企業兼大株主ルネサスエレクトロニクス東証プライム:6723】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1) 売上成長、適切なコストコントロール、生産構造の最適化
 まず、当期における当社グループの売上は、自動車向け半導体の需要が前期に引き続き旺盛であった一方、産業・インフラ・IoT向け半導体の需要が、パソコンや携帯電話に加え、当期後半から減速した産業機器の需要低迷に伴い、軟調に推移した結果、前期と比べ微減となりました。他方、将来の売上収益の源泉となるデザイン・インは、当期において、期初目標と比べ14%の過達となり、前期と比べ38%増加しました。

 当社グループは、今後の売上成長に向けて、注力分野に対して集中的に研究開発投資を行うとともに、M&Aを通じて、当社グループが保有していない製品ポートフォリオや技術の拡充・強化を推進していきます。

 当社グループが集中的に研究開発投資を行う具体的な注力分野としては、AD(Autonomous Driving:自動運転)およびADAS向けのSoC、車載ドメインコントロール向けマイクロコントローラ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)やSiC等のxEV向けパワー半導体、ADASおよびxEV向けミックスドシグナル製品、Arm社コアおよびRISC-Vコア搭載マイクロコントローラ・SoC、BMIC(Battery Management IC:バッテリ管理IC)、DRP-AI(Dynamically Reconfigurable Processor-AI:動的再構成プロセッサーAI)を内蔵したMPU、データセンタや5G関連分野向けのアナログ・ミックスドシグナル製品などがあげられます。

 一方、当社グループでは、過去に買収した旧インターシル社や旧IDT社、Dialog社について、これまでも、ウィニング・コンビネーションをはじめとして、シナジーの最大化に向けて積極的に取り組み、当期においては、デザイン・イン全体に占めるウィニング・コンビネーションの割合を50%程度まで伸ばすことができました。今後も、これらの取り組みを継続・強化します。また、前期に買収したCeleno社、Reality AI社およびSteradian社に続き、当期においては、NFC向け半導体に強みを持つPanthronics社を買収しました。

 当社グループは、今後も引き続き、目まぐるしく変化する半導体市場に早期に対応すべく、買収候補先のリストアップ・更新を行い、当社グループが有していない製品・技術やソリューションの獲得を進めていきます。

 次に、コスト面では、まず、Dialog社の買収に伴うコストシナジーとして、各種コスト低減に向けた施策を実施し、その目標値を達成しました。しかしながら、輸送の面では、新型コロナウイルス拡大に端を発した物流の混乱による輸送コストの上昇は沈静化したものの、地政学リスクの高まりに伴う原材料や原油をはじめとしたエネルギー価格の高騰、さらに人件費の上昇により、輸送コストは高止まりしているため、当社グループは、集約輸送の実施など、物流フローの整流化を継続して実施することで、コスト低減を進めていきます。加えて、原材料のマルチソース化や長期供給契約の推進などにより、引き続き、サプライチェーンの安定化に努めるとともに、部材の変更や、より安価なサプライヤへの切替えなどを通じて、コスト抑制も進めていきます。また、2024年1月から発足した新しい組織体制のもと、研究開発費を含む費用項目の見直しを推し進め、投資・費用効率の向上を目指します。さらに、業務・ITシステム効率化の観点から、当社グループでは、その基幹ITシステムであるERPの統合に向けた戦略的投資を実施しており、中長期的に当社グループの事業に大きな貢献をするものと考えています。

 当社グループは、短期的には、将来の売上成長や事業の効率化に必要となる戦略的な投資を確実に実行しつつ、継続的に適切なコストコントロールに努めます。

 また、生産面では、当期における当社グループの前工程生産拠点の稼働率は、150mm生産工場が43%、200mm生産工場は71%、300mm生産工場は50%、全工場平均で62%でした。

 当社グループは、半導体の安定供給に向けて、引き続きグループ内工場の設備の増強に努めます。当期においては、今後拡大が予想されるパワー半導体の需要に対応するため、甲府工場と高崎工場に設備投資を実施したほか、マイクロコントローラの供給能力増強を図るため、那珂工場や川尻工場への設備投資を実施しましたが、今後も引き続き、当社グループ製品の安定供給に向けた設備投資に努めます。これらの設備投資に加え、急激な需要変動への対応とレジリエンスを高めるため、引き続きダイバンクの構築に取り組んでいきます。

 また、生産委託先での生産量の確保・拡大にも、引き続き取り組んでいきます。

 これらの積極的な投資により、当期における当社グループの設備投資額は、売上収益比6%程度となりましたが、中長期的には売上収益比5%程度にコントロールすることを目指します。

(2) 地政学的問題への対応
 米中貿易摩擦の長期化や中東情勢の悪化など、世界的に地政学リスクが高まっており、それに端を発するサプライチェーンの分離は今後も進展し、それらを早期に解消することは難しい状況にあります。そして、この分離により、特定企業・製品などの輸出制限や中国国内における成熟ノード製品(40ナノメートル以上のプロセスで生産される半導体製品)を中心とした地産地消が加速しており、当社グループが事業セグメントとする半導体市場や事業機会に大きな影響を及ぼし始めています。当社グループは、米国および中国を中心とした各サプライチェーンの分離にそれぞれ対応するため、設計、製造拠点の分散化・リソースの適正化を引き続き推進しています。

 当社グループは、今後も、こうした地政学リスクの最小化と事業機会の最大化のための活動を継続していきます。
 

(3)ユーザ・エクスペリエンスの価値の最大化

 当社グループでは、そのパーパスである「To Make Our Lives Easier」のもと、顧客の製品・サービスの開発を楽(ラク)にするため、ユーザ・エクスペリエンス(UX)の向上を推進しています。そして、当社グループは、その実現に向けて、顧客ができるだけ簡単かつスピーディーにその製品・サービスの開発を進めることができるよう、様々な取り組みを実施しています。

 例えば、当期においては、当社グループ製品の顧客が物理的に評価ボードを入手することなく、クラウドベースの設計プラットフォーム上でハードウェアとソフトウェアをグラフィカルに構築することを支援する「クイックコネクトスタジオ」を公表しました。これにより、顧客は、マイクロコントローラと各種センサやコネクティビティ機能を組み合わせた試作モデル(プロトタイプ)を迅速に設計・検証し、手軽に開発に着手することが可能になります。この他にも、Microsoft社のクラウドサービス「Microsoft Azure」のクラウド環境上で車載AIソフトウェアの性能評価や動作検証を可能とする「AI Workbench」を発表し、顧客が自動車開発の初期段階から、ハードウェアがなくても、その仕様や性能の検証を行うことができる「シフトレフト」の実現に貢献しています。

 また、2024年2月には、プリント基板(PCB)設計プラットフォームで定評があり、米国に本社を置くAltium社を買収する旨の契約を同社と締結しました。

 顧客がPCBを設計する際に、時には何百にも及ぶ搭載部品の選定やその部品表(BOM)の管理に多くの労力を割く必要があります。そこで、当社グループは、顧客における部品選定を楽にするとともに、当社グループのデジタライゼーション戦略を推進するための取り組みの一環として、2023年6月に、当社グループ製品の設計ライブラリを従前より取引のあった同社のプラットフォームに集約することを公表しましたが、今般、これをさらに推し進め、同社を買収することとしました。

 当該買収により、両社が一体となって、当社グループの組み込み半導体ソリューションと同社の優れた技術を組み合わせ、クラウド上で各機器・システム間の設計を一元的に実行・管理する「電子機器設計・ライフサイクルマネジメントプラットフォーム」を構築することで、複雑で高度化した電子機器やシステムの設計を一元化されたシステムで実行することができ、顧客における大幅な開発リソースの削減と効率化の促進、さらにはイノベーションを加速させることが可能となります。

 当社グループでは、今後もこれらの取り組みを拡大・強化し、一層のユーザ・エクスペリエンスの価値の最大化を推進します。

(4) サプライチェーンの最適化
 当社グループのサプライチェーンには、生産と受注のリードタイムの整合、受注確定に関する商慣行などの点で課題があります。これらの課題に対応するため、当社グループでは、現在、新しいITシステムを導入し、意思決定のさらなる迅速化を進めています。

 また、生産の実行面では、さらなる変動対応力とBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の強化に向けて、ダイバンクの構築を進めています。このうち、グループ内生産品については、一定の成果を得ており、外部への生産委託品についても、徐々にダイバンクの拡充を開始しています。当社グループは、今後も市場動向を注視しながら、適切なダイバンクの構築を志向していきます。

(5) ESG活動と情報開示の推進
 当社グループは、当期において、ESGやSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に関連する多くの取り組みを実施しましたが、今後も引き続き、持続可能な社会の実現に向けた「環境」に資する活動、人材の多様性や従業員の安全衛生、サプライチェーンマネジメントなどの「社会」に資する活動、そして、取締役会の機能強化などの「ガバナンス」に資する活動を推進します。

 また、ESG活動に関する非財務情報の開示をより一層充実させ、ESG格付けの向上や当社グループを取り巻く様々なステークホルダーに対する情報提供に努め、さらなる企業価値の向上に努めます。

(6) タレント構成の最適化
 当期末現在における当社グループの各拠点地域の人員構成は、日本が44%、北米が10%、欧州が12%、アジア太平洋が34%でした。

 当社グループは、中長期的な視点から、グループ全体でバランスの取れた従業員の年齢・地域・スキルのミックスを実現するとともに、ソフトウェアなどの重要分野や今後成長が見込まれる分野に従事する従業員を拡充することを目指し、様々な人事施策に取り組みます。

 当社グループでは、グローバルなタレント採用チームを組織化しており、全世界で整合された方針に基づく戦略的な採用活動を各地域において実施していくとともに、必要に応じてM&Aも活用しながら、グループ全体としてタレント構成の最適化に継続して取り組みます。

(7) 従業員エンゲージメントの向上と「ルネサスカルチャー」の浸透
 当社グループは、「To Make Our Lives Easier」をパーパスとして掲げ、人々の生活を楽(ラク)にする製品・ソリューションを提供しています。このパーパスのもと、2020年以降、世界中の当社グループ組織とそこで働く従業員一人一人が絶えず変化する環境に迅速かつ柔軟に対応していくために共有する行動指針として、「Transparent、Agile、Global、Innovative、Entrepreneurial」という5つの要素からなる「ルネサスカルチャー」を策定し、定着に向けて取り組んでいます。

 当期においても、「ルネサスカルチャー」の浸透を加速させるため、様々な施策に取り組みましたが、今後もこの「ルネサスカルチャー」について、採用、育成、評価などの人事サイクルの一つ一つに組み込みながら、従業員とさらに共有し、これを根付かせ、エンゲージメントのさらなる向上に努めます。

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