当社は食料・水・環境を一体のものとして捉え、技術とソリューションを通じてこの3つを正しく循環させることで持続可能な社会の実現をめざしております。近い将来起こり得る社会課題を予見し、それを見越した製品開発と新たなサービス・事業の創出を通じて、より一層社会に貢献していきます。これに向けて、事業に直結した製品・技術の開発と会社の持続的な発展を支える中長期的研究開発の両立に努めております。
また、当社は、中期経営計画2025のメインテーマの一つとして「次世代の成長ドライバー候補の確保に向けた取組み」を掲げ、GMB2030実現へ向けた基礎づくりを進めており、グローバル規模での競争を勝ち抜いて持続的な成長を実現するために、研究開発に積極的に資源を投入しております。
当年度に発生した研究開発支出は899億円であり、事業別セグメントごとの研究開発支出及びその主な研究開発成果等は次のとおりです。なお、事業の研究開発支出及び特定の事業部門に関連づけられない基礎研究支出等は、合算の上で「その他・全社」として分類しております。
(1) 機械
農業機械及び農業関連商品、エンジン、建設機械等の製品開発とそれに関連する先行基礎研究開発を行っております。主な成果は次のとおりです。
農業支援システム「KSAS」の営農データをオープン化した「KSAS API」の開発
「KSAS(注1)」に蓄積されている営農データを他社がサービス提供する各種システムで利用できるようにするため、システム開発者向けに「KSAS API(注2)」を開発しました。
当社では、すでに官民共同の農業データ連携基盤「WAGRI」の「農機Open API」を介して当社の農業機械の稼働情報等のデータを提供しておりますが、さらにほ場情報、農薬情報、肥料情報、作業履歴といったKSASに蓄積されているデータもオープン化し、他社システムと容易に連携できるようになります。これによりKSASと他社システムを併用するユーザの利便性向上を図ることが可能となります。
(注) 1 クボタスマートアグリシステム。当社が提供する営農・サービス支援システム。
2 アプリケーション・プログラミング・インターフェース(Application Programing Interface)の略称。システム間連携を容易にするために、連携のルール・仕様を定義し、一部の機能を効率的に共有できる仕組み。
アグリロボトラクタ「MR1000AH (KVT仕様)」の開発
アグリロボトラクタのラインアップを拡充し、無段変速KVT(注3)を搭載した「MR1000AH (KVT仕様)」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。
① 有人仕様では、オペレータがトラクタに搭乗した状態での自動運転が可能です。ほ場の仕上がり状態の確認がしやすく、作業精度が向上するとともに、オペレータの疲労を軽減させます。また、未熟練者でも簡単に操作を行うことができます。無人仕様では、使用者の監視下において、トラクタの無人自動運転が可能です。標準装備の無線リモコンにより離れた位置からでも自動運転の開始や停止を行えるほか、監視タブレットでの耕深・車速の指示も可能で、ほ場内の状況に合わせた作業が行えます。保有トラクタとの同時作業を行うことで、大幅な作業効率の向上に貢献します。
② ほ場外周走行によるマッピング操作及び作業に必要な情報を入力するだけで、ほ場形状に合わせた効果的な作業ルートを自動生成でき、未熟練者でも効率的な作業を行えます。スイッチを押すだけで、枕地幅を考慮した作業開始位置まで自動で移動できる機能により、ロス(過度の重複、残耕)の少ない作業を行えます。
③ 「耕うん」・「代かき」・「粗耕起」・「肥料散布」・「播種」の作業に対応しております。使用するインプルメントの作業幅やサイズの任意設定が可能となり、使用可能なインプルメントを大幅に拡充しました。
④ 直進オートステア機能を搭載しており、自動運転対象外の作業においても、直進時のステアリング操作はトラクタに任せることができるため、未熟練者でも各種作業を高い精度で行えると共に、作業能率も向上させることができます。ほ場中央部の自動運転作業後に残った枕地周り作業を自動操舵で行うことができる「ルートオートステア機能」と、前進だけでなく後進時も自動操舵を行うことができる「後進オートステア機能」を新たに追加しました。
⑤ トランスミッションは無段変速KVTを採用し、変速操作なしで発進から最高速度までスムーズな走行が可能になりました。ノークラッチでのブレーキ停止が可能になるため、スムーズな発進ができることに加え坂道発進補助機能も備えており、登坂発進時のずり下がりも抑制します。クルーズ機能を搭載し、車速重視の作業においては負荷に応じてエンジン回転を自動で増減し車速を一定に保つため、作業効率が向上します。
(注) 3 クボタ・バリアブル・トランスミッション(Kubota Variable Transmission)の略称。
たまねぎ調整機「KOC-10」の開発
たまねぎ調整作業の軽労化、省力化に貢献するたまねぎ調整機「KOC-10」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。
① 供給部と本体部の段差が小さいため、たまねぎの損傷を抑えられます。
② たまねぎの根を振り子の軌跡で切断するため、高精度な根切りを行えます。
③ 切断された根は排出コンベアにより機械外に自動排出されるため、定期的な清掃の必要がなく、連続運転が可能です。
④ 供給部と本体部の配置が選択できるため、作業場に合わせたレイアウトが可能です。
当セグメントに係る研究開発支出は600億円です。
(2) 水・環境
パイプシステム関連製品(ダクタイル鉄管、合成管等)、素形材・都市インフラ関連製品(反応管、スパイラル鋼管、空調機器等)、環境関連製品(各種環境プラント、ポンプ等)の製品開発とそれに関連する先行基礎研究開発を行っております。主な成果は次のとおりです。
マンホールポンプAI異常検知システム(デジタル版)の開発
全国すべてのマンホールポンプに導入可能なAI異常検知システムを開発しました。主な特長は以下のとおりです。
① ポンプの運転時間と運転回数による異常検知を実現したことにより、従来必要としていた電流値・流量・水位センサ等を追加せずに異常検知ができるようになりました。
② 電流センサや水位センサのないマンホールポンプでも導入可能なほか、マンホールポンプのメーカーにかかわらず導入可能なため、従来のアナログ版のシステムでは25%程度であったカバー率が、100%(すべてのマンホールポンプに導入可能)となりました。
③ 国土交通省「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」に採択され、3つの自治体のマンホールポンプ201箇所で実証実験を行い、効率化効果や運用方法の確立等で十分な成果が得られたとの評価を受けました。
直胴型遠心脱水機(高遠心力モデル)「SCM-G型」の開発
直胴型遠心脱水機のラインアップを拡充し、高遠心力モデル「SCM-G型」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。
① 最大遠心効果を従来の2,500Gから3,500Gに高めたことにより、難脱水汚泥でも安定して低いケーキ含水率が得られます。
② スクリュー軸の駆動に油圧モータ方式を採用したことにより、含水率が低下した脱水ケーキでも強力に搬送・排出できます。
③ ケーキ発生量をデカンタ型に比べ、25%程度削減(注4)できます。
④ 温室効果ガス(GHG)排出量をデカンタ型に比べ、87%程度削減(注5)できます。
(注) 4 混合生汚泥を想定した場合のケーキ発生量。
5 ケーキの焼却処理を想定。補助燃料の削減効果を含む。
当セグメントに係る研究開発支出は51億円です。
(3) その他・全社
当社はK-ESG経営を推進しており、研究開発においても環境・社会課題の解決に資するイノベーションの創出に向けた取組みを加速しております。カーボンニュートラルでは、農業機械・建設機械についてBEV(注6)の製品化に向けた取組みや、燃料電池や水素等新動力源の実現に向けた取組みを行っております。
また、これまで進めてきた燃焼効率向上等の低燃費化やバイオディーゼル含有率向上等の研究開発にも引き続き注力して取組んでおります。さらに、自動運転技術による作業ロス低減や最適省エネ運転、バイオマス(農業残渣や食料残渣)の活用等、多面的な取組みを結集することで、カーボンニュートラルを実現していきます。
スマート農業については、他社に先駆けてトラクタ・コンバイン・田植機の自動運転技術を確立しておりますが、より一層使いやすい機械とすべく、AIや先進センサの活用研究等の取組みを進めております。天候情報、生育モデル、リモートセンシングの活用等、データ農業の取組みも現地実証を計画的に進めております。
また、田んぼダムに関する研究等、営農支援システム「KSAS」、ほ場水管理システム「WATARAS(注7)」及び水環境プラットフォーム「KSIS(注8)」の連携に関する研究開発も計画的に進めております。
(注) 6 バッテリー式電気自動車 (Battery Electric Vehicle)の略称。
7 当社が提供する、水田の給水・排水をスマートフォンやパソコンでモニタリングしながら遠隔操作または自動で制御するシステム。
8 クボタスマートインフラストラクチャシステム。水環境インフラ施設・機器向けのIoTソリューションシステム。
当セグメントに係る研究開発支出は248億円です。
就職・転職をするときに最低限チェックしておきたい項目をまとめました。
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