企業テクノマセマティカル東証スタンダード:3787】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1)研究開発活動の概要

 当社の基幹技術はDMNA(Digital Media New Algorithm)という数学的な手法を応用した信号処理に最適化されたアルゴリズムです。当社は、このDMNAを使用した映像・音響・音声関連の信号処理技術を中心に研究、並びに開発を進めています。特に、大画面映像分野や周辺技術を取り込んだ製品にもDMNA技術を水平展開しており、ソフトウェアIP、ハードウェアIP、そしてソリューションのより効果的なビジネス拡大を目指して研究、開発を行っています。

 またDMNA自体の研究開発も進んでおり、新しい製品分野はもちろんのこと、既存製品も含めた高機能・高性能化に成果を挙げています。

(2)当事業年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)における研究開発活動の成果

(ソフトウェアライセンス事業)

 映像分野では全世界のモバイル向け地上デジタル放送において必須であるH.264ビデオエンコーダ/デコーダ、WMV9(注22)ビデオデコーダ及びJPEG/Motion JPEGエンコーダ/デコーダの高性能化を行っています。ワンセグ対応需要に応えるため、ワンセグ受信を最適化できるワンセグ・パッケージに加え、エリアワンセグ(注23)放送を低コストで行えるエリアワンセグ送信用エリアワンセグ・ミドルウェアを製品化いたしました。また、国内のワンセグ放送のみならず、海外のモバイル向け地上デジタル放送に対応可能な製品の開発を進めており、市場・顧客の広がりが期待できます。加えて、独自規格のフルHD対応エンコーダ/デコーダ「DMNA-V2」の開発にも成功しています。この独自規格は標準的なH.264の2倍以上の圧縮率を実現できています。なお、「DMNA-V2」の性能をさらに向上させた「DMNA-V3」の開発にも成功しています。また、標準化技術につきましては、画像配信分野で必須の技術ともされるH.264 SVC(注24)リアルタイムエンコーダの開発に加え、最新の国際標準圧縮規格であるH.265ビデオエンコーダ/デコーダ、さらには、放送局等で用いられる素材映像の圧縮を可能にするH.265/HEVC RExt(注25) リアルタイムエンコーダ/デコーダ ソフトウェアの開発に成功しています。さらには、JPEG 2000デコーダの機能向上版の開発を完了したほか、SDR・HDR(注26)変換ソフトウェアに加え、より活用場面の期待されるWDR(注 27)への変換ソフトウェアも開発したほか、当社の独自規格ソフトウェアとして、高速かつ低消費電力が必須のデバイスに最適なV2-Bソフトウェアおよび音声帯域レベルで映像が送れるV2-Sソフトウェアの開発に成功しています。

 なお、前事業年度におきましては、インターネット経由のストリーミング(注28)でよく使用されているVP9(注29)をラインナップに加えました。

 また、当事業年度におきましては、顧客製品に直接組み込んでいただけるように映像鮮明化技術のソフトウェアIP化に成功しています。

 音響/音声分野では引き続き、AACオーディオのエンコーダ/デコーダ、HE-AAC(注30)デコーダ、WMAデコーダの製品化及び性能向上に努め、音声分野では、ノイズ・サプレッサ、エコー・キャンセラの性能向上やハウリング・キャンセラ、風切り音除去、ズームボイス技術、OPUSの開発に成功しており、今後ともそれらの性能向上、高機能化を進めてまいります。特にHE-AACにつきましては、ARIB規格(注31)対応版の開発に成功し、ハンズフリー(ノイズ・サプレッサ+エコ-・キャンセラ)ソフトウェアにつきましては性能向上・高機能化により、車載品質レベルに到達しています。また、22.2ch AAC(注32)デコーダの開発に成功しているほか、風雑音低減ソフトウェアの低遅延版の開発や音声認識率向上に役立つズームボイスの性能向上に成功しており、ハンズフリーソフトウェアやズームボイスによる音声認識率向上を実感できるデモシステムも開発しています。

 映像・音響・音声分野に加えて、アンドロイド(注33)対応などの他、これらのコンポーネントを効率よく製品に組み込むために必要となる、各種周辺技術・製品分野の開発も積極的に進めています。

(ハードウェアライセンス事業)

 映像分野では、引き続き高精細、大画面対応に注力しており、H.265、H.264の4K/8Kサイズのエンコーダ/デコーダの性能向上に注力しています。特徴はDMNA技術を使用しているので、画質が綺麗(動画の動きがスムーズ、最初から最後まで高画質を安定維持している、急な変化、激しい動きでも画像が乱れない、原画像を忠実に再生できる、ノイズが少ない)、消費電力が他社比で1/10程度まで低減、回路規模が他社比で1/3程度まで低減、CPUの補助なしで動作させることができる、などです。また、これらの複数製品の機能をひとつに統合することで、さらなる低消費電力化を実現できるマルチデコーダ製品等の開発にも成功しています。大型画面のTV、次世代DVD、多機能セットトップボックス、デジタルビデオカメラ等への採用が期待できます。

 また、独自規格によるフルHDの6倍速を実現したニア・ロスレス(注34)エンコーダ/デコーダ、低動作周波数で大画面を高速に処理するJPEGエンコーダ/デコーダ(高速版)を開発しているほか、3D映像へ対応するH.264 MVC(注35)エンコーダ/デコーダの開発にも成功しています。また、高速JPEGを従来の4pixel/clock(注36)から8pixel/clockへとさらなる高速化に成功した他、大画面対応用のH.264 4K2K(注37)エンコーダ/デコーダも開発いたしました。さらに、開発済みのH.264CVのマルチチャンネル化、1/3~1/4固定長圧縮技術や次世代の国際標準規格であるH.265デコーダ/4K、ドライブレコーダや監視カメラなどの証拠画像や自動運転支援に有用とされるH.264 I-only(注38)エンコーダ/デコーダの開発、H.265 8K4K(注39)エンコーダ/デコーダの開発に加え、4K対応版FRUC(注40)、FPGAに搭載できるコンパクト版H.265コーデックの開発、1/2固定長圧縮技術やH.264とH.265のマルチコーデックの開発、また、モバイル端末向けに1/6固定長圧縮技術の開発に成功しています。

 なお、前事業年度におきましては、開発が完了した5G(注41)やリモート機器向けに最適な超低遅延でコンパクトなロスレス エンコーダ/デコーダJPEG XS(注42)の製品化に成功しています。

 また、当事業年度におきましては、顧客の設計するチップや使用するFPGAに直接組み込んでいただけるように映像鮮明化技術のハードウェアIP化に成功しています。

 今後とも、既開発技術の高度化、高機能化に加え、複数のビデオ規格に効率的に対応できるよう、MPEG-2、MPEG-4、H.264、及びH.265等の圧縮・伸張を実現するマルチエンコーダ/デコーダ製品や8K/4Kに対応した製品並びに次世代の圧縮・伸張の国際標準規格であるVVC(注43)の研究開発に注力してまいります。

(ソリューション事業)

 平成22年3月期末にはハードウェア製品として開発済みのH.264をフルHD対応のコーデックLSIとして開発することに成功いたしています。このフルHD対応H.264LSIは16チャンネルまでのマルチチャネルで同時エンコード/デコード処理が可能なうえ、低ビットレート、高画質、低消費電力、低遅延を実現しています。さらに、顧客の使い勝手を向上させるため、H.264LSIをCPUを搭載したボード仕立てとした製品(製品名TM5184MJC)を開発しました。また、当社の本格的ソリューション製品としましては、独自規格の「DMNA-V2」を用いて中継現場に必須のテレビ局用低遅延送り返しシステムも開発しています。さらに、モニタリング・システムとして低遅延伝送装置(小型版)、及びTM5184MJCを用いた4K伝送装置を開発いたしました。また、低遅延伝送装置(小型版)の表示(受信)装置として市販のタブレットを用いることのできる製品や低遅延送り返しシステム用のTally(注44)/Intercom装置に加え、Wi‐Fi(注45)規格を使って世界で初めてiPad50台に映像と音声をリアルタイム配信できる伝送装置Wi‐Fi Sync Viewerの開発や放送波レベルの画像に対応するコンパクトサイズの4K動画プレーヤの製品化に成功しており、Tally/Intercom装置の性能向上やWi-Fi Sync Viewerの機能拡充を実施したほか、当社ハードウェアIPのFPGAデザインキットの開発も行っています。さらに、低遅延伝送装置(小型版)の表示(受信)を複数画面化したマルチビュー・システムの開発に成功したほか、モバイル映像伝送システム(製品名:Point-One)を開発、製品化しています。

 なお、前事業年度におきましては、雪・モヤ・霧などの気象条件によって視界が悪化した映像や、逆光・光量不足による暗い映像など、不鮮明な映像の視認性を改善する映像鮮明化装置の開発、製品化に成功しています。

 また、当事業年度におきましては、JPEG-XSを採用した超低遅延IP伝送システム、ワイヤレス化により撮影現場での煩雑なケーブル取り回しを不要とするVマウントプレート(注46)対応の小型版低遅延デコーダ、さらには、4K版低遅延IP伝送システムの開発、製品化に成功しています。

 今後とも更なる利便性の向上やソリューション製品の開発による顧客需要の掘り起こしを進めてまいります。

 これらの開発により、当事業年度における研究開発費は、327,345千円となりました。

<用語説明>

(注22)WMV9(Windows Media Video 9の略で、米国Microsoft社独自の映像圧縮方式。インターネットやPC上で幅広く利用されている。)

(注23)エリアワンセグ(携帯端末向けの地上デジタル放送のしくみであるワンセグ技術を使って、テレビ局の放送とは別に、狭いエリアに限定して独自の映像やデータを配信するサービス。)

(注24)H.264 SVC(H.264 Scalable Video Codingの略で、2007年11月に新しく追加された最新の映像符号化標準規格。ネットワークを含む再生環境が多様(端末の性能やネットワークの伝送速度が多様であること)であっても、シンプルでその環境に適応した映像配信システムを構築しやすくなる。)

(注25)H.265/HEVC RExt(H.265/HEVC Range Extensionsの略で、膨大なデータ量となる4K等の高解像度映像の素材映像を従来より少ないデータ量に圧縮して伝送・蓄積することができる高圧縮技術。)

(注26)SDR・HDR(スタンダード・ダイナミック・レンジとハイ・ダイナミック・レンジのことで、ダイナミック・レンジとは明るさの幅をいう。HDRはSDRの100倍の輝度をもつため、よりリアルで自然な描写が可能となる。)

(注27)WDR(ワイド・ダイナミック・レンジのことで、HDRよりも処理が軽いので動画に乱れが発生しにくい、HDRと比べると録画データの大きさが半分になる、などの特徴をもつ。)

(注28)ストリーミング(インターネット上の動画や音楽などのデータをダウンロードしながら同時に再生すること。)

(注29)VP9(Googleが開発しているオープンでロイヤルティフリーな動画圧縮コーデック。)

(注30)HE-AAC(AAC_SBRとも呼ばれ、AAC-LCにSBRの機能を追加したもの。SBRは高周波域の波形を補完するツール。SBRを利用することで低ビットレートでも中~高音質の再生が可能となる。

(注31)ARIB規格(Association of Radio Industries and Businessの略で、地上デジタル放送のコーデック規格。)

(注32)22.2ch AAC(スーパーハイビジョンのための3次元立体音響システムとしてNHK放送技術研究所が定めたマルチチャネル規格。)

(注33)アンドロイド(Googleが2007年11月に発表した、スマートフォンやタブレットPCなどの情報端末を主なターゲットして開発されたプラットフォーム。)

(注34)ニア・ロスレス(ロスレス圧縮とは、データを全く損なわずに復元できるような圧縮方式のこと。データを再び元の状態に戻せるところから、可逆圧縮とも呼ばれる。ニア・ロスレス圧縮は、完全な可逆圧縮ではないものの、不可逆圧縮ほどには復元時のデータ欠損がない圧縮方法のこと。)

(注35)H.264 MVC(H.264 Multi View Codingの略で、2009年3月に新しく追加された最新の映像符号化標準規格。複数のカメラ等の視点からの入力映像を統合して符号化する。自由視点映像や3Dテレビ等の映像アプリケーションに利用できる。)

(注36)pixel/clock(pixelとは画素数のことで、clockとは処理の単位のこと。つまり、4pixel/clockとは一回の処理で4画素処理することをいい、8pixel/clockとは一回の処理で8画素処理すること。)

(注37)4K2K(フルHD(1920×1020)の約4倍とされる4096×2160の画素数に対応できる解像度技術のこと。)

(注38)H.264 I-only(イントラフレームだけで圧縮することによりインターフレームとの参照用外部メモリを不要としたもの。コンパクトかつ高画質な上、廉価なFPGAでも動作する。)

(注39)8K4K(フルHDの約16倍、4K2Kの約4倍とされる8000×4000の画素数に対応できる解像度技術のこと。スーパーハイビジョン(UHDTV、7680×4320)規格に該当する。)

(注40)FRUC(フレーム・レート・アップ・コンバーター。補間フレームを生成してフレーム数を増加させることで、オリジナルの映像をより高精細な映像の規格に形式変換する技術。)

(注41)5G(5th Generation(第5世代移動通信システム)のこと。「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」といった特徴を有し、日本では2020年3月から商用サービスが開始されている。)

(注42)JPEG XS(視覚的にロスレスで、低遅延で軽量の画像およびビデオコーディング規格。バーチャルリアリティ、ドローン、カメラを使用した自動運転車、ゲーム、放送向けの高品質コンテンツのストリーミングのために設計された最初のISOコーデック。

(注43)VVC(Versatile Video Codingの略で、国際標準化機関のITU-TとISO/IECで2020年8月に規格化された。現在主流の国際標準規格のH.265/HEVCに対して2倍の映像圧縮性能を達成する映像符号化方式。)

(注44)Tally(タリー・ライトのこと。放送・中継現場でどのカメラの映像が記録中(放送中)かを出演者やスタッフに知らせるためにカメラやモニター上に点灯させるライト。)

(注45)Wi-Fi(無線LANの規格の一つ。Wi-Fi Alliance(米国に本拠を置く業界団体)によって、国際標準規格であるIEEE 802.11規格を使用したデバイス間の相互接続が認められたことを示す名称。)

(注46)Vマウントプレート(放送業務用機器等の業務用カメラや照明またはモニター等に備えられている、外付けバッテリー等の外れ防止のためのV型ロック機構。)

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