企業川田テクノロジーズ東証プライム:3443】「金属製品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループでは、社会のニーズに高い技術で応えることができるよう、研究開発活動を積極的に推進し新しい技術の開発や知見の獲得に努めています。研究開発体制としては、川田テクノロジーズ㈱がグループを跨いだ生産性向上技術や新しい市場を目指した技術開発を担当し、グループ各社が事業活動に直結する研究開発を担当しています。

 当連結会計年度における研究開発費は1,006百万円であり、セグメント別の主な内容は次のとおりであります。

(鉄構セグメント)

 主に川田工業㈱の橋梁事業部が、鋼構造・複合構造に関する研究開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は399百万円であり、材料・構造・施工・保全などに関する新技術の開発・改善を行っています。主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 複合構造に関する研究開発

 当社グループが得意とする鋼材とコンクリートの複合構造物では、鋼・コンクリート合成床版やプレビーム合成桁等の製品で多くの実績を収めてきました。合成床版に関しては、施工性や耐久性を大幅に向上させた「SCデッキ・スタッドレス」の採用が増加し、安定した受注に繋がっています。また、施工効率をより一層高めるため、構造面での改善も進めています。さらに、ニーズが高まっている橋梁の架け替えに適した製品に関しても、SCデッキ・スタッドレスで培った技術の活用を進めるなど、競争優位性をさらに高めるためのリニューアルを進めています。

② 橋梁保全技術に関する研究開発

 高速道路の高架橋から地方自治体の一般橋梁まで、「最小限の労力と費用で適切な維持管理が可能な保全アイテムの創造」をコンセプトに継続的な開発を進めています。鋼床版桁や鋼製橋脚の疲労き裂抑制対策として開発した補強工法では、今後の拡販に向けた試験施工や実工事への展開を行いました。また、歴史的鋼橋に多く採用されているリベット接合の取替需要に対し、開発済のリベット加熱装置に加え、より安全で効率の良いリベット打設工法の開発にも取り組み、施工機器のさらなる改良を進めています。今後迎える保全事業を主体とした時代を見据え、多種多様なニーズに応えるためのラインナップを整えています。

③ 生産技術に関する研究開発

 溶接施工においては、低スパッタ・低コストの新たなMAG溶接法の開発、溶接部の疲労強度を高める施工法の開発、溶接の可視化による溶接現象の解明と理解、及びこれを通じた最適溶接条件の検討などを進めています。また、川田テクノロジーズ㈱と共同で、ハイダイナミックレンジ画像処理技術を用いた溶接技量評価技術の開発も進めています。本技術は当連結会計年度に、「3Dデジタル溶接マスクシステム」として、製品販売を開始しています。さらに工場製作においては、最新の点群データ取得機器(レーザートラッカー、3Dスキャナー)の利用において、レーザーによる計測精度が向上しており、その特長を活かして出来形の高精度な計測と管理による仮組立作業の省力化を進めています。

④ 生産性向上に関する研究開発

 製品の品質や工事の安全性を高めながら、より一層の生産性向上を図るため、様々な現場作業の機械化、自動化を進めています。既設構造物に隣接して行う橋梁架設工事を安全かつ効率よく行うため、クレーンで吊り上げた長尺な橋桁の回転を、人力によらず機械的に制御する装置を川田テクノロジーズ㈱と共同で開発しました。また、工場や現場での各種の品質・出来形管理に関しても、IoTやクラウドサービスを利用した自動化技術の開発を進めています。これらの機械化、自動化の促進により、製品品質の向上と現場の生産性向上を両立させ、顧客満足度の向上を図っていきます。

(土木セグメント)

 川田建設㈱が、コンクリート構造物に関する研究開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は112百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 新設構造物の品質・耐久性向上技術に関する研究開発

 各種施工管理システムの高精度化・全自動化を目的として研究開発を推進しています。ジャッキの油圧ポンプ操作を含めてタブレットで集中管理できる全自動緊張管理システムをNEXCO発注の工事で適用し施工中(工期:2022年4月~2024年8月)です。また、高炉スラグ微粉末やフライアッシュを配合した高品質・高耐久性コンクリートの研究開発を継続実施しており、高炉スラグ50%置換の配合は凍結融解抵抗性や塩化物浸透に対する抵抗性が良好なことを確認できましたので、さらに高置換率の配合について検討していきます。

② 更新技術に関する研究開発

 今後需要が増大する橋梁の改修・更新技術に着目して、更新用プレキャストPC床版とPC中間定着システムの研究開発を継続して推進しています。前者についてはNEXCOでの工事が施工中を含めて21件と実績を伸ばしており、競争力向上のために開発を進めていた繊維補強軽量プレキャストPC床版は輪荷重走行試験が完了し、NETIS登録を申請しているところです。後者についてはPC鋼線やPC鋼棒の種類ごとの定着金具のラインナップを広げ、鉄道駅舎の改築工事等で採用されました。

③ 保全技術に関する研究開発

 既設PC橋梁の維持管理をターゲットにした非破壊検査技術、延命化・長寿命化技術について工法化を目指して、大学や専門会社と共同して基礎的な研究開発を継続しています。非破壊検査技術として塩害劣化したプレキャスト桁におけるPC鋼材の破断検知の研究を継続し、長寿命化技術としてKKグラウト注入工法が完成し、予防保全技術として簡易な塩分除去工法を研究中です。また、補修工事における作業環境改善対策として、川田テクノロジーズ㈱と共同で、超短焦点プロジェクタを使った罫書作業省力化技術の開発を行っています。首都高速道路の保全工事での罫書き作業時間の削減が期待されています。

(建築セグメント)

 川田工業㈱建築事業部が、川田工業㈱事業企画部と連携して研究開発を実施しています。当連結会計年度における研究開発費は33百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 床組構法に関する研究開発

 鉄骨床組の躯体数量を低減できる床組構法は2021年度に構造評定を取得しました。多層階物流倉庫の実施物件に採用が増えており、構造設計の効率化が望まれていました。当連結会計年度は構造設計の電算化を行い、スピーディーな検討と設計が可能となりました。多層階物流倉庫の設計に活用し受注拡大を目指します。

② 耐火断熱仕様の外壁材の研究開発

 多層階建物や都市部に建設する建物の外壁には耐火性能が要求されます。また、倉庫・工場建築においては室内の温度環境を重視する案件が少なくなく、外壁に断熱性能も求められます。これら耐火性能と断熱性能を併せ持つ新たな耐火断熱仕様の外壁材を開発しました。当連結会計年度は耐火構造の外壁材として国土交通大臣の認定を取得しました。今後システム建築の外壁ラインナップに加えて拡販を進めていきます。

③ 環境事業に関する研究開発

 水やりが基本的に不要な屋上緑化システム「みどりちゃん」は、インド、フィリピンにおいて新たな実験施工を行い、北アメリカ、インドにおいては現地材料調達調査を行っています。海外における施工済みの実験場のモニタリングを継続的に実施し、実験結果に基づく研究開発を引き続き行うことで、香港に続く海外市場の開拓を目指します。

 また、「みどりちゃん」が有する機能を壁面緑化に応用したローメンテナンスでデザイン性に優れた新しい壁面緑化システム「Stand by みどりちゃん」の実証実験を前年度に引き続いて国内で実施しました。そしてこの実証実験結果から得た課題に基づき、ユニット形状を一部変更したうえで、製品リリースを行いました。今後国内外において市場開拓を行ってまいります。

 さらに、都市緑化機構の「先駆的な緑化関連技術開発のための実証調査」に「屋上緑化(当社みどりちゃん)における再生木炭の利用による雨水貯留及び流出遅延に対する効果検証試験」が採択されました。人工降雨に対する供試体の排水遅延時間と質量変化等を調査し、再生炭の保水効果、流出遅延効果を評価することができました。

(ソリューションセグメント)

 川田テクノシステム㈱が建設向けソフトウエアソリューションに関する研究開発を、カワダロボティクス㈱が産業用双腕ロボットに関する研究開発を実施しています。当連結会計年度における研究開発費は332百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 3D点群ヒートマップ表示に関する研究

 発注者の出来形検査を効果的に実施することや施工誤差を確認するため3D点群と3Dモデルを重ね合わせヒートマップを作成します。点群は加工が難しいことからその情報の真正性も担保して実施できるものとして、昨年度、国土交通省からも着目された技術です。

② 土工のCIMに関する研究

 地中埋設物の干渉を勘案した設計CADシステム及び矢板掘削に関する3Dモデルと設計が連動したシステムのサービスを開始しました。インフラ工事を請負う会社や官公庁向けの情報管理システム、設計システムとして幅広い、利用性と発展性が期待できるものとなっています。

③ DXルームの設立

 DXが国全体で推進される中、モーションキャプチャを使用した3Dモデルが表現できる大型ビジョン施設を構築しました。災害時における広域の情報把握や大型工事の情報把握を現地に行かず、この施設を用いて情報確認できます。

④ 双腕型産業用ロボット「NEXTAGE」に関する研究開発

 双腕ロボット関連では、川田テクノロジーズ㈱と共同で「NEXTAGE」のハードウエア及びソフトウエアの性能・機能、拡張性向上を目的とした要素技術開発を実施しています。成果として、当連結会計年度では、NEXTAGEシリーズの新型ロボット「Fillie」のAPIソフトウエア及び研究向けOPEN機が市場リリースされました。

⑤ 外部研究機関との共同開発

 国際的な先端研究機関であるエディンバラ大学(イギリス)とのビジュアルフィードバックや感覚フィードバックの共同開発や、テクナリア(スペイン)を含む欧州の15の研究機関と共同でEU HORIZON PROJECTに参加するなど、双腕ロボットの市場価値を高めるための技術開発を継続して実施しています。

 この他、特定のセグメントに関連付けされない研究開発も実施しています。これらの当連結会計年度における研究開発費は128百万円であります。主な研究開発の状況は次のとおりであります。

 川田工業㈱では、非平衡プラズマによる気相化学反応を利用した水素製造やCO₂分離還元技術の研究開発に国立大学法人東海国立大学機構(岐阜大学)と共同で取り組んでいます。当連結会計年度には、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO₂有効利用拠点における技術開発」プロジェクトに対して、「大気圧プラズマを利用する新規CO₂分解・還元プロセスの研究開発」のテーマが岐阜大学と共同で採択されました。また、川田テクノロジーズ㈱では、㈱オリィ研究所(本社:東京都中央区、代表取締役:吉藤健太朗)と共同で、外出困難者の社会参加を目指した遠隔操作ロボットの開発を行っています。当連結会計年度は双腕型産業用ロボット「NEXTAGE」を応用した分身ロボットシステム「Tele-Barista」の継続運用に加えて、子ども向けの接客に用いる作業や操作者による遠隔サインなど、遠隔作業の試作及び実際のターゲット顧客への実証実験のバリエーションを増やし、可能性の追究を実施しました。

 当社グループでは引き続きサステナブル社会の実現に向け、関係機関と協力しながら研究開発を続けてまいります。

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