(1)会社の経営の基本方針
当社グループは今日まで「農家を過酷な労働から解放したい」という創業の精神を連綿と受け継ぎ、2025年には創立100年を迎えます。2026年以降の次の100年においても、当社グループが農家に最も寄り添う存在であり続けるために、2021年に策定した5か年の中期経営計画で礎づくりを実行し飛躍を果たします。
当社グループが次の100年に向けて目指す基本理念は、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ豊かな社会の実現へ貢献する」、としています。
これからは製品の提供だけではなくサービス(情報・コト・機能など)にも注力し、お客さまに喜ばれる井関として活動を続けてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、事業環境が大きく変化する中で、農業機械総合専業メーカーとして培ってきた知見、経験などをコアに社会課題を解決し、新たな価値を創造するソリューションカンパニーを目指してまいります。目標とする経営指標を「2025年までに連結営業利益率5%」として企業価値向上を図ってまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
1)事業環境と課題
当社グループを取り巻く事業環境は目まぐるしく変化しております。中期経営計画策定時の環境認識に加え、新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーンの混乱や原材料価格の高騰、またロシア・ウクライナ問題をはじめとした地政学リスクの高まりによるこれらの影響増幅や、エネルギー価格の高騰など先行き不透明な状況が続いております。
上記の環境認識のもと、当社グループは①需要、ニーズ変化への対応②財務体質改善・収益拡大③ESGへの取り組み強化④技術革新の実現を経営課題と認識し、長期ビジョンの実現に向けて各種施策を推し進めてまいります。
2)中期経営計画(2021年~2025年)
当社グループの長期ビジョンは、「『食と農と大地』のソリューションカンパニー」
~夢ある農業と美しい景観を支え、持続可能な「食と農と大地」の未来を創造する~
としています。
「農」は「食」と「大地」を守り、豊かな「人・社会」を実現しています。その「農」と「農家」を支えるのが当社グループであり、これらに関連する課題を解決していく企業であり続けたいという想いを込めています。この長期ビジョンの実現に向けて、当社グループは7つの誓いを胸に変革してまいります。
〔当社グループの7つの誓い〕 |
1.Spirit : | 創業の志を受け継ぎ、食と農と大地に向き合い、ともに歩む |
2.Front runner: | フロントランナーとして、画期的な製品・サービスを生み出す |
3.Quality : | 上質な製品を、情熱をもって作る |
4.Solution : | お客さまの課題解決を目指し、アクションを起こす |
5.Innovation : | 先端技術でイノベーションを巻き起こし、新しい価値を提供する |
6.Global : | よりグローバルに、世界の社会課題を解決する |
7.Future : | 食と農と大地の明日を、未来を切り拓く |
・基本戦略の進捗
当社グループは長期ビジョンの達成に向けた中期経営計画の基本戦略を
① ベストソリューションの提供
② 収益とガバナンス強化による企業価値向上
の2つとしております
数値目標
当社グループでは、中期経営計画の数値目標を「2025年までに連結営業利益率5%」とし取り組みを進めております。売上高に左右されることなく、収益を確実に上げられる筋肉質な会社を目指してまいります。 中期経営計画の初年度である2021年実績は計画を達成しましたが、当期実績及び次期予想につきましては、売上高は計画を上回って推移しているものの、収益面では原材料価格高騰が影響し厳しい状況が続いております。中期経営計画の軌道へ早期に回復できるよう、取り組みを着実に遂行してまいります。 |
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基本戦略① ベストソリューションの提供(お客さまに向けて)
<海外事業の拡大> 当期の海外売上高は前期に続き過去最高を更新し、海外売上高比率も32.4%と上昇しました。特に欧州市場の売上高は、前期拡大した個人ユーザー層向けが引き続き堅調であったことに加え、プロ向けの景観整備商材も増加しました。また、現地販売代理店のISEKIドイツを連結子会社化したことによる増加もあり好調でした。欧州市場は環境性能を重視した製品のニーズがますます高まっている地域です。このニーズに対し、当期より電動モーアの限定販売を開始しました。今後は顧客評価等を得ながら本格投入に向けた準備を着実に進めてまいります。 |
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<国内事業の展開> 日本農業においては、農業の環境負荷低減と生産基盤強化を目指す政府方針「みどりの食料システム戦略」が展開されております。化学農薬使用量の低減や有機農業の取り組み面積割合拡大などの2050年までに目指す姿と2030年における中間目標が示されており、有機農業を軸とした環境保全型農業への積極的転換が求められております。そのような中、当社グループは環境保全型スマート農業の普及促進において、自治体・民間企業との連携を進めております。その中でも、農薬を使用せず水田における雑草の成長抑制に資する「アイガモロボ」を開発 |
<アイガモロボ> |
する有機米デザイン社と出資業務提携をしました。「アイガモロボ」は、当期200か所以上で実証実験を実施し、結果を踏まえて仕様の見直しも行いました。次期から本格販売を開始し有機農業の推進に取り組んでまいります。 また、農業の大規模化やスマート農業化など農業構造の変化が加速している中、これらの市場に向けた商品開発および営業戦略の展開に引き続き注力してまいります。大型農機については、大規模生産者向け高性能・高耐久「ALL Japanシリーズ」を軸として、拡販を図ってまいります。スマート農機については、GPSを活用した直進アシスト仕様の実装が進んでおります。当期においてもトラクタで同仕様の新商品を投入しました。今後もスマート農機の販売拡大に努めてまいります。サービス面でも、従来より実施している大型整備拠点の拡充や大規模農家のニーズに応える教育など引き続き強化していくことに加え、サービスの概念を「情報」にも広げてまいります。現在、デジタル技術を導入した新しい農業は着実に進化しています。これを広めていくことも当社グループの役割と考えております。スマート農機から得られたデータを活用する新しい営業サービスや商品開発を展開するなど、トータルICTソリューションによりビジネスモデルの進化を図ってまいります。 |
基本戦略② 収益とガバナンス強化による企業価値向上(株主、取引先、従業員に向けて)
<最適生産体制構築>
当社グループの課題である収益性については、特に国内外製造所の最適生産体制の構築を重点施策として進めております。これにより、グループ人材の最適配置および設備を有効活用し生産性の向上を図り、売上高に左右されることなく収益を確実に上げられる筋肉質への体質転換を進めてまいります。
当期においては、最適生産体制構築の一環として、海外生産子会社であるPT.ISEKIインドネシアに日本で生産していた海外製品の一部を生産移管しました。PT.ISEKIインドネシアは2014年に北米向けトラクタの生産開始以降、アセアン向け、欧州向け等の機種拡充及び生産台数の増加が続いております。海外事業拡大及び生産移管による生産台数増加への対応として、新建屋の増築を2023年3月完成予定で進めております。このPT.ISEKIインドネシアでの取り組みを足掛かりに、グローバルベースでの最適生産体制構築を加速させ、収益性の改善を図ってまいります。
<環境への取り組み>
当社グループは、脱炭素社会と循環型社会の実現を重要課題のひとつと位置付け、環境方針を定め環境経営を実践しております。昨今の気候変動をはじめ、脱炭素社会の実現が求められる中、本年新たに環境ビジョンを策定し、従来の環境基本方針・環境中長期目標を見直しました。今後も取り組みを一層活発化させ、持続可能な社会の実現を目指してまいります。また同時に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言にも賛同しました。TCFDに沿った情報を開示してまいります。
<人的資本、多様性に関する取り組み>
2023年2月28日開催の取締役会において人材育成方針及び社内環境整備方針を決議いたしました。引き続き、「従業員エンゲージメントの向上」と「人事の変革」をテーマとしてグループ人材力の最大化を図ってまいります。
(人材育成方針)
井関グループは、課題解決を果たすのはすべて「人」であり、企業の持続的成長と価値向上に欠かせない存在と考えています 。
先端技術やグローバル化の推進など、事業戦略の実行に向けた中核人材の確保に注力するとともに、「食と農と大地」のソリューションカンパニーの実現に向けて、DXをはじめとする教育プログラムの更なる充実により、一人ひとりの力を最大限に引き出し「変革」を起こすチャレンジ精神あふれる人材を育成してまいります。
(社内環境整備方針)
井関グループは、「従業員には安定した職場を」という社是に基づき、従業員への安全・安心な職場の提供と働きがいのある職場づくりを目指しています。
人権の尊重とコンプライアンスの徹底を前提に、当社と従業員がともに発展して行くため、エンゲージメント向上に取り組むとともに、多様性に富んだ健全で透明性の高い社内環境を整備してまいります。
<ガバナンスの強化に向けた対応>
ガバナンスの強化については、取締役の選解任に関する株主総会議案の提案、執行役員の選任・解任、代表取締役の選定・解職等指名に関する事項に加え、取締役及び執行役員の報酬における取締役会の諮問機関として、代表取締役2名及び独立社外取締役3名で構成する「指名報酬委員会」(委員長:独立社外取締役)を設置しております。
当社の取締役の報酬は、「固定報酬」、「賞与」および「株式報酬型ストックオプション」により構成されていましたが、2022年度より「固定報酬」、「賞与」について、「基本報酬(金銭)」、「業績連動・評価報酬(金銭)」に見直すとともに、「株式報酬型ストックオプション」の報酬制度を廃止し、新たに信託を用いた「業績連動型株式報酬」を導入しました。取締役の報酬と当社の業績および株式価値との連動性をより明確にし、取締役が株価の変動による利益・リスクを株主の皆さまと共有することで、中長期的な業績の向上と企業価値の増大に貢献する意識を高めることを目的としております。また、取締役会の機能のさらなる向上を目的とした取締役会実効性評価の実施など、取り組みを進めております。
重要課題(マテリアリティ)解決のための取り組みは、当社グループのESG向上に関する取締役会の諮問機関として、取締役、執行役員で構成し、独立社外取締役を委員長とする「ESG委員会」において進捗を管理しております。委員会は原則として毎月開催し、気候変動への対応や人権の尊重、従業員の健康をはじめとするグループ全体のESGに関する取り組みについてリスクと成長機会の観点から検討・審議を行っております。また、委員会にて審議した内容は取締役会に答申し、基本方針・マテリアリティその他重要な事項については、取締役会において審議・決定する仕組みとすることで、経営陣の関与強化を図っております。加えて、ESGに係る8つのワーキンググループを設置し活動を進めております。これら取り組みにより、当社グループの更なるESG向上を図ってまいります。
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