(1) 経営方針
常に時代を先取りし、果敢に新たな事業へと挑戦し続ける創業以来の開拓者精神と積極的な創意工夫を行う姿勢は、当社グループの行動指針となっております。お取引先との信頼関係を深め、事業を創造し、社会に価値ある企業となるため、当社グループの企業理念として掲げる、当社創業者である兼松房治郎による創業主意ならびに「われらの信条」(1967年制定)を経営の基本理念としております。
創業主意 「わが国の福利を増進するの分子を播種栽培す」
「われらの信条」
・伝統的開拓者精神と積極的創意工夫をもって業務にあたり、適正利潤を確保し、企業の発展を図る。
・会社の健全なる繁栄を通じて、企業の社会的責任を果し、従業員の福祉を増進する。
・組織とルールに基づいて行動するとともに、会社を愛する精神と、社内相互の人間理解を基本として、業務を遂行する。
(2) 経営環境および対処すべき課題
当社グループは、6ヵ年の中期ビジョン「future 135」(2018年4月~2024年3月)において、基盤となる事業における持続的成長を目指すとともに、強みを有する事業分野での事業投資により規模の拡大や付加価値の獲得を追求する方針を掲げております。
加えて、「SDGsへの取組み」や「グループを挙げたデジタルトランスフォーメーション(以下「DX」という。)推進」を重点施策として掲げているほか、安定的で持続可能なサプライチェーンの構築に努めるとともに、脱炭素社会に向けて「グリーントランスフォーメーション(以下「GX」という。)」に関する積極的な取組みも進めております。
また、安定した収益構造および財務構造を背景に、配当性向(総還元性向)目標は30~35%とし、資本の効率性を重視した経営を推進しております。
(定量目標)
| 「future135」最終年度 (2024年3月期)目標 | 2024年3月期予想 | 2023年3月期実績 |
連結当期利益※ | 200億円 | 235億円 | 186億円 |
ROE | 10%~12% | 17.2% | 12.9% |
配当性向(総還元性向) | 30%~35% | 32.0% | 33.7% |
(※)親会社の所有者に帰属する当期利益
(重点施策)
① 基盤となる事業における持続的成長と、事業投資による規模拡大、付加価値獲得
基盤となる事業における持続的成長を目指すとともに、健全な財務構造のもと、資本とリスクアセットのバランスを取りつつ成長投資を実行して参ります。強みを有する事業分野、およびSDGs達成に向け、環境、社会、安全をテーマとする事業分野において、「規模拡大」型と「付加価値」型の二軸で事業投資を推進しております。当連結会計年度における主な実績は、次のとおりであります。
・ 規模拡大を主とする投資としては、兼松エレクトロニクス㈱による日本アクセス㈱の買収、携帯電話販売二次代理店の買収などを行いました。
・ 付加価値獲得を主とする投資としては、製造装置システムインテグレーターへの出資、日本式焼肉チェーンへの出資などを行いました。
② 技術革新への対応
現行分野の周辺において将来に向けた「イノベーション」型の開発投資を行い、IoTやAIなど先進技術を軸とした新規事業を推進・拡大し、加えてグループを挙げてDXも推進して参ります。
当連結会計年度においては、先進技術を軸とした新規事業の推進を目的としてカーボンナノチューブの社会実装を目指す新興メーカーへの追加出資や、プラスチックリサイクル技術を有するベンチャー企業への出資などを行いました。
③ 持続的成長を実現するための経営インフラ確立
当連結会計年度においては、2022年11月21日付で東京本社の移転を行いました。業務内容によって座席を選択するActivity Based Working(ABW)を導入し、業務の効率化を図るとともに部署やグループ会社の垣根を越えたコミュニケーションの活性化から新しいビジネスの創造を推進して参ります。また、当社そして社会の持続的成長に向け、サステナビリティ推進委員会とサステナビリティ推進室を中心として、SDGsをより一層意識した経営に取り組んでおり、当連結会計年度においては、国連グローバル・コンパクトに署名したほか、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンへの加入や、人権方針とそれに基づく重要な人権課題の策定を行いました。
(兼松エレクトロニクス㈱および兼松サステック㈱の完全子会社化を目的とした公開買付けの実施)
当社は、上場連結子会社である、兼松エレクトロニクス㈱および兼松サステック㈱を完全子会社化することを目的として、2023年1月から3月にかけて対象会社に対する公開買付けを実施いたしました。
DXおよびGX等の取組みを推し進めていくうえでは、DXの分野では豊富なICT・デジタル知見ならびにデジタル人材を有する兼松エレクトロニクス㈱と、GXの分野では脱炭素に資する技術・工法を有する兼松サステック㈱と当社との連携を加速させ、当社グループの経営戦略を機動的に実行できるよう、当社と対象会社との一体運営を強化することが必要不可欠であると考えております。
そのためには、対象会社との資本関係をより強固なものとし、また親子上場に伴う当社と対象会社の少数株主との間における利益相反の問題を解消しつつ、当社グループが有する情報・ノウハウ、人材、営業基盤、資金などの必要な経営資源を相互活用し、グループ間シナジーをより一層発揮できる体制を整備する必要があると認識しております。
そのような認識のもと、新中期経営計画の開始を見据えた最適のタイミングでグループ一体経営の実現を図り、経営資源の制限のない相互活用や意思決定の迅速化を通じて、DXおよびGXの取組みを一層加速させることで、当社グループの更なる企業価値の向上を図るために、上記公開買付けを実施したものです。
(今後の見通し)
次連結会計年度においては、中国は「ゼロコロナ」政策の解除により消費が急速に戻りつつあり景気の回復が期待される一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化と、それによるグローバル市場の分断やインフレの継続、各国での急速な金融引締めの副作用が金融システムにもたらしつつある影響が世界経済の減速要因として懸念されます。
日本経済は、海外経済の減速が下押し圧力となる一方で、インバウンド需要や個人消費の伸びにより景気は緩やかに回復すると見込まれます。
2024年3月期の業績見通しについては、収益9,600億円、営業活動に係る利益405億円、税引前利益360億円、親会社の所有者に帰属する当期利益235億円を見込んでおります。よって、ROEは17.2%となる見込みです。
| 2023年3月期実績 | 2024年3月期見通し |
連結当期利益※ | 186億円 | 235億円 |
ROE | 12.9% | 17.2% |
配当性向(総還元性向) | 33.7% | 32.0% |
(※)親会社の所有者に帰属する当期利益
セグメントの業績見通しおよび成長戦略は、次のとおりであります。
電子・デバイス
旺盛なデジタル投資需要を受け、ICTソリューション事業が引き続き好調に推移することや、モバイル事業における不採算店舗の閉鎖や家電量販店向けの販路拡大などにより、収益は当連結会計年度比75億円増加の2,900億円、営業活動に係る利益は当連結会計年度比12億円増加の215億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は当連結会計年度比53億円増加の141億円を見込んでおります。
市場は拡大しているものの変化が極めて速いビジネス環境にあり、選択と集中および先進技術のキャッチアップにより事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・ビジネスマッチングのプラットフォームを開設しプラットフォーマーになることによる付加価値の獲得。
・フロンティア領域の動向を見据えニッチメジャーを志向することで市場の変化に対応、また、ビジネスパートナーとの関係を深めることによる規模の拡大。
食料
畜産事業における販路拡大や市況の回復、食品事業における円安や金利上昇の価格転嫁により、収益は当連結会計年度比246億円増加の3,650億円、営業活動に係る利益は当連結会計年度比28億円増加の69億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は当連結会計年度比4億円増加の26億円を見込んでおります。
食品事業は、ライフスタイルや価値観の変化により市場の消費者ニーズが多様化しているビジネス環境にあり、マーケットイン志向で事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・サステナビリティ認証の取得や新たな産地の開拓や付加価値の高い新商品の開発獲得。
・顧客のニーズを先取りした市場性の高い原料や製品の開発推進や、市場が拡大するインドネシアなどアジア諸国におけるバリューチェーンの横展開を通じた規模の拡大。
畜産事業は、国内市場は成熟しているものの、アジアを中心とした海外市場は成長が見込めるとして、国内外のビジネスパートナーとの信頼関係の維持・深化により事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・加工機能の強化や環境負荷の少ない畜産物の開発、およびそれらの製品や原料取引を推進することによる付加価値の獲得。
・国内外のパートナー企業との提携・出資によるバリューチェーン(生産・加工・物流・販売)の横展開を通じた規模の拡大。
食糧事業は、タンパク質需要が拡大する一方、異常気象などにより供給リスクが高まるビジネス環境にあり、生産安定化と品質管理により事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・各種認証により品質(安全性)が保証された食糧の安定供給による付加価値の獲得。
・商品ラインナップ拡充による市場占有率の拡大や、パートナー企業との連携・出資、海外市場への事業の横展開による規模の拡大。
鉄鋼・素材・プラント
工作機械・産業機械事業は、国内の投資需要が期待される一方で、当連結会計年度に好調であったエネルギー事業と鋼管事業の反動減により、収益は当連結会計年度比66億円増加の2,000億円、営業活動に係る利益は当連結会計年度比32億円減少の91億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は当連結会計年度比18億円減少の49億円を見込んでおります。
カーボンリスクの高まりにより、GXのニーズが拡大するビジネス環境にあり、顧客の「脱炭素」への様々な支援により事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・社会インフラを支える部門として、当社グループ内の技術・知見を結集し、様々な視点から脱炭素に関する複数の機能を顧客に提供することによる付加価値の獲得。
・再生可能エネルギーのニーズの高まりに応え、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電といった再生可能エネルギー事業を世界中で展開することによる規模の拡大。
車両・航空
航空宇宙事業は、航空業界の需要回復や宇宙防衛産業の需要の増加を見込んでおります。また、車両・車載部品事業は、部品需要の回復傾向が見られることから、収益は当連結会計年度比87億円増加の900億円、営業活動に係る利益は当連結会計年度比5億円増加の20億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は当連結会計年度比4億円増加の12億円を見込んでおります。
次世代モビリティや空飛ぶクルマ、ドローンの普及、モビリティ関連製品全般の軽量化や電動化などの技術革新による脱炭素化の動きも加速するビジネス環境にあり、「環境」「安全」「快適」をテーマとしたモビリティ事業の創造で事業を成長させて参ります。また、宇宙産業の復興に伴い、地球低軌道を利用した商用宇宙ステーションの事業開発などにも取り組んで参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・「環境」「安全」「快適」をテーマにした次世代モビリティ事業の創造と推進による付加価値の獲得。
・東南アジアでの需要の拡大にモビリティ×デジタルで応えることによる規模の拡大。
(業績見通し算定にあたっての前提条件)
・為替レート : 1米ドル=135円
・金利水準 : 円金利:横這い 外貨金利:上昇を見込む
(注意事項)
上記の見通しなどの将来に関する記述は、当社グループが有価証券報告書提出日現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
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