企業兼大株主クラレ東証プライム:3405】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループにおける研究開発活動は、私たちの使命「私たちは、独創性の高い技術で産業の新領域を開拓し、自然環境と生活環境の向上に寄与します。」に基づいて、カンパニー・グループ会社に所属するディビジョナル研究開発とコーポレート研究開発との緊密な連携の下に推進されています。

ディビジョナル研究開発は、カンパニー・グループ会社等が各事業所に研究開発部署を有しています。

コーポレート研究開発体制としては、研究開発本部において、新事業テーマの企画・提案・推進を目的に、くらしき研究センターとつくば研究センターの2拠点を設置しています。オープンイノベーション推進を目的に、米国にはKAI Corporate R&Dを有しています。生産技術に関しては、技術本部 技術開発センターにおいてシミュレーション技術を活用した原理原則に基づく生産技術開発を進めており、主要な研究開発テーマについては早期設備化を推進しています。一方で、デジタル技術を活用した生産効率、及び品質向上への取り組みも着実に進めています。

また、当事業年度において、市場開発機能を強化しつつ生産・販売体制を整備し、事業化の加速を図るため、研究開発本部で開発推進してきた<ベクスター>・CMPパッドを新たに組織したエレクトロニクスマテリアルズ推進本部に移管しました。

 ディビジョナル研究開発とコーポレート研究開発を合わせた当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発人員数は1,053人です。

 当連結会計年度のセグメントごとの研究開発費は、ビニルアセテート8,733百万円、イソプレン2,757百万円、機能材料3,644百万円、繊維2,183百万円、トレーディング130百万円、その他819百万円、全社共通(コーポレート研究開発)6,164百万円、合計24,434百万円になります。

 セグメントごと及びコーポレートの研究開発活動を示すと次のとおりです。

[ビニルアセテート]

・ポバール樹脂、ポバールフィルム、PVBフィルム、<エバール>(樹脂、フィルム)のビニルアセテートチェーンについては、世界のリーディングカンパニーとして、国内外の研究開発部署が連携し、新規用途開発、新商品開発、新規生産技術開発も併せて、研究開発活動を推進し、新たな価値を顧客に提案します。また、社会情勢やニーズの変化を成長機会と捉え、地球環境改善や社会貢献につながる製品開発を積極的に行っています。その中で、グローバルサプライチェーンのサステナビリティ向上の一環として、2023年度に北米La Porte工場で生産する酢酸ビニルモノマーについて、持続可能な製品の国際的な認証制度の一つであるISCC PLUS認証を取得しました。併せて、欧州でのトレーダー認証を取得しました。これにより、既に認証取得済の欧州<エバール>での活用と共に、今後、各グローバル拠点においても同様に認証取得を進め、自消・外販を通じて、継続してサステナビリティの向上に努めます。

・ポバール樹脂は、当社ビニルアセテートチェーンの根幹に位置する事業として、これまで培った技術開発力をベースに自消・外販両面で高品質かつ差別化された製品を提供します。日米欧亜の6工場をベースとしたグローバルネットワークを強みとして、世界各地の顧客に対して安定供給を図るとともに、ポバール樹脂の安全かつ環境に優しい特徴に注目し、新たな用途、ビジネス機会を提案します。

・ポバールフィルムは、液晶ディスプレイ向け光学フィルムの構成部材の一つとして、さらなる高性能化・高品質化に加え、顧客での生産性向上などにも顧客と一体となって取り組んでいます。なお、広幅対応可能な新ラインについて、2024年年央での生産開始を目標に、現在順調に建設を進めています。また、洗剤包装用途を中心にますます拡大する水溶性フィルムについても、顧客からの新たなニーズに応えるべく、ポバール樹脂メーカーである強みを活かし、原料まで遡った高性能化・多機能化を加速させます。

・PVBフィルムは、自動車・建築向け合わせガラス用中間膜の高付加価値品の開発を進めており、新たな価値を顧客に提案しています。その一環として、近年の先進運転支援システム(ADAS)の進展により、今後益々高度な光学精度がカメラに求められる中、フロントガラスの光学歪みを低減できる特殊PVBフィルム<Cam Viera>など最先端の技術提案と共に、アイオノマー樹脂をシート化した<セントリグラス>の更なる高付加価値化やPVBフィルムとのシナジー効果の発現、新規用途開発を推進しています。また、顧客の合わせガラスメーカーにて発生するPVBフィルムトリムを回収・有効活用する再生中間膜のビジネスモデルを確立しており、カーボンフットプリント削減にも積極的に取り組んでいます。

・<エバール>樹脂は、世界規模で食品廃棄ロスの削減や環境負荷の低減が求められるなか、日米欧の3拠点を中心に世界各地の顧客ニーズや市場動向を把握しながら、バリア材料の新技術開発・用途開発を推進しています。また、旺盛な需要に応えるべく、アジア地域での新プラント建設を計画しており、持続的な成長を目指します。<エバール>フィルムは、省エネルギー・地球環境保全に貢献する用途へ積極的に展開していきます。さらにバイオマス由来のガスバリア材料<PLANTIC>については、CO2排出削減効果とガスバリア性を併せ持つ新素材として、用途開発に取り組んでいます。

[イソプレン]

・イソプレンケミカル関連では、独自性の高いC4ケミストリーを展開しており、溶剤やウレタン原料、香粧品原料などを中心に新規用途開発を推進しています。また、脱炭素やサステナビリティへの貢献といった社会のニーズに応える機能性ポリマー・化学品の創出にも取り組んでいます

・エラストマー関連では、熱可塑性エラストマー及び液状ゴムの差別化・高付加価値化に取り組んでいます。熱可塑性エラストマーでは、軟質コンパウンドや樹脂改質などの用途で環境に配慮した製品を開発し、市場開発を推進しています。また液状ゴムは、主力のタイヤ用途で様々なタイプの製品を市場に提案し、高機能タイヤの改質剤として採用が広がっています。

・耐熱性ポリアミド樹脂<ジェネスタ>では、5G通信コネクタ及び高電圧用コネクタ等に適した電気・電子用途向けのグレード開発に注力するとともに、自動車の環境規制強化やCASEの加速に対応するためサーマルマネジメント部品や車載電装部品に適した材料の開発を加速しており、部品メーカー各社で評価が進んでいます。

[機能材料]

・メタクリル樹脂については、差別化ポリマーの拡充とメタアクリル系樹脂を活用した新規用途開発、新商品開発を主体に研究開発活動を行っています。

・メディカル事業では、クラレノリタケデンタル㈱の無機/有機の技術の融合による新規歯科材料の開発に注力し、CAD/CAM用ジルコニア、高強度レジン等のデジタル化の流れにも対応した開発、商品化を行っています。また、人工骨インプラント<リジェノス>、吸収性骨再生用材料<アフィノス>は、配向連通孔技術を特長に、多面的な展開を進めています。

環境ソリューション事業では、重点戦略領域である「環境(水・大気)・エネルギー」分野において、環境阻害物質の効果的吸着剤開発、商品群展開に加え、吸着活性炭の再生、再利用技術の開発を推進しています。また、拡大するエネルギー関連材に向け、新素材、新商品開発に取り組んでいます。

アクア事業推進本部では、中空糸水処理膜を用いた様々な水の製造・回収を通して、「高品質で安全な水の提供」と「環境負荷の低減」に貢献する素材・技術開発に取り組んでいます。

[繊維]

・高強力繊維<ベクトラン>は、極低温域までの広い温度領域において、高強度、低誘電損失、低線膨張であることに加え、ほとんど吸水することがない特質を有していることから、海洋資材、光ファイバー等の電材など高機能、高性能であることが求められる分野で需要が広がっており、今年度もフル生産が続きました。さらなる用途拡大を目指し、性能向上、用途開発を進めています。

PVA繊維<ビニロン>は、ゴム補強用フィラメントや防護材料、特殊紙分野の拡大に応じた体制整備を行い順調に稼働しています。社会のニーズに応えるべく、生産技術、製品開発を続けています。

・人工皮革<クラリーノ>は、環境や健康意識の高まりにより、環境配慮型革新プロセス(CATS)を使ったスポーツ向け製品需要が増加しており、RCS認証を取得した環境配慮銘柄を開発、販売の拡大に取り組んでいます。また、欧州ラグジュアリー用途向けを中心にリサイクル原料を用いた新規環境配慮型製品を拡大させており、さらにバイオマス原料を使った新規製品開発も進めています。

・不織布<クラフレックス>は、液晶ポリマーを用いた不織布<ベクルス>の用途拡大や、生活環境向上に寄与する製品開発、新規環境配慮型製品の開発を進めています。

[トレーディング]

・ポリエステル長繊維<クラベラ>では、①地球環境に配慮した独自原糸(PETボトル再生樹脂を用いた機能繊維<スペースマスター>、再生ナイロンを用いた分割繊維<WRAMP>)、②独自の樹脂を用いて糸自体に性能付与した速乾繊維<エプシロン>、衝撃吸収繊維<スパンドール>、③電子部品などへの静電気放電対策としてIEC基準にも対応する導電性繊維<クラカーボ>などの機能性原糸の開発を推進しています。

[その他]

・クラレプラスチックス㈱では、スチレン系エラストマーを使用した機能性コンパウンド<アーネストン>及び同コンパウンドを原料とした不織布やフィルム(コンパウンド二次製品)、<エバール>をコーティング加工した特殊フィルム、成型加工技術による高気密高断熱住宅向け換気・空調ダクト及び周辺部材、高強力繊維 <ベクトラン>を使用した土木用途向け繊維複合ホースの開発を推進しています。

[コーポレート研究開発]

研究開発本部では、以下3点を通じて、クラレグループ全体の業容拡大・収益向上に資することを目指しています。

 新事業の創出:素材事業あるいはそれらに加工技術を付加した部材事業をターゲットとし、早期創出を目指します。種々の施策・改革を進め、当社の強み(技術・商流・市場)を活かした新規事業開発テーマの発掘・推進を継続します。

既存事業の強化・拡大:カンパニー・グループ会社との協働・支援を強化し、分析・解析・デジタルなど高度な技術を駆使して全社事業の盤石化を図るとともに、既存事業の拡大に貢献します。また当社事業の急速なグローバル化に対応し、グループ海外拠点との連携を強化しています

基盤技術の構築・深耕:新事業の創出及び既存事業の強化・拡大を通じて、必要とする基盤技術を構築し、深 化・深耕を図ります

以下、研究開発活動を示します。

当社基幹原料からの新規化学品開発や新規高分子素材原料の開発に資する触媒開発技術を基盤技術と捉え、これまで長年培った均一系触媒技術のみならず固体触媒技術開発を進めています。これら技術開発を通じ、ビニルアセテート事業、イソプレン事業にかかわる既存事業の強化並びに新規材料開発を展開していきます。

・ビニルアセテートチェーンの更なる業容拡大と新規展開を目指し、保有コア技術と内外から取り込んだ技術で新たな機能を有する素材の開発を進めています。環境親和性の高い酢ビ系高分子の精密な構造制御技術や高機能化プロセスを追及するとともに、酢ビ系高分子の研究開発を通じて獲得した知見や技術を酢ビ系高分子の枠を超えて展開することで顧客ニーズに合致した新素材を提案し続け、世界のリーディングカンパニーとして確固たる地位を確立します。

・カンパニー・グループ会社との連携を通じて、高分子化合物の設計・重合・変性に関する基盤技術を拡充・深耕し、既存技術の強化・拡大と新事業の創出に資するための新規技術・新規高分子材料を開発します。

・自社素材や高分子材料の成形・加工に関する基盤技術を拡充・深耕し、カンパニー・グループ会社と連携して、成形材料・成形体・シート・フィルムなどの機能性素材・部材に関する研究開発を推進しています。

・炭素・電池材料に関連する技術基盤に新たな要素を加え、クラレグループの環境・エネルギー関連技術の拡大、深化に向けた研究開発を進めます。

・再生医療や細胞農業などライフ関連分野での事業創出に向けた研究開発を推進しています。

・先進的かつ豊富な分析・解析技術、及びシミュレーションや機械学習などのデジタル技術を応用し、カンパニー・グループ会社に様々な技術ソリューションを提供することで、クラレグループの業績向上に貢献しています。

[イノベーションネットワーキングセンター]

 イノベーションネットワーキングセンター(以下、「INC」という。)は、中期経営計画「PASSION 2026」で掲げる「3つの挑戦」の内の1つ「ネットワーキングから始めるイノベーション」を推進するため、2022年1月に設立されました。INCは、各事業部・本部、そして顧客が主役となってイノベーションを生み出していけるよう、クラレグループのイノベーションのアクセラレーターの役割を担い、全社・全員参加型の活動を推進しています。多様なバックグラウンドをもつINCのメンバーと各部署を代表するアンバサダーがグローバルに連携し、クラレグループの多様な人材、ユニークな技術力、これまでに培った顧客との関係性や市場へのアプローチ手法などを活用し、中長期的な視点で新たなビジネス機会の創出に取り組んでいます。この組織が担う業務・役割は主に以下です。

①当社の技術開発力、お客様との繋がり、多様な人材といった総合力を、グループ社員で活用し合うためのプラットフォーム(コアケイパビリティープラットフォーム)を立上げ、シナジー創出を加速します。

②社内の新ビジネス開発プロジェクトの優先順位を明確にし、イノベーションを効率よく進めるための戦略とシステム(イノベーションパイプライン)を作り、パイプライン上でのビジネスインキュベーションを進めます。

③全社横断で市場へアプローチするため、自動車、農業、紙・包装資材といった重視する6つの市場セグメントを特定しました。各セグメントでINCのチームが主体となり、新規テーマを発見・発掘し、顧客やパートナー企業との協業を進めます。

 以下、INCの2023年度の成果を示します。

・各事業部に拡散するコア技術及び試作用設備を全社で共有するためのプラットフォームを完成し、7月に立上げました。既に2,000人以上の登録者が社内連携の足掛かりに活用し始めています。

・5月に社内イノベーションパイプラインのプロトタイプを立上げ、4つの新規ビジネスプロジェクトを対象に試運転を開始、パイプラインの運営法や仕組みの改善を進めました。

・全社イノベーション戦略の策定を進めました。各事業部、研究開発本部と連携し、イノベーション創出を狙う重点戦略領域を定義しました。2024年度は、当該重点戦略領域における機会探索とプロジェクト推進活動を支えるべく、リソースの積極的な投入を進めていきます。

・セグメントチーム活動の一環として、海外中心に数百回のビジネスマッチング会を主催しました。発掘されたカスタマーアンメットニーズから新たに14のビジネス開発テーマを抽出し、4テーマをフェイルファストしたものの、1テーマをプロジェクトグループとして本格稼働しました。加えて、海外中心に13の展示会へ出展し、フォローアップを継続しています。

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