開発に必要不可欠な、高圧水素ガス環境下での評価技術の構築にも注力しており、世界で初めて90MPa高圧水素ガス環境における回転曲げ疲労試験装置を開発、試験評価を開始しました。この装置により、長時間を要する疲労試験時間を10分の1以下に短縮することを実現しました。

 当社は、1993年より水素社会実現に向けたNEDO事業に継続的に参画しており、2023年度から始まるNEDO事業「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業/共通基盤整備に係る技術開発/水素社会構築に向けた鋼材研究開発」にも採択されました。NEDO事業を通して、水素社会実現に向けた基盤構築を進めるとともに、そこで得た確かな技術知見を高圧水素用ステンレス鋼の開発に活かしております。

 今後、更にこれまで培った技術知見や開発設備により開発を加速し、水素社会の早期実現に貢献していきます。

 ステンレスカンパニーに係る研究開発活動に関する支出は682百万円であります。

(3) 鍛(キタエル)カンパニー

 自動車部品用の鍛造品製造プロセス開発、製造方法の開発を行っております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

次世代の電動ユニット車における部品の高機能化・低コスト化ニーズを受け、2017年に導入した研究開発用サーボ式鍛造プレスラインをフルに活用し、革新的な工法開発や、より高度な鍛造製品の開発を推進しております。また、新たな計測技術開発やCAEを用いた成形シミュレーションの精度向上などのデジタル技術の活用により、商品力の進化や飛躍的に開発スピードを向上させるためのDXの取り組みも推進しております。更に、熱間鍛造品メーカーから部品完成品メーカーへ進化を目指し、部品の付加価値を向上する設計技術開発、機械加工領域も含めた開発にも取り組んでおります。

 特に電動ユニット向けの部品開発に注力しており、鍛造技術と材料技術の融合による鍛鋼一貫の温間鍛造技術の開発でニアネットシェイプと熱処理省略を実現、それにより低コスト化とCO2排出量低減を達成し、2022年に量産を開始しました。また、更なる受注拡大に向けて、部品の付加価値向上やコスト競争力向上により、自動車部品のカーボンニュートラルへ貢献する技術開発にも取り組んでおります。

 鍛(キタエル)カンパニー に係る研究開発活動に関する支出は375百万円であります。

(4) スマートカンパニー

 車載電子機器用放熱部品の開発、MIセンサの開発、モータ用磁石の開発など、進化を続けるスマート社会に向けた新しい素材、製品の開発等を行っております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

MIセンサ開発の分野では、セキュリティ・医療分野に向けたワイドレンジ型MIセンサの技術開発に成功し、2022年6月からサンプル販売を開始しました。微小磁場の高感度な検出と広い測定範囲(ワイドレンジ)を両立する「磁気フィードバック技術」を採用したセンサを展開することにより、強力な磁気を発するMRI検査室周辺での金属検知や、製造ラインでの異物混入検知、磁気式セキュリティゲートなどへの応用の拡大を目指しております。

当社が開発した「磁気マーカシステム」は、2017年から国土交通省、内閣府などと共に様々な場所/環境で実証実験を行い、その性能、信頼性において高い評価を得ており、従来からの公道、公共交通分野では、JR東日本の気仙沼線BRT(※1)にて、2022年12月より柳津駅から陸前横山駅間で実用化された自動運転バスに導入されたほか、中部国際空港島などで更に実証を積み重ねております。加えて、工場敷地内の牽引車の自動走行化についても開発を推進しており、それぞれの分野で、実用化に向けて着実に進捗させております。

モータ開発の分野では、2022年2月に、34,000回転/分の小型軽量モータに、小型高減速機を組み合わせ、省資源・小型軽量化に貢献する高速回転・高減速の次世代電動アクスルの技術実証に世界で初めて成功しました。その成果をベースに、2022年4月には、NEDOの「グリーンイノベーション基金事業/次世代蓄電池・次世代モーターの開発」プロジェクトに、当社の「小型・軽量・省資源型、高効率電動アクスルの開発」が採択され、社会実装化に向けて開発を推進しています。

 また、国公立大学法人や公益財団法人などとイネ科植物が根から分泌する天然の鉄キレート剤(※2)「ムギネ酸」(※3)の化学構造を改良した環境調和型の鉄キレート剤「プロリンデオキシムギネ酸(以下、PDMA)」を開発しました。

 全世界の陸地の約3分の1は農耕に適さないとされるアルカリ性不良土壌で占められています。PDMAは世界の食料問題を解決する手段の一つとして今後の実用展開が期待されています。2021年9月には国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)に当社が代表企業機関となる「高活性生分解性キレート鉄肥料の実用化研究」が採択され、国公立大学法人とともにPDMAの低コスト化の研究開発と、作用メカニズムの深堀、海外のアルカリ土壌での実証を進めております。

 この他にも、世界で初めて工場実証に成功した、高い蓄熱能力を有し反復利用が可能な、カルシウム系蓄熱材の工場排熱利用蓄熱システムなど、エネルギーコストの削減と共に、地球温暖化抑制、カーボンニュートラルに寄与する近未来システムとして、実用化に向けた取り組みを継続してまいります。

 スマートカンパニーに係る研究開発活動に関する支出は1,581百万円であります。

※1 Bus Rapid Transitの略。バス専用道等を用いた高速輸送システム。

※2 「キレート」はギリシャ語で「蟹のはさみ」の意。鉄イオンを取り囲んでアルカリ土壌中でも安定に存在させる物質。

※3 植物が分泌する天然の鉄キレート物質。1976年に岩手大学の高城成一博士が「ムギの根から分泌する酸」として発見し、1978年にその化学構造式が竹本常松博士らによって決定され、この名が付けられた。

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